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芭蕉
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ばしょう
ふりがな文庫
“
芭蕉
(
ばしょう
)” の例文
十兵衛の部屋、又十郎の部屋、右門の部屋——こう一棟の下にいる兄弟たちの窓は、
芭蕉
(
ばしょう
)
の中庭を隔てて、三方から向い合っている。
柳生月影抄
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
芭蕉
(
ばしょう
)
はこのイデヤに対する思慕を指して「そぞろなる思い」と言った。彼はそれによって旅情を追い、奥の細道三千里の旅を歩いた。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
高谷君は彼のあとについて堤から十町ほども行くと、広い麻畑が眼の前にひろがって、
芭蕉
(
ばしょう
)
に似た大きい葉が西南の風になびいていた。
麻畑の一夜
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
多くは花瓶で、模様は人物とか鳥とか花とか船とか象とか
芭蕉
(
ばしょう
)
とか、色々のものを一パイに浮彫し、これに様々な色を差してある。
現在の日本民窯
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
後年
芭蕉
(
ばしょう
)
が
新
(
あらた
)
に
俳諧
(
はいかい
)
を興せしも
寂
(
さび
)
は「庵を並べん」などより
悟入
(
ごにゅう
)
し季の結び方は「冬の山里」などより悟入したるに非ざるかと
被思
(
おもわれ
)
候。
歌よみに与ふる書
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
▼ もっと見る
硝子戸
(
ガラスど
)
の
中
(
うち
)
から外を見渡すと、
霜除
(
しもよけ
)
をした
芭蕉
(
ばしょう
)
だの、赤い
実
(
み
)
の
結
(
な
)
った梅もどきの枝だの、無遠慮に直立した電信柱だのがすぐ眼に着くが
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
こういうすしが、いつごろからあったものかわからないが、
芭蕉
(
ばしょう
)
の『
猿蓑
(
さるみの
)
』に、どうもこれではないかと思われるものが顔を出している。
かぶらずし
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
芭蕉
(
ばしょう
)
が「たとえば
哥仙
(
かせん
)
は三十六歩なり、一歩もあとに帰る心なく、行くにしたがい、心の改まるはただ先へ行く心なればなり。」
映画芸術
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
が、日は無心に
木犀
(
もくせい
)
の
匂
(
にお
)
いを
融
(
と
)
かしている。
芭蕉
(
ばしょう
)
や
梧桐
(
あおぎり
)
も、ひっそりとして葉を動かさない。
鳶
(
とび
)
の声さえ以前の通り朗かである。
戯作三昧
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
東北地方を目標としての最も古い文学である
芭蕉
(
ばしょう
)
の『奥の細道』にいたしましても、僅かに二百四十年ばかり、徳川中期のことであります。
文学に現れたる東北地方の地方色:(仙台放送局放送原稿)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
今この手紙を書く時も、
宅
(
うち
)
のあの六畳の
部屋
(
へや
)
の
芭蕉
(
ばしょう
)
の陰の机に
頬杖
(
ほおづえ
)
つきてこの手紙を読む人の面影がすぐそこに見え候(中略)
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
どうせ太閤などには、風流の虚無などわかりっこないのだから、
飄然
(
ひょうぜん
)
と立ち去って
芭蕉
(
ばしょう
)
などのように旅の生活でもしたら、どんなものだろう。
庭
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
新茶屋に、馬籠の宿の一番西のはずれのところに、その
路傍
(
みちばた
)
に
芭蕉
(
ばしょう
)
の
句塚
(
くづか
)
の建てられたころは、なんと言っても徳川の
代
(
よ
)
はまだ平和であった。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
これは
芭蕉
(
ばしょう
)
の句であったろうか——はっきり判らないがこんなことを云いながら、復一の腕は伸びて、秀江の肩にかかった。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
廊下へ出て、
縁
(
へり
)
に
蘇鉄
(
そてつ
)
や
芭蕉
(
ばしょう
)
の植わった泉水の
緋鯉
(
ひごい
)
などを眺めていると、
褞袍姿
(
どてらすがた
)
のその男が、莨をふかしながら、側へ寄って来て話しかけた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それよりもさらに珍らしいのは、その鬼ヶ城の穴のすぐ隣に、もう一つ穴があって、是には
芭蕉
(
ばしょう
)
の糸の太い綱が下げてある。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ですからこの心眼を開けばこそ、私どもは、形のない形が見えるのです。心耳をすませばこそ、声なき声が聞こえるのです。俳聖
芭蕉
(
ばしょう
)
のいわゆる
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
このバショウの名は
芭蕉
(
ばしょう
)
から来たものだけれど、
元来
(
がんらい
)
芭蕉はバナナ類の名だから、右のように日本のバショウの名として用いることは反則である。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
周知のごとく
芭蕉
(
ばしょう
)
の「奥の細道」の冒頭であるが、これは大和古寺巡礼の際における私の御詠歌として選んだのである。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
漸
(
やっ
)
とこさと乗込んでから顔を出すと、跡から追駈けて来た二葉亭は
柵
(
さく
)
の外に立って、例の
錆
(
さび
)
のある太い声で、「
芭蕉
(
ばしょう
)
さまのお連れで危ない処だった」
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
緑
滴
(
した
)
たる
芭蕉
(
ばしょう
)
の葉かげに、若い男女が二人、
相擁
(
あいよう
)
しあって、愛を
囁
(
ささや
)
いているのです。それだけをみて、ぼくはくるりと引っ返し、競争を
廃棄
(
はいき
)
しました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
なぜなら散文は一句が独立した効果をあらわすことはなく、必ず前後の
文章
(
コンテクスト
)
に複雑な関係を残しているから。私は今、
芭蕉
(
ばしょう
)
の句に就てこれを説明しよう。
意慾的創作文章の形式と方法
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
大きな
棕梠
(
しゅろ
)
竹や、
芭蕉
(
ばしょう
)
や、カンナの植木鉢と、いろいろな
贅沢
(
ぜいたく
)
な恰好の長椅子をあしらった、金ピカずくめの部屋の中では、体格の立派な殿宮視学さんと
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
芭蕉
(
ばしょう
)
という人、よほど常識的なところばかりを生命とする人らしい。彼の書、彼の句がそれを説明している。
河豚は毒魚か
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
がさ/\、がさ/\と、近いが
行燈
(
あんどう
)
の灯は届かぬ座敷の入口、板廊下の隅に、
芭蕉
(
ばしょう
)
の葉を
引摺
(
ひきず
)
るやうな音がすると、
蝙蝠
(
こうもり
)
が
覗
(
のぞ
)
く
風情
(
ふぜい
)
に、人の肩がのそりと出て
貴婦人
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
芭蕉
(
ばしょう
)
、
芙蓉
(
ふよう
)
、
萩
(
はぎ
)
、
野菊
(
のぎく
)
、
撫子
(
なでしこ
)
、
楓
(
かえで
)
の枝。雨に打たれる
種々
(
いろいろ
)
な植物は、それぞれその枝や茎の強弱に従って
或
(
ある
)
ものは地に伏し或ものはかえって高く
反
(
そ
)
り返ります。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
キリストもシャカも
老子
(
ろうし
)
も
孔子
(
こうし
)
も
空海
(
くうかい
)
も
日蓮
(
にちれん
)
も
道元
(
どうげん
)
も
親鸞
(
しんらん
)
もガンジイも歩いた。ダヴィンチも
杜甫
(
とほ
)
も
芭蕉
(
ばしょう
)
も歩いた。科学者たちや医者たちも皆よく歩いています。
歩くこと
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
そうして私の言ったうちでは比較的「
牡丹
(
ぼたん
)
」「
芭蕉
(
ばしょう
)
」などがその感じに近いところがあると言いました。
俳句の作りよう
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
しかし
芭蕉
(
ばしょう
)
の木のかげにも、黒い岩のうしろにも、大砲が、するどい眼を光らしているのである。
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
さてそれより
塩竈
(
しおがま
)
神社にもうでて、もうこの
碑
(
ひ
)
、
壺
(
つぼ
)
の
碑
(
いしぶみ
)
前を過ぎ、
芭蕉
(
ばしょう
)
の
辻
(
つじ
)
につき、青葉の名城は日暮れたれば明日の見物となすべきつもりにて、知る人の
許
(
もと
)
に行きける。
突貫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
芭蕉
(
ばしょう
)
、フェニックスが生えている。町を通り抜けると、まただらだら坂となる。高くなるにつれて、風景はいよいよ鮮明に立体化して来る。湾内に小島がいくつか見える。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
裕佐は思わずこう嘆息をもらして破れ
芭蕉
(
ばしょう
)
の乱れている三坪ばかりの庭の方を向いた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
彼はなぜか
羞
(
はず
)
かしそうに、
芭蕉
(
ばしょう
)
をうえるのだといった。その理由はわからないがこの男の前で、いつもあらたに木を植えるときには、なぜか口ごもった
遠慮
(
えんりょ
)
がちな言い方をしていた。
生涯の垣根
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
芭蕉
(
ばしょう
)
の奥の細道の有名な句を引くまでもなく、これは誰にも一再ならず迫ってくる実感であろう。人生について我々が抱く感情は、我々が旅において持つ感情と相通ずるものがある。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
それは月並のつく
芋山水
(
いもさんすい
)
を描いたものでなく、いろいろの文字を寄せ書してある様子が異っているから、また少し枕の向きをかえて見直すと、一目でわかる旅姿の
芭蕉
(
ばしょう
)
の像を描いて
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
芭蕉
(
ばしょう
)
、
其角
(
きかく
)
、
嵐雪
(
らんせつ
)
などの
俳諧師
(
はいかいし
)
、また絵師では
狩野家
(
かのうけ
)
の
常信
(
つねのぶ
)
、
探信守政
(
たんしんもりまさ
)
、
友信
(
とものぶ
)
。浮世絵の
菱川吉兵衛
(
ひしがわきちべえ
)
、
鳥井清信
(
とりいきよのぶ
)
。
浄瑠璃
(
じょうるり
)
にも
土佐椽
(
とさのじょう
)
、
江戸半太夫
(
えどはんだゆう
)
など高名な人たちもたくさん出ている。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
英吉利旦那
(
イギリスマスター
)
のすばらしい自用車、あんぺらを着た
乞食
(
こじき
)
ども、外国人に舌を出す土人の子、路傍に円座して
芭蕉
(
ばしょう
)
の葉に盛ったさいごん米と
乾
(
ドライ
)
カレーを手づかみで食べている舗装工夫の一団
ヤトラカン・サミ博士の椅子
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
白堊
(
はくあ
)
の小学校。土蔵作りの銀行。寺の屋根。そしてそこここ、西洋菓子の間に詰めてあるカンナ
屑
(
くず
)
めいて、緑色の植物が家々の間から
萌
(
も
)
え出ている。ある家の裏には
芭蕉
(
ばしょう
)
の葉が垂れている。
城のある町にて
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
山は静かにして性をやしない、水は動いて情を慰む、静動二の間にして、住家を得る者あり、私は
芭蕉
(
ばしょう
)
の
洒落堂
(
しゃれどう
)
の記と云う文章の中に、このようにいい言葉があると与一に聞いた事がある。
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
家へも来るが、両国広小路——電車道路となったが——の、両国橋にむかって右側に、「
芭蕉
(
ばしょう
)
」という大きな薬種屋があって、芭蕉の葉が一葉大きく青く彫刻した看板が棟にあげてある店だった。
旧聞日本橋:12 チンコッきり
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
芥川は
芭蕉
(
ばしょう
)
の門人で長江と同じ病気を
患
(
わずら
)
っていた
森川許六
(
もりかわきょりく
)
の例を引き
文壇昔ばなし
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
歌人も多いが西行くらい人気のあるのは特別で、俳人
芭蕉
(
ばしょう
)
などと同じく、歌のよしあしなどは第二であって、人間の親しめるというような、文学以前、歌以前のものが人に感じられるからである。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
右の方で目立つのは
芭蕉
(
ばしょう
)
でした。
僅
(
わず
)
かの間にすくすくと伸び、巻葉が解けて
拡
(
ひろ
)
がる時はみずみずしくて、
心地
(
ここち
)
のよいものです。花が咲いて
蓮華
(
れんげ
)
のような花弁が落ちますと、拾って
盃
(
さかずき
)
にして遊びました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
芭蕉
(
ばしょう
)
好み、そんな景色だ。
隠亡堀
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その晩宗助は裏から大きな
芭蕉
(
ばしょう
)
の葉を二枚
剪
(
き
)
って来て、それを座敷の縁に敷いて、その上に御米と並んで
涼
(
すず
)
みながら、小六の事を話した。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それはまた
木蔦
(
きづた
)
のからみついたコッテエジ風の西洋館と——殊に
硝子
(
ガラス
)
窓の前に植えた
棕櫚
(
しゅろ
)
や
芭蕉
(
ばしょう
)
の
幾株
(
いくかぶ
)
かと調和しているのに違いなかった。
悠々荘
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
芭蕉
(
ばしょう
)
や
広重
(
ひろしげ
)
の世界にも手を出す手がかりをもっていない。そういう別の世界の存在はしかし人間の事実である。理屈ではない。
科学者とあたま
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
先ず日本で言えば、
芭蕉
(
ばしょう
)
や、
人麿
(
ひとまろ
)
や、
西行
(
さいぎょう
)
やが、そうであった。彼等は人生の求道者であり、生涯を通じてのロマンチックな旅行家だった。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
各部将は、それぞれの位置に、陣小屋を構え、
椰子
(
やし
)
の葉を
葺
(
ふ
)
いて屋根とし、
芭蕉
(
ばしょう
)
を敷いて
褥
(
しとね
)
とし、毎日の炎天をしのいでいた。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それも東大の文学部に入り、国文学を専攻、卒業論文には「
芭蕉
(
ばしょう
)
の研究」というのを書いたのだから、少し念が入っている。
日本のこころ
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
芭
漢検準1級
部首:⾋
7画
蕉
漢検準1級
部首:⾋
15画
“芭蕉”で始まる語句
芭蕉翁
芭蕉布
芭蕉扇
芭蕉実
芭蕉葉
芭蕉庵
芭蕉亭
芭蕉忌
芭蕉紙
芭蕉布地