巴里パリー)” の例文
そのようなものを完成したのでもよい、というような懇切なお話もあったので、ふと私はその当時巴里パリー展覧会に出品している作品で
昔年、彼が犯罪界の王としてまた巴里パリーにおいて最も有名な人物として、彼はしばしば多くの讃辞やまたは謝辞、いな恋文さえ受取った。
こんな午後ひるすぎに折よくも、巴里パリーで懇意になつた高佐たかさ文學士が來訪された。自分よりは一箇月ばかり後れて歸朝した大學の助教授である。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
しかれども巴里パリー本邸のほかアンジアン及びニイスに別荘を有し、はなはだ贅沢なる生活を為せるも、その財源をいずこに求むるや不明。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
そうして結局、巴里パリーの大道で野たれじにをしようとも、ナイル河のわにに喰われて死のうとも、己は少しも恨めしいとは思うまい。………
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
富豪の令嬢で、巴里パリー帰りの新進ピアニストというので、新聞や雑誌に写真は出ていたが、その父親の富豪の方が、有名だったのだ。
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)
巴里パリーに本社のあるワゴンリイのくるまだ。まるで宮殿のよう——と彼女が讃嘆したとおりに、飴いろに金ぴかの装飾が光っている。
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
六、巴里パリーではもうそろそろ新しい学期が始まる。コン吉もタヌも修業の道は違うが、おのおのとある学校の片隅に席を置く身分である。
巴里パリーで、かつて、衣裳やさんが、このような仕掛けの美しいモデル人形をつかって流行の衣裳をダイナミックに見せたことがある。
人造物語 (新字新仮名) / 海野十三(著)
開戦の劈頭へきとうから首都巴里パリーおびやかされやうとした仏蘭西フランス人の脳裏には英国民よりもはるかに深くこの軍国主義の影響が刻み付けられたに違ない。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
小説家有島武郎氏が、米国留学から帰つて来る途中仏蘭西へ廻つて、その頃巴里パリーで絵を習つてゐた弟の生馬いくま氏を訪れた事があつた。
こうした母国の意気組を、はるかに巴里パリーの片隅から眺めていると、片足を棺桶かんおけに突込んでいる私でさえ、真に血湧き肉躍るばかりである。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一口にいえば、当時——千九百——年——巴里パリーには、政治経済界に勃発した奇々怪々な疑獄事件に関連して有名な恐慌がやって来たのだ。
私が巴里パリーに居た時、一時、リャンコルン街の五十番に家を借りていた事がある、この家屋は四階建で、私の居たのもこの四階の上であった
闥の響 (新字新仮名) / 北村四海(著)
巴里パリーに日本人が沢山いる。巴里パリーで日本人はいかにフランス人が考えるように物を考えるべきかということを第一に学びはせぬ。
ロンドン一九二九年 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ところが、一九二五年にいよいよ私のおりました僧院が破壊されたので、当時巴里パリーに移っていた父のもとに戻らなければならなくなりました。
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
すなわち紐育ニューヨーク倫敦ロンドン巴里パリーに行った。そしてこれらの大都市の生活が科学的であるだけ、それだけ犯罪を行うにはいかにも都合がよいと思った。
科学的研究と探偵小説 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
その剛壮な腹の頂点では、コルシカ産の瑪瑙めのうボタン巴里パリーの半景をゆがませながら、かすかにきさきの指紋のために曇っていた。
ナポレオンと田虫 (新字新仮名) / 横光利一(著)
一体いったい出来できが面白い都会で、巴里パリーに遊んでそのいにしえをしのぶとき、今も悵恨ちょうこんはらわたを傷めずにはいられぬものあるが
不吉の音と学士会院の鐘 (新字新仮名) / 岩村透(著)
仏蘭西フランス巴里パリーの交際社会の、女王と云われて栄華ときめいている、モンタギュー卿の夫人の室で、斯う云う言葉が発せられた。
木乃伊の耳飾 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
洋行記念に親しく巴里パリーで買って帰ったので、あんな精巧な機械は二度と手に入らぬと、惜まれる位のことであった。
何者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
日本の代表は巴里パリー駐在の石井菊次郎いしいきくじろう大使で、大使に差支さしつかえある場合、白耳義ベルギー安達峰一郎あだちみねいちろう大使が代って出席する。
巴里パリーはどこの都ですか」とおたずねになった。すると「佛蘭西フランスの都であります」と光子がうれしそうに答えた。
先生の顔 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
巴里パリーでは昔から町の番地や室の番号から十三をはぶいています。アメリカにも然うしているところがあります。
首席と末席 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
奥さんなんか、このまゝ直ぐ外交官夫人として、巴里パリー辺の社交界へ送り出しても、立派なものだと思ひます。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
人間元より変な者、目盲めしいてからその昔拝んだ旭日あさひの美しきを悟り、巴里パリーに住んでから沢庵たくあんの味を知るよし。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
もっとも、亜米利加の二十世紀急行、倫敦ロンドン巴里パリー間の金矢列車ゴールド・アロウ、倫敦エディンバラ間の「飛ぶ蘇格蘭人フライング・スカッチマン
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
たちま盤上ばんじやうたままろばすがごとひゞき、ピアノにかみ宿やどるかとうたがはるゝ、そのたへなる調しらべにつれてうたいだしたる一曲ひとふしは、これぞ當時たうじ巴里パリー交際かうさい境裡じやうり大流行だいりうかうの『きくくに乙女おとめ
巴里パリーで過ごした三年あまりは、殆ど毎日、役者の顔を見てゐたのに、なぜ、日本に帰つて来て芝居を見に行かないかと云ふと、旧劇はまだ之はと思ふ出しものがないし
巴里パリー伯林ベルリン、ブラッセル、アムステルダム、いずれも電信の速力は一杯にウォール街に資金を流入した。大西洋北岸の富の余剰よじょうはいまや米国株式に変形したとたんじさせた。
大阪万華鏡 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
巴里パリーの下宿で毎日帰りたいと泣くやうになりましたのは、子供等の心が私に通じたのであると、私はこれまでの経験の中でこのことだけを神秘的なことと思つて居ます。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
チャーレを千島禮三ちしまれいぞうという金森家の御納戸役おなんどやくにいたし、巴里パリーの都が江戸の世界、カライの港が相州浦賀で、倫敦ロンドン上総かずさ天神山てんじんやま、鉄道は朝船あさふね夕船ゆうふねに成っておりますだけで
倫敦ロンドン巴里パリー首府しゆふなり、巴里パリー羅馬ローマ首府しゆふなり、また羅馬ローマは——ア、みな間違まちがつてるわ、屹度きつとわたし松子まつこさんにへられたのだわ!わたしつてやう「うしてみがく、ちひさな——」
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
我がリヒヤード・ワグネルも亦、愛妻ミンナと愛犬ルツスをひきゐ、飄然へうぜんとして祖国を去つて巴里パリーに入るや、淋しき冷たき陋巷ろうかう客舎かくしやにありてつぶさに衣食の為めに労苦をめぬ。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
まず、朝鮮まで渡って、それから、一日に三里ずつ歩けば、何日目には巴里パリーに着くだろう。その間、飲まず食わずではいられないから、私は働きながら行かなければならない。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
コテイーの香水のロリガン・エメロード巴里パリーなども、この表情をたくみにつくりあげてある。
私は巽九八郎の友達と言うわけではありませんが、巴里パリーに居る頃二、三度逢った縁故があるのと、巽の旨を受けた友人の勧誘があったので、言わば椋鳥格むくどりかくで行って見ることになりました。
胸張り肩そびえたる士官の、まだ維廉ヰルヘルム一世の街に臨めるまどり玉ふ頃なりければ、様々の色に飾り成したる礼装をなしたる、かほよ少女をとめ巴里パリーまねびのよそほひしたる、彼も此も目を驚かさぬはなきに
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
霧くらくめて晴れざる巴里パリーにてゆたかなるものを日々ひびに求めき
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
あの方に盛装して巴里パリーあたりを歩いていただきたい。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
『それから巴里パリー——』
くづれた土手 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
花の巴里パリーのどん底の
千九百五年巴里パリーのアンドレエ・アレエという一新聞記者が社会百般の現象をば芝居でも見る気になってこれを見物して歩いた記事と
一九二四年度の加奈陀カナダ太平洋会社汽船案内と近着の巴里パリー雑誌ラ・ヴィ・パリジャンヌとが、隣り合わせにきちんと揃えてあり、食堂は
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
とりあえず巴里パリーから遠くも離れぬサン・ジェルマンの森に住む彼女の女友達の処へ寄寓させて、母子おやこ共当分の休養を取らせる事にした。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
一九二九年師走デッサンブルの三日、ここも北国の慣いとて、はや暮れかかる午後四時ごろ、巴里パリー市第十一区三人姉妹トロアスウル街三番地なる棟割長屋アパルトマン
メリー・ガアデン嬢といへば、今は巴里パリーに住んでる、米国で名うての首歌妓プリマドンナだが、ある時劇場しばゐの稽古場で、大事の宝をくしてしまつた。
仰いだ裸体の少年像(後から聞いたところによるとこれはロダンの傑作の青銅像で雲月斎玉兎女史の巴里パリー土産みやげであったという)
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
大部分は巴里パリーを指して、例の英国人はマンチェスターへ、そしてマックファースンはサザムプトンへ、そこから亜米利加アメリカへ移住するために。
ヘルシンゲールに別荘があるが、ここ一年ばかり伯爵の赴いた形跡はない。グンドルフ氏は、仏蘭西フランスに帰化して、目下、巴里パリーに住んでいる。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)