わし)” の例文
杖に縋って早や助かれ。むすめやい、女、金子は盗まいでも、自分の心がうぬが身を責殺すのじゃわ、たわけ奴めが、フン。わしを頼め、膝を
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
氷を取寄せて雪子のつむりを冷す看護つきそひ女子をんなに替りて、どれ少しわしがやつて見やうと無骨らしく手をいだすに、恐れ入ます、お召物がれますと言ふを
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
熊手をあげてわしが口へやはらかにおしあてる事たび/\也しゆゑ、ありの事をおもひだしなめてみればあまくてすこしにがし。
せても枯れてもわしは淵瀬、そなたの力を借るまでもないと、初めは笑ひて取合はざりしが、お艶が切に請ふて止まざるにぞ、さらばそなたの気の済むやうと
野路の菊 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
お浪さんもわしの云ふことの了つたなら何卒口を副て聴て貰つては下さらぬか、と脆くも涙になりゐる女房にまで頼めば、お、お、親方様、ゑゝありがたうござりまする
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
わしへ膳をふけというから、誰え来ると聞いたら婿が来ると言やアがるし、其の相手は城内の原丹治の悴が婿に来るというから、わしい魂消た、あんた蒲団の上にぶっつわっている時じゃアあんめえ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何分この頃飛出しが始まつて、わしなどは勿論もちろん太吉とくらと二人ぐらゐの力では到底引とめられぬ働きをやるからの、万一井戸へでも懸られてはと思つて
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
伯爵は苦笑にがわらい。「うふふふ、わし如燕じょえんになさる。そういうことをいわるると恐怖おっかない談話をするぞ、怪談を。」とおおする折しも、庭にて犬の鳴く声しきりなり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とてもしぬべき命也、ひきさきころさばころし給へ、もしなさけあらば助たまへと怖々こは/\熊をなでければ、熊はおきなほりたるやうにてありしが、しばしありてすゝみいでわししりにておしやるゆゑ
黙って居るのは聴いてくれぬか、お浪さんもわしの云うことのわかったならどうぞ口をえて聴いてもらっては下さらぬか、ともろくも涙になりいる女房にまで頼めば、お、お、親方様
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
みちそらとのあひだたゞ一人ひとりわしばかり、およ正午しやうごおぼしい極熱ごくねつ太陽たいやういろしろいほどにかへつた光線くわうせんを、深々ふか/″\いたゞいた一重ひとへ檜笠ひのきがさしのいで、図面づめんた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何もしうとしうとめのやかましいが有るでは無し、わしが欲しくて我が貰ふに身分も何も言ふ事はない、稽古は引取つてからでも充分させられるからその心配もらぬ事
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
愚鈍うすのろい奴といふものは正直ではありませんか、何と返事をするかとおもへば、わしも随分骨を折つて胡麻は摺つて居るが、源太親方を対岸に立てゝ居るのでどうも胡麻が摺りづらくて困る
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
又もとのあなへはいりしゆゑわしあなの口に雪車哥そりうたのこゑやすらんとみゝすまして聞居きゝゐたりしが、滝の音のみにて鳥のもきかず、その日もむなしくくれて又穴に一夜をあかし、熊のうゑをしのぎ
支度とても唯今の有樣で御座いますからとて幾度斷つたか知れはせぬけれど、何も舅姑のやかましいが有るでは無し、わしが欲しくて我が貰ふに身分も何も言ふ事はない
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
御主人は女性にょしょうなり、わしが一家を預りながら、飛んだ悪魔をお抱えあるをいさめなんだが不念ぶねん至極、何よりもまずこの月の入用いりようをまだ御手許おてもとから頂かぬに、かの悪魔めがくい道楽
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
愚鈍うすのろい奴というものは正直ではありませんか、なんと返事をするかとおもえば、わしも随分骨を折って胡麻は摺って居るが、源太親方を対岸に立てて居るのでどうも胡麻が摺りづらくて困る
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
支度したくとても唯今たゞいま有樣ありさま御座ございますからとて幾度いくたびことはつたかれはせぬけれど、なにしうとしうとめのやかましいがるではし、わししくてわしもらふに身分みぶんなにことはない
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わしは円道様為右衛門様から五重塔建ていとは命令いいつかりませぬ、お上人様は定めし風が吹いたからとて十兵衛よべとはおっしゃりますまい、そのような情ないことを云うては下さりますまい
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
椽側えんがは白痴あはうたれ取合とりあはぬ徒然つれ/″\へられなくなつたものか、ぐた/\と膝行出いざりだして、婦人をんなそば便々べん/\たるはらつてたが、くづれたやうに胡座あぐらして、しきりわしぜんながめて、ゆびさしをした。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わしの病院へ入れる事は不承知かと毎々聞かれるのであるが、それもどう有らうかと母などはしきりにいやがるので我も二の足をんでゐる、無論病院へ行けば自宅と違つて窮屈ではあらうが
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
母さんに無理をいふて困らせては成りませぬと教ゆれば、困らせる處か、お峰聞いて呉れ、歳は八つなれど身躰も大きし力もある、わしが寐てからは稼ぎなしの費用いりめは重なる、四苦八苦見かねたやら
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かかさんに無理をいふて困らせては成りませぬと教ゆれば、困らせる処か、お峯聞いてくれ、としは八つなれど身躰からだおほきし力もある、わしてからはかせなしの費用いりめは重なる、四苦八苦見かねたやら
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かゝさんに無理むりをいふてこまらせてはりませぬとをしゆれば、こまらせるどころか、おみねいてれ、としは八つなれど身躰からだおほきしちからもある、わしてからはかせなしの費用いりめかさなる、四かねたやら
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)