“嬲:なぶ” の例文
“嬲:なぶ”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花10
樋口一葉9
国枝史郎8
吉川英治7
夏目漱石5
“嬲:なぶ”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 演劇 > 大衆演芸6.5%
文学 > 日本文学 > 小説 物語2.7%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
その藻草があたかも生温なまぬるい風になぶられるように、波のうねりで静かにまた永久に細長い茎を前後にうごかした。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
往来の両側には名物うんどん、牛肉、馬肉の旗、それから善光寺もうでの講中のビラなどが若葉の頃の風になぶられていた。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「おおさては汝が作左衛門か、貧乏大名の粥喰かゆくいが何ほどの腕立て、邪魔立て致す分に於いてはなぶごろしだぞ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蹴飛ばしてやろう、おのれ、見返してやろう、おのれだましてやろう、なぶってやろう、死ぬような目にあわしてやろう。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ばちたゝみすこびあがりておもておろせば、なん姿すがたえるかとなぶ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「あれ、親分さん、ほんとでございますか。」文字若はもう顔色を変えている。「おなぶりなすっては嫌でございますよ。」
春風になぶらせてゆく面構えのどこかには「……ままよ」といったふうな地蔵あばたの太々しさが、いつも多少の笑みを伴っている。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
吾々人間は云わばあとからあとへ生れて来る愚にもつかない幻影に魅せられて、永久にそのなぶりものになっているのだ。
柿丘秋郎は、とらえた鼠をなぶってよろこぶ猫のような快味を覚えながら、着々とその奇怪な実験の順序を追っていったことだった。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
取着き引着ひッつき、十三の茸は、アドを、なやまし、なぶり嬲り、山伏もともに追込むのがじょうであるのに。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「大弐の遺児の兄弟三人、紋也と小次郎と鈴江をなぶり殺しにいたさないことには、胸の中が晴れませんでござります」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「その用というのは——あの、戸部近江之介と共に拙者をなぶり、ついに拙者をして今日の破目におとし入れた西丸御書院番の番士一統」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
大宮人のしなやかな辛抱づよさを笑みにもって、相手の風向きに逆らわず、なぶれば、嬲らせている世に古い老い柳のごとき姿であった。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こんな奴の癖に人に調戯からかったり、なぶったり、はずかしめたりするのかと思ったら、なおなお道を聞くのがいやになった。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「なるほど、それほどの強情なら、殺されるまでも明かすまい。……女よ! お死に! 殺してあげよう! なぶり殺しだ、まずこうだ!」
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ほかほかとおなじ日向ひなたに、藤豆の花が目を円く渠を見た。……あの草履をなぶったのがうらやましい……赤蜻蛉が笑っている。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「こういう奴が油断がならねえんです。いずれ今日明日のうちにゃあ、例の所でなぶり殺し、岩屋のこけこやしになるんでさあ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かくして彼は心置なく細君からなぶられる時の軽い感じを前に受けながら、背後はいつでも自分の築いた厚い重い壁にりかかっていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とほるばかりのわかに身体を浸し温めて、しばらく清流の響に耳をなぶらせる其楽しさ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「え」と云ったものの片足の吉次は、松代の顔を盗むように見た。「なぶっちゃアいけない。嬲っちゃアいけない」
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私は調戲はれると言ふよりはなぶられるやうな氣がして、その度に堪へ難い侮辱はづかしめを感じて居りました。
彼らは捕虜を廻りながら、手に持っている槍や刀で捕虜の体を切るのであった。そうしてほとんど一日がかりでなぶり殺しにするのであった。
その当惑した二人の者を、尚もなぶろうとでもするかのように、三度、勇ましい鬨の声が谷の四方から湧き起った。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
人を馬鹿にしたようなあの茶目ぶり、読んで面白いには相違ありませんが、しかしなんだかなぶられているようで、寂しい感じも起こるのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
二人がひそひそと語らいながら、私の顔を見ては何事か笑い興ずるような時など、私は胸をえぐってなぶり殺しにされるような思いがした。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
一寸法師いつすんぼし生意氣なまいきつまはじきしてなぶりものに烟草休たばこやすみのはなしのたねなりき。
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
二人は鋼線はりがねを太い繩にした欄干にもたれて西日を背に享け乍ら、涼しい川風に袂をなぶらせて。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
夜は宿中しゅくじゅう旅籠屋はたごやまわりて、元は穢多えたかも知れぬ客達きゃくだちにまでなぶられながらの花漬売はなづけうり
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
凄いつらがまえにも似もやらず、捕まえた餌物えものをむしろなぶるかのように気が長いのである。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
云い終るとまた、横になって、微酔びすいものうげな眼を、春風になぶらせて閉じてしまった。
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
温い水を背に押し分けて去るあとは、一筋のうねりを見せて、去年のあしを風なきになぶる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かくれする湯気ゆげなぶるやうに、湯気ゆげがまた調戯からかふやうに、二人ふたり互違たがひちがひに、覗込のぞきこむだり
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こうしたなぶり殺しに逢うほどならば、いっそひと思いに死んだ方がましであるようにも思われた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
出て見ると春の日は存外長閑のどかで、平気にびんなぶる温風はいやに人を馬鹿にする。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
昔、彼が、破産した男の土地を、値切り倒して面白がって買ったように、今度は、若いほかの男が、彼の土地をなぶるように値切りとばした。二束三文だった。
浮動する地価 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
燈火あかりそむいた其笑顏が、何がなしに艶に見えた。涼しい夜風が遠慮なく髮をなぶる。庭には植込の繁みの中に螢が光つた。子供達は其方にゆく。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ところがこの怒目どもく主義を採用してから、未荘のひま人はいよいよ附け上がって彼をなぶり物にした。ちょっと彼の顔を見ると彼等はわざとおッたまげて
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
神様の前では、オヤジだの常務だのと、まるで彼一人なぶられ者にされているような有様だった。
現代忍術伝 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
おそろしい、をとこつてほねかくす、とむらのものがなぶつたつけの……真個ほん孤屋ひとつやおにつて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
思うがままに苦しめて、そうして最後になぶり殺しにし、木曽の館を滅亡ほろぼしてくれよう。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「良正。——将門がこれへ来ても、余りなぶらんがいいぞ。嬲り者にして、怒らしても始まらぬ」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一寸法師いつすんぼしの生意氣と爪はぢきして好いなぶりものに烟草休みの話しの種成き。
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一寸法師の生意気とつまはぢきして好いなぶりものに烟草たばこ休みの話しの種成き。
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お重は自分の好奇心を満足させないのみか、かえって向うからこっちをなぶりにかかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いつも悪い役をふられ、憎まれて、なぶり殺しにされたり、役人に処刑されたりしました。
桜の森の満開の下 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
赤蜻蛉菱藻ひしもなぶり初霜向ふが岡の樹梢こずゑを染めてより全然さらりと無くなつたれど、赭色たいしやになりてはすの茎ばかり情無う立てる間に
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「うむ! きゃつら十七人がはらを合わせ、一人の拙者をなぶりになぶり、拙者もついに勘忍かんにんぶくろのを切って、事こんにちに到ったのだッ!」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
梅「いやさ、云わんければ手前はなぶごろしにしても云わせなければならん、其の代り云いさえすれば小遣こづかいの少しぐらいは持たしてゆるしてやる」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
醜く・鈍く・ばか正直な・それでいて、自分の愚かな苦悩を隠そうともしない悟浄ごじょうは、こうした知的な妖怪ばけものどもの間で、いいなぶりものになった。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そうして最後おしまいには自分が可愛いと思っている相手を、自分の手にかけてなぶり殺しか何かにしてしまわなくちゃ、気が済まないようになるんですってさあ。
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
酔った頬を、夜風になぶられる快さからか、四人の者は、雨戸のあいに、目白のように押し並び、しばらくは雑談に耽ったが、やがて部屋の中へはいった。とたんに、
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この美女たちがいずれも長い裳裾もすそを曳き、薄い練絹ねりぎぬ被衣かつぎを微風になぶらせながら、れ違うとお互いにしとやかな会釈を交わしつつ
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
京姫は絶句しました。それは紛れもなく何時いつぞや此処ここに迷い込んで、腰元達になぶりものにされた青侍の、見る影もなく痩せさらばえた姿ではありませんか。
柚木はこんな小娘になぶられる甘さが自分に見透かされたのかと、心外に思いながら
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
乱れた髪の毛が渦を巻き、左の肩へ垂れているのが、微風になぶられて顫えている。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こうも世の風になぶらるゝものかとうつむきて、横眼に交張まぜばりの、袋戸ふくろど広重ひろしげが絵見ながら、くやしいにつけゆかしさ忍ばれ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それ許りでなく、猫が鼠をなぶる如く敗者の感情を弄ばうとする、荒んだ戀の驕慢プライドは、も一度清子をして自分の前に泣かせて見たい樣な希望さへも心の底に孕んだ。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
燈火あかりに背いた其笑顔ゑがほが、何がなしに艶に見えた。涼しい夜風が遠慮なく髪をなぶる。庭には植込の繁みの中に螢が光つた。小供達はそのはうにゆく。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
新聞は、婦人を裸体にして云うに忍びざる惨酷ななぶり方の後、虐殺した、と書いた。娘は局所に棒を突きこまれ、腕の骨を棍棒で叩き折られ、両眼をくりぬかれた。と書いた。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
なぶごろしにした上に、嬲り梟しというものに挙げられているので、轟の源松が、あっ! と言ってそれを見直した時に、机竜之助が、淋しげに微笑を含んで言いました。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「どこまでもこの俺をなぶる気なのだな」と——で、こだわらずに話しかけた。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そして、なぶるように脛を竹刀で、あっち側こっち側と、間をおいてぶった。
刻々 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
上気した頬を海風になぶらせ、かがやくみぎわの波に足許を洗わせながら
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
赤蜻蛉あかとんぼ菱藻ひしもなぶり初霜向うが岡の樹梢こずえを染めてより全然さらりとなくなったれど、赭色たいしゃになりてはすの茎ばかり情のう立てる間に
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
表町へものこ/\と出かけるに、何時も美登利と正太がなぶりものに成つて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おそらく私を見出したならば彼は会心の微笑を洩らして最も残酷ななぶり打ちを浴せ、跳ねては転びしながら逃げ回るであろう私達の悲惨な姿を現出させて鬱屈を晴らすに違いない。
ゼーロン (新字新仮名) / 牧野信一(著)
土は點々として、川岸に續きました。崩れた石垣の上から覗くと、其處にはとまを掛けた船が一隻、人が居るとも見えず、上げ潮に搖られて、ユラユラと岸をなぶつて居ります。
何時いつ美登利みどり正太しようたなぶりものになつつて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
千浪は安心して、惜気おしげもなくその身体からだを湯になぶらせて
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
今しも台所にては下婢おさん器物もの洗ふ音ばかりして家内静かに、他には人ある様子もなく、何心なくいたづらに黒文字を舌端したさきなぶおどらせなどして居し女
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
御晩食おゆはんの後は奥様と御対座おさしむかい、それは一日のうちでも一番楽しい時で、笑いさざめく御声が御部屋かられて、耳をなぶるように炉辺までも聞える位でした。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「お嬢様、そんなことをおっしゃって、わたしをおなぶりなさいます」
「風さえわたしなぶっているよ」彼女はそこでニッコリとした。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「亭主持がすさまじいや、むこうから切られた癖に、何だ、取揚婆のさかさまめ、」まさかにこうとは思い懸けず、いやがらせをやって、なぶっておごらせた上、笑い着けて
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今しも台所にては下婢おさん器物もの洗う音ばかりして家内静かに、ほかには人ある様子もなく、何心なくいたずらに黒文字を舌端したさきなぶおどらせなどしていし女
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
嬰児の口のような桃色の乳首! なぶられた事のない乳首であった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
葉子は素直に伸びた白い脛を、浪になぶらせては逃げ逃げしていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ふてくされた、凄艶な頬を、海風に、びんの毛がなぶっている。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きっと困るであろうとなぶるのはチャントわかって居る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
彼は帽子を脱いで、微風に髮をなぶらせひたひに接吻させた。
こびるやうな、なぶるやうな、そしてなにかにあこがれてゐるやうな其の眼……私は少女せうぢよの其の眼容まなざし壓付おしつけられて、我にもなく下を向いて了つた。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
即座に縛り首だ! 五郎蔵め、思い知るがいい! ……お浦もお浦だ、女の分際で、色仕掛けで俺をたばかり、殺そうとは! どうともして引っ捕らえ、なぶり殺しにしてやらなけりゃア!
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
なぶり殺し、——さらし首、——そして死骸は犬に——」
芳年写生帖 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
背負しよひあるくさま、年はと問へば生意気ざかりの十六にも成りながらその大躰づうたいを耻かしげにもなく、表町へものこのこと出かけるに、何時も美登利と正太がなぶりものに成つて
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「君はこの僕をなぶるつもりだナ。卑劣なことはよし給え」
火葬国風景 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しょろしょろ、浪がなぶるような、ひそひそと耳に囁く声。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と丁寧におじぎをして帰っていった。小さいとききいた伯母さんの話によると天狗様はおりおりこんなことをして人をなぶりにくるという。まずはお気にさわるようなこともいわないでよかったと思う。
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)
「貴女は私をなぶっているんじゃないんですか?」
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
なぶり殺しにしたかったということなのであった。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
主人は家来をなぶり殺しにしても仔細はない。
番町皿屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
もちろん大した腕前ではなかったが、くろがね天狗の扮装がスッと出たばかりで相手はとたまりもなく腰をぬかしてしまうのだから、それから後は言わば自由の利かない人間をなぶり殺しにするようなものだった。
くろがね天狗 (新字新仮名) / 海野十三(著)
伊東は彼をなぶるときに、よく、
暴風雨に終わった一日 (新字新仮名) / 松本泰(著)
『やあ、おうらなぶる、』
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なぶり殺しにしたものであった。
彼が殺したか (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
なぶり殺しが止みますならば。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
が、漸く平中も思いを遂げて、長い間のあこがれの的であった人と逢う瀬を楽しむ境涯きょうがいになったものゝ、それから後も皮肉屋の女の癖は改まらず、やゝもすれば意想外な悪戯いたずらを考え出してなぶりものにし
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
なぶごろしにして遣ろうという謀計ぼうけいが胸に浮んだから、今夜空泣そらなきして改心のていを見せたのだが流石さすがは町人、智慧は足りねえ、そんなら行って見届けてやろうと高慢振ってぬかしたが
海風に髪をなぶらせている、っそりとしたスパセニアの姿を眺めているうちに、私は勝気なくせに淋しそうな娘の、美しいからだを力一杯抱き締めてやりたいような、またいつかのジーナに対するような熱情を感じました。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
その怨み重なる伯爵夫人を——いかにして自分の気持の癒えるまでなぶり殺しにするかということだけが、今の私にとっては手一杯の問題で、そんな妻を殺した後の私自身の始末なぞはその場の都合でどうでもいいことなのであった。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
「何の、師直が一存でおざる。自体、わが殿は、おとなし過ぎる。さればこそ、伊吹の鵺殿ごときになぶらるる。それを無念と存じ、今日のご接待役、この師直が、あえて買って出た次第でおざる。ゆめ、わが殿へ遺恨をおふくみ下さるるな」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)