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天鵝絨
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びろうど
ふりがな文庫
“
天鵝絨
(
びろうど
)” の例文
御存じの通り、よっかかりが高いのですから、その
銀杏返
(
いちょうがえし
)
は、髪も低い……
一寸
(
ちょっと
)
雛箱へ、空色
天鵝絨
(
びろうど
)
の蓋をした形に、
此方
(
こっち
)
から見えなくなる。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そしてその黒
天鵝絨
(
びろうど
)
のマントを、パッと真紅な裏を見せながら脱ぎ捨てると、小屋の天井の両端から、一本ずつ垂らされた綱に、手をかけた。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
広い肩、円い
項
(
うなじ
)
、丈夫な手、ふつくりして日に焼けた頬、
天鵝絨
(
びろうど
)
のやうに柔い目、きつと結んだ、薄くない唇、それに
背後
(
うしろ
)
で六遍巻いてある、濃い、黒い髪。
聖ニコラウスの夜
(新字旧仮名)
/
カミーユ・ルモンニエー
(著)
暗碧なる夜は大地を覆ひ來たり、高低さまざまなる木は
天鵝絨
(
びろうど
)
の如き色に見ゆ。一葉ごとに夜氣を吐けり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
若し大きい声をしたら、この
天鵝絨
(
びろうど
)
のやうな青い夜の空の下で、石の如き沈黙を守つて、そつと傍観してゐる何物かの邪魔をすることにならうかと憚るのである。
センツアマニ
(新字旧仮名)
/
マクシム・ゴーリキー
(著)
▼ もっと見る
外記は
天鵝絨
(
びろうど
)
に緋縮緬のふちを付けた三つ蒲団の上に坐っていた。うしろに
刎
(
は
)
ねのけられた
緞子
(
どんす
)
の
衾
(
よぎ
)
は同じく緋縮緬の裏を見せて、燃えるような真っ紅な口を大きくあいていた。
箕輪心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
中にまじりたる
少女
(
おとめ
)
らが黒
天鵝絨
(
びろうど
)
の
胸当
(
ミイデル
)
晴れがましゅう、
小皿
(
こざら
)
伏せたるようなる
縁
(
ふち
)
せまき
笠
(
かさ
)
に
艸花
(
くさばな
)
さしたるもおかしと、たずさえし目がね
忙
(
いそが
)
わしくかなたこなたを見めぐらすほどに
文づかい
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
俗な、見苦しい、古風な座敷で、椅子や長椅子には緋の
天鵝絨
(
びろうど
)
が張ってある。その天鵝絨は物を中に詰めてふくらませてあって、その上には目を傷めるような強い色の糸で十文字が縫ってある。
田舎
(新字新仮名)
/
マルセル・プレヴォー
(著)
かの
美
(
は
)
しき
越歴機
(
えれき
)
の夢は
天鵝絨
(
びろうど
)
の
薫
(
くゆり
)
にまじり
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
生きた
天鵝絨
(
びろうど
)
よ
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
さまで重荷ではないそうで、唐草模様の
天鵝絨
(
びろうど
)
の
革鞄
(
かばん
)
に信玄袋を
引搦
(
ひきから
)
めて、こいつを片手。片手に
蝙蝠傘
(
こうもりがさ
)
を
支
(
つ
)
きながら
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
此澤はアルバノ山下に始まりて、北ヱルレトリより南テルラチナに至る。馬夫のしばし歩を留めし時、われは仰いで青空の漸く紅に染まりゆきて、山々の色の青
天鵝絨
(
びろうど
)
の如くなるを視き。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
式部官が突く
金総
(
きんぶさ
)
ついたる杖、「パルケット」の板に触れてとうとうと鳴りひびけば、
天鵝絨
(
びろうど
)
ばりの扉一時に音もなくさとあきて、広間のまなかに
一条
(
ひとすじ
)
の道おのずから開け、こよい六百人と聞えし客
文づかい
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
噺
(
はや
)
し立てられたジンタが済むと、旋風のような、観客の拍手に迎えられて、ぴったりと身についた桃色の肉襦袢を着、黒
天鵝絨
(
びろうど
)
の飾りマントを羽織った黒吉と、同じ
扮装
(
こしらえ
)
の葉子とが、手を取りあって
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
天鵝絨
(
びろうど
)
深くひきかつぎ、
今日
(
けふ
)
も涙す。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
膝を
支
(
つ
)
いたので、乳母が
慌
(
あわて
)
て
確乎
(
しっかり
)
抱
(
だ
)
くと、
直
(
すぐ
)
に
天鵝絨
(
びろうど
)
の
括枕
(
くくりまくら
)
に
鳩尾
(
みぞおち
)
を
圧
(
おさ
)
えて、その上へ胸を伏せたですよ。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
われは樂を聽きて悶を遣らんがために往きぬ。聽衆は堂の内外に押し掛け居たり。前なる
椅榻
(
こしかけ
)
には貴婦人肩を連ねたり。色絹、
天鵝絨
(
びろうど
)
もて飾れる
觀棚
(
さじき
)
の彫欄の
背後
(
うしろ
)
には、外國の王者並び坐せり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
正面
(
まとも
)
なる
新橋
(
しんばし
)
の
天鵝絨
(
びろうど
)
の
空
(
そら
)
の深みに
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
柔肌
(
やわはだ
)
に食い入るばかり、金
金具
(
かなぐ
)
で留めた
天鵝絨
(
びろうど
)
の
腕守
(
うでまもり
)
、内証で神月の
頭字
(
かしらじ
)
一字、神というのが彫ってある。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
天鵝絨
(
びろうど
)
の
赤
(
あか
)
きふくらみうちかつぎ
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
天鵝絨
(
びろうど
)
の
括枕
(
くくりまくら
)
を横へ取って、足を
伸
(
のば
)
して
裙
(
すそ
)
にかさねた、
黄縞
(
きじま
)
の郡内に、桃色の絹の肩当てした
掻巻
(
かいまき
)
を引き寄せる、手が
辷
(
すべ
)
って、ひやりと
軽
(
かろ
)
くかかった裏の羽二重が燃ゆるよう。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
絹帷
(
きぬとばり
)
紅
(
あか
)
き
天鵝絨
(
びろうど
)
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
見れば島田
髷
(
まげ
)
の娘の、紫地の
雨合羽
(
あまがっぱ
)
に、黒
天鵝絨
(
びろうど
)
の襟を深く、拝んで
俯向
(
うつむ
)
いた
頸
(
えり
)
の
皓
(
しろ
)
さ。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
例の大船で
一艘
(
いっぱい
)
積出す男は、火のない瀬戸の欠火鉢を
傍
(
わき
)
に、こわれた
脇息
(
きょうそく
)
の
天鵝絨
(
びろうど
)
を
引剥
(
ひきはが
)
したような小机によっかかって、あの入船帳に
肱
(
ひじ
)
をついて、それでも
莞爾々々
(
にこにこ
)
している……
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……
膚
(
はだ
)
いきれと、よっかかりの
天鵝絨
(
びろうど
)
で、長くは暑さに
堪
(
たま
)
りますまい。やがて、魚を仰向けにしたような、ぶくりとした下腹の上で涼ませながら、汽車の動揺に調子を取って口笛です。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
掻巻はいつも神月と添寝した
五所車
(
ごしょぐるま
)
を染めた
長襦袢
(
ながじゅばん
)
を
裁
(
た
)
ったのに、
紅絹
(
もみ
)
の裏を附けて、藤色
縮緬
(
ちりめん
)
の
裾廻
(
すそまわし
)
、綿も新しいのをふッかりと入れて、
天鵝絨
(
びろうど
)
の襟を掛けて、黄八丈の
蒲団
(
ふとん
)
を二枚。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ト
此
(
こ
)
の
團右衞門方
(
だんゑもんかた
)
に
飼猫
(
かひねこ
)
の
牡
(
をす
)
が一
疋
(
ぴき
)
、これははじめから
居
(
ゐ
)
たのであるが、
元二
(
げんじ
)
が
邸内
(
ていない
)
へ
奉公
(
ほうこう
)
をしてから
以來
(
いらい
)
、
何處
(
どこ
)
から
來
(
き
)
たか、むく/\と
肥
(
ふと
)
つた
黒毛
(
くろげ
)
で
艶
(
つや
)
の
好
(
い
)
い
天鵝絨
(
びろうど
)
のやうな
牝
(
めす
)
が
一
(
ひと
)
つ
二た面
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
先
(
さき
)
に——七
里半
(
りはん
)
の
峠
(
たうげ
)
を
越
(
こ
)
さうとして
下
(
お
)
りた
一見
(
いつけん
)
の
知己
(
ちき
)
が
居
(
ゐ
)
た、
椅子
(
いす
)
の
間
(
あひだ
)
を
向
(
むか
)
うへ
隔
(
へだ
)
てて、
彼
(
かれ
)
と
同
(
おな
)
じ
側
(
かは
)
の
一隅
(
ひとすみ
)
に、
薄青
(
うすあを
)
い
天鵝絨
(
びろうど
)
の
凭掛
(
よりかゝり
)
を
枕
(
まくら
)
にして、
隧道
(
トンネル
)
を
越
(
こ
)
す
以前
(
いぜん
)
から、
夜
(
よる
)
の
底
(
そこ
)
に
沈
(
しづ
)
んだやうに
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
黒表紙には
綾
(
あや
)
があって、
艶
(
つや
)
があって、真黒な
胡蝶
(
ちょうちょう
)
の
天鵝絨
(
びろうど
)
の羽のように美しく……一枚開くと、きらきらと字が光って、
細流
(
せせらぎ
)
のように動いて、何がなしに、言いようのない強い
薫
(
かおり
)
が
芬
(
ぷん
)
として
国貞えがく
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
二等と云う
縹色
(
はなだいろ
)
の濁った
天鵝絨
(
びろうど
)
仕立、ずっと奥深い長い部屋で、何とやら陰気での、人も
沢山
(
たんと
)
は見えませいで、この方、乗りました
砌
(
みぎり
)
には、早や新聞を顔に乗せて、長々と寝た人も見えました。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
掻巻がかかると、
裳
(
もすそ
)
が揺れた。お夏は柔かに曲げていた足を伸ばして、片手を白く、
天鵝絨
(
びろうど
)
の襟を引き寄せて、
軽
(
かろ
)
く寝返りざまに、やや
仰向
(
あおむけ
)
になったが——目が覚めてそうしたものではなかった。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
指で
環
(
わ
)
を
拵
(
こしら
)
えたような、小さな
玩弄
(
おもちゃ
)
の緑の
天鵝絨
(
びろうど
)
の
蟇口
(
がまぐち
)
を引出して、パチンとあけて、
幼児
(
おさなご
)
が袂の中を
覗
(
のぞ
)
くように、あどけなく、嬉しそうに、ぱっちりした目を細めて見ながら、
一片
(
ひとひら
)
の、銀の小粒を
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
浅黄の
天鵝絨
(
びろうど
)
に似た西洋花の
大輪
(
おおりん
)
があったが、それではなしに——筋一ツ、元来の薬
嫌
(
ぎらい
)
が、快いにつけて飲忘れた、一度ぶり残った呑かけの——
水薬
(
すいやく
)
の瓶に、ばさばさと当るのを、
熟
(
じっ
)
と
瞻
(
みつ
)
めて立つと
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
天
常用漢字
小1
部首:⼤
4画
鵝
漢検1級
部首:⿃
18画
絨
漢検1級
部首:⽷
12画
“天”で始まる語句
天
天井
天鵞絨
天狗
天晴
天幕
天窓
天気
天地
天竺