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称
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とな
ふりがな文庫
“
称
(
とな
)” の例文
旧字:
稱
紫玉は我知らず
衣紋
(
えもん
)
が
締
(
しま
)
った。……
称
(
とな
)
えかたは
相応
(
そぐ
)
わぬにもせよ、
拙
(
へた
)
な山水画の
裡
(
なか
)
の隠者めいた老人までが、確か自分を知っている。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
俗に芸術家と
称
(
とな
)
へられる近代的伝説製造業者の造つた架空の人物をも加へるのである。カイゼル・ウイルヘルムを軽蔑するのは好い。
僻見
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
初めのうちは、その唇だけのものだったが、いつのまにか、唇の声は
失
(
う
)
せて、その胸の
奥所
(
おくか
)
にあるたましいが、
称
(
とな
)
えているのだった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ラッバダブ・ラツバダブでも別段に反対の
称
(
とな
)
へようもない——まつたく私は藤村の寝言の叫びを“Hurrah!”と聞いたのである。
環魚洞風景
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
彼等は、既に
中原
(
ちゅうげん
)
に覇を
称
(
とな
)
えて居た信長と、海道第一の家康の連合軍が、敗れ難い陣容と準備とをもって来ったのを見抜いて居た。
長篠合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
珍らしい物、珍らしいことを、何よりも好んでいた江戸の人々は大作の放れ業を、大胆さを、
渇仰
(
かつごう
)
して、超人のように
称
(
とな
)
え出した。
三人の相馬大作
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
平次が月の庭へ手を合せて拝むと、お駒も、佐吉も、ガラッ八も、釣られたように、念仏を
称
(
とな
)
えて、白々とした庭を眺めやるのでした。
銭形平次捕物控:021 雪の精
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
狂言の文左衛門は、この頃遊所で香以を今紀文と
称
(
とな
)
え出したに
因
(
ちな
)
んで、この名を
藉
(
か
)
りて香以を写したものである。東栄は牧冬映である。
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
すべてで九人いるので、
自
(
みずか
)
ら九人組とも
称
(
とな
)
えていた。その九人組が丸裸になって幅六尺の
縁側
(
えんがわ
)
へ出て踊をおどって一晩
跳
(
は
)
ね廻った。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
不服を
称
(
とな
)
ふる者も出て来て、現に明治年間には大審院、控訴院、宮内省等に対して申理を求めんとした人さへあつたほどである。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
此頃になって、仲麻呂の威勢が高まって来たので、何となく其古い通称は、人の口から薄れて、其に替る
称
(
とな
)
えが、行われ出した様だった。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
他の地方ではセコともハザマともクボとも
称
(
とな
)
えている。クマまたはフクラは川の岸がいったん狭まってまた広くなる一部分の地名である。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
漢字節減なぞ
称
(
とな
)
ふる人あれどそれは社会一般の人に対して言ふ事にて小説家には当てはまらず。凡そ物事その道々によりて特別の修業あり。
小説作法
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
その二冊の外に「俳諧談」と
称
(
とな
)
える小篇も
添附
(
てんぷ
)
されているのであるが、その「俳諧談」の中にこういう意味の事がいってある。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
古美術の本を携えて夢殿見物に出かける人は多いが、たとえば
親鸞
(
しんらん
)
の太子奉讃の和讃を心に
称
(
とな
)
えつつ
参詣
(
さんけい
)
する人は
稀
(
まれ
)
であろう。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
それを見るとクララは
咽
(
む
)
せ入りながら「アーメン」と心に
称
(
とな
)
えて十字を切った。何んという貧しさ。そして何んという慈愛。
クララの出家
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
ニュートンは物体から微粒子が飛んで来るのが光だと考えたが、ハイゲンスが出て来て波動説を
称
(
とな
)
えこれが承認されるに幾多の年月がかかった。
研究的態度の養成
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
夥
(
おびただ
)
しい宝石類やエスキリネの鏡と
称
(
とな
)
える数千年来の名宝の鏡、花瓶等……しかしそうまで姫を煩わすに忍びず、我らはこれを辞退いたしました。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
ヴィッカアス時代というのは、今の大ホオルの後にあるヴィッカアスと
称
(
とな
)
えられる小さな独立会館が、文科の教室になっていた時代のことである。
芝、麻布
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
人間は或は現実を唱へ、或は夢想を
称
(
とな
)
へて、之を以て調和す可からざる原素の如く
諍
(
あらそ
)
へる間に、天地の幽奥は依然として大なる現実として残れり。
一夕観
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
これは今では凝結器と
称
(
とな
)
えているものです。この方法で蒸気はよそで冷えることになりますから、気筒の温度は下らないですむことになりました。
ジェームズ・ワット
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
年立つ朝の水はどこでも若水と
称
(
とな
)
えるが、この井戸はまた格別である。
溢
(
あふ
)
れやまぬ水は絶えず井桁を越して外へ落ちる。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
支那においても、古代に法と称し律と
称
(
とな
)
えたものは、殆んど刑法ばかりであるし、成典の存するものも、また刑法の範囲内で最も発達したのである。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
庄司氏を罵って姦謀(官房)主事と
称
(
とな
)
えたなどはその一つの現われで、官憲も狂人としては扱わなかった所以である。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
愈々
(
いよいよ
)
この葬列が繰り出すと、同時に
棺舁
(
かんか
)
きの六人ばかりの口から念仏の声が前後相呼応して高らかに
称
(
とな
)
え出される。
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
榴
(
つつじ
)
ヶ岡
(
おか
)
隊と
称
(
とな
)
えられて黒木第一軍に属し、初陣の
鴨緑江
(
おうりょっこう
)
の渡河戦に快勝し、つづいて遼陽戦に参加して大功を
樹
(
た
)
て
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ごく
大
(
おお
)
まかに
言
(
い
)
ったら、
人間
(
にんげん
)
の
世界
(
せかい
)
で
天然現象
(
てんねんげんしょう
)
と
称
(
とな
)
えて
居
(
い
)
るものは、
悉
(
ことごと
)
く
竜神
(
りゅうじん
)
の
受持
(
うけもち
)
であると
思
(
おも
)
えばよいであろう。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
山中はいつものごとく御看病と
称
(
とな
)
えて。なにか浜子のへやにてしきりに咄しさい中なり。勤は帰朝以来何か感ずるところありて。
懊悩
(
おうのう
)
として心楽しまず。
藪の鶯
(新字新仮名)
/
三宅花圃
(著)
何か呪文を
称
(
とな
)
えるように、四五たび吹きました。すると、それを聞きつけて、灰色の頬鬚を生やした鼠が、眼をきらきらさせて、穴から顔を出しました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
松葉の枯れ落ちた中に僅かに数本の黄しめじと、
牛額
(
うしびたい
)
としか得られなかった。それから笹の葉の間なぞを分けて「
部分木
(
ぶぶんぼく
)
の林」と
称
(
とな
)
える方に進み入った。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
○本文のオムレツはオムレツソフレーと
称
(
とな
)
う。普通のオムレツは玉子へ塩胡椒を入れて
能
(
よ
)
く掻き混ぜ強火にて中身は半熟表面は薄こげの加減に焼くなり。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
例へば着物の縞などは
殊
(
こと
)
に細かきを貴ぶ人多く、しかもその月並たるを知らざるのみならずかへつて縞柄の大きく明瞭なるを以て俗と
称
(
とな
)
ふるが如きあり。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
早稲田大学がかつて東京専門学校と
称
(
とな
)
えた以来ここに三十有七年、初めこの学校を起したところの学問の独立という主義は今日に至るも少しも変化はない。
始業式訓示
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
この
僧侶
(
そうりょ
)
を
別当
(
べっとう
)
と
称
(
とな
)
え、神主の方はむしろ別当従属の地位にいて坊さんから
傭
(
やと
)
われていたような有様であった。
幕末維新懐古談:31 神仏混淆廃止改革されたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
ですからいちばんはじめには、日本のことを、
大八島国
(
おおやしまぐに
)
と
呼
(
よ
)
び、またの名を
豊葦原水穂国
(
とよあしはらのみずほのくに
)
とも
称
(
とな
)
えていました。
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
わが
邦
(
くに
)
にも諸職各々
忌詞
(
いみことば
)
あって、『
北越雪譜
(
ほくえつせっぷ
)
』に
杣人
(
そまびと
)
や猟師が熊狼から女根まで決して本名を
称
(
とな
)
えぬ例を挙げ
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
別々に立たせるのを主張する人もあったが、ぼくは、『厳粛なる
自由
(
スタアンリバティ
)
』を
称
(
とな
)
え、笑って、その議論を
一蹴
(
いっしゅう
)
した。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
これは油絵の技術にのみよっている画家たちの中には
尠
(
すくな
)
いようだが目下の日本絵の材料によっている人たちの中には、かなり
称
(
とな
)
えられている処の事柄である。
油絵新技法
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
早坂新道と村の人が
称
(
とな
)
へたのはこの新道である。この新道は僕の生れるずつと前に開通されたものだが、連日の
人足
(
にんそく
)
で村の人々の間にも不平の声が高かつた。
念珠集
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
ミハイロは
大人
(
おとな
)
しく言ふ事を聴いて静かになつたが、何だか悲しかつたので、お経の文句を
称
(
とな
)
へてゐた。
椋のミハイロ
(新字旧仮名)
/
ボレスワフ・プルス
(著)
津の守の坂下、右手の方は昔は蓮池と
称
(
とな
)
えた。私は蓮を見た記憶はないが、恐らく池はあったであろう。
四谷、赤坂
(新字新仮名)
/
宮島資夫
(著)
「命終らんとする時に臨み、合掌
叉手
(
さす
)
して南無阿弥陀仏と
称
(
とな
)
へしむ。仏の名を称ふるが故に、五十
億劫
(
おくこふ
)
の生死の罪を除き、化仏の後に従つて、宝池の中に生る。」
美の日本的源泉
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
それ故この絵附をまた念仏に
譬
(
たと
)
えてもよいでありましょう。念仏にも色々ありましょうが、誰も知るのは「
南無阿弥陀仏
(
なむあみだぶつ
)
」の六字の
名号
(
みょうごう
)
を
称
(
とな
)
えることであります。
益子の絵土瓶
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
病人らしい血色をした、女中を連れたお
婆
(
ばあ
)
さんがいたが、これは間もなく口のうちで念仏を
称
(
とな
)
え出した。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一座は化石したようにしんとしてしまって、鼻を
去
(
か
)
む音と、雇い婆が忍びやかに題目を
称
(
とな
)
える声ばかり。
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
睡眠はむしろ死の部に含まれているがごとくに
称
(
とな
)
えられるが、僕は繰り返していいたい、睡眠の時間も、その間に結ばるる夢も、人生の一部をなすものであると。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
今日では「ゴムうなり」が出来たようだ。それからこの「うなり」を、凧よりも長いのを付けると、昔江戸などでは「おいらん」と
称
(
とな
)
えて田舎式としたものである。
凧の話
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
それは丁度イバラ科のズミと
称
(
とな
)
うる樹と同じ名で、このズミの樹はその樹皮を染料に使うものである。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
見ると女は、口先だけで、神の名を
称
(
とな
)
え、そしてその眼は、仏天青の眼に、じっと
注
(
そそ
)
がれていた。
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
この笠松はその昔「
葦
(
あし
)
の
洲
(
す
)
」と
称
(
とな
)
えた
蘆荻
(
ろてき
)
の三角洲で、氾濫する大洪水の
度
(
たび
)
ごとにひたった。この
狐狸
(
こり
)
の
巣窟
(
そうくつ
)
を
発
(
あば
)
いて初めて
拓
(
ひら
)
いたのが
三
(
み
)
ツ
家
(
や
)
の漂流民だと伝えている。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
称
常用漢字
中学
部首:⽲
10画
“称”を含む語句
呼称
称名
称讃
通称
称呼
名詮自称
対称
詐称
僣称
並称
名称
称翫
称徳
讃称
相称
土人称破鐙坂
称讃浄土仏摂受経
称賛
僭称
称揚
...