相撲すもう)” の例文
そのときのお奉行所ぶぎょうしょお日誌によると、この年炎暑きびしく、相撲すもう取り的にて三人蒸し死んだるものある由、と書かれてありますから
四十がらみの、相撲すもうのようにふとった主人が、年頃の娘たちとわたしより一つ二つ下のいたずらな男の子とを相手に稼業をしていた。
雷門以北 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
ここは、まちちかくにあった、はらっぱです。子供こどもたちが、なつ午後ごごたのしくボールをげたり相撲すもうをとったりしてあそんでいました。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
二人の相撲すもうは力を入れ、むきになっているくせに、時々いかにもこそばゆいという風に身悶みもだえしてキャッキャッと笑い興じていました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
ある外国人は日本の相撲すもうの顔を見ると必ず何かの動物を思い出すと言ったが、その人の顔自身がどうも何かの獣に似ているのであった。
自画像 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
すずしそうなアカシヤの下には石に腰掛けて本を開ける生徒もある。濃い桜の葉の蔭には土俵が出来て、そこで無邪気な相撲すもうの声が起る。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「お姫様ひいさまのお部屋へやへご機嫌伺きげんうかがいにあがりまして、お話をうけたまわっておりますと、照彦てるひこ様がぜひ相撲すもうをとるとおっしゃって……」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
壮士も、胆気一方の人ではない、術も充分である、相撲すもうならば四ツに組んだので、水を入れ手がない以上は、取り疲れて、死ぬまで組む。
それにもき足らず、この上相撲すもうへ連れて行って、それから招魂社の能へ誘うと云うんだから、あなたは偉い。実際善人か悪人か分らない。
虚子君へ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
父様が離座敷はなれの真暗な廊下で脊のお高い芸者衆とお相撲すもうをお取りになっていらっしゃったのもあの晩のことでございました。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
おらあ別に人の褌襠ふんどし相撲すもうを取るにもあたらねえが、これが若いものでもあることか、かわいそうによぼよぼの爺さんだ。
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いちばんあとから走っているのは、力じまんの桂君ですが、いくら相撲すもうの選手でも、この怪物にはかないっこありません。
妖怪博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
松男君まつおくん比良夫君ひらおくんんだ。そして足掛あしかけでたおそうとしたが、比良夫君ひらおくん相撲すもう選手せんしゅだから、ぎゃくこしをひねって松男君まつおくんしてしまった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
脇坂山城守は、縁端えんばた近く脇息きょうそくをすすめて、客に対座している。山城守は、相撲すもう取りのように肥った人だ。動くと、脇息が重みに耐えてギシと鳴る。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そこは林の中なれど少しく芝原しばはらあるところなり。藤七はにこにことしてその芝原をゆびさし、ここで相撲すもうを取らぬかという。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
低いこえで、中尉のそでをひいたのは、パイ軍曹だった。彼は、一行中の巨人であった。日本でいえば、相撲すもうの大関格ぐらいのからだの所有者だった。
地底戦車の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
相撲すもうを秋の季と定めるのは、大内おおうち相撲節会すまいのせちえに基くものとすれば、実感写生を重んずる今の俳人が、依然これにならっているのは不思議なようである。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
たとえば、相撲すもうにしても、それを安土でようとなると、江州ごうしゅう、京都、浪華なにわそのほかの遠国からも千五百人からの相撲取をあつめて興行したりする。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中にはためにするところあって、人為的じんいてき形式的に定めたと思わるる決勝点なきにしもあらぬ。たとえば相撲すもうのごときも一つの形式で勝敗を定むるものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
その子は盤を離れると、そこにある菓子を食べたり、相撲すもうを取ったりして、外の子供と少しも変らないのに、その道にかけてはこわいものだといわれました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
ここで相当名の知れた「みやこ」という日本料理店。すきやきが出ましたが、お相撲すもうさんのチャンコ鍋同然で、なにもかもゴッチャに煮ているのには驚きました。
アメリカの牛豚 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
そうしてとうとうしまいには、越中褌えっちゅうふんどし一つの主人が、赤い湯もじ一つの下女と相撲すもうをとり始める所になった。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ちらと見たわたくしは相撲すもうの画でも描いてゐたのかと思つて聞くと手本をうつしてゐたといふのは何と男女が半裸でからみ合つてゐるやうな妙な図柄ずがらであつた。
最も早熟な一例 (新字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
こんな話をしているうちに、跡の二人は食事を済ませ、家根屋の持って来るような梯子はしごを伝って、二階へあがった。相撲すもう取りのように腹のつき出た婆アやが来て
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
相撲すもう取は、この国では非常に尊敬されるが、「電光」「海岸の微風」「梅の谷」「鬼の顔の山」「境界の川」「朝の太陽の峰」「小さな柳」等の名を持っている。
ムム親方と十兵衛とは相撲すもうにならぬ身分のちがい、のっそり相手に争っては夜光のたま小礫いしころつけるようなものなれば、腹は十分立たれても分別強くこらえて堪えて
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
力士が稽古けいこを休むと相撲すもうが取れなくなり、永く頭を使わぬと働きが鈍くなるのは皆この理由である。
子供らは網の上ですべったり、相撲すもうをとったり、ぶらんこをやったり、それはそれはにぎやかです。
蜘蛛となめくじと狸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ベースボールはもと亜米利加アメリカ合衆国の国技とも称すべきものにしてその遊技の国民一般に賞翫しょうがんせらるるはあたかも我邦わがくに相撲すもう西班牙スペイン闘牛とうぎゅうなどにも類せりとか聞きぬ。
ベースボール (新字新仮名) / 正岡子規(著)
槍ヶ岳や大天井おおてんしょうとの相撲すもうには、北穂高東穂高の二峰がそれぞれ派せられている、いずれも三千米突内外の同胞、自ら中堅となって四股しこを踏み、群雄を睥睨へいげいしおるさまは、丁度
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
もっとも、良い気になって聟の口へ乗出したら、一ぺんにつぶれるんでしょう。五軒や八軒の長屋持ちの倅じゃ、一と箱の持参の三国一とは相撲すもうが取れません。へッ、へッ
江戸開府以来の大火は、明暦めいれきの振袖火事と明和の行人坂火事で、相撲すもうでいえば両横綱の格であるから、行人坂の名が江戸人の頭脳に深く刻み込まれたのも無理はなかった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
若い花々しい火花が出るような元気の紅葉は三十七の壮齢でもろくも消え、光源氏のように美くしかった紅顔の眉山は思掛おもいがけない悲惨の最後を遂げ、水蔭は芝居と相撲すもうに隠れ
道教徒のこういう考え方は、剣道相撲すもうの理論に至るまで、動作のあらゆる理論に非常な影響を及ぼした。日本の自衛術である柔術はその名を道徳経の中の一句に借りている。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
御所の相撲すもうなどということも済みまして、時間のできますのを待ちましてまた伺いましょう
源氏物語:48 椎が本 (新字新仮名) / 紫式部(著)
昔、朝廷ちょうていでは毎年七月に相撲すもう節会せちえもよおされた。日本全国から、代表的な力士をされた。昔の角力すもうは、打つる投げるといったように、ほとんど格闘かくとうに近い乱暴なものであった。
大力物語 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
同じことは、相撲すもうを見るたびに、いつも感じた。呼出よびだしにつづいて行司の名乗り、それから力士が一礼しあって、四股しこをふみ、水をつけ、塩を悠々とまきちらして、仕切りにかかる。
日本文化私観 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
二組の夫婦は、時々誘いあわして、浅草を歩いたり、相撲すもう見物に出かけたりした。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
地形がせばまって田原町になる右の角に蕎麦屋があって、息子むすこ大纏おおまといといった相撲すもう取りで、小結か関脇位まで取り、土地ッ児で人気がありました。この向うに名代の紅梅焼きがありました。
なほ一層の好例は第三巻中の相撲すもう、第八巻中の無礼講ぶれいこう、及狂画葛飾振かつしかぶりなるべし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
生徒が砂地の上で相撲すもうをとったり、くさむらの中で阜斯ばったを追ったり、みぎわへ行って浅瀬でぼちゃぼちゃしたりしている間を、先生たちは涼しい松原の陰で、気のおけない話をしたり、新刊の雑誌を読んだり
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
芝田楽しばでんがくを百回、百番のひとつもの(祭礼の行列で、一様の装束をしたもの)、競馬くらべうま流鏑馬やぶさめ相撲すもうをそれぞれ百、仁王講にんおうこうを百座設け、薬師講やくしこうを百座、親指と中指の長さの薬師百体、等身大のもの百体
たとえばご三男様と相撲すもうを取る場合、遠慮なくほうり出してやるようならよろしい。しかしもしご機嫌きげんを取る料簡りょうけんでいくようなら大反対です
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
わたしたちは、もう、おんばこで相撲すもうることなどは、わすれてしまって、おばさんのいったことが、ほんとうかと議論ぎろんしました。
草原の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
現在の世界じゅうの科学者らは毎日各自の研究室に閉じこもり懸命にこれらの化け物と相撲すもうを取りその正体を見破ろうとして努力している。
化け物の進化 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
人参の芽が出揃でそろわぬところわらが一面にいてあったから、その上で三人が半日相撲すもうをとりつづけに取ったら、人参がみんなみつぶされてしまった。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
安珍清姫恨みの恋路、坂田の金時女夫めおと相撲すもう、牛若丸はてんぐのあしらい、踊れといえば、そら、あのとおり、——牛若丸はてんぐの踊りとござい
樹林地もしくは桑圃そうほの中などに、形状のあたかもアンフィシヤターのごとく、招魂社の相撲すもう場のごとき馬蹄形の低地の所々に散在するのを見るだろう。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
僕の父は又短気だったから、度々誰とでも喧嘩けんかをした。僕は中学の三年生の時に僕の父と相撲すもうをとり、僕の得意の大外刈りを使って見事に僕の父を投げ倒した。
点鬼簿 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
小浜兵曹長と怪塔王とは、たがいに真正面から組みつき、まるで横綱と大関の相撲すもうのようになりました。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)