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宿
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とま
ふりがな文庫
“
宿
(
とま
)” の例文
ある時家族じゅうで北国のさびしい
田舎
(
いなか
)
のほうに避暑に出かけた事があったが、ある晩がらんと客の
空
(
す
)
いた大きな
旅籠屋
(
はたごや
)
に
宿
(
とま
)
った時
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
他処へ往って
宿
(
とま
)
るようなことがあると、私が怪我をしやしないか、不意に病気になりはしないかと思って、眠られなかったと云います。
薬指の曲り
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ポン引というのはお客を釣ることで、ポッと出の田舎の人を釣るのだが、七兵衛さんは、
門
(
かど
)
に立って夕方になると、
宿
(
とま
)
り客をひくのだ。
旧聞日本橋:06 古屋島七兵衛
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
私は木曾に一晩
宿
(
とま
)
ったとき、夜ふけて一度この鳥のこえを聴いたことがあるので、その時にはもう仏法僧鳥と
極
(
き
)
めてしまっていた。
仏法僧鳥
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
それが却っていけないのです。林さんは旅行に出掛けたと見せて、実はパーク旅館のその男の隣室に
宿
(
とま
)
っていたのです。それで娘を
P丘の殺人事件
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
▼ もっと見る
「こんなに荒れると、本当に自動車はお危のうございますわ。一層こんな晩は、
彼方
(
あちら
)
でお
宿
(
とま
)
りになるとおよろしいのでございますが。」
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
又
(
また
)
かや
此頃
(
このごろ
)
折
(
をり
)
ふしのお
宿
(
とま
)
り、
水曜會
(
すゐようくわい
)
のお
人達
(
ひとたち
)
や、
倶樂部
(
ぐらぶ
)
のお
仲間
(
なかま
)
にいたづらな
御方
(
おかた
)
の
多
(
おほ
)
ければ
夫
(
そ
)
れに
引
(
ひ
)
かれて
自
(
おの
)
づと
身持
(
みもち
)
の
惡
(
わる
)
う
成
(
な
)
り
給
(
たま
)
ふ
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
彼はいつも子供の
宿
(
とま
)
ったときに限ってするように、また今日も五号の部屋の前を
往
(
い
)
ったり来たりし始めた。次には小さな声で歌を唄った。
赤い着物
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
最初慶三はたとえ毎晩遊びに行っても決して家は明けないつもりで居たのであるが、その第一夜に彼は何の
訳
(
わけ
)
もなく
宿
(
とま
)
り込んでしまった。
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と申すのは、昨夜はこちらには
宿
(
とま
)
りませんでしたし、それに今朝は私は、あの人が灌木の中を忍び歩いているのを見止めたのでございます。
自転車嬢の危難
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
「なにその蔦屋にね、欽吾さんと兄さんが
宿
(
とま
)
ってるんですって。だから、どんな
所
(
とこ
)
かと思って、小野さんに伺って見たんです」
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
昨日に限つて、原町の家に
宿
(
とま
)
らずにゐた自分が悔いられた。母にお金を貰つて、好い気になつて、
呑気
(
のんき
)
に
放埒
(
はうらつ
)
にすごした昨夜の自分が悔いられた。
イボタの虫
(新字旧仮名)
/
中戸川吉二
(著)
日露戦争の際、私は
東京日々
(
とうきょうにちにち
)
新聞社から通信員として戦地へ派遣された。三十七年の九月、
遼陽
(
りょうよう
)
より北一
里
(
り
)
半
(
はん
)
の
大紙房
(
だいしぼう
)
といふ村に
宿
(
とま
)
つて、滞留約
半月
(
はんつき
)
。
雨夜の怪談
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
一〇 この男ある奥山に入り、
茸
(
きのこ
)
を採るとて小屋を
掛
(
か
)
け
宿
(
とま
)
りてありしに、深夜に遠きところにてきゃーという女の叫び声聞え胸を
轟
(
とどろ
)
かしたることあり。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
さては何の怪むところ有らん。節は初夏の
未
(
ま
)
だ寒き、この
寥々
(
りようりよう
)
たる山中に
来
(
きた
)
り
宿
(
とま
)
れる客なれば、保養鬱散の為ならずして、湯治の目的なるを思ふべし。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
それでとうとう一晩
拘留
(
こうりゅう
)
させられたのよ。痛快じゃないこと、ところが泣きっ面に蜂というのは爺さんが警察に
宿
(
とま
)
っている晩に、無電小僧に入られたのよ。
ニッケルの文鎮
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
「いずれにしても御苦労な話だが、御苦労ついでに、その拙者のお宿もとというやつをひとつ心配してくれないか、わしは今晩ドコへ行って
宿
(
とま
)
ったらいいか」
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
五月朔日
(
ごぐわつついたち
)
の
事
(
こと
)
也
(
なり
)
。
其夜
(
そのよ
)
、
飯坂
(
いひざか
)
に
宿
(
とま
)
る。
温泉
(
をんせん
)
あれば
湯
(
ゆ
)
に
入
(
いり
)
て
宿
(
やど
)
をかるに、
土座
(
どざ
)
に
筵
(
むしろ
)
を
敷
(
し
)
いて、あやしき
貧家
(
ひんか
)
なり。
灯
(
ともしび
)
もなければ、ゐろりの
火影
(
ほかげ
)
に
寢所
(
しんじよ
)
を
設
(
まう
)
けて
云々
(
うん/\
)
。
飯坂ゆき
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
さう思つたら私、悲しくつて悲しくつて——。(間)そこへ四五日前から杉山が
宿
(
とま
)
り込みでゆするのよ。あゝ言へば、かう言ふし、どんな事をしても出て行かないの。
疵だらけのお秋
(新字旧仮名)
/
三好十郎
(著)
○秋山に夜具を持たる家は此
翁
(
おきな
)
の家とほかに一軒あるのみ。それもかのいらにて
織
(
おり
)
たるにいらのくずを入れ、
布子
(
ぬのこ
)
のすこし大なるにて
宿
(
とま
)
り
客
(
きやく
)
のためにするのみ也とぞ。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
ここにおいて将軍大いに憤慨し「こんな不親切極まる旅館へは
宿
(
とま
)
らんでもよい。
他
(
た
)
を見付けよう」
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
翌日は逢って
達
(
た
)
って
諌
(
いさ
)
めてどうしても京都に
還
(
かえ
)
らせるようにすると言って、芳子はその恋人の
許
(
もと
)
を
訪
(
と
)
うた。その男は停車場前のつるやという
旅館
(
はたごや
)
に
宿
(
とま
)
っているのである。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
楊州でお目にかかった兵隊さん達はもうすっかりお友達になってしまい、その夜は楊州に
宿
(
とま
)
って明朝蘇州にゆくのだというと、どうでも部隊にとまれとまれと熱心にすすめた。
中支遊記
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
宿
(
とま
)
りゐたまへし事もありしなれど、見るから怖らしさに、かくまで深切なる方様とは知らざりしをかりそめの、媒妁役といふのみに、我をかくまでいたはりたまふお志の嬉しさよ。
葛のうら葉
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
僕の
宿
(
とま
)
っているのは芸者屋の隣りだとは通知してある上に、取り残して来た原稿料の一部を僕がたびたび取り寄せるので、何か無駄づかいをしていると感づいたらしい——もっとも
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
ようやく夕べ
宿
(
とま
)
った坊様と知れてやや安堵すれば、僧また豕箱隠れの事由を語り、双方大笑いで機嫌は直れど損じた脚は愈えず。亭主気の毒さの余りかの僧を家に請じて鄭重にもてなす。
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
獅子溪 と
命
(
つ
)
けたと思われるです。その溪の間を三里ばかり進むとまたセンゲー・ルンという村に着いた。その村に
宿
(
とま
)
らないでナクセーという村まで行って泊りましたがその日は十里以上歩いたです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
仲間の家を
宿
(
とま
)
り歩き自分の家へは帰ってござらぬ。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
私は
木曾
(
きそ
)
に一晩
宿
(
とま
)
つたとき、夜ふけて一度この鳥のこゑを聴いたことがあるので、その時にはもう仏法僧鳥と
極
(
き
)
めてしまつてゐた。
仏法僧鳥
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
彼処に、林子爵が持つてゐた別荘を、此春譲つて貰つたのだが、此夏美奈子が避暑に行つた
丈
(
だけ
)
で、
俺
(
わし
)
はまだ二三度しか
宿
(
とま
)
つてゐないのだ。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
そしてその晩は腹が痛んでどうしても東京に帰れないから、いやでも横浜に
宿
(
とま
)
ってくれといい出した。しかし古藤は
頑
(
がん
)
としてきかなかった。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「そのような名前のお方はおられませんな。第一昨夜は新規のお客で、若い御婦人などはお
宿
(
とま
)
りになりませんでしたよ。」
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
那処
(
あすこ
)
に遠く
些
(
ほん
)
の
小楊枝
(
こようじ
)
ほどの棒が見えませう、あれが旗なので、
浅黄
(
あさぎ
)
に赤い
柳条
(
しま
)
の模様まで
昭然
(
はつきり
)
見えて、さうして
旗竿
(
はたさを
)
の
頭
(
さき
)
に
鳶
(
とび
)
が
宿
(
とま
)
つてゐるが手に取るやう
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
女房や店の小僧どもの手前もあれば慶三は来る
度々
(
たんび
)
もう今夜ぎり、明日からは決して
宿
(
とま
)
らずに帰ろうと堅く心に誓いながら、宵に一杯やって二階の六畳にしけこむと
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
第一、多勢の客の出入に、茶の給仕さえ鞠子はあやしい、と早瀬は
四辺
(
あたり
)
を
眗
(
みまわ
)
したが——後で知れた——留守中は、
実家
(
さと
)
の
抱
(
かかえ
)
車夫が夜
宿
(
とま
)
りに来て、昼はその女房が来ていたので。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
山嵐は「おい君どこに
宿
(
とま
)
ってるか、山城屋か、うん、今に行って相談する」と云い残して
白墨
(
はくぼく
)
を持って教場へ出て行った。主任の癖に向うから来て相談するなんて不見識な男だ。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あたしたちが
牢屋
(
ろうや
)
の
原
(
はら
)
とよぶ、
以前
(
もと
)
の伝馬町大牢のあった後の町から、夕方になると、
蝙蝠
(
こうもり
)
におくられて、
日和下駄
(
ひよりげた
)
をならして弁当箱をさげて、
宿
(
とま
)
り番に通って来てくれたのだった。
旧聞日本橋:11 朝散太夫の末裔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
将軍と吾輩は駐在所へ行って、巡査に依頼してようやく、
一井
(
いちい
)
という旅館へ
宿
(
とま
)
ることとなった。いかさま、お
巡
(
まわ
)
りさんでも頼まなければ、どの家でも泊めてくれなかったかも知れぬ。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
時宜
(
じぎ
)
によればすぐにも
使者
(
ししゃ
)
をやって、よく聞きただしてみてもいいから、今夜一
晩
(
ばん
)
は不自由でもあろうが役場に
宿
(
とま
)
ってくれとのことであった。教員室には、教員が出たりはいったりしていた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
蓋平
(
がいへい
)
に
宿
(
とま
)
った晩には
細雨
(
こさめ
)
が寂しく降っていた。
二階から
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼処に、林
子爵
(
ししゃく
)
が持っていた別荘を、此春譲って貰ったのだが、此夏
美奈子
(
みなこ
)
が避暑に行った
丈
(
だけ
)
で、
俺
(
わし
)
はまだ二三度しか
宿
(
とま
)
っていないのだ。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
北の方に湖の尽きているその
彼方
(
かなた
)
は瑞西の首都
Zürich
(
チュリヒ
)
であって、ゆうべまでそこの旅舎に
宿
(
とま
)
っていたのであった。
リギ山上の一夜
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
ギル探偵夫妻は珍らしい東洋の客を歓迎して、二日や三日なら遠慮なく
宿
(
とま
)
るがいゝと
頻
(
しき
)
りに勧めた。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
それがわからんと主張するならまず三日ばかり主人のうちへ
宿
(
とま
)
りに来て見るがいい。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
丁度その月も晦日近く、慶三は
増々
(
ますます
)
この事のみに心を費しながら、夜も十時頃今夜は
宿
(
とま
)
り込むつもりで妾宅の格子戸を明けようとすると、家の中で何やら
頻
(
しきり
)
に高声に云い
罵
(
ののし
)
る男の声が聞える。
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「ここはいいわ。きょうはここで
宿
(
とま
)
りましょう」
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「五月の十日に、東京を出て、もう一月ばかり、当もなく
宿
(
とま
)
り歩いてゐるのですが、何処へ行つても落着かないのです。」
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
倔強
(
くつきやう
)
の若者が二人ばかり
宿
(
とま
)
つてゐたが、恐れてしまつて何の役にも立たなかつた時の話である。伝右衛門は祖父の名で未だ存命中であつた。熊次郎は父の名である。
念珠集
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
「そうだ。グヰンはこの土地で何事か大事な事を
謀
(
たくら
)
んでいるに違いない。」と彼は思った。彼女は何処へゆくか知らぬが、
服装
(
みなり
)
から考えても今夜はこの土地に
宿
(
とま
)
る事は明かである。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
出て来ればきっと取引先へ
宿
(
とま
)
って、用の済むまではいつまででもそこに滞在している。しかもその数は一人や二人ではない。したがって谷村君の奥座敷は一種の宿屋みたような組織にできている。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“宿”の意味
《名詞》
(やど) 住み家。
(やど) 旅先で泊まる家屋。
(出典:Wiktionary)
宿
常用漢字
小3
部首:⼧
11画
“宿”を含む語句
旅宿
宿酔
一宿
御宿
宿命
宿泊
露宿
宿世
宿屋
新宿
下宿
野宿
宿下
旅人宿
宿老
宿所
此宿
宿外
宿帳
宿直
...