“昨夜:ゆうべ” の例文
“昨夜:ゆうべ”を含む作品の著者(上位)作品数
野村胡堂130
泉鏡花51
田中貢太郎31
夢野久作27
芥川竜之介23
“昨夜:ゆうべ”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 演劇 > 大衆演芸38.7%
文学 > 日本文学 > 小説 物語17.5%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)6.4%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
「そうかね。もっとも昨夜ゆうべ吉川さんに話をしてから手術の日取をきめる事にしようって云ったんだから、あたる訳は訳だね」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あくる朝の津田は、顔も洗わない先から、昨夜ゆうべ寝るまで全く予想していなかった不意の観物みものによって驚ろかされた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
藍丸王は矢張やっぱり黙って、昨夜ゆうべ鸚鵡が逃げ出した東の窓をゆびさした。これを見ると紅矢は膝をハタと打って――
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
昨夜ゆうべとは違った当直の前にその男はひき据えられた。帽子を脱いだその男の顔を見て、おどろいたのは熊岡警官だった。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
狭い食卓に、昨夜ゆうべの残りの御馳走などをならべて、差し向いではしを取ったが、お作は折々目をあげて新吉の顔を見た。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
翌日お庄は、涼しい朝のうちに、水口の外へたらいを持ち出して、外の浴衣と一緒に昨夜ゆうべの汚れものの洗濯をしていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
二階に寝ていた叔父が起きて来てから、芳村は昨夜ゆうべあずけておいた鞄を提げ出して、やがて友達と一緒に帰って行った。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「むむ、そうかも知れねえ、昨夜ゆうべそうやってしっかり胸を抱いて死んでたもの。ちょうど痛むのは手の下になってた処よ。」
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
主婦さんは昨夜ゆうべ直に本宅へ電報を打つて、こゝの主人に急いで駈けつけて來るやうに言つてあるから、もう來る途中だらう。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
二郎は昨夜ゆうべ見た夢が余り不思議なもんで、これを兄の太郎に話そうかと思っていましたが、まだいいおりがありません。
迷い路 (新字新仮名) / 小川未明(著)
昨夜ゆうべ、――夕方から宵のうちで御座います。寢かし付けようと思ふと、何處にも見えなかつたので、大騷ぎになりました」
「それも如才なく、昨夜ゆうべのうちに見ておきましたよ。雨戸は中から締っているし、湿々じめじめした軒下に足跡一つねえ」
そうしてやっとそれを言出すことのできたのは、鶴さんが気忙きぜわしそうに旅行の支度を調えてからの昨夜ゆうべであった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
文「ヘエ、何うも、是は何うも、昨夜ゆうべは暗くって碌にお顔も見えませんでしたが、お蔭様で助かりまして有難う存じます」
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と押し問答したあげく、やっと昨夜ゆうべ鶴原家を出がけに兄が自動車の中に入れてくれたものであることを思い出して受け取った。
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あくる朝王さまは、王子がちゃんと王女の番をして、昨夜ゆうべのままお部屋にすわっているのを見て、びっくりなさいました。
ぶくぶく長々火の目小僧 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
それから昨夜ゆうべ囲炉裏いろりそばでさんざん馬鹿にされた事を思い出して、あの有様を二人に見せたらばと考えた。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
誰か、昨夜ゆうべのうちに、ここへ入って来て、煙草を吸い、その吸い殻を床の上に落としていったと考えるより外に途がなかった。
俘囚 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「昨日な、……昨夜ゆうべとは言わん。が、昼寝をしていて見たのじゃない。日の暮れようという、そちこち、暗くなった山道だ。」
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
カンカン寅というのは例の仙太の親分に当る男で、昨夜ゆうべあの海岸通の古建物で、折井山城の二刑事に捕った怪漢のことだった。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
翌晩になってお滝は昨夜ゆうべのことが気になるので、表座敷と背中合せになっている新一の寝ている奥の室へ老婆を寝かせた。
狐の手帳 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
お増は昨夜ゆうべの睡眠不足で、体に堪えがたい気懈けだるさを覚えたが、頭脳あたまは昨夜と同じ興奮状態が続いていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
昨夜ゆうべの事が有るからそれで貴君はそんなに仰しゃるんだろうけれども、本田さんだッてそんなに卑屈な人じゃ有りませんワ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
山「はい、山三郎で、昨夜ゆうべ小原山に於てお約束致したからまかいでました、何うか粥河様へお取次を願います」
駕籠かごに乗って帰る途中で、昨夜ゆうべの金伽羅童子と制多伽童子のことが思い出され、あの尺八の音色が忘れられません。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
――そこいらの谷の底の方に、どうやら、それらしい燈籠とうろうの灯が、昨夜ゆうべかすかに見えましたわ……ぽっちりよ。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼女は、昨夜ゆうべ、自分の情夫おとこが他のものと一緒にいたことを耳にして、大変なけんまくで駈けこんで来たのだ。
そうそう、昨夜ゆうべ捏粉ねりこがまだ残っていた筈だから、フェチニヤに言いつけて、あれで薄焼ブリンを焼かせよう。
いかにも昨夜ゆうべ忍藻に教訓していたところなどはあっぱれ豪気なように見えたが、これとてその身は木でもなければ石でもない。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
「そうですか。昨夜ゆうべは、あんなに僕達をおかつぎになって! これは驚いた。」と、前川はびっくりして、美和子を見直した。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
昨夜ゆうべ、二人をつけて来た奴が、矢張り、話を聞いたのだろう――捕えられたのは、二人だけか、悉く、露見したのか?)
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
坊ちやんは昨夜ゆうべの茶の間に、そのまゝすや/\と寝てゐられる。あちらのお二人の方は、まだ夜のやうに暗く戸が閉つてゐる。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
なべの底はじりじりいう、昨夜ゆうべから気をんで酒の虫は揉殺したが、矢鱈やたら無性むしょうに腹が空いた。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その晩、また昨夜ゆうべのように、燧火マッチだけは枕頭まくらもとへ置いて火の用心にあかりは消して寝たんですが。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「何、昨夜ゆうべから飲み続けて、あんまり頭が重いから、表へちっと出て見たのさ。」と、お葉はものうげに答えた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
昨夜ゆうべ山〓に襲われたのは此辺このへんだなどと話していると、行手の木蔭から一人の小作りの男がひらりと飛んで出た。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
昨夜ゆうべもすがらしづかねぶりて、今朝けされよりいちはなけにさま
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
だから、昨夜ゆうべの左右太の舟にも、辰と半次との乗ったもう一艘の小舟が、たえず守るように、あとから漕いでいたわけだった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伝吉は別旅籠をとッていたが、昨夜ゆうべも酒の相手によばれて、深夜まで作左衛門と四方山話よもやまばなしをして帰った。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
殊に昨夜ゆうべはホロリと一滴の涙さえこぼしたのを、伝吉は初めて見て自分も悲しくなったほどしみじみとして夜をかした。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平次の足は次第に早くなります。昨夜ゆうべ一晩寝もやらぬ女房のお静と香ばしい味噌汁が待っていることを考えたのでしょう。
「口笛で――でも昨夜ゆうべは、お隣に尺八の復習おさらいがありましたから、口笛が紛れて聞えなかったのかも知れません」
主人の柳糸子は、昨夜ゆうべのまま、派手な友禅縮緬ちりめんを着たまま、卓子テーブルの上へ俯向になって死んで居たのです。
踊る美人像 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
お島は両親ふたおやの前へ出ると、急に胸苦しくなって、昨夜ゆうべから張詰めていた心が一時にゆるぶようであった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
東京を立った昨夜ゆうべの九時から、こうあきらめはつけてはいるが、さて歩き出して見ると、歩きながら気が気でない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
勘太郎は寝過ぎたと思って、急いで竈の前に行って火を入れようとしましたが、どうしても昨夜ゆうべの夢が気になってたまりません。
虫の生命 (新字新仮名) / 夢野久作海若藍平(著)
昨夜ゆうべ出されたきりで、ものも云えない宮口を今朝からどうしても働かさなけアならないって、さっき足でってるんだよ」
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
「そうだ。俺は昨夜ゆうべ、オリオン星座を見たが、こりゃひょっとすると、飛んでもない面白いところへ出るぞと思ったよ」
太平洋雷撃戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
昨夜ゆうべ、この露路に入った時は、紫の輪袈裟わげさを雲のごとく尊くまとって、水晶の数珠じゅずを提げたのに。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今朝飯を喰はなかつたので、空腹ではあるし、國の事が氣になるし、昨夜ゆうべの黒玉をつかんで無暗に頬ばつて見たんです。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
庄次郎は、くぎを踏んだように、すくんでしまった。足の裏から、昨夜ゆうべの恐怖を、思いだして、ぶるっとふるえた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ねえ。お姉さま。昨夜ゆうべよく、お休みになれた……?」寝起きとも思われないほど、ハッキリと晴々した声に、新子は、
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
わたし昨夜ゆうべ、だれかゞお母さまに早くおかへり/\と言つていくども謡つたのを聞いた。」と言ひました。お母さまは、
星の女 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
お定は暫時しばし水を汲むでもなく、水鏡に写つた我が顔を瞶めながら、呆然ぼんやり昨夜ゆうべの事を思出してゐた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
林中のふくろうは、今夜は一人も泣いてはいませんでしたがおこっていることはみんな、昨夜ゆうべどころではありませんでした。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あたしも一度御見舞に行きたいと思ふんだけど、何しろこんな事情だしね……昨夜ゆうべお前が帰つてから、手紙が来たのさ。
世帯休業 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
起きられぬほどの容体でなければちょっと逢いたい、と昨夜ゆうべ今朝けさで、その間淵の妹が追掛けてやって来ました。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし昨夜ゆうべの天幕で濡れたものが燃え上がる炎でどしどしかわいて行くのは、心のむすぼれを解きほごしてくれる魔術のようだ。
二つの松川 (新字新仮名) / 細井吉造(著)
わが家に辿りついて、机の上の燈火をつけると、その火影ほかげもまた昨夜ゆうべとは違ひ、俄に清く澄んでゐるやうな心持がする。
虫の声 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
冷吉は診察がすむと、歸つて蒲團の中に這入つて、じつと寢ようとしたけれど、もや/\と昨夜ゆうべの事が考へ返されて寢られない。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
しや、昨夜ゆうべの幽霊の足跡はついていないかと行って見ると、ほんのそれらしい跡形あとかたもなかったという。
北の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「權八が昨夜ゆうべおそく歸つて來て、店の臆病窓おくびやうまどを締めようとしたおいらに、この金包を渡したんだ」
「おや、平次か、丁度宜いところだ。昨夜ゆうべから搜してゐたが、橋架はしげたの下から、この通り、半弓を見付けたよ」
「第一番に、お前は昨夜ゆうべ横川町の親類の法事で出かけ、一と晩泊つて今朝歸つたと言つたが、――それに間違ひはないだらうな」
「それも昨夜ゆうべ、私達が密談をしているところを、お前さんが忍び込んで、次の間からすッかり聞いて逃げたじゃないか」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「兵二郎の死んだ晩というと昨夜ゆうべだ、昨夜はお前誰といっしょにいた、申訳が立たないとお前は下手人げしゅにんも同様だぞ」
古びたテエブル、火の消えたランプ、それから一脚は床に倒れ、一脚は壁に向つてゐる椅子、――すべてが昨夜ゆうべの儘であつた。
南京の基督 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
考えて見ると今朝雑煮ぞうにをあんなにたくさん食ったのも昨夜ゆうべ寒月君と正宗をひっくり返した影響かも知れない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すると紅矢は不図、昨夜ゆうべ青眼老人が机の傍に置き忘れて行った鸚鵡の空籠を見付けて、驚いて眼を真円まんまるにして尋ねた――
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
とある十字街へかかった時、横からひょこりと出て、はすに曲り角へ切れてく、昨夜ゆうべの坊主に逢った。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……『昨夜ゆうべ、君の蒲団ふとんを引ったくった覚えはない』なぞと頑張る連中は、この第二箇条を厳守している正直者に相違ない。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
というのは呉一郎は昨夜ゆうべ、その心理遺伝の終極点まで発揮しつくして、壁に頭を打ち付けて自殺を企てたのだからね。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
……この日本美人をここから足跡の通りに歩き出さして、昨夜ゆうべした通りの所作を今一度ここで繰返させるとこうなる。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
忘れもしない、限界のその突当りが、昨夜ゆうべまで、我あればこそ、電燭でんしょくのさながら水晶宮のごとく輝いた劇場であった。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それかあらぬか、昨夜ゆうべ耳許みゝもとでニヤゴ/\いて、のために可厭いやゆめた。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それが一晩や二晩でなく三晩も四晩も、昨夜ゆうべでモウ十日も続くのでございますから、とても我慢も辛抱もできません。
お住の霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「まあ、お聞きやす、昨夜ゆうべうち盗人ぬすとが入つてましたんや。ほんまどつせ、えらい盗人ねすとなんや、それが……」
朝日が高く上つたので、しめきつたへやのなかは蒸暑く、おまけに昨夜ゆうべのコツプ酒が祟つて、はらわた迄も熱つぽかつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
「それは、ぼくのがただしいんだとも、昨夜ゆうべラジオにわしたのだもの。」と、小谷おたにが、こたえました。
正二くんの時計 (新字新仮名) / 小川未明(著)
真澄は起きて枕頭まくらもとに坐った。やはり昨夜ゆうべのような膳へ四合罎と三皿ぐらいのさかなを添えてあった。
岐阜提灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「わしに、手紙をよこした昨夜ゆうべの酔っぱらい、あれは、本位田又八というて、昔の友達なのだ。あの人に会ってもらいたいのだが」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
――否、すでに昨夜ゆうべから、この狐が、自分のうしろにまとっていたに違いないという気持さえ咄嗟とっさに起った。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昨夜ゆうべも夜中に眼をさますと、私の上に馬乘りになつて、私ののど匕首あひくちを當てて居た者がありました。
「へツ、鳴物が欲しいくらゐだ。ね親分、勝太郎は昨夜ゆうべ本所の叔母の通夜へ行つて、一寸も外へは出ないさうですよ」
「さア、誰も聽いてるものはない、俺と八五郎の二人きりだ、――昨夜ゆうべお前が、八五郎に話さうと言つたことを聽かうぢやないか」
昨夜ゆうべ一晩考えて、大変な事を発見したんだ。まだ誰も起きないうちに実験し度い、一寸ちょっと立ち合ってくれ」
死の予告 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
そして私が着物を着換えたりするのを待ち合せながら『昨夜ゆうべは大変な気焔きえんだったね』と冷かす様に云うではありませんか。
二癈人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
如何にも、そのガラスの表面には、昨夜ゆうべ幻燈で見たのとソックリのお化け指紋が、まざまざと現われていたのである。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
昨夜ゆうべ、あんまり、苦しかったものですから、――それでも今朝けさは、おなかの痛みだけは、ずっと楽になりました。――」
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「藤原のいうことは、昨夜ゆうべの女のいったところと、どこか似てるところがあるぞ」と、小倉は、この時フト思った。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
昨夜ゆうべの事の不思議より、今目前まのあたりの光景を、かえって夢かと思うよう、恍惚うっとりとなったも道理。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ああ、そうよ。私は昨夜ゆうべも、お通夜だってそう言って、さあちゃんに叱られました。……その夜伽なのよ。」
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『ウ――ム。棄てるなら……助けると思うて……酒屋の前へ棄ててくれい。昨夜ゆうべ釣銭つるをば四円二十銭置いててくれい』
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
暖炉シユミネの火が灰がちな下に昨夜ゆうべ名残なごり紅玉リユビイの様なあかりを美しく保つては居るが
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
純一は取り散らしたものを革包の中に入れながら、昨夜ゆうべよりも今朝起きた時よりも、だいぶ冷かになった心で、自己を反省し出した。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
昨夜ゆうべ熟睡したのと、昨日一日練習を休んだために一同の元気はすばらしいものであった、安場はすっかり感激した。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
恨みを告げているころ、ほのぼのと夜の明けるのにうながされて兵部卿の宮は昨夜ゆうべの戸口から外へおいでになった。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「やあ、やって来たな。」と彼は叫んだ。「先生も昨夜ゆうべロンドンから来られたよ。万歳! これで船の乗組員がすっかり揃ったぞ!」
昨夜ゆうべ二人は外へでると大至急円タクを拾って、洋次郎に先まわりして大竜を訪ね、洋次郎の企みを拒否させたのだ。
左近の怒り (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
……昨夜ゆうべ戸外おもて舞靜まひしづめた、それらしい、銀杏いてふえだが、大屋根おほやねしたが
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)