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瞑
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つむ
ふりがな文庫
“
瞑
(
つむ
)” の例文
隠密がもし召し捕られた場合には眼を
瞑
(
つむ
)
って責め殺されるか、但しは自殺するか破牢するか、三つに一つを選むよりほかはないので
半七捕物帳:33 旅絵師
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
若奥様が片膝ついて、その燃ゆる火の袖に、キラリと光る
短銃
(
ピストル
)
を構えると、先生は、両方の膝に手を垂れて、目を
瞑
(
つむ
)
って立ちました。
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
じっと目を
瞑
(
つむ
)
って、仰向いて、観念して、流れるままに、この截断刃の下を、こうして粛々として遣り過ごされて、じゅう……うう。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
少いときでも、ぐったり首垂れた鳩や山鳥が
瞼
(
まぶた
)
を白く
瞑
(
つむ
)
っていた。父が猟に出かける日の前夜は、
定
(
きま
)
って母は父に小言をいった。
洋灯
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
友木の眼には涙がにじみ出た。彼はそれを払い
退
(
の
)
けるように、眼を
瞑
(
つむ
)
って頭を振ったが、彼の握りしめた
拳
(
こぶし
)
は興奮の為にブルブル顫えた。
罠に掛った人
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
▼ もっと見る
裁判官は
錆
(
さび
)
のある声で
厳
(
おごそ
)
かに言った。そして、法の鏡に映る湯沢医師の言葉の真意を
探
(
さぐ
)
ろうとの誠意を
罩
(
こ
)
めて静かに眼を
瞑
(
つむ
)
った。
或る部落の五つの話
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
眼を
瞑
(
つむ
)
って頭を一つ振れば、曳舟が曳かれて行くあの蒸汽船から曳綱を外ずしたように前途の慾望から直ぐ自分を切り放つことが出来るし
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
考えてみたまえ。僕なんか、
凝
(
じ
)
っとこう目を
瞑
(
つむ
)
ればそれで解決はもうついている。哲学なんかいらない。僕のさとりはこれだ
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
浜中屋のお菊ちゃんが笛の
上手
(
うま
)
いのは、天才でもあったが、一つは、病身のせいでもあった。露八は眼を
瞑
(
つむ
)
って笛の音を聞いているとすぐに
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
然し
此時
(
このとき
)
の位、何も彼もなくたゞ無暗にもう死にたくなつて、呼吸もつかずに目を
瞑
(
つむ
)
る程心細いと思つた事はありません。
雲は天才である
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
さすがの僕も、今度こそは、
怖
(
おそ
)
ろしくなって眼を
瞑
(
つむ
)
った。氷山と鯨は、刻々にその距離を狭めていくようだ。
万事休矣
(
ばんじきゅうす
)
?
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
左手に持ったは黄金の杖で、そうして右手に抱えたは、死んでいるのか気絶しているのか、両眼を
瞑
(
つむ
)
ってグッタリと、延びている乙女の体である。
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その場に立ち
竦
(
すく
)
んでしまうのであるが、それには、どんなに固く眼を
瞑
(
つむ
)
り、頭の中にもみ込んでしまおうとしても、結局その悪夢のような恐怖だけは
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
瞑
(
つむ
)
ってそのお話しを聞いておいで遊ばせば、本当に御自分がその場においでになってその事を見たり聞いたりしておいで遊ばすのと同じ事で御座います
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
頭のかたちは円く眼は
瞑
(
つむ
)
り口唇は堅く
噛
(
か
)
みしめて歯を
喰
(
く
)
いしばっているようなもの、都合五つの心像を写し取った。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
私
(
わたくし
)
は
立
(
た
)
ちながら
眼
(
め
)
を
瞑
(
つむ
)
って
見
(
み
)
ると、
間
(
ま
)
もなく
眼
(
め
)
の
底
(
そこ
)
に
頭髪
(
かみ
)
の
真白
(
まっしろ
)
な、
痩
(
や
)
せた
老人
(
ろうじん
)
の
姿
(
すがた
)
がありありと
映
(
うつ
)
って
来
(
き
)
ました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
この文句は何から採っただろうと、『淵鑑類函』四二五、鶏の条を探ると、〈
王褒
(
おうほう
)
曰く、魚瞰鶏睨、李善
以為
(
おも
)
えらく魚目
瞑
(
つむ
)
らず、鶏好く邪視す〉とある。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
知恩院の境内で亡くならないで東京の町のなかで目を
瞑
(
つむ
)
つたのは博士がせめてもの本望だつたかも知れない。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
始めに入れておいただけの物が
煮爛
(
にただ
)
れ煮固まっているに過ぎないだろうとしか思われない。しかし私はその鍋の底に溜った
煎汁
(
せんじゅう
)
を眼を
瞑
(
つむ
)
って呑み干そうと思う。
厄年と etc.
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そして振り払うように眼を
瞑
(
つむ
)
って、雪になるらしく曇った夜の空に、幾度も顔を仰向けねばならなかった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
乃公は目を
瞑
(
つむ
)
って、
主
(
しゅ
)
の祈りをした。獅子は矢張り
旧
(
もと
)
の姿勢である。乃公は主の祈りを五六度した。おやッと思って目を開いて見ると、獅子は乃公の額を
甞
(
な
)
めていた。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
Kさんの時なんか今目を
瞑
(
つむ
)
るという間ぎわまでも死神だとか何だとかそんなことは言わなかったようですがねえ、そう言ってはなんでしょうが兄さんは少しその禅の方へ
父の出郷
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
一杯飮んでは耳に手をあて、一杯飮んでは眼を
瞑
(
つむ
)
つた。二三本も飮んだが、一向に醉はない。
梅雨紀行
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
「これで
鳧
(
けり
)
がつきゃあ、三尺高え木の空がお繩知らずに眼え
瞑
(
つむ
)
ったんだからお天道様あねえも同然。ところがそれ、古いやつだがよくしたもんで、そうは問屋じゃ卸さねえ。」
釘抜藤吉捕物覚書:04 槍祭夏の夜話
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
瞑
(
つむ
)
った眼の周囲に苦しそうな深い
皺
(
しわ
)
を寄せ、口を堅く閉じ、じっとしていられずに、大きな枕の中で頭をじりじり動かしている。身体には、もうほんの少しの肉も残されていない。
斗南先生
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「その気があるなら、生涯アチラに居ッても差支えない。俺が死んだからとて、帰国するには及ばん。貴様の行末が気にかかって、眼を
瞑
(
つむ
)
れぬなんてエのは、マー俺にはないことだ」
湖畔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
時間を
極
(
き
)
めて、例えば何時何分に鐘を打くと十分ばかりの間寄宿舎にいる生徒が動きもせず物も言わず、ヨシ話をしておってもその鐘を聞くと黙って本を伏せて、あるいは目を
瞑
(
つむ
)
り
教育家の教育
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
兄が高圧的に
釣竿
(
つりざお
)
を担がしたり、
魚籃
(
びく
)
を提げさせたりして、釣堀へ随行を命ずるものだから、まあ目を
瞑
(
つむ
)
ってくっついて行って、気味の悪い
鮒
(
ふな
)
などを釣っていやいや帰ってくるのです。
私の個人主義
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
事情が何も分った訳ではないが、女の
魂魄
(
たましい
)
とする鏡を売ろうとするに臨みての女の心や其事情がまざまざと
胷
(
むね
)
に浮んで来て、定基は闇然として眼を
瞑
(
つむ
)
って打仰いで、堪えがたい哀れを催した。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
語らないか——と僕が、静かに目を
瞑
(
つむ
)
りながら
徐
(
おもむ
)
ろに首を
傾
(
かし
)
げると彼は
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
私の歌も終るだらう 私は眼を
瞑
(
つむ
)
る 翼をたたんで 脚を踏ん張つて
閒花集
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
親王のお首は刃を喰はへたまんま眼を何時までも
瞑
(
つむ
)
られなかつた……
滑川畔にて
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
「大殿さまより下情に通じておいでなんだわ、きっとなにもかも御存じなのよ、なにもかも」或る一人はこう云って悩ましそうに眼を
瞑
(
つむ
)
った。「ええなにもかもよ、わたし胸がどきどきしてきたわ」
若殿女難記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼女は眼を
瞑
(
つむ
)
りよろめいた。佃はあわてて彼女を支え、横わらせた。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
些の理解もない人々の中に立ちまじつて目を
瞑
(
つむ
)
つて物質的の、
若
(
も
)
しくは団体的の安逸に耽るよりは、少しでも多く、自分を理解して呉れる人々と共に苦しい、辛い生を、続ける方が、いくらいゝか……
日記より
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
浅黒かった皮膚の色が、
蚕児
(
かいこ
)
のような蒼白さをもって、じっと目を
瞑
(
つむ
)
っている時は、石像のように気高く見えた。髪も短く刈り込まれてあった。先生が睡りに沈んで来ると、
衆
(
みんな
)
は次の室へ引き揚げた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
目を
瞑
(
つむ
)
って私につかまっていてくださいと言うと、すなおにその通りにしていて、ほどなく
金碧
(
きんぺき
)
光り
耀
(
かがや
)
く
常世
(
とこよ
)
の浜に到着した、という
風
(
ふう
)
にも語ることになっていて、それをさも有りなんと息を
詰
(
つ
)
めて
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
と仰向けに目をぐっと
瞑
(
つむ
)
り、口をひょっとこにゆがませると、所作の棒を
杖
(
つえ
)
にして、コトコトと床を鳴らし、めくら
反
(
ぞ
)
りに胸を反らした。
開扉一妖帖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「解りました。」ツて頭を下げましたが、返事がない。見ると、天野君は兩膝に手をついて、
俯向
(
うつむ
)
いて目を
瞑
(
つむ
)
つてました。
雲は天才である
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
その碑の前には一人の質素な服装の
独逸
(
ドイツ
)
人の青年が、膝まずいて両手を
確
(
しっ
)
かり組み合せ、それを胸の前で
頻
(
しき
)
りに振り廻していた。眼は
瞑
(
つむ
)
っていた。
褐色の求道
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そうして、その団十郎が眼を
瞑
(
つむ
)
ると直ぐにそのあと釜を狙って乗込んで来るとは
怪
(
け
)
しからぬ奴であるというのであった。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
何もかも、人間の
皺
(
しわ
)
を製造するために出来てるのだ。——ドアーが開いた。誰でもいい。参木は眼を
瞑
(
つむ
)
ったまま動かなかった。空気が幅広い圧力で動揺した。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
急に室の内は寂しくなつたので、丑松は冷い鉄の柱に
靠
(
もた
)
れ乍ら、眼を
瞑
(
つむ
)
つて
斯
(
こ
)
の意外な
邂逅
(
めぐりあひ
)
を思ひ浮べて見た。慾を言へば、何となく丑松は物足りなかつた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
その一瞬間、私はこの少年の美しさで全神経を
蔽
(
おお
)
われたような気がして眼を
瞑
(
つむ
)
ったが、やがて又見開いて見ると、少年はいつの間にか伏目勝ちにうなだれていた。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
落城後
(
らくじょうご
)
間
(
ま
)
もなく、
城跡
(
しろあと
)
の一
部
(
ぶ
)
に
三浦
(
みうら
)
一
族
(
ぞく
)
の
墓
(
はか
)
が
築
(
きず
)
かれましたので、
私
(
わたくし
)
は
自分
(
じぶん
)
の
住居
(
じゅうきょ
)
からちょいちょい
墓参
(
ぼさん
)
をいたしましたが、
墓
(
はか
)
の
前
(
まえ
)
で
眼
(
め
)
を
瞑
(
つむ
)
って
拝
(
おが
)
んで
居
(
お
)
りますと
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
星は一つ一つ、東空から天頂にかけて消え行ったが、それが三つになったとき、ふと妙な迷信的な考えに襲われた。滝人は、後の一つを見まいとして、眼を
瞑
(
つむ
)
った。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
何時のまに如何なる機械によって、かくもすべすべとなまなまと、木地も
露
(
あら
)
わにめくられ引きむしられたかそれはわからぬ。その
生肌
(
きはだ
)
が目を
瞑
(
つむ
)
って来る、仰向いて、観念して。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
『負傷者は、二十二名でござりまする。——
傷
(
いた
)
ましいのは、
春斎
(
しゅんさい
)
というわずか十四歳の小坊主が、よう働いたそうで、ただ一太刀に斬られて、
敢
(
あえ
)
なく眼を
瞑
(
つむ
)
っておりまするので』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
僕は、眼を
瞑
(
つむ
)
った。と、このとき、水夫の一人が、縮毛の大男に向って、念を押した。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
もうよくわかりましたからおとなしく目をお
瞑
(
つむ
)
りなさいと、僕はおかしくなったが、この上また葬式まで僕らにかかって滑稽化されたんではおやじの仏も浮ばれないんじゃないかしら
父の葬式
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
瞑
漢検1級
部首:⽬
15画
“瞑”を含む語句
瞑想
瞑目
押瞑
瞑眩
瞑想者
瞑想曲
瞑想家
瞑想的
瞑々
瞑目沈思
晦瞑
沈思瞑目
瞑黙
瞑照燐火
瞑氛
瞑朦
佇立瞑目
趺坐瞑目
瞑想癖
瞑想幽思
...