しめ)” の例文
みそはぎそばには茶碗ちやわんへ一ぱいみづまれた。夕方ゆふがたちかつてから三にん雨戸あまどしめて、のない提灯ちやうちんつて田圃たんぼえて墓地ぼちつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
二人が眼をさましたのを見ると、お父さんとお母さんは一時に二人を抱きしめて喜ばれました。そうしてこう云われました。
雪の塔 (新字新仮名) / 夢野久作海若藍平(著)
「ハア、皆内側からネジがしめてありました。それに窓の外の地面には、丁度雨のあとで柔かくなっていましたけれど、別に足痕あしあともないのでございます」
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
年頃としごろ廿一二の女惣身そうしん打疵うちきずおほくしてころし候樣子に相見申候尤も衣類いるゐ紬縞小袖つむぎじまこそで二枚を着し黒純子くろどんすりう模樣もやう織出おりだしの丸おびしめ面部めんぶまゆひだりの方にふるきずあと相見あひみえ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「これから寒くなりますと、しめっきりにしなくてはなりませんが、まだ今は見晴しがよろしゅうございますわ」
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
っと風が吹くと路次は六ツかぎりに木戸をしめっちまうんで湯が早く抜けちまっても困らア職人は、の親父は腰が抜けてるてえからおらア可哀想でならねえ
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
時々咽喉のどでもしめられるように、消魂けたたましく唁々きゃんきゃんと啼き立てる其の声尻こわじりが、やがてかぼそく悲し気になって、滅入るように遠い遠い処へ消えて行く——かとすれば
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
しめますよ昨日も油断して独言をいって居た所ろ後で見れば小使が廊下を掃除しながら聞て居ました
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
このしま出發しゆつぱつしたらもうしめたものだ、一時間いちじかん百海里ひやくかいり前後ぜんご大速力だいそくりよくは、印度洋インドやう横切よこぎり、支那海シナかいぎ、なつかしき日本海につぽんかい波上はじやうより、あほいで芙蓉ふえうみねはいすることとほことではあるまい。
あゝあのこゑ旦那樣だんなさま、三せん小梅こうめさうな、いつののやうな意氣いき洒落しやれものにたまひし、由斷ゆだんのならぬとおもふとともに、心細こゝろほそことえがたうりて、しめつけられるやうなるしさは
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
自分はこの時長蔵さんから、最初に三本、あとから一本しめて五本、前後二回に受取ったと記憶している。そうしてそれをなつかしげに食いながら、いよいよ宿外しゅくはずれまで来るとまた一事件ひとじけん起った。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかも、金巾カナキンのポッサリした兵児帯へこおびしめて、ダラリとしりへ垂らしている。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
片手に喉をしめつけて、片手で月江の口をふさぎました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分は唯その総体のしめて何々と云う数を見るばかり。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そのために羽織の紐の付処つけどころしめ加減に巧な手加減がしてあって、どことなく洋服の感じが取り入れてあるように見える。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
遣はして死骸を能々檢査あらためさせしに其の死せし體自身に首をしめたるに相違なし其上家主惣長家の者一同の申處皆菊を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
彼等はきわめて綺麗きれいにひげをそって、つるつるした顔をしていた。縞の着物に角帯などしめているのが多かった。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しろ蒸氣ゆげかまふたからいきほひよくれてやがてかれてからおつぎはおこされる。おびしめまゝよこになつたおつぎは容易よういかないをこすつて井戸端ゐどばたく。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いもんじゃア有りやせんが銘仙かなんかの着物が出来ておつな帯をしめましたよ、なりをすると結髪むすびがみで働いて居る時よりゃア又く見えるね、内々ない/\魚などを買って喰う様子でげすぜ
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お見かけの通り黒っぽい木綿着物に白木綿の古兵児帯へこおびしめて、頭髪あたま蓬々ぼうぼうとさしておりますから、多少けて見えるかも知れませぬが、よく御覧になりましたならば
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
おりくつ穿はきて立出ける其衣服は葵の紋を織出したる白綾しろあやの小袖を着用し其下に柿色かきいろ綾の小袖五ツを重ね紫きの丸帶まるぐけしめ古金襴の法眼袴を穿ち上には顯文紗けんもんしや十徳を着用し手に金の中啓ちうけい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「おつう、せかねえでもえゝぞ、今朝けさすこ工合ぐえゝわりいからゆつくりすつかんなよ」おしなはいつた。おつぎはしばらくもぢ/\しながらおびしめ大戸おほどを一まいがら/\とけてをこすりながらにはた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
紋三も彼女の一方の手を握りしめて物をいわなかった。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)