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真闇
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まっくら
ふりがな文庫
“
真闇
(
まっくら
)” の例文
旧字:
眞闇
道がへし折られたように曲って、その先きは、
真闇
(
まっくら
)
な窪地に、急な
勾配
(
こうばい
)
を取って下っていた。彼らはその
突角
(
とっかく
)
まで行ってまた立停った。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
私はやっと落着いて、胸の動悸をしずめて
真闇
(
まっくら
)
になったトンネルを
手捜
(
てさぐ
)
りで歩き出した。どこへ行くかわからないまま……。
冥土行進曲
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ちょうど
担
(
かつ
)
ぎ上げられた
樽御輿
(
たるみこし
)
が、担がれたままで自由になっているように、
真闇
(
まっくら
)
な人波のうごめく中で提灯のみが宙に浮いているようです。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
夜、銀座などを歩いていると、賑やかに明るい店の直ぐ傍から、いきなり
真闇
(
まっくら
)
なこわい横丁が見えることがあるでしょう。
ようか月の晩
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
と思うと、怒れる神の
額
(
ひたい
)
の如く最早
真闇
(
まっくら
)
に真黒になって居る。
妻児
(
さいじ
)
の顔は土色になった。草木も人も息を
屏
(
ひそ
)
めたかの様に、一切の物音は絶えた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
私達は
申継
(
もうしつ
)
ぎをし、並んで暗号室を出て行った。通路を出ると、
真闇
(
まっくら
)
であった。私は目を慣らすために、出口の崖によりかかり、
暫
(
しばら
)
く待っていた。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
又は、ああ、自分は、いつ
鼹鼠
(
もぐら
)
になったのであろうか。
真闇
(
まっくら
)
な、生暖かい地の底を、どこまでもどこまでも掘って行かなければならないのだ……。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
この間だっけ、今だから云うんだがね、
真闇
(
まっくら
)
な処でね、あッと云う声が聞えるから、
吃驚
(
びっくり
)
して見ると、何だったの。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
俺
(
おら
)
も
能
(
よ
)
く知らないが、
其
(
そ
)
の宝物というのは実に立派なものだ。
真闇
(
まっくら
)
な処でもぴかぴか光って……。何だか
斯
(
こ
)
う……。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
しぶといという観念だけがあらゆる注意の焦点になって来た。彼はよそを
真闇
(
まっくら
)
にして置いて、出来るだけ強烈な憎悪の光をこの四字の上に投げ懸けた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
是等の事実を見ても、井伊大老は真実間違いもない徳川家の譜代、豪勇無二の忠臣ではあるが、開鎖の議論に
至
(
いたっ
)
ては、
真闇
(
まっくら
)
な攘実家と
云
(
い
)
うより
外
(
ほか
)
に評論はない。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
人々はどんなことをするのかと
片唾
(
かたず
)
を
嚥
(
の
)
んだが、その時首相から二
間
(
けん
)
程隔って立った松島氏が左の手を上げると、その途端に夫人の手で電燈が消されて
真闇
(
まっくら
)
になり
外務大臣の死
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
小雨が降っていたくらいだから
真闇
(
まっくら
)
な晩だったが、庭へはいろうとする石段の上に、二つの人影がなにか争っているのを認めた。それはふざけ半分のものらしかった。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
其の
夜
(
よ
)
は雪がチラ/\降出し
真闇
(
まっくら
)
ですから、
外
(
ほか
)
に余り大勢の
合客
(
あいきゃく
)
はありません様子でありますゆえ、濱田へ上って見ますと、
衝立
(
ついたて
)
を立て、
彼方
(
あちら
)
にも
此方
(
こちら
)
にもお客が居ります。
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
流すは
拙
(
つたな
)
しこれはどうでも言文
一途
(
いっと
)
の事だと思立ては矢も
楯
(
たて
)
もなく文明の風改良の熱一度に寄せ来るどさくさ紛れお先
真闇
(
まっくら
)
三宝荒神
(
さんぽうこうじん
)
さまと春のや先生を頼み
奉
(
たてまつ
)
り
欠硯
(
かけすずり
)
に
朧
(
おぼろ
)
の月の
雫
(
しずく
)
を
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
車が方向をかえるたびに、そういう建物が
真闇
(
まっくら
)
い空にぐるぐる廻転するように見えた。
初冬の日記から
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
(中略)宋の時
程頤
(
ていい
)
、
朱熹
(
しゅき
)
等
(
ら
)
己
(
おの
)
が学を建てしより、近来
伊藤源佐
(
いとうげんさ
)
、
荻生惣右衛門
(
おぎゅうそうえもん
)
などと
云
(
い
)
ふやから、みな
己
(
おのれ
)
の学を学とし、是非を争ひてやまず。世の儒者みな
真闇
(
まっくら
)
になりてわからず。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
次の八畳の間の
間
(
あい
)
の
襖
(
ふすま
)
は
故意
(
わざ
)
と一枚開けてあるが、
豆洋燈
(
まめランプ
)
の火はその
入口
(
いりくち
)
までも
達
(
とど
)
かず、中は
真闇
(
まっくら
)
。自分の寝ている六畳の間すら
煤
(
すす
)
けた天井の影暗く
被
(
おお
)
い、
靄霧
(
もや
)
でもかかったように思われた。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
いよいよ起きてその窓に歩み寄ると、室内たちまち
真闇
(
まっくら
)
で
咫尺
(
しせき
)
を弁ぜず。
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
笹村は
齲歯
(
むしば
)
が痛み出して、その晩おそくまで眠られなかった。笹村は
逆上
(
のぼ
)
せた
頭脳
(
あたま
)
を
冷
(
さ
)
まそうとして、男衆に戸を開けさせて外へ出た。外は雨がしぶしぶ降って、空は
真闇
(
まっくら
)
であった。風も出ていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
真闇
(
まっくら
)
の中に降り来り、海に消え マストに積る
本土の港を指して
(新字新仮名)
/
今野大力
(著)
半球の真昼、半球の
真闇
(
まっくら
)
鶴彬全川柳
(新字旧仮名)
/
鶴彬
(著)
もし妻に
怪我
(
けが
)
でもあったのではなかったか——彼れは
炉
(
ろ
)
の消えて
真闇
(
まっくら
)
な小屋の中を手さぐりで妻を尋ねた。眼をさまして起きかえった妻の気配がした。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
表の方は人が
雑沓
(
ざっとう
)
しているけれども裏の方は誰もいない。表の方は昼のような明るさであったが、裏の方は
真闇
(
まっくら
)
。
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
窓の高さは畳から一尺に足りないから、足をかけると厚い壁の上に乗る事ができる。女が危のうございますと云った。外を
覗
(
のぞ
)
いたら
真闇
(
まっくら
)
に静かであった。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
余は
舌鼓
(
したつづみ
)
うって、門をたゝいて、
強
(
しい
)
て開けてもらって内に入った。内は
真闇
(
まっくら
)
である。車夫に
提灯
(
ちょうちん
)
を持て来させて、妻や姉妹に
木曾殿
(
きそどの
)
とばせをの墓を
紹介
(
しょうかい
)
した。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
真闇
(
まっくら
)
な
斯
(
こ
)
の一室が
俄
(
にわか
)
にぱっと薄明るくなって
恰
(
あたか
)
も
朧月夜
(
おぼろづきよ
)
のよう、
扨
(
さて
)
はいよいよ来たりと身構えして眼を
瞠
(
みは
)
る
間
(
ひま
)
もなく、
室
(
しつ
)
の隅から
忽
(
たちま
)
ち
彼
(
か
)
の貴婦人の姿が迷うが如くに現われた。
画工と幽霊
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と半治は懐中から手拭を出して
被
(
かぶ
)
せる、其のうち床を出して其の上へごろりっと海禪坊主横になりました。半治は納戸へ這入ってぴったり襖を
閉
(
た
)
て切りますと
真闇
(
まっくら
)
になりました。
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その夜
更
(
ふ
)
けて後、
俄然
(
がぜん
)
として暴風起り、
須臾
(
しゅゆ
)
のまに大方の提灯を吹き飛ばし、残らず
灯
(
ひ
)
きえて
真闇
(
まっくら
)
になり申し候。
闇夜
(
やみよ
)
のなかに、唯一ツ
凄
(
すさ
)
まじき音聞え候は、大木の吹折られたるに候よし。
凱旋祭
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
余り静かなので、つい居ることを忘れて、お鍋が
洋燈
(
ランプ
)
の油を注がずに置いても、それを
吩咐
(
いいつ
)
けて注がせるでもなく、油が無ければ無いで、
真闇
(
まっくら
)
な
坐舗
(
ざしき
)
に
悄然
(
しょんぼり
)
として、始終何事をか考えている。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
気をつけねばあぶないと思う。現代の文明はこのあぶないで鼻を
衝
(
つ
)
かれるくらい充満している。おさき
真闇
(
まっくら
)
に
盲動
(
もうどう
)
する汽車はあぶない標本の一つである。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼れの
真闇
(
まっくら
)
な頭の中の一段高い所とも
覚
(
おぼ
)
しいあたりに五十銭銀貨がまんまるく光って
如何
(
どう
)
しても離れなかった。彼れは鍬を動かしながら眉をしかめてそれを払い落そうと試みた。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
ところで此愛子の若いことがまた
夥
(
おびただ
)
しい。強そうな事を言うて居て、まさかの時は腰がぬけます。
真闇
(
まっくら
)
に
逆上
(
ぎゃくじょう
)
します。鮮人騒ぎは如何でした? 私共の村でもやはり騒ぎました。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
途中は長い廊下、
真闇
(
まっくら
)
の
中
(
なか
)
で何やら
摺違
(
すれちが
)
つたやうな物の
気息
(
けはい
)
がする、
之
(
これ
)
と同時に何とは無しに
後
(
あと
)
へ引戻されるやうな心地がした。けれども、別に意にも
介
(
と
)
めず、用を
済
(
すま
)
して寝床へ帰つた。
雨夜の怪談
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
庭は
真闇
(
まっくら
)
でげすから
些
(
ちっ
)
とも分りませんが、海面に向ってある裏木戸のところで、コツリガチャリという音がするので、伊之吉は恟りいたし伸した首をちゞめ、また舟の中に小さくなっている
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
何だってお
前様
(
まえさん
)
、滅茶苦茶に
真闇
(
まっくら
)
だあ、どうも人間
業
(
わざ
)
じゃねえぜ。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
真闇
(
まっくら
)
で、人の影なんぞはちっとも見えなかった」
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
自分が六つめの梯子まで来た時は、手が
怠
(
だる
)
くなって、足が
悸
(
ふる
)
え出して、妙な息が出て来た。下を見ると初さんの姿はとくの昔に消えている。見れば見るほど
真闇
(
まっくら
)
だ。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
何うかして
彼奴
(
あいつ
)
を殺して
奪
(
と
)
りたいと思えばボツリ/\と雨が降って来て
真闇
(
まっくら
)
になり、又気が附いてあゝ悪い事をした、
斯様
(
こん
)
な事はふッつりと思うまいと思えば煩悩の雲がすうッと切れますると
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それから三日目の晩に、
祖父
(
おじい
)
さんは用があって又隣村まで行ったが、夜が更けても帰って来ないので、
家中
(
うちじゅう
)
の者も心配して、
松明
(
たいまつ
)
を
点
(
つ
)
けて迎いに出た。
其
(
その
)
晩は
真闇
(
まっくら
)
で、寒い山風が吹き
下
(
おろ
)
していた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
真闇
(
まっくら
)
な晩です。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
電灯の消えた今、その顔だけが
真闇
(
まっくら
)
なうちにもとの通り残っているような気がしてならなかった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
又「あゝまだ月が出ねえで、
真闇
(
まっくら
)
になったのう」
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
すると
真闇
(
まっくら
)
な道の
傍
(
はた
)
で、たちまちこけこっこうという鶏の声がした。女は身を
空様
(
そらざま
)
に、両手に握った
手綱
(
たづな
)
をうんと
控
(
ひか
)
えた。馬は前足の
蹄
(
ひづめ
)
を堅い岩の上に
発矢
(
はっし
)
と
刻
(
きざ
)
み込んだ。
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
だから君のように
呑気
(
のんき
)
な事を云ったって
駄目
(
だめ
)
だよと橋本から叱られた。なるほど駄目である。しかも余の駄目は汽車にとどまらない。地理
道程
(
みちのり
)
に至っても
悉皆
(
しっかい
)
真闇
(
まっくら
)
であった。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
余はこの暗い町内に、便所がどこにいくつあるか不審に思ったが、つい聞きもせず、女の前を行き過ぎて通ろうとすると、そっちは行きどまりでございますと注意された。道理で
真闇
(
まっくら
)
であった。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ストーブをドンドン
焚
(
た
)
いて先生を
火攻
(
ひぜめ
)
にしたり、教場を
真闇
(
まっくら
)
にして先生がいきなり這入って来ても何処も分らないような事をしたり、そういう所を経過して始めて
此校
(
ここ
)
へ這入ったものであります。
模倣と独立
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
真
常用漢字
小3
部首:⽬
10画
闇
常用漢字
中学
部首:⾨
17画
“真闇”で始まる語句
真闇黒
真闇祭