六甲山上の夏ろっこうさんじょうのなつ
薄紫の可憐な松虫草は、大空の星が落した花のような塵にもまみれず、爽やかな夏の朝を、高原のそこここに咲いていた。美しい糸を包んだ薄は日に/\伸びてゆき、山上の荘は秋もまだ訪ずれぬのに、昼さえ澄んだ虫の声をきくのであった。 海抜三千尺という山の …