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ふりがな文庫
“
裡
(
うち
)” の例文
予は信ず、人の衷心、聖の聖なる
裡
(
うち
)
に、神性ありて、これのみ
能
(
よ
)
く宇宙間に秘める神霊を認識し、これを悟覚するを得るものなりと。
我が教育の欠陥
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
むっと
籠
(
こも
)
った待合の
裡
(
うち
)
へ、コツコツと——やはり泥になった——
侘
(
わびし
)
い靴の
尖
(
さき
)
を刻んで入った時、ふとその目覚しい処を見たのである。
売色鴨南蛮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
二万の御人数の
裡
(
うち
)
、一万二千を以て、西条村の奥森の
平
(
たいら
)
を越え
倉科
(
くらしな
)
村へかかって、妻女山に攻めかかり、明朝卯の刻に合戦を始める。
川中島合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
最初
(
のっけ
)
から四番目まで、湧くような歓呼の
裡
(
うち
)
に勝負が定まって、さていよいよお
鉢
(
はち
)
が廻って来ると、源は
栗毛
(
くりげ
)
に
跨
(
またが
)
って馬場へ出ました。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
青年は、その手を
無言
(
むごん
)
の
裡
(
うち
)
に、強く握りかえすと、そのままツツと屋根の上を走ると見る間に、ひらりと身を躍らせて、飛び降りた。
西湖の屍人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
そうして愛情の結果が、貧のために打ち
崩
(
くず
)
されて、永く手の
裡
(
うち
)
に捕える事のできなくなったのを残念がった。御米はひたすら泣いた。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「あなたの
裡
(
うち
)
に向うで豫期し得なかつたやうな樣々なものを發見したでせうね? あなたの才藝のあるものは普通ぢやあないから。」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
「どうしたものだろう?」茫然と、事件の
裡
(
うち
)
に自失して、その処置も方針もつかず、幾日かを、ただ困惑と
空
(
むな
)
しい捜索に暮れていた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私は、窓の
傍
(
そば
)
に近づいて、戸を開けて見た。
裡
(
うち
)
は暗くて、人の住んでいる気はいもない。物の腐れた臭いが激しく鼻を衝いて来る。
抜髪
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
それを除けて、いきなり庭口へ廻つた錢形平次と八五郎は諸人の注視の
裡
(
うち
)
を隱れるやうにいきなり奧庭の縁側に立つて居りました。
銭形平次捕物控:248 屠蘇の杯
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
哲学者の神聖なる努力と豊富なる功績とがいたずらに人生の傍観者なる悪名の
裡
(
うち
)
に葬り去られんとするのは憤慨すべき事実である。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
しかし自分の
裡
(
うち
)
にはたしかに孫四郎なぞの窺ひも得ぬ何かがあると自信してはゐるもののまだその現の証拠を実現した訳ではない。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
そう思うと、何より先きに、ひとりでに苦笑とも冷笑ともつかないようなものが私の胸の
裡
(
うち
)
におさえ兼ねたように込み上げて来た。
ほととぎす
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
而
(
しこう
)
して彼らを送りし船は、
已
(
すで
)
に去りて
浩蕩
(
こうとう
)
の濤に
擒
(
とりこ
)
にせられ水烟
渺漫
(
びょうまん
)
の
裡
(
うち
)
に在り、腰刀、
行李
(
こうり
)
またその中に在りて行く所を知らず。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
生死の悲哀は、地に伏すごとく建てられた伽藍の
裡
(
うち
)
にみちているであろう。しかし塔だけは、天に向ってのびやかにそそり立っている。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
ぼんやりと眼をつぶっている
眼瞼
(
まぶた
)
の
裡
(
うち
)
に、今しがた姉と雪子の涙を
溜
(
た
)
めながらじっと此方を見送っていた顔が、いつ迄も浮かんでいた。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一九四〇年……
曽
(
か
)
つて
雲烟万里
(
うんえんばんり
)
の秘境として何者の侵攻も許さなかった
雲南
(
うんなん
)
府も、不安と焦燥の
裡
(
うち
)
にその年を越そうとしていた。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
而
(
しか
)
してその間になんらの陰険なる野心もなく、またなんら選挙人を
欺
(
あざむ
)
くこともなく、公明正大の
裡
(
うち
)
に第一回の総選挙は行われたのである。
選挙人に与う
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
要するに日本語でいう所のうたうのでなくて、思っていること、胸の
裡
(
うち
)
にあることを言葉に発表したものを指すのであるらしい。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
彼等が明鏡の
裡
(
うち
)
に我が真影の写るを見て、
益
(
ます/\
)
厭世の度を高うすべきも、婚姻の歓楽は彼等を誠信と楽天に導くには力足らぬなり。
厭世詩家と女性
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
その顔色は、悠然として全く平静に、その態度は泰然としてあらゆる事象の
裡
(
うち
)
に形勢の機微を洞察せんとするもののごとく熟慮していた。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
私はこの事実の
裡
(
うち
)
に来るべき正しい文化の理念を感じる。廉価が粗悪を意味して来たのは、全く現代の社会制度の罪に過ぎない。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
かかる
艱苦
(
かんく
)
の
旅路
(
たびじ
)
の
裡
(
うち
)
にありて、
姫
(
ひめ
)
の
心
(
こころ
)
を
支
(
ささ
)
うる
何
(
なに
)
よりの
誇
(
ほこ
)
りは、
御自分
(
ごじぶん
)
一人
(
ひとり
)
がいつも
命
(
みこと
)
のお
伴
(
とも
)
と
決
(
きま
)
って
居
(
い
)
ることのようでした。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
それに、この慧の修行と言ふことは一面自己を執着の火の中、煩悩の炎の
裡
(
うち
)
、或は愛、或は慾、さういふ中に置いて見るといふことである。
自からを信ぜよ
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
野暮な女房を持ったばかりに亭主は人殺しをして
牢
(
ろう
)
へはいるという筋の芝居を見せて、女房の悋気のつつしむべき
所以
(
ゆえん
)
を無言の
裡
(
うち
)
に教訓し
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
されど財布をこそ人にやりつれ、さきに
兜兒
(
かくし
)
の
裡
(
うち
)
に入れ置きし「スクヂイ」二つ猶在らば、人々に取らせんものをと、かい探ぐるにあらず。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
九州帝国大学構内を包む春の夜の闇は、すさまじい動物どもの絶叫、悲鳴の
裡
(
うち
)
に、いよいよ
闃寂
(
げきじゃく
)
として
更
(
ふ
)
け渡って行くばかりで御座います。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
一度國に歸つてさうした異常な四周の
裡
(
うち
)
に置かるゝ樣になると、坂から落つる石の樣な加速度で新しい傾向に走つて行つた。
樹木とその葉:03 島三題
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
市役所から、ある大銀行の金網の
裡
(
うち
)
で、人間が金貨の山に埋まり血の気のない指で金勘定をしている、空気の流通のわるい暑い部屋の中まで。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
皇室は煩雑にして冷厳なる儀礼的雰囲気の
裡
(
うち
)
にとざされることによって、国民とは或る距離を隔てて相対する地位におかれ
建国の事情と万世一系の思想
(新字新仮名)
/
津田左右吉
(著)
これは或は佐藤氏自身は不用意の
裡
(
うち
)
に言つたことかも知れない。しかしこの言葉は或問題を、——「文章の口語化」と云ふ問題を含んでゐる。
文芸的な、余りに文芸的な
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
此は止むを得ないことで、父の
裡
(
うち
)
に保持されていたものは僅かに「こなし」とか「にくあい」とかのわが国彫刻技術の伝統に他ならなかった。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
裡
(
うち
)
には精根が尽き果て、周囲は一面に沙漠に囲まれて、この男はひっそりした台地を横切ってゆく途中でじっと立ち止った。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
「馬車が出ます/\」と、
炉火
(
ろくわ
)
を
擁
(
よう
)
して
踞
(
うづく
)
まりたる
馬丁
(
べつたう
)
の
濁声
(
だみごゑ
)
、闇の
裡
(
うち
)
より響く「吉田行も、大宮行も、今ま
直
(
すぐ
)
と出ますよ」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
私は夜の静けさの
裡
(
うち
)
に蘇える無心の
草木
(
そうもく
)
にも、敬虔な合掌の心持ちを覚える。青白い月光の流れが山荘の窓にしのび入る。
六甲山上の夏
(新字新仮名)
/
九条武子
(著)
そしてこの天幕の
裡
(
うち
)
を、夢の姿を以て満しましょう。
皆
(
みんな
)
に重い悲哀を
担
(
かつ
)
がせて、よろよろと行き悩ませてやりましょう。
チチアンの死
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
入江の奧より望めば舷燈高くかゝりて星かとばかり、燈影低く映りて
金蛇
(
きんだ
)
の如く。寂漠たる山色月影の
裡
(
うち
)
に浮んで
恰
(
あたか
)
も畫のやうに見えるのである。
少年の悲哀
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
彼女は年も六十に近く、すでに四十年の余もこの社会の女の髪を手がけ、気質や性格まで
呑
(
の
)
み込み、顔色で
裡
(
うち
)
にあるものを
嗅
(
か
)
ぎつけるのであった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
第二は、われわれを獲得する巨匠を発見すること、われわれの
裡
(
うち
)
にはいり込んで来た力を発見すること、これである。
ベートーヴェンの生涯:06 付録 ベートーヴェンへの感謝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
即ち全く生活様式の変った慣習の
裡
(
うち
)
に叩き込まれ、兵はその個性を失って軍隊の強烈な統制中の人となったのである。
戦争史大観
(新字新仮名)
/
石原莞爾
(著)
話が
逸
(
そ
)
れるが、いつも男女間の愛とさえ言えば、すぐ劣情とか痴情とか言って暗々の
裡
(
うち
)
に非難の声と共に葬り去ろうとする習慣を不快に思うと言い
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「まあお母さん、此の
矢絣
(
やがすり
)
のきれが出て来たぢやないの……。」と彼女はぼろきれの
裡
(
うち
)
からさもなつかしいものを見附けたやうに母親にかう云つた。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
そうは思ったものの、池の端の父親を尋ねてその平穏な生活を
目
(
ま
)
のあたり見ては、どうも老人の手にしている
杯
(
さかずき
)
の
裡
(
うち
)
に、一滴の毒を注ぐに忍びない。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
物象を静観して、これが喚起したる幻想の
裡
(
うち
)
自から心象の飛揚する時は「歌」成る。さきの「高踏派」の詩人は、物の全般を採りてこれを示したり。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
丁
(
ちやう
)
ど先頭の第一人が、三段を
一足飛
(
いツそくとび
)
に躍上ツて、入口の
扉
(
ドアー
)
に手を掛けた時であツた。扉を反對の
裡
(
うち
)
からぎいと
啓
(
あ
)
けて、のツそり入口に突ツ立ツた
老爺
(
おやぢ
)
。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
女は少しも驚いた様な顔を見せなかったが、心の
裡
(
うち
)
には不安と夫れを打消す心とが相次で起ったろうと想像された。
偽刑事
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
厳格清澄なかの女の母性の中核の外囲に、
匂
(
にお
)
うように、
滲
(
にじ
)
むように、傷むように、規矩男の
俤
(
おもかげ
)
はかの女の
裡
(
うち
)
に居た。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その青年時代を犯罪的な不節制の
裡
(
うち
)
に送り、老年に至って肉体の衰弱と精神の悔恨をその報いとして得たものは
人口論:03 第三篇 人口原理より生ずる害悪を除去する目的をもってかつて社会に提案または実施された種々の制度または方策について
(新字新仮名)
/
トマス・ロバート・マルサス
(著)
藤吉と彦兵衛は意味ありげに顔を見合ってしばらく上框に立っていたが無言の
裡
(
うち
)
に手早く用意を
調
(
ととの
)
えると、藤吉がさきに立って表の格子戸に手を掛けた。
釘抜藤吉捕物覚書:10 宇治の茶箱
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
こうした雰囲気の
裡
(
うち
)
に在っては、どんな結構な御馳走でも、おいしく頂かれるものではない。しかし私はともかく
箸
(
はし
)
を取って、供された
七種粥
(
ななくさがゆ
)
を食べた。
御萩と七種粥
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
裡
漢検準1級
部首:⾐
12画
“裡”を含む語句
庫裡
胸裡
脳裡
心裡
囲炉裡
暗々裡
内裡
懐裡
手裡
腦裡
夢裡
火裡
肚裡
禁裡仙洞
囲爐裡
掌裡
庫裡様
大内裡
懷裡
草裡
...