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苛責
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かしゃく
ふりがな文庫
“
苛責
(
かしゃく
)” の例文
まあとおせんは
打
(
ぶ
)
たれでもしたように片手で頬を押えた。源六はそれを見て眉をしかめ、良心の
苛責
(
かしゃく
)
を受ける者のように眼を伏せた。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
……で、つい人様の口に乗り、さるお方の世話になったのが、そもそもこんな
苛責
(
かしゃく
)
と因果にしばられる間違いだったのでございました
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
苛責
(
かしゃく
)
が終わったのちに、道人は三人に筆と紙とをあたえて服罪の
口供
(
こうきょう
)
を書かせ、更に大きい筆を
執
(
と
)
ってみずからその判決を書いた。
世界怪談名作集:18 牡丹灯記
(新字新仮名)
/
瞿佑
(著)
善良な退屈なオイレル一家の人たちにたいして手きびしい振舞いをしたことを、彼は思い出しながらくすぐったいような
苛責
(
かしゃく
)
を感じた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
私
(
わたくし
)
はその
時
(
とき
)
、きっとこの
女
(
ひと
)
はこの
男
(
おとこ
)
の
手
(
て
)
にかかって
死
(
し
)
んだのであろうと
思
(
おも
)
いましたが、
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
こんな
苛責
(
かしゃく
)
の
光景
(
ありさま
)
を
見
(
み
)
るにつけても
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
▼ もっと見る
こう解釈した時、御米は恐ろしい罪を犯した悪人と
己
(
おのれ
)
を
見傚
(
みな
)
さない訳に行かなかった。そうして思わざる徳義上の
苛責
(
かしゃく
)
を人知れず受けた。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
今に見ろ、どんなに白々しい夫人でも、血で書いた青木淳の
忿恨
(
ふんこん
)
の文字に接すると、
屹度
(
きっと
)
良心の
苛責
(
かしゃく
)
に打たれて、女らしい悲鳴を挙げる。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
彼女は今、地獄の
苛責
(
かしゃく
)
に泣き叫ぶ一人の亡者であった。だが、亡者にしては、何とふてぶてしく張り切った肉塊であったろう。
地獄風景
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
死所を踏み違った未練者と多くの人に
嘲笑
(
わらわ
)
れたあげく、
屍
(
かばね
)
は野山に捨てられて鳥や獣の餌食となり、地獄へ堕ちても
苛責
(
かしゃく
)
の罪
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
良心の
苛責
(
かしゃく
)
になやまされるわけだが、何十分の一ぐらいの責任しかないのだから、あまり
恨
(
うら
)
むな怒るなと
了解
(
りょうかい
)
を求めている。
親は眺めて考えている
(新字新仮名)
/
金森徳次郎
(著)
康頼
侮辱
(
ぶじょく
)
されながら、しかも自殺できないほどの
苛責
(
かしゃく
)
がありましょうか。それは実に一種言いようのないわるい状態です。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
こん度の自殺は、良心の
苛責
(
かしゃく
)
の結果にきまっている。すべてが関聯しているじゃないか。すっかり
辻褄
(
つじつま
)
があうじゃないか?
犠牲者
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
磔柱
(
はりつけばしら
)
の罪人が引廻しの
状
(
さま
)
をさせて頂き、
路傍
(
みちばた
)
ながら
隠場所
(
かくればしょ
)
の、この山崩れの
窪溜
(
くぼたまり
)
へ参りまして、お
難有
(
ありがた
)
い
責折檻
(
せめせっかん
)
、
苛責
(
かしゃく
)
を頂いた儀でござります。
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その石牢の上の方には窓があって、重い罪人ですからその窓から食物を入れますので
苛責
(
かしゃく
)
をする時分にはその窓から出入をするようにしてある。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
餓
(
うえ
)
と
苛責
(
かしゃく
)
とに疲れ果てて、もはや助けを呼ぶ力もなく、わずかに顔を挙げて夢心地に、灯をかざしている救いの手の、誰彼の顔を眺めるのでした。
銭形平次捕物控:152 棟梁の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
裸体にされた幾組の男女が、かしこの岩石の上、こなたの熱泉のほとりに
引据
(
ひきす
)
えられている。
牛頭馬頭
(
ごずめず
)
に似た
獄卒
(
ごくそつ
)
が、かれ等に
苛責
(
かしゃく
)
の
鞭
(
しもと
)
を加えている。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
良心の
苛責
(
かしゃく
)
などというものも、要するところは、生の執着に過ぎぬかも知れない。こうも、彼は考えるのであった。
死の接吻
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
ロミオ
氣
(
き
)
は
狂
(
ちが
)
はぬが、
狂人
(
きちがひ
)
よりも
辛
(
つら
)
い
境界
(
きゃうがい
)
……
牢獄
(
らうごく
)
に
鎖込
(
とぢこ
)
められ、
食
(
しょく
)
を
斷
(
た
)
たれ、
笞
(
むちう
)
たれ、
苛責
(
かしゃく
)
せられ……(下人の近づいたのを見て)や、
機嫌
(
きげん
)
よう。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
そのときその良心の
苛責
(
かしゃく
)
さえ残らず打明けて逸作に代って担って貰うこともある。で、今の場合にも言った。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
或る言葉は言葉ではなくて一つの行為でもあり
苛責
(
かしゃく
)
でもあった。美しいつねるような苛責だった。さらに彼女は男というものの肉体の不思議さを思いえがいた。
花桐
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
藝術の世界で許されて居る「悪」を、一旦実行の方面に移すと、われわれはすぐに良心の
苛責
(
かしゃく
)
を受ける。
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そしてそのことにすこしも良心の
苛責
(
かしゃく
)
を感じてはいません。実際のところ僕はもう宗教には冷淡です。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
二人の子供はただ愛撫ばかりを受けた。コゼットは何をしても必ず不当な激しい
苛責
(
かしゃく
)
を頭上に浴びた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
やがて
阿母
(
おっかさん
)
が出て来た。沈着な阿母も、挨拶半に顔が劇しく
痙攣
(
けいれん
)
して、涙と共に声を呑んだ。彼は人の子を殺した
苛責
(
かしゃく
)
を劇しく身に受け、唯黙って辞儀ばかりした。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
反省に反省を重ねて、その
苛責
(
かしゃく
)
に悩むのがかれの癖である。彼はそれから詩を書く決心をした。かれの好みは幼年時より詩の方に向いていたのである。詩は書きたい。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
太刀
(
たち
)
の
柄
(
つか
)
に手をかけて、やはり後ろに下がっていた次郎は、平六のこのことばに、一種の
苛責
(
かしゃく
)
を感じながら、見ないようにして沙金の顔を横からそっとのぞいて見た。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
時経てから、源氏が出た或酒宴で、柏木も席に
列
(
つらな
)
っていたが、内心の
苛責
(
かしゃく
)
から、源氏に対して緊張した態度をとっている。其が
却
(
かえ
)
って源氏の心の底の怒りに触れて来る。
反省の文学源氏物語
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
良心の
苛責
(
かしゃく
)
のために気ちがいじみた有様になって、まさにそのためにベッドを離れられないような忠実で誠実な人間が、使用人たちのあいだにはいないというのだろうか。
変身
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
彼の心臓は良心の
苛責
(
かしゃく
)
といったようなもののためにちくりと刺されるような気もしたが、そんな感動はすぐ消えて、彼の心臓はまたもとのように規則正しく動悸を打っていた。
世界怪談名作集:03 スペードの女王
(新字新仮名)
/
アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン
(著)
あたかもかの士官が兵士を指揮するがごとく、かの不慈悲にして残忍なる官吏は
鉄鞭
(
てつべん
)
を揮い、これを
苛責
(
かしゃく
)
し、これを強迫し、なんの容赦かこれあらん。なんの会釈かこれあらん。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
お金持のM氏は、誰に預けたかを、そのまま追求もせず、
諦
(
あきら
)
めておられたようですが、ぼくは良心の
苛責
(
かしゃく
)
に、
堪
(
た
)
えられず、あなたへの愛情へ、ある影を、ずっと落すようになりだしました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
堅い口留をして、ふとそれ等の事をお鈴に
洩
(
もら
)
したお島は、それを又お鈴から聞いて、
宛然
(
さながら
)
姦通
(
かんつう
)
の
手証
(
てしょう
)
でも押えたように騒ぎたてる、隠居の病的な
苛責
(
かしゃく
)
からおゆうを
庇護
(
かば
)
うことに骨がおれた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
満員電車のつり皮にすがって、押され突かれ、もまれ、踏まれるのは、多少でも
亀裂
(
ひび
)
の入った肉体と、そのために薄弱になっている神経との所有者にとっては、ほとんど堪え難い
苛責
(
かしゃく
)
である。
電車の混雑について
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
また彼らは
渠
(
かれ
)
に
綽名
(
あだな
)
して、
独言悟浄
(
どくげんごじょう
)
と呼んだ。
渠
(
かれ
)
が常に、自己に不安を感じ、身を切刻む後悔に
苛
(
さいな
)
まれ、心の中で
反芻
(
はんすう
)
されるその
哀
(
かな
)
しい自己
苛責
(
かしゃく
)
が、つい
独
(
ひと
)
り言となって
洩
(
も
)
れるがゆえである。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
貴方
(
あなた
)
は一
生涯
(
しょうがい
)
誰
(
だれ
)
にも
苛責
(
かしゃく
)
されたことは
無
(
な
)
く、
健康
(
けんこう
)
なること
牛
(
うし
)
の
如
(
ごと
)
く、
厳父
(
げんぷ
)
の
保護
(
ほご
)
の
下
(
もと
)
に
生長
(
せいちょう
)
し、それで
学問
(
がくもん
)
させられ、それからして
割
(
わり
)
のよい
役
(
やく
)
に
取付
(
とりつ
)
き、二十
年以上
(
ねんいじょう
)
の
間
(
あいだ
)
も、
暖炉
(
だんろ
)
も
焚
(
た
)
いてあり
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
彼は、
苛責
(
かしゃく
)
の毒煙にまかれながら、わが子を呪う——怒る——責める——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
Fの涙は、いつの場合でも私には火の
鞭
(
むち
)
であり、
苛責
(
かしゃく
)
の暴風であった。
父の出郷
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
何時
(
いつ
)
かは……。私はお化けになれるものだろうか……。お化けは何も食べる必要がないし、下宿代にせめられる心配もない。肉親に対する感情。恩返しをしなければならないと云うつまらぬ
苛責
(
かしゃく
)
。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
しかしあの連中はどうです? ああした
苛責
(
かしゃく
)
が一体何になるのです。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
「どうです署長さん」なおも青谷は
苛責
(
かしゃく
)
の手を
緩
(
ゆる
)
めなかった。
人間灰
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
(兵卒らこの時
漸
(
ようや
)
く
饑餓
(
きが
)
を回復し良心の
苛責
(
かしゃく
)
に
勝
(
た
)
えず。)
饑餓陣営:一幕
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
それは
地獄
(
じごく
)
の
苛責
(
かしゃく
)
よりも葉子には
堪
(
た
)
えがたい事だ。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
苛責
(
かしゃく
)
と
懊悩
(
おうのう
)
に、のべつ追い廻されているように、彼は、死に場所を探し歩いた。だが、死を考えているうちは、まだ死ねなかった。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
長い間考えることに
苛責
(
かしゃく
)
の種となったので、パリーへ行ったら捜し出そうと、幾度みずから誓ったかわからなかった(第四巻反抗参照)。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
でも家に帰って、まだ旅行から帰ったまゝに、放り出してあったトランクを開いたとき、信一郎は可なり良心の
苛責
(
かしゃく
)
を感じた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
あゝわしの受けた
苛責
(
かしゃく
)
がどれほどのものだったか! わしはよい人間ではないかもしれない、だが、かほどの苛責がわしに相当しているだろうか。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
「その女は良人の良心を、地獄の
苛責
(
かしゃく
)
に逢わせようと、良人の殺した女の
嬰児
(
あかんぼ
)
の、泣き声を不断に聞かせる筈だ」
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
せめて、朝に晩に、この
身体
(
からだ
)
を
折檻
(
せっかん
)
されて、
拷問
(
ごうもん
)
苛責
(
かしゃく
)
の
苦
(
くるしみ
)
を受けましたら、何ほどかの罪滅しになりましょうと、それも、はい、後の世の地獄は恐れませぬ。
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
絶え間なき罪の
苛責
(
かしゃく
)
に責められて、どうかしてその地獄を逃れたいと、あせりもがくのでございます。
人でなしの恋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
愛スル相手ト逢ッタアトデ嫌イナ相手ト行ウヿハ、堪エラレナイ
苛責
(
かしゃく
)
デアルベキハズダガ、彼女ハ例外ナノデアル。彼女ガ僕ヲ拒ンデモ、彼女ノ肉体ハ拒ムヿヲ知ラナイ。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
苛
常用漢字
中学
部首:⾋
8画
責
常用漢字
小5
部首:⾙
11画
“苛”で始まる語句
苛
苛立
苛々
苛酷
苛烈
苛辣
苛斂誅求
苛苛
苛税
苛政