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妄
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みだり
ふりがな文庫
“
妄
(
みだり
)” の例文
謙遜
(
けんそん
)
か、
傲慢
(
ごうまん
)
か、はた彼の国体論は
妄
(
みだり
)
に仕うるを欲せざりしか。いずれにもせよ彼は依然として饅頭焼豆腐の境涯を離れざりしなり。
曙覧の歌
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
宋人の
妄
(
みだり
)
に変改を加へたのは
慮
(
おもんぱかり
)
の足らなかつたものである。題号の外台は、徐春甫が「天宝中出守大寧、故以外台名其書」と云つた。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
しかも巽斎はその詩文にさへ、
妄
(
みだり
)
に才力を
弄
(
ろう
)
さうとしない。たとひ応酬の義理は欠いても、唯好句の
嗒然
(
とうぜん
)
と懐に入る至楽を守つてゐる。
僻見
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
自分一個のおぼつかない標準によって、
妄
(
みだり
)
に古句の価値を判定してかかるよりも、もう少し広い意味から古句に注意を払いたいのである。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
されども
擅
(
ほしいまま
)
に謝張を殺し、
妄
(
みだり
)
に年号を去る、何ぞ法を奉ずると云わんや。
後苑
(
こうえん
)
に軍器を作り、密室に機謀を錬る、これ
分
(
ぶん
)
に
循
(
したが
)
うにあらず。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
▼ もっと見る
哲学にあらざる哲学は吾人の尤も多く敬服する所なり、吾人も亦た詩人哲学者小説家等が
妄
(
みだり
)
に真理を貪るを
悪
(
にく
)
む者なり。
人生の意義
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
兎に角鱷は人の所有物ですから、それを
妄
(
みだり
)
に切り開ける事は出来ません。と申すのはその持主に代価を辨償せずに、切り開ける事は出来ないのです。
鱷
(新字旧仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
つねに儒仏の道を唱えて
妄
(
みだり
)
に泰西の学説を口にせざるがゆえに、俗人は誤りてこれを保守論派と名づけたるに似たり。
近時政論考
(新字新仮名)
/
陸羯南
(著)
再読するにまのあたり生ける先生の言を聞くが如し。
妄
(
みだり
)
にこれを左に録する
所以
(
ゆえん
)
感慨全く禁ずべからざるがためなり。
書かでもの記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
淫慾
(
いんよく
)
も
財慾
(
ざいよく
)
も
慾
(
よく
)
はいづれも身を
亡
(
ほろぼ
)
すの
香餌
(
うまきゑさ
)
也。
至善
(
よき
)
人は路に千金を
視
(
み
)
、
室
(
いへ
)
に
美人
(
びじん
)
と
対
(
たい
)
すれども
心
(
こゝろ
)
妄
(
みだり
)
に
動
(
うごか
)
ざるは、
止
(
とゞま
)
ることを
知
(
し
)
りて
定
(
さだま
)
る事あるゆゑ也。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
〔評〕南洲人に
接
(
せつ
)
して、
妄
(
みだり
)
に
語
(
ご
)
を
交
(
まじ
)
へず、人之を
憚
(
はゞか
)
る。然れども其の人を知るに及んでは、則ち心を
傾
(
かたむ
)
けて之を
援
(
たす
)
く。其人に非ざれば則ち
終身
(
しゆうしん
)
言
(
い
)
はず。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
その翌日、三宅は役所に召喚され、
妄
(
みだり
)
に浪人を滞在させ云々のかどをもって、閉門謹慎を申付けられ、これをもって、連島貿易の一件は、けりとなった。
志士と経済
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
自分の男性に対する魅力を、楽しむために、無用に男性を魅していることを知った。丁度、激しい毒薬の所有者が、その毒の効果を自慢して
妄
(
みだり
)
に人を毒殺するように。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
血気
(
けっき
)
の
輩
(
はい
)
が、ただ社会の騒動を
企望
(
きぼう
)
して変を好み、自己の利益をもかえりみずして
妄
(
みだり
)
に殺伐をこととするは、平安の主義にもとるが如くなれども、つまびらかにその内情を察すれば
教育の目的
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
衛生の事を知らずして
妄
(
みだり
)
に衛生の名を
冠
(
かぶ
)
せる如きは最も生意気といわざるを得ない。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
その結果、我々はすこしでも動き廻れば背中がつかえるか、頭をぶつけるかで、ドクタアはこの背骨折りの経験中、絶えず第三の誡命〔「汝の神エホバの名を、
妄
(
みだり
)
に口にあぐべからず」
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
これは
妄
(
みだり
)
に虚説を信ずる者を
誡
(
いまし
)
めた譬喩だが、この話の体はいわゆる
逓累話
(
キユミユラチブ・ストリー
)
というもので、グリンム、クラウストンその他の俚話を
蒐
(
あつ
)
めた著書に多く見える、「クラウストン」より一例を引くと
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
妄
(
みだり
)
に言へるならんと
念
(
おも
)
へど、
如何
(
いか
)
にせん貫一が胸は
陰
(
ひそか
)
に
轟
(
とどろ
)
けるを。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
我輩ヲ海外ニ送テ
妄
(
みだり
)
ニ害ヲ加ヘントスル為メナリ。
アメリカ独立宣言
(新字旧仮名)
/
トマス・ジェファーソン
(著)
高言
妄
(
みだり
)
に吐く汝、デーイポボスよ認むるや?
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
例へばまだ無邪気なる小児が他人の家に入りて
妄
(
みだり
)
にその家の所有物(玩器なりとも)を持ち帰るが如き、児にありては悪意と認むべき者なきも
病牀譫語
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
私は御同業の芸術家諸君を
妄
(
みだり
)
に貶しめる無礼もなく、安んじて龍村さんの女帯を天下に推称する事が出来るのである。
竜村平蔵氏の芸術
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
諸子は
縦
(
たと
)
ひ
奈何
(
いか
)
なる事に遭遇するとも、従容としてこれに処し、
妄
(
みだり
)
に言動すること無く、天下をして柏軒門下の面目を知らしむる様に心掛けるが好い。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
俳人が別離の情を叙するに当って
妄
(
みだり
)
に悲しまず、必ずしも相手の健康を祈らず、不即不離の
裡
(
うち
)
に或情味を寓するの妙は、この句からも十分受取ることが出来る。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
野人の分を忘れ
己
(
おの
)
れを省ずして
妄
(
みだり
)
に尊王愛国の説をなすもの多きを見て枕山はこれを
諷刺
(
ふうし
)
したのである。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
彼にも粋あり、此にも粋あり、彼にも
糠
(
かう
)
あり、此にも糠あり、
妄
(
みだり
)
に此の粋を以て、彼の粋を撃たんとするは誰ぞ。
縦
(
ほしいまゝ
)
に此の糠を以て、彼の糠を排せんとするは誰ぞ。
頑執妄排の弊
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
南洲曰ふ、夫れ復古は
易事
(
いじ
)
に非ず、且つ九重
阻絶
(
そぜつ
)
し、
妄
(
みだり
)
に藩人を通ずるを得ず、必ずや
縉紳
(
しんしん
)
死を致す有らば、則ち事或は成らんと。又
後藤象
(
ごとうしやう
)
次郎に
往
(
ゆ
)
いて之を説く。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
爐中の炭火を
妄
(
みだり
)
に暴露せざるが如きものであつて、たとひ之を惜むこと至極するにせよ、
新
(
あらた
)
に炭を加ふる有るにあらざれば、別に其の火勢火力の増殖する次第でも無い。
努力論
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
丁度、激しい毒薬の所有者が、その毒の効果を自慢して
妄
(
みだり
)
に人を毒殺するやうに。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
豈料
(
あたはか
)
らんや藤原
実美
(
さねとみ
)
等、
鄙野匹夫
(
ひやひっぷ
)
の暴説を信用し、
宇内
(
うだい
)
の形勢を察せず国家の
危殆
(
きたい
)
を思はず、
朕
(
ちん
)
が命を
矯
(
ため
)
て軽率に攘夷の令を布告し、
妄
(
みだり
)
に討幕の
師
(
いくさ
)
を
興
(
おこ
)
さんとし、長門宰相の暴臣の
如
(
ごと
)
き
尊攘戦略史
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
唯、予が告白せんとする事実の、余りに意想外なるの故を以て、
妄
(
みだり
)
に予を
誣
(
し
)
ふるに、神経病患者の名を
藉
(
か
)
る事
勿
(
なか
)
れ。
開化の殺人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかし口碑などと云ふものは、
固
(
もと
)
より
軽
(
かろがろ
)
しく信ずべきでは無いが、さればとて又
妄
(
みだり
)
に疑ふべきでも無い。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
○我国にては扇は昔より男子の
携持
(
たずさえも
)
ちたるものなれど、人の面前にて
妄
(
みだり
)
に涼を取るものにはあらず、形容をつくらんがため手に持つのみにて開閉すべきものにはあらざるべし。
洋服論
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
妄
(
みだり
)
に動けば
悔
(
くい
)
あり
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
妄
(
みだり
)
に道徳に反するものは経済の念に乏しいものである。妄に道徳に屈するものは臆病ものか怠けものである。
侏儒の言葉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
街頭の俗謡といへども
固
(
もと
)
より作者の存するあり。当時教科書編纂者のなすが如くだまつて他人の文を盗用するは礼にあらず。故に一言して
妄
(
みだり
)
にその断片を採つてここに録する
所以
(
ゆえん
)
を述ぶ。
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
妄
(
みだり
)
に道徳に反するものは経済の念に乏しいものである。妄に道徳に屈するものは
臆病
(
おくびょう
)
ものか怠けものである。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
わたくしは毅堂が日録の全文を取って
妄
(
みだり
)
に次の如くに書きかえた。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
云うこと勿れ、
巴毗弇
(
はびあん
)
、天魔の愚弄する所となり、
妄
(
みだり
)
に
胡乱
(
うろん
)
の言をなすと。天主と云う名に
嚇
(
おど
)
されて、
正法
(
しょうぼう
)
の
明
(
あきらか
)
なるを
悟
(
さと
)
らざる
汝
(
なんじ
)
提宇子
(
でうす
)
こそ、愚痴のただ中よ。
るしへる
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
今
妄
(
みだり
)
に
送
(
おくり
)
仮名を附して次の如く書き改めた。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その故に他の作家、殊に本来密を喜ぶ作家が、
妄
(
みだり
)
に菊池の小説作法を
踏襲
(
たふしふ
)
したら、
勢
(
いきほひ
)
雑俗の
病
(
へい
)
に
陥
(
おちい
)
らざるを得ぬ。自分なぞは気質の上では、
可也
(
かなり
)
菊池と
隔
(
へだた
)
つてゐる。
雑筆
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
この一家の主人にして
妄
(
みだり
)
に発狂する権利ありや否や? 吾人はかかる疑問の前に
断乎
(
だんこ
)
として否と答うるものなり。試みに天下の夫にして発狂する権利を得たりとせよ。
馬の脚
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
横川
(
よかわ
)
の僧都は、今
天
(
あめ
)
が
下
(
した
)
に
法誉無上
(
ほうよむじょう
)
の
大和尚
(
だいおしょう
)
と承わったが、この法師の眼から見れば、天上皇帝の照覧を
昏
(
くら
)
まし奉って、
妄
(
みだり
)
に鬼神を使役する、云おうようない
火宅僧
(
かたくそう
)
じゃ。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「いや、たとひ恩を着ぬにもせよ、
妄
(
みだり
)
に
生類
(
しやうるゐ
)
の命を断つなどとは、
言語道断
(
ごんごだうだん
)
でござらう。」
虱
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
すると芭蕉以外の人には五六年は勿論、三百年たつても、一変化することは出来ぬかも知れぬ。七合の俳諧も同じことである。芭蕉は
妄
(
みだり
)
に街頭の
売卜
(
ばいぼく
)
先生を真似る人ではない。
芭蕉雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
予の梅花を見る
毎
(
ごと
)
に、文人趣味を
喚
(
よ
)
び起さるるは既に述べし所の如し。然れども
妄
(
みだり
)
に予を以て
所謂
(
いはゆる
)
文人と
做
(
な
)
すこと
勿
(
なか
)
れ。予を以て
詐偽師
(
さぎし
)
と
做
(
みな
)
すは可なり。謀殺犯人と做すは可なり。
続野人生計事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
われらが寝所には、
久遠本地
(
くおんほんじ
)
の諸法、
無作法身
(
むさほっしん
)
の諸仏等、悉く
影顕
(
えいげん
)
し給うぞよ。されば、道命が住所は
霊鷲宝土
(
りょうじゅほうど
)
じゃ。その方づれ如き、
小乗臭糞
(
しょうじょうしゅうふん
)
の持戒者が、
妄
(
みだり
)
に足を
容
(
い
)
るべきの仏国でない。
道祖問答
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その三は
傲慢
(
がうまん
)
也。傲慢とは
妄
(
みだり
)
に他の前に自己の所信を屈せざるを言ふ。
大導寺信輔の半生:――或精神的風景画――
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
阿諛
(
あゆ
)
は、恐らく、かう云ふ時に、
最
(
もつとも
)
自然に生れて来るものであらう。読者は、今後、赤鼻の五位の態度に、
幇間
(
ほうかん
)
のやうな何物かを見出しても、それだけで
妄
(
みだり
)
にこの男の人格を、疑ふ可きではない。
芋粥
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
何か
仔細
(
しさい
)
がなくては、
妄
(
みだり
)
に
主家
(
しゅか
)
を駈落ちなどする男ではない。
忠義
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
妄
常用漢字
中学
部首:⼥
6画
“妄”を含む語句
妄想
虚妄
妄執
妄言
妄説
妄念
妄誕
迷妄
妄語
狂妄
誇大妄想狂
譫妄
無妄
弁妄
妄動
妄信
妄論
妄漫
謬妄
妄像
...