ずつ)” の例文
そうして「どなたか存じませぬがお宅においでになる尺八のお好きな方に、お礼のため、毎日尺八を一曲ずつ吹いてお聴かせ申したい」
黒白ストーリー (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
舎費すなわち食糧費としては月二円でみ、予備門の授業料といえば月わずかに二十五銭(もっとも一学期分ずつ前納することにはなっていたが)
私の経過した学生時代 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
よくするためには蘡薁えびづるという蔓草つるくさくきの中に巣食すく昆虫こんちゅうを捕って来て日に一ぴきあるいは二匹ずつ与えるかくのごとき手数を要する鳥を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
一ヶ年に八十万人ずつ日本人は墓に葬らるるを知れ、全国にある四万人以上の医師は平均一日五人以上の患者を診察しつつあるを覚えよ
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
その中に諸所瀟洒しょうしゃなモオニングを着て、楽譜を手に持っている、音楽研究の若殿様と云ったような紳士が、二三人ずつ交じっていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
貝が育つ時に、その軸が中心になって針が一つずつ殖えて行くということが解った。だからその軸を見つけなければ貝にならない。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
「毎月ね、三りょうずつやりますよ。それから兄の所から三りょう宛ね、くれますよ。ソレ小遣こづかいが足りねえと、上祖師ヶ谷の様にならァね」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
月に一度、ひどい時には二度位ずつ、かならず例の発作がおこり、少しずつ夢中遊行の範囲が、広くなって行くという始末です。
二癈人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それぞれ一人ずつの私服が曲り角の所で頑張っていたのだったけれども、誰しもそこを出入した人物はなかったと云うのだった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
第一の「巳」より「男」まで、字の数二十に一本ずつ、見るも凄まじき五寸釘を打込みて、わずかに「子」の一文字をあませるのみ。
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それから、三回にわたり、五千円ずつの貯金。その貯金の前夜が恐らく、彼女の家に帰らぬ日であろう。私はなにも言わない。
野狐 (新字新仮名) / 田中英光(著)
山三郎の乗って居るのは小鰺送こあじおくりと云う小さな船だからたまりません、船は打揚げ打下うちおろされまして、揚る時には二三間ずつも空中へ飛揚るようで
ところで、その方法と言うのは、此処に集った十二人の会員が、銘々一つずつ秘蔵の話を持ち寄って、一と晩に一つずつ、十二日間に亙って競技を
のみ込んだって大丈夫だそうだわ。わたし、毎日一回ずつ十回ほど注射して貰ったのよ。あなただって、佐々木のように死にたくはないでしょう?
死の接吻 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
熊は時々馬匹に害を与うるを以て、かつてアイヌ一名を傭置やといおき、一頭を捕れば金五円ずつを臨時賞として与うることとせり。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
「いいえ、たまにで御座いますよ。日に一度ずつお供が出来ますと好いのですが、月の内には数える程しか御座いませんよ」
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
一軒の家に一斗五升なくても、三軒で五升ずつ買えばいいという南日君の声が聞える。遠くで一しきり鳴き渡っていた日ぐらしが近い木で鳴き初めた。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
鉄砲隊は、各〻火径を二尺五寸りとし、たばねて二つ折に腰にさげ、革の弾筥たまばこ二つずつ、これも左右の腰帯にくくる。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大きな畑だけれど、十月の半過ぎでは、茄子もちらほらしかなって居ない。二人でようやく二升ばかりずつを採り得た。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
敵軍の偵察艦隊から、殆んど同時に、真黄色まっきいろな煙が上った。十門ずつの八インチほうが、一斉に火蓋を切ったのだった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
『湖山楼詩屏風』と申す中へなりとも編入相願申可あいねがいもうすべく候間、いずれ律絶共に五十首ずつ後便御送り下されべく候。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ただ行く手には、同じいような形の円い沙の丘がつらなっていた。足許あしもとを見ると其処そこ此処ここに一個ずつ夢のように色の褪めた花が咲いている。白でもない。青でもない。
薔薇と巫女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二人の子供は、二三度、砂糖を少しずつ分けてやると、それに味をつけて、与助が醤油倉の仕事から帰ると何か貰うことにした。彼の足音をきゝつけると、二人は
砂糖泥棒 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
吉原開基のみぎりより寛永年中まで、吉原町の役目として、御評定所へ太夫遊女三人ずつ、御給仕に上りし也。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
これを一個ずつ地階から六階までかつぎ上げているうち、その二十八個目を三階の階段の七段目まで持ち上げたところで不覚にも眼を廻し、すなわち花もろとも、墜落。
少しずつ接近して行くうちに、博士には陰気の裏には誠意があり、堅苦しい反面には慈愛があり、無愛想の一面には公平無私のあることが、だんだん分って来たので
血液型殺人事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
先生は学校の乏しい予算の中で、毀れた物理の器械をひとつずつ丹念に修繕して行かれた。私が或る冬の日に先生の下宿を訪ねると、炭のつぎ方からして質実であった。
光り合ういのち (新字新仮名) / 倉田百三(著)
あなたがおでいになるたんびに、絹紐きぬひもを一ぽんずつってください、ね、あたしそれで梯子はしごんで、それが出来上できあがったら、したりますから、うませて、れてって頂戴ちょうだい
女を一人ずつ相手に快活に喋舌しゃべって居る二人の男は中央アメリカの高山へ望遠鏡を運んで天文学の生きた証拠をつかんだベンアリ・マッツカフェーと弟のベンアリ・ハギンだ。
ドーヴィル物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「そんなことがあるものか。天竺屋てんじくやじゃあるまいし、矢っ張り年に一つずつしか取りはしない」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
戦前から、少しずつはあったが、今のようにロシア料理、ドイツ料理、イタリー料理、などの店が、各々東京都内だけでも数軒、或るものは数十軒もあるというようなことは無かった。
ああ東京は食い倒れ (新字新仮名) / 古川緑波(著)
砂糖は〇・六斤一人ずつで、一斤八です。これは別のところでは通用しない切符です。この紙の六つ切ぐらいのに、卒業証書のように東京市の印が朱で押してあって、面白いものです。
花はその事の頂端に一個ずつありてはなはだ大きく、花色は紅色のものが普通でありますが、また白色のものがあります。また花色にも濃淡等ありて園芸家は種々の品種を作って居ります。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
季のものの用い方の説明はなお動物、植物、人事、時候から各二句ずつを取り出してそれに結論をつけて一段落とするはずでありますが、あまり長くなりますからそれは次章にゆずります。
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
半年に一つずつ、弥兵衛は仙辰一座にネタを売った、生活はそれで立った。
奇術考案業 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
そしてそんな物々ものものしい駄目だめをおしながらその女の話した薬というのは、素焼すやき土瓶どびんへ鼠の仔を捕って来て入れてそれを黒焼きにしたもので、それをいくらかずつかごく少ない分量を飲んでいると
のんきな患者 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
造られる爆弾はひとつずつ 黒い落下傘でぼくらの坩堝るつぼに吊りさげられる
原爆詩集 (新字新仮名) / 峠三吉(著)
傷は頸の両側にあり、奇怪な事には、それが三つずつ、まるで長い爪を突立つきたてたような形になっていた。——出血はひどいが生命いのちに別状はなさそうだ。新田は寛衣ガウンの裾を引裂ひきさいて手早く繃帯ほうたいをしながら
廃灯台の怪鳥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
いわば自身で仕立てた不孝の子二十四名を荒れ出すが最後得たりや応と引括ひっくくって、二進にっちん一十いんじゅう、二進の一十、二進の一十で綺麗に二等分して——もし二十五人であったら十二人半ずつにしたかも知れぬ
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
何の罪がある? 何の報いで咽喉のど焦付こげつきそうなこのかわき? かわく! かわくとは如何どんなものか、御存じですかい? ルーマニヤを通る時は、百何十度という恐ろしい熱天に毎日十里ずつ行軍したッけが
それじゃアまアお話ししてみますが、あの婆さんは毎月一度ずつ、駅の前の郵便局へ金を預けに行く時のほかは滅多にうちを出ません。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
今日の園遊会なんか、一人ずつ五十円とか百円とかを、入れるとか何とか云っているそうですが、あの俗悪な趣向を御覧なさい。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
毎年二度三疋四疋ずつ子を生む。ピンの子孫しそんが近村に蕃殖した。近頃畜犬税がやかましいので、子供を縁づけるに骨が折れる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
なにどうせ幾度も汲みにくんで、うちの姐さんは清潔家きれいずきでもってかめの水を日に三度ずつも替えねえと孑孑ぼうふらが湧くなんてえ位で
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
総角あげまき十文字じゅうもんじひしかにうろこ、それにも真行草しんぎょうそうの三通りずつ有った。流儀々々の細説は、写本に成って家に伝わっていた。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
門野は毎朝縁側の硝子戸を一二枚ずつ開けないで、元の通りに放って置く癖があった。代助は席を立って、縁へ出て、水を庭へ空けながら、門野を呼んだ。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
雪の厚さは二丈余りもあろう、夫が三、四尺ずつ層をなして堆積している、層と層との間には土や小石の混った幅二、三寸の汚れた雪の縞が織り込まれている。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
大勢寄ってなさる仕事を、貴女方、各々めいめい御一人ずつで、専門に、完全に、一にんを救って下さるわけには参りませんか。力が余れば二人です、三人です、五人ですな。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この調子では今に警視庁は都下に起る毎日百人ずつの死者の枕頭ちんとうに立って殺人審問をしなければ居られなくなるだろうなどと毒舌どくぜつふるい、一杯かつがれた腹癒はらいせをした。
赤耀館事件の真相 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ボーイさん、カクテールを一杯ずつ、人数だけだ、前祝に献じよう。——どっこい、園女史はアルコホールでもあるまい。お人柄だけに甘いものでも差上げてくれ」
女記者の役割 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)