うま)” の例文
一々算盤珠そろばんだまはじいて、口が一つえればどう、二年って子供が一人うまれればどうなるということまで、出来るだけ詳しく積って見た。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その親が海に働こうとしてあかつきに浜に出たが、まだ夜が明けぬのでしばらく寄木を枕にして仮睡うたたねしていると、今ほど何某なにぼうの家に子がうまれる。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
いい医者の事をむかしから国手こくしゆといふ。茶話子のうまれ故郷に、風邪を治すよりも鮒を釣る方がずつと上手の医者があつた。
要するにチヨーサーのシバルリイ(即ち英国の)は我がシバルリイの如く暗憺たる時代にうまれたるにあらず、我がシバルリイのごとく圧抑の反動として
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
ともに莱州らいしゅううまれだが、武芸はいずれ劣らない。慨世がいせいの気があり過ぎてかえって世にれられぬ狷介けんかいの男どもだ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほりにつきたる時は漁師れふしもこれをとらず、たま/\るものあれどもしひてはせぬ事也。女魚めなさへとらざれば男魚をなは其所をさらず。さけの河にさかのぼるは子をうまんとて也。
うませいよいよさかえ行けるに母のお勝も大いに安堵あんどし常に念佛ねんぶつまい道場だうぢやうに遊びき庄兵衞が菩提ぼだいとむら慈悲じひ善根ぜんこんを事としたれば九十餘さい長壽ちやうじゆたも大往生だいわうじやう素懷そくわい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
太古の文芸がこの水のたゞよふ岸辺から発生した歴史から、美しい女神によしんベヌスが紫の波よりうまいでたと伝ふ其れ等の神話までが、如何にも自然で、決して無理でないと首肯うなづかれる。
黄昏の地中海 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
雄二は自分がうまれた日は、どんな、お天気だったのかしら、としきりに考えてみました。
誕生日 (新字新仮名) / 原民喜(著)
ここに泉富子(目下農学博士某の妻なり)の来歴を述べんに、彼女はもと備前のうまれなり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
つゝがなくうまいでしといふやうに言問ことゝひの前の人の山をくぐいでて見れば、うれしや、こゝ福岡楼ふくをかろうといふに朝日新聞社員休息所あさひしんぶんしやゐんきうそくじよふだあり、極楽ごくらく御先祖方ごせんぞがた御目おめかゝつたほどよろこびてろうのぼれば
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
子供はうまれたが、婦人は死んでしまった所密通をしたかどと子を堕胎おろした廉が有るから、よんどころなく其の死骸を旅荷にこしらえ、女の在所へ持ってき、親達と相談の上で菩提所ぼだいしょほうむる積りだが
「チェッ! やり切れねえなあ、かかあは又腹をふくらかしやがったし、……」彼はウヨウヨしている子供のことや、又此寒さを目がけてうまれる子供のことや、滅茶苦茶に産む嬶の事を考えると
セメント樽の中の手紙 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
きやうさん母親おふくろ父親おやぢからつきりあていのだよ、おやなしでうまれてがあらうか、れはうしても不思議ふしぎでならない、とやきあがりしもち兩手りやうてでたゝきつゝいつもふなる心細こゝろぼそさを繰返くりかへせば
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その年に、母は赤ん坊をんだ。私達は兄妹きょうだい五人となった。うまれた男の子を、子守りするために、私は学校を休む日が、まえより多くなった。ともすると一週間ぐらいぶっとおしに休むことがあった。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
「そちはどこでうまれたな?」
古千屋 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのころ小野が結婚して、京橋の岡崎町に間借りをして、小綺麗な生活くらしをしていた。女は伊勢いせうまれとばかりで、素性すじょうが解らなかった。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
言ひ伝へによると、白拍子しらびやうししづかが母の磯禅師いそのぜんじはこゝに住むでゐたのださうで、禅師の血統ちすぢはその後も伝はつてゐるが、うまれる娘は皆醜婦揃すべたぞろひである。
謙信はふと厳粛げんしゅくに眉をひきめた。思い出したからである。この斎藤下野なるものの祖先は越後ではなかった。この厩橋城から数里の東にある生品郷いくしなごううまれである。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
われは函嶺かんれいの東、山水の威霊少なからぬところにうまれたれば、我が故郷はと問はゞそこと答ふるに躊躇ためらはねども、往時の産業は破れ、知己親縁の風流雲散せざるはなく
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
我国の鮏は初秋より北海をいで千曲川ちくまかは阿加川あかかは両大河ふたつのだいがさかのぼる、これ其子をうまんとて也。女魚めな男魚をなしたがふてのぼる。さかのぼる事およそ五十余里、河にある事およそ五か月あまり也。
全く氏自身の深い内的生命の神秘なる衝動からうまきたつたものである事がわかる。
谷崎潤一郎氏の作品 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
鐵「へえ……それからお前さんがうましたのかえ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
笹村ささむらが妻の入籍を済ましたのは、二人のなかにうまれた幼児の出産届と、ようやく同時くらいであった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
他国に出稼ぎするものにくらべると、うまれ在所に残つてゐるものの方が多く長命なのは、最近の統計の証明するところで、これは男にも女にも共通のたしかな事実である。
すな小礫こじやりまじりたる所にあらざればうまずと漁師れふしがいへり。その所為しわざ人のにをさ/\おとらず。
「ハムレツト」の幽霊は実に此観念、この畏怖より、シヱークスピアの懐裡くわいりうまれたり。
他界に対する観念 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
「おまえは、どこのおうまれかえ」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
産れは八王子のずっと手前の、ある小さい町で、叔父おじ伝通院でんずういん前にかなりな鰹節屋かつぶしやを出していた。新吉は、ある日わざわざ汽車で乗り出して女のうま在所ざいしょへ身元調べに行った。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
詩人豈に国民の為にのみうまれんや、詩人豈に所謂国民的なる狭少なる偏見の中にのみ限られんや、然れども事実に於て、詩人も亦た愛国家なり、詩人も亦た国民の中に生くるものなり。
国民と思想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
錠をおろしてある寝室へ入って、深々した軟かい、二人寝の寝台の上へもかされた。よく薬種屋の方へ遊びに来ている、お島さんという神奈川在うまれの丸い顔の女が、この外人の洋妾らしゃめんであった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
し伯が貴族の家にうまれたる身を以て、みづかくだりて平民の友となり、其一生を唯だ農民の為に尽すところあらんとするの精神を読み得なば、誰れか伯の資性の天真爛熳たるを疑ふものゝあるべき。
トルストイ伯 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
戦ひに死してはいを敵に向けず、其勇は実によみすべし。然れども戦ふ為にうまれ、戦ふ為にたふる可きは、夫れ仏国か。一大魔ありて人間界を支配するとせば、彼は仏国を以て一闘犬となしつゝあるなり。
想断々(2) (新字旧仮名) / 北村透谷(著)