松並木まつなみき)” の例文
が、道行みちゆきにしろ、喧嘩けんくわにしろ、ところが、げるにもしのんでるにも、背後うしろに、むらさと松並木まつなみきなはていへるのではない。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、五十余名の大衆たいしゅうが、シタシタと足をひいて、まえをみると、かすみのふかい松並木まつなみきのかげから、忽然こつぜんとおどりだした年わかい怪僧かいそうがあった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いまごろは、おとうさんは、あの街道かいどう松並木まつなみきしたあるいていなさるだろう……。」と、息子むすこは、みやこにいておもっていました。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
參詣さんけい老若男女らうにやくなんによは、ぞろ/\と、るやうに松並木まつなみきみち往來わうらいして、ふくろはひつたあめや、かみこしらへたはたのやうなものが、子供こどもにも大人おとなにもあつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
嘉ッコは街道のまん中に小さなうでを組んで立ちながら、松並木まつなみきのあっちこっちをよくよくながめましたが、松の葉がパサパサ続くばかり、そのほかにはずうっとはずれのはずれの方に
十月の末 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
東海道とうかいだう松並木まつなみきらるべき由、何時いつやらの新聞紙にて読みたる事あり。
みるみるうちに、一まつ水蒸気すいじょうきとなって上昇じょうしょうしてゆく……そして松並木まつなみき街道かいどうは、ふたたびもとののどかな朝にかえっていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
枝の下を、首のないむくろと牛は、ふとまた歩をゆるく、東海道の松並木まつなみきを行くさまをしたが、あい宿しゅくも見えず、ぼツと煙の如く消えたのであつた。
雨ばけ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いまごろくろは、まだあのさびしい松並木まつなみきのあるあたりをあるいているだろう。もう、どのへんへいったろうかと。
さか立ち小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
正面しやうめんにはもう多田院ただのゐん馬場先ばばさきの松並木まつなみきえだかさねて、ずうつとおくふかくつゞいてゐるのがえた。松並木まつなみき入口いりくちのところに、かはにして、殺生せつしやう禁斷きんだんつてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
琵琶湖びわこだの伊吹山いぶきやまだの東海道の松並木まつなみきなどがグルグル廻って見えてきて、いくらようとしても寝られればこそ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
くだん元二げんじはあとをもないで、むらふた松並木まつなみき一帳場ひとちやうば瓜井戸うりゐどはらかゝつたのがかれこれよるすぎであつた。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
仕事しごとをしていても、こころで、ありありと、あのさびしい松並木まつなみきのつづく、田舎道いなかみちえるのでした。はしわたり、むらからずっとはなれた、やまのふもとに自分じぶんいえはあるのです。
母の心 (新字新仮名) / 小川未明(著)
松並木まつなみききると、いしだたみのだら/\ざかがあつて、へんから兩側りやうがは茶店ちやみせならんでゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
街道かいどうをきしり、きしり、うしは、くるまいてまちほうへとゆきました。あせは、たらたらとうしからだからながれたのでした。松並木まつなみきには、せみが、のんきそうにうたをうたっていました。
ある男と牛の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やすくて深切しんせつなタクシイをばして、硝子窓がらすまどふきつける雨模樣あまもやうも、おもしろく、うまつたり駕籠かごつたり、松並木まつなみきつたり、やまつたり、うそのないところ、溪河たにがはながれたりで
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
子供こどもらばかりでなく、この街道かいどうとおって、あちらのほうたびをする商人しょうにんなどまでが、松並木まつなみきこしろして、たばこをすったり、おじいさんからあめをって、それをべながら
からすの唄うたい (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしくとともに、直下すぐした三番町さんばんちやうと、見附みつけ土手どてには松並木まつなみきがある……大方おほかた玉蟲たまむしであらう、としんじながら、うつくしいむしは、かほに、玉蟲色たまむしいろ笹色さゝいろに、一寸ちよつと口紅くちべにをさしてたらしくおもつて
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
むらから松並木まつなみきひとした、はら取着とツつきに、かたばかりの建場たてばがある。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なんたくみもないが、松並木まつなみきあひ宿々しゆく/″\山坂やまさかけ、道中だうちう風情ふぜいごとし。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)