)” の例文
男「前橋めえばしくなア此処を構わずずうッと真直まっすぐ往って、突当つきあたって左へ曲って又突当ると、向うに橋が見える、それを渡ればきだ」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
江尻も興津もきそこだし、まだ知りませんが、久能山だの、竜華寺だの、名所があって、清見寺も、三保の松原も近いんですから
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「日乗どのが、お身へかにいったことばでおざるまい。——まだ誰か、それを間で伝えたものがありましょう。当ててみますかな」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何処へゆく何処へゆく、逃げてはならないと坐中の騒ぐにてーちやん高さん少し頼むよ、き帰るからとてずつと廊下へ急ぎ足にいでしが
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
娑婆しゃばにある大きな蒸汽機械も折々休息をさせて大掃除おおそうじもしなければごみまったり油が切れたりしてきに機械が壊れてしまう。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
あかりも点いていないこの惨めなへやへ帰ると、遠い過去の種々いろいろな思い出が蘇えって来て、きにしんみりとした気持になった。
孤独 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
だが、この可憐なエゴイストはきに寝息を立て始めた。そして眠りが蒲団を引被っていた手をゆるめると、京子の顔は蒲団からあらわに出た。
春:――二つの連作―― (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
あたし、それからきおいとましたものですから、……ねえ、守さん、あの悪魔は、あたしに魅入っているとしか思えませんわ。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
今迄私達が土人街印度インド家屋の油の濃い日本女(ここに住む日本髪の女が世界中で一等醜い女だということは貴方にもきお分りになるでしょう)
孟買挿話 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
「春だってきに参りますよ」斯う答えたのは青年であるが、その声の中には云うに云われない悲哀の調子が籠もっていて酷く私の心を打った。
温室の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ね、の黄とだいだいの大きなぶちはアメリカからかにりました。こちらの黄いろは見ているとひたいいたくなるでしょう。」
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
だが、感心なことに、大津の陣屋へ引いて行って徳川殿がき/\の調べをした時にも、「その方は主人三成のありかを存ぜぬことはあるまいが」
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「直ぐ来るえ。っきや。」と母はいった。子はそれきり何ともいわなかった。母は梯子はしごの中頃まで降りると「寝る時灯を消しな、え。」といった。
(新字新仮名) / 横光利一(著)
しかしその時分は返って風流で枕山蘆洲雪江などと、ソレきそこの教育博物館の向角むこうかどにあった真覚院の詩会などには必ず出掛けたものでござった。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「ゆうべの空模様では雨になるかと思ったら、思いのほかにのどかな日和ひよりになった。堤の桜の咲くのももうきだ」
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
お客はと尋ねれば三谷さんに兼吉さんがおいでとばかり好く分らず、呼びに遣りし車の来ぬ内再度の使せわしければ、ともかくもきにと荻江まで附けさせ
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「どうせこの飛行機は、英国将校たちを降ろすんで、岩国も降りるそうだから、君の家まできじゃないか!」
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「あア、あア、」とやがて平手ひらてで左の肩をたたきながら、「何しろ流動物ばかりだから、腹にこたえがなくてつかれる。カラキシ意気地がなくなッちゃった。」
闇太郎は、礼儀にこだわらず、三斎隠居にかに、酒盃を返しながら、きらりと鋭い目で、相手を見上げて
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
そうしてね……そんな恐ろしい楽しみを続けて行くとそのうちには、とうとう、どんなに滅茶苦茶な遊びをしてもきに飽きるようになってしまうんですって。
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「第二だ、これは俺達のうちから代表を選んで、岸野にき直き会って、詳しい話をするために小樽へ出掛けることだ。——喧嘩はまだ早い。後で大丈夫だ。」
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
最下層の子供達は家の前で遊ぶが、それにしても地面でかに遊ぶことはせず、大人が筵を敷いてやる。町にも村にも浴場があり、そして必ず熱い湯に入浴する。
「何でもないんだ……ひざのところが少しはれているけれど、もう鉱山へ入りゃアしないからなおるよ」
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
だが、この人はきなくなって、おせんべやは荷車の置場に、屋根と柱だけが残されるようになった。
旧聞日本橋:02 町の構成 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
パンを、皿に載せないで、かに、テーブルクロースの上へ置かれたのに、いささか面喰いつつ——パンの粉を、黒ん坊のウェイターが、時々刷毛で掃除して呉れた。
想い出 (新字新仮名) / 古川緑波(著)
嘉三郎はそう呟くように言いながら、板敷へかに尻をえて、すぐ頬の無精髭ぶしょうひげを剃りにかかった。
栗の花の咲くころ (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
「この道を真直に行くと、きにの大きな原に出る、すると向うに家が見える。泣かんで早くお帰り! ちょうど月も出たから……妾は此処ここで見送っていますよ。」
稚子ヶ淵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「いい月夜だから、一寸ちょっと行って見て来よう。乙子さん待ってらっしゃい。き戻って来ますから。」
九月一日 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
「まあいじゃありませんか。お島さんの顔を見てき立たなくたって。御一緒にお帰んなさいよ」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「あの、もうきおとっつぁんが帰って参りましょうから、どうぞ御ゆっくりお待ちなすって——」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「随分気をつけているんですが、この二三日急に寒くなったからでしょう。きに又下りますよ」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
即ちこの硯では面が粗い間は相当よく墨がおりるが、その面はきに平滑になってしまって、暫く使っていると紫雲石の場合の十分の一も墨がおりなくなってしまうのである。
後悔してち百姓となり、無事に一生を送りしと、僕上野に遊んだ際、この穴を見たがおしいかな、土地の名を聞洩ききもらした、何でもき上に寺のある、往来の左方ひだりだと記憶している。
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
お昼御飯にはやはり七輪の炭火にかに鰯と塩を抛り出して、焼きながら頬張っていた。
金さえ貰たらわいはき帰って来る。——蝶子の胸に甘い気持と不安な気持が残った。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「犬は大丈夫かい」「エエエエっきに来ますわ」「どうしてあの崖を駈け登れるだろう」慕門次は笑っている、ひょいと見ると、鼻をフン、フン、やりながら、もういつの間にか
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
「待ってくれ——俺もき五十だよ。五十に成ってサ、未だそれでも俺の思うように成らなかったら、その時はお前の意見をれる。田舎へでも何でも引込む。それまで待ってくれ」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
小供の世話はなかなか六ヶむつかしいもので、ちょっとでも意に満たぬときに声を揚げて泣く。これをすかなだめるなど容易なことで無く、到底天賦の性情の粗雑なる男子の出来る仕事でない。
現代の婦人に告ぐ (新字新仮名) / 大隈重信(著)
正三はかに胸をかれ、えりを正さねばならぬ気持がするのであった。それから彼が事務室のやみを手探りながら、ラジオに灯りを入れた頃、厚い防空頭巾ぼうくうずきんかぶった清二がそわそわやって来る。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
以前は軒端をめぐって滝の下を行ったものだから、提灯の隠見することだけが見えたのが、今度はきに小坂を上って来るものですから、それで明らかに提灯も、その主もわかったものです。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
現今いま私のうちる門弟の実見談じっけんだんだが、所は越後国西頸城郡市振村えちごのくににしくびきぐんいちふりむらというところ、その男がまだ十二三の頃だそうだ、自分のうちき近所に、勘太郎かんたろうという樵夫きこり老爺おやじが住んでいたが、せがれは漁夫で
千ヶ寺詣 (新字新仮名) / 北村四海(著)
何かを媒介しなくばかには触れられないような運命のものであった。
光り合ういのち (新字新仮名) / 倉田百三(著)
何にもあてはなかったけれど、其式それしきの負債はき償却して見せるように広言を吐き、月々なし崩しの金額をもめて再び出京したが、出京して見ると、物価騰貴に付き下宿料は上る、小遣も余計に
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「もうき、ひろむちゃんに殺されなければならぬから」
鼻に基く殺人 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「何か、きじき、お話したいとか」
「もうきですよ」
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「いいえ、そんなじゃありません。切なければきに寝ますよ。お嬢さん、難有ありがとう存じます。貴嬢あなた、よくおいで下さいましたのね。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何處どこへゆく何處どこへゆく、げてはならないと坐中ざちうさわぐにてーちやんたかさんすこたのむよ、かへるからとてずつと廊下らうかいそあしいでしが
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こういう方法に出たのは、もう一閑だの庄左衛門だのを通して聞くよりも、彼女自身の口から、かに聞くべきだと思ったからである。
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
峰「なに車が利くし、道は出来てきにかれます、天狗坂てんぐざかてえのが少し淋しいが、それから先は訳はねえ、私のとこの旦那もくがの」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)