爾後じご)” の例文
しからばすなわち、爾後じご日本国内において、事物の順序を弁じ、一身の徳を脩め、家族の間を睦じくせしむる者も、この子女ならん。
京都学校の記 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
学校を卒業して二年目、父の死によって全く係累のなくなった三造が、その時残された若干の資産をもと爾後じごの生活の設計を立てた。
狼疾記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
亀山の関盛信は、一子一致かずむねれて、そうした四囲険悪な中を、ひそかに姫路へ来て、年賀を兼ね、かつ、爾後じごの策を仰いでいた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
爾後じごの呉一郎の行動は、この夢中遊行症の余波ともいうべき夢中遊行にして、筆者の所謂いわゆる、蹌踉状態に陥りたるものと認むるを得べし。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この後者の額を彼自身の出費として控除した後に、彼は爾後じごの操作を行うべき流動資本としては五、五〇〇ポンドを有するに過ぎないであろう。
末期養子の禁は爾後じご次第にゆるんで、天和年間に至ると、五十歳以上十七歳以下の者の末期養子でも、「吟味之上可之」
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
何卒なにとぞ御一答承りたく、わざと金六を遣わし候。御答出来かね候わば、爾後じごは使い差出さず候に付き、左様抑聞おおせきけ下さるべく候。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
そして爾後じご今日に至るまで、実に長い間の文壇は、特殊の日本化した自然主義によって一貫し、深く地下に根を張ってる。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
爾後じごいっさい使ってならぬときびしく親方が封じ手にしておいたんでごんすが、バカにつける薬はねえとみえて、将軍さまのご面前だというのに
爾後じご二十余年、世態愈々いよいよ変じて、華奢増長していたろうから、保胤のようなおとなしい者の眼からは、倹約安民の上を慕わしく思ったのであろう。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
黙して何事をも語らざる慶大に対しては早大選手は爾後じご仮令たとへ箇人的にも、断じて慶大選手と語を交へずと迄で痛烈なる決議を為したと云ふ噂もある。
爾後じご病牀寧日ねいじつ少く自ら筆を取らざる事数月いまだ前約を果さざるに、この事世に誤り伝へられ鉄幹子規不可ふか並称へいしょうの説を以て尊卑そんぴ軽重けいちょうると為すに至る。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
爾後じごふたゝ公安こうあんみだるにおいては汝等なんぢらいのちいぞよ。今日こんにち者共ものどもみな立退たちされ、カピューレットはしたがまゐれ。
使者の趣を聞き終った秀吉は、「御家の重臣柴田殿をどうして疎略に考えよう。爾後じご互に水魚の如くして、若君を守立て天下の政務をりたいものである」
賤ヶ岳合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
明治六年の太陽暦施行しこうの年には、新暦十一月の第二の卯の日が二十三日であった。よってこの日をもって爾後じご毎年の新嘗祭日にしようという御沙汰書ごさたしょが残っている。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
爾後じご訪ふ毎に室内の変化に注目せよ。やがて主人の口にはおほひける性癖のをかしきふしを看出すべし。
大久保湖州 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
爾後じご兎群静かに湖畔に住んで永く象害を免ると(一八七二年版グベルナチス『動物譚原ゾーロジカル・ミソロジー』巻二章八)。
爾後じご明治の初年に至るまで多くの和算家が輩出したが、この一事は日本人においてもまた抽象的論理的能力が決して欠けているものでないことを示す一つの実証として
日本文化と科学的思想 (新字新仮名) / 石原純(著)
□面倒でそれけの効果もありませんから爾後じごしばらくは交換広告は全部止めたいと思ひます。何卒あしからず。なを雑誌の交換は相変らずお願ひしたいとおもひます。
〔評〕十年のえき、私學校の彈藥製造所だんやくせいざうじよかすむ。南洲時に兎を大隈おほすみ山中にふ。之を聞いてにはかいろへて曰ふ、しまつたと。爾後じご肥後日向に轉戰して、神色夷然いぜんたり。
他に照空灯、聴音機等若干の損害を受けましたが、爾後じごの戦闘には、支障なき程度でございます
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
爾後じご世界の歴史は匇々さうさう兵馬の声を載せて其鉄筆に五百有余頁を記しをはんぬ。長くも亦短かゝりし一歳半の日子よ。海に戦へば海に、陸に闘へば陸に、皇軍の向ふ所常に勝てり。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
たとヘバ児ヲ喪ヒしょううしなフガ如ク、痴心イマダ婉惜えんせきヲ免レズ。一夜灯前旧製ヲ追憶シ、漫然コレヲ録シテ三十余首ヲ得タリ。爾後じご十数日ノ間相続イテコレヲ得ル者マタ一百余首。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
爾後じご死に至るまで大工職を業とし父の一家を支えしとなり、狐は穴あり空の鳥は巣ありされど人の子は枕する処だもなしとは基督地上の生涯なりき、しもべはその主人にまさる能わず
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
漸々ぜんぜん話し込んでみると元来傾向が同じであったものだから犬猿どころか存外ぞんがい話が合うので、喧嘩はそう、むしろ一緒にやろうじゃないかという訳になって、爾後じご大分心易くなった。
明治の初年にはじめて西洋から伝わりて爾後じごしだいに日本にひろまり、今日こんにちでは東北諸州ならびに信州からそれの良果がさかんに市場に出回でまわり、果実店頭をかざるようにまでなったのである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
眼より直ちに種板たねいたとも云うき余の心に写りたる所は分明ふんみょうなるのみかは爾後じご幾年を経たる今日こんにちまで少しも消えず、余は今もお其時の如くおぼれば少しの相違も無くそのへやを描き得ん
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
制度そのものはそれだけでは決して吾々に実質的の利益を提供するものではないのである。これもとより明白なる道理である。果たせるかな爾後じごの経験は明らさまにこの道理を吾人に示した。
これは一応我輩に対する言訳いいわけのお世辞であるとのみ思うていたが、この人はその後、自国の家を引払って仏国の南部に家を構えた。爾後じご二ヶ月たったかたたぬ間に同様の話を他の人から聞いた。
真の愛国心 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
此方より手紙を出しても一向返事も寄越さず、多忙か病気か無性ぶしょうか、或は三者の合併かと存候。小生僻地に罷在まかりあり、楽しみとするところは東京俳友の消息に有之、何卒なにとぞ爾後じごは時々景気御報知被下度くだされたく候。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
こういう腹だったのが、爾後じご幾星霜、関七流の末に人多しといえども、いまだ孫六のやすりに手が届いて別書を発見したものはなく、従って水火合符刀潜とうせんの儀、夢にも知れずにすぎて来たのである。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そして爾後じご切支丹の根たやしは徳川家代々の方針となった。
爾後じごのことは、大策を要しましょう。局所の合戦のほかのものです。しかし今は焦眉しょうびに迫っております。一刻もはやく下鳥羽しもとばへ」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
爾後じごうるときは鉄丸をくらい、かっするときは銅汁を飲んで、岩窟がんくつの中に封じられたまま、贖罪しょくざいの期のちるのを待たねばならなかった。
私は翁を健康な高齢者の標本として研究していたので、爾後じご幾多の老人の診察に際して非常な参考となった事を感謝している。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
しかしながらとにかく、彼等は近代詩に象徴の自覚をあたえ、爾後じごの詩派に感化と暗示とをあたえたことで、永く記念さるべき功績を残している。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
恰も佐幕家の宿論に投ずるが故に、これと共に爾後じごの方針をともにすると云えば至極しごくもっともに聞ゆれども、当時の争に開鎖など云う主義の沙汰さたは少しもない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
だから、その日一日だけではなく、爾後じご五日間というもの、一統の者はずっと平牢にさげたままで、しきりと右門は次なる事件の勃発を心まちに待ちました。
かつて『五経図解』を下せし時常道は喜びに堪えず、爾後じご生涯この書を坐右に置き当時の喜を回顧せり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
あるいは十数年前の予にして子と会談せしならんには、手をつて子の説を賛成したらんも、爾後じご予の嗜好は月々歳々に変じて、今はまた当時の余波をだに留めざるに至れり。
俳句の初歩 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
かつて虎が人を侵すをプレ神ミスルトー寄生の枝もて追い払うた、爾後じご虎はプレ神の敵となり檞寄生を滅ぼさんとすると蛇これに加勢した。犀鳥ライノセラス・バードは神方で蛇の頸をくわえ持ち行くところへプレ神が来る。
身を売る時はじつにあわれむべく、また尊敬すべき動機に基づくも、爾後じご三年ないし五年の後、彼らの心理を統計に現すことを得たなら、その性格の一変し、当初とは雲泥うんでいの差あるを発見するであろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
爾後じご幕府はふたたび毅堂が出版物の罪を問わなかったという。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「つまり、同業じゃナ。爾後じご昵懇じっこんに願おう」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
子路のしかばねししびしおにされたと聞くや、家中の塩漬類しおづけるいをことごとく捨てさせ、爾後じご、醢は一切食膳しょくぜんに上さなかったということである。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
爾後じご、あなたと親善をかためてゆきたいという方針で——そのあかしとして、韓胤を縛りあげ、かくの如く、都へ差立てて来た次第でありまする
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すなわち今の版本蘭学事始上下二巻、是れなり。爾後じご不幸にして廉卿氏は世を早うせられ、版本も世間に多からず。しかるに今回は全国医学会においあるいはその再版あるべしとう。
蘭学事始再版之序 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
米国渡航後の小生はローサンゼルス市を相手とする草花栽培に着眼し、特に自分の趣味として酒類の合成法に深入りしまして爾後じご二十何年の間に幾多の新発見を致しました。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
御意見代りに大切だいじな膝借りるというたわけがあるかッ。貸すというても遠慮するが当りまえじゃ。三河流儀の旗本どもは骨がかとうて困る。お紋の膝だけは爾後じご遠慮するよう気をつけい。五位、行くぞ。
然るにかく二つの言語が別れた以上は、表現するすべての人が文章語のみを使用する故、一方の俗語は全く芸術から除外され、爾後じごは全然実用語としてのみ、専門に使用されるようになってしまった。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)