-
トップ
>
-
溪河
二人分、
二枚の
戸を、
一齊にスツと
開くと、
岩膚の
雨は
玉清水の
滴る
如く、
溪河の
響きに
煙を
洗つて、
酒の
薫が
芬と
立つた。
手づから
之をおくられた
小山内夫人の
袖の
香も
添ふ。
同じ
年十一月のはじめ、
鹽原へ
行つて、
畑下戸の
溪流瀧の
下の
淵かけて、
流の
廣い
溪河を、
織るが
如く
敷くが
如く、もみぢの、
盡きず、
絶えず、
流るゝのを
見た
時と、——
鹽の
湯の
やすくて
深切なタクシイを
飛ばして、
硝子窓に
吹つける
雨模樣も、おもしろく、
馬に
成つたり
駕籠に
成つたり、
松並木に
成つたり、
山に
成つたり、
嘘のないところ、
溪河に
流れたりで