朋輩ほうばい)” の例文
彼女はあの賑やかな家や朋輩ほうばいたちの顔を思い出すと、遠い他国へ流れて来た彼女自身の便りなさが、一層心にみるような気がした。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
目上にも朋輩ほうばいにも信用され可愛がられて、前に神尾の邸にいた時のような危ないことは更になし、まことに無事に暮しておりました。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
波斯軍がアラビヤを過ぎ、いよいよ埃及の地に入ったころから、このパリスカスの様子の異常さが朋輩ほうばいや部下の注意をきはじめた。
木乃伊 (新字新仮名) / 中島敦(著)
だけれどほんとにいやなのはあのおなま(朋輩ほうばい生徒か)さんネー。いやに体裁ばかりつくって。何か自分の作文の点でもわるいと。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
もらいはかなりあるのだ。朋輩ほうばいが二人。お初ちゃんと言う女は、名のように初々しくて、銀杏返いちょうがえしのよく似合うほんとに可愛い娘だった。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「坊さんだから、女は汚らわしいっていうの。……ちょッ、笑わすよ、この人は」と、家のうちにいる朋輩ほうばいの女たちをかえりみて
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜の世界にばかり目覚めていたお増の頭には、多勢の朋輩ほうばいやお婆さんたちの顔や声が、まだ底にこびりついているようであった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
いゝよ親方おやかたからやかましくつてたら其時そのときこと可愛想かあいさうあしいたくてあるかれないとふと朋輩ほうばい意地惡いぢわる置去おきざりにてゝつたと
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ところが花前はなまえ評判ひょうばんは、若衆わかしゅうのほうからも台所だいどころのほうからもさかんにおこった。花前は、いままでに一もふたりの朋輩ほうばいと口をきかない。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
すべきようもないので、よんどころなしにもとのなりわい、むかしの朋輩ほうばいに顔を見らるるも恥ずかしい。して、お師匠さまはどうしてござる
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
もう生死を超脱ちょうだつしている栄三郎にとっては、左膳も、左膳の剣も、ふだん道場に竹刀をとりあう稽古台けいこだい朋輩ほうばいと変わりなかった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と他の小娘達に手を引かれて、神経質らしいその女の児も彼の前までやって来たが、急に朋輩ほうばいの手を振りほどいて一歩引退ひきさがった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
わたしの朋輩ほうばいたちが、恋だの男だのと騒いでいるのに、わたし一人は自分自身を恋人として男を近づけるのをかえって恐ろしく思いました。
メデューサの首 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
そう決心した光枝は、その夜更よふけて、朋輩ほうばいの寝息をうかがい、ひそかに旦那様のベッドに近づこうとした。だがそれは失敗だった。
什器破壊業事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
奉公人下女端女はしためは、なまじっか字なんか知っていると、主人や朋輩ほうばいにイヤがられるという事に気のついたのは、ずっと後の事だ
或日箕輪みのわの内儀は思も懸けず訪来とひきたりぬ。その娘のお俊と宮とは学校朋輩ほうばいにて常に往来ゆききしたりけれども、いまうちと家との交際はあらざるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
よく芸者などが客や朋輩ほうばいうわさをしていました。夜は仕事をしまった男たちが寄って来て、歌うやら騒ぐやら、夜更よふけまでにぎやかなことでした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
またイエスの栄光の中にともに住むという希望もあった。しかし他の朋輩ほうばいを出し抜いて名誉の地位に坐ろうと企んだ心は、愛ではありません。
しかし、昨日は傍らに歩いていた朋輩ほうばいが今日もその通りに並んでいると考えてもよいのだろうか。ながい留守の時間があった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
そなたの生れはと問へば、越後でござりまする、朋輩ほうばいの何がしは三年のつとめ済んで、身のしろ金で嫁入りしたさうな、うらやましやといふ。
(新字旧仮名) / 正岡子規(著)
声もあまったるく、子供めいていて、朋輩ほうばいと話すときの辛辣しんらつで遠慮のない言葉も、どこかしらまのびがして毒がなく聞えた。
雪と泥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
朋輩ほうばいから詳しい様子を聞いて、一時はこいつはうまく行ったと喜んだものの、流石さすがに善人の彼はそうしてじっとしていることは出来なかった
夢遊病者の死 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
江戸の主家に居る時、ほんの小僧の時、一度、若者になつてから二三度、無理やりに朋輩ほうばいや先輩に誘はれて遊女屋へ足を入れたことはあつた。
老主の一時期 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
と珍しからぬ一匹の犬に、夫人をはじめ、朋輩ほうばいの女中、御家老より車夫に到るまで、家族のありたけ呼立てしが、返事をするもの一人も無し。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くしなんざつてゐねえぞはあ、それよりやあ、けえつてかきのざくまたでもはうがえゝと」朋輩ほうばい一人ひとりがおつぎへいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
舞いをならっていた女は、それらの人たちにとっては、客人まとうどでもあり、もすこし親しみのある以前の朋輩ほうばいでもあった大橋夫人須磨子さんだった。
大橋須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
腹を立てるほどの気性もないらしかった。内気というよりは陰気な感じで、これでは朋輩ほうばいにも客にもあなどられるばかりではないかという気がされた。
朴歯の下駄 (新字新仮名) / 小山清(著)
右近を以前知っていた人が大将の供をして行って、話などをした時から、またしきりに好意を運んでくるのであると右近は他の朋輩ほうばいに言っていた。
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
一番で級長の松村君もろとも、級のよい勢力を代表している。照彦てるひこ様のためにも申し分ない朋輩ほうばいである。友だちは偶然の機会できまることが多い。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
出し且又はなしの内に立せ間敷まじく其爲そのため朋輩ほうばいを頼み置きたりおはなしあらば心靜かに咄し給へといと發明はつめいなる働に傳吉は其頓智とんち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
何者と重ねて問えば、私は存じませぬとばかり、はや岡焼おかやきの色を見せて、溜室たまりの方へと走り行きぬ。定めて朋輩ほうばいの誰彼に、それとうわさの種なるべし。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
女はお酒や料理を自分で部屋に運んで来て、それからその家の朋輩ほうばいらしい芸者を二人呼んだ。みな紋附を着ていた。
チャンス (新字新仮名) / 太宰治(著)
語調ものいい体度みのこなしとが時田よりも快活らしいばかり、共に青山御家人あおやまごけにん息子むすこで小供の時から親の代からの朋輩ほうばい同士である。
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「ああ一本松なあ。あっこにゃ、わしの船乗り朋輩ほうばいがあってな。もうとうの昔に死んだけんど、大石嘉吉おおいしかきちという名前じゃが、あんたらもう、知るまい」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
事務長は朋輩ほうばいにでも打ち明けるように、大きな食指を鍵形かぎがたにまげて、たぐるような格好をして見せた。葉子がちょっと判じかねた顔つきをしていると
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
けれどきょうは朋輩ほうばいが病気でていて自分が看護してやらねばならない時にはどうするか? 朋輩をほっておいて夢中になって会いに行くのが普通の恋だ。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
百代子の学校朋輩ほうばいに高木秋子という女のある事は前から承知していた。その人の顔も、百代子といっしょにった写真で知っていた。手蹟しゅせき絵端書えはがきで見た。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「きょうの天気予報てんきよほうたった。あのいい天気てんきが、きゅうにこんなにわったからな。」と、年上としうえ職工しょっこうは、仕事台しごとだいうえ前屈まえかがみになって、朋輩ほうばいはなしをしました。
風雨の晩の小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
八重は、夕方左近将監が御殿からひけてかえってきたときにさしあげるお夕飯のおかずのことで、朋輩ほうばいの藤にたのんでおいたもののことを思いだしたのです。
亡霊怪猫屋敷 (新字新仮名) / 橘外男(著)
只なんという事なしに女房たちの中にじって、もとの朋輩ほうばいたちと気やすく語らってさえいれば好かった。
姨捨 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
堺町の踊子、木戸茶屋の娘、吉原のかぶろ、女幇間ほうかん、唄の小八などというむかしの朋輩ほうばいをひきこみ、仲ノ町の茶屋か芝居の楽屋のような騒ぎをしているそうな。
鈴木主水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
どうかすると自分とおなじ年ごろの朋輩ほうばいを相手にしているようなもののいいかたをするのでござりました。
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
芸者その朋輩ほうばい丸髷まるまげふを見ればわたしもどうぞ一度はと茶断ちゃだち塩断しおだち神かけて念ずるが多し。芸者も女なり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
時にはひとしく酩酊めいていした朋輩ほうばいを連れてきて部屋のなかでキャッキャッと動物のような声を立て、しまいには喧嘩をしたり泣き出したり、なかなか大変なのだが
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
そのためばかりとも言えないが、冬の夜長よながになると五、六人以上、じゅんまわりに朋輩ほうばいの家にあつまってきて、いろいろ話などをしながらにぎやかに苧を績んだ。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
朋輩ほうばいの出て往ったのを気にしていた、三人の女給が、いたガラス戸のがわに立って外の方を見ていた。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そして以前朋輩ほうばいであった人間の内へ女中がしらのような相談相手のようにして住み込んでいるのであった。
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
その散歩の仲間は、同じ商店に働いてる朋輩ほうばいの一人と、二人のりっぱな青年だった。青年の一人はヴァイレル銀行員で、も一人はある大きな流行品商の事務員だった。
我らが朋輩ほうばいにお加えくだされ、この城中へ止め置かれますように、我らよりもお願い申し上げまする
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
うも朋輩ほうばい交際つきあいが悪うございますから、もう二三年も経ったから知れやしまいと思って、又奥州仙台から、江戸表へ出て来たのは、十一月の丁度二十日でございます。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)