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塵埃
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じんあい
ふりがな文庫
“
塵埃
(
じんあい
)” の例文
教授は手袋の外側と内側とに附着した
塵埃
(
じんあい
)
を顕微鏡で検査しましたけれど、これという特徴あるものの発見はなかったのであります。
新案探偵法
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
根雪が氷のように
磐
(
いわ
)
になって、その上を雪解けの水が、一冬の
塵埃
(
じんあい
)
に染まって、
泥炭地
(
でいたんち
)
のわき水のような色でどぶどぶと漂っている。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
海浜や道傍の到る処に
塵埃
(
じんあい
)
の山があり、馬車が何台も道につながれてあって、足の太い馬が毛の抜けた
鬣
(
たてがみ
)
を振って
懶
(
ものう
)
そうに
嘶
(
いなな
)
いている。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
砂がまかれてるために一点の泥土もなかった、また雨が降ったために一握の
塵埃
(
じんあい
)
もなかった。草木の茂みは洗われたばかりの所だった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
これらの松の針葉はあの塩風にもまれてもちっとも痛まないばかりかかえってこの嵐に会って
塵埃
(
じんあい
)
を洗い落とされでもしたのか
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
風が街上の
塵埃
(
じんあい
)
を小さな波に吹き上げて、彼等二人を
浸
(
ひた
)
し乍ら巡査の方へ走って消えた。彼も此
埃
(
ごみ
)
と共に消えたかった。否、何もかもない。
偽刑事
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
風が吹き過ぎるのを見てる傍観者にすぎないとみずから考えていた。がすでに風は彼の身に触れて、
塵埃
(
じんあい
)
の
渦巻
(
うずまき
)
中に彼を引込みつつあった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
三方から潮のように寄せて来た大群集は、
塵埃
(
じんあい
)
にまみれたウォシントン銅像の立っている広場を中心として、どっちにも動かれず、渦巻いた。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
三度目に
掛合
(
かけあ
)
った老車夫が、やっとの事でお豊の望む賃銀で小梅行きを承知した。
吾妻橋
(
あずまばし
)
は午後の日光と
塵埃
(
じんあい
)
の中におびただしい
人出
(
ひとで
)
である。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
また朝夕に部屋の
掃除
(
そうじ
)
を
励行
(
れいこう
)
せしむること厳密を極め、
坐
(
ざ
)
するごとに一々指頭をもって
座布団
(
ざぶとん
)
畳
(
たたみ
)
等の表面を
撫
(
な
)
で試み
毫釐
(
ごうり
)
の
塵埃
(
じんあい
)
をも
厭
(
いと
)
いたりき。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
左右の壁には、吊燭台や古風な瓦斯灯を真似た壁灯が、一つ置きに並んでいて、その騒ぎで立ち上る
塵埃
(
じんあい
)
のために、暈と霞んでいるように思われた。
オフェリヤ殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
表に文化の花のほこらしげに爛漫とさきにぎわえば、賑わうほど、裏側にはどぶどろや
塵埃
(
じんあい
)
やかすが、人目をさけてひとつところによどんでしまう。
放浪作家の冒険
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
車
轔々
(
りんりん
)
馬
蕭々
(
しょうしょう
)
。
行人
(
こうじん
)
の
弓箭
(
きゅうせん
)
各腰にあり。
爺嬢
(
やじょう
)
妻子走って相送り、
塵埃
(
じんあい
)
見えず
咸陽橋
(
かんようきょう
)
。衣を
牽
(
ひ
)
き足を
頓
(
す
)
り道を
攔
(
さえぎ
)
り
哭
(
こく
)
す。哭声ただちに上って
雲霄
(
うんしょう
)
を
干
(
おか
)
す。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
それを考うる時、四六時中警笛におびやかされ、
塵埃
(
じんあい
)
を呼吸しつゝある彼等に対して、涙なきを得ないのである。
児童の解放擁護
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
従う
紀清
(
きせい
)
両党の兵は、宇都宮累世養うところのもの、戦場に
於
(
おい
)
て命を棄つること、
塵埃
(
じんあい
)
の如く思いおる
輩
(
ともがら
)
じゃ。
赤坂城の謀略
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
粉末雪——この、軽い、
塵埃
(
じんあい
)
状の雪は、スキイには持って来いだ。一ばん愉快な滑走が得られる。初心者が方向転換の稽古をするにも、この種の雪に限る。
踊る地平線:11 白い謝肉祭
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
ふと、一陣の狂風に野をふりかえると、
塵埃
(
じんあい
)
天日をおおい、異様な声が、地殻の底に鳴るような気がされた。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
江戸の
入陽
(
いりひ
)
は、大都会の
塵埃
(
じんあい
)
に照り映えて、
茜
(
あかね
)
いろがむらさきに見える。
鳶
(
とび
)
にでも追われているのであろう、空一めんに烏のむれが、高く低く群れ飛んでいた。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「お出しなさい、あの
娘
(
こ
)
はあなたより遥に神聖だ、あれは罪悪と
塵埃
(
じんあい
)
の中で育った女ではありません、中央山脈の中の、人跡未踏の霊地で育った自然の傑作です」
判官三郎の正体
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
社のガラス戸を
開
(
あ
)
けて
戸外
(
おもて
)
に出る。終日の労働で
頭脳
(
あたま
)
はすっかり
労
(
つか
)
れて、なんだか脳天が痛いような気がする。西風に舞い上がる黄いろい
塵埃
(
じんあい
)
、侘しい、侘しい。
少女病
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
湯は
垢
(
あか
)
と幾分かの小僧たちの小便と、
塵埃
(
じんあい
)
と
黴菌
(
ばいきん
)
とのポタージュである。穢ないといえば穢ないが、その触感は、朝湯のコンソメよりもすてがたい味を持っている。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
塵埃
(
じんあい
)
を浴びて露店の群れは賑っていた。
笊
(
ざる
)
に盛り上った
茹卵
(
ゆでたまご
)
。屋台に崩れている鳥の首、腐った豆腐や唐辛子の間の猿廻し。豚の油は絶えず人の足音に慄えていた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
この
貝塚
(
かひづか
)
は
前
(
まへ
)
に
申
(
まを
)
しましたように、
元來
(
がんらい
)
海岸
(
かいがん
)
に
棲
(
す
)
んだ
人間
(
にんげん
)
の
住居
(
じゆうきよ
)
の
傍
(
そば
)
に
出來
(
でき
)
た
塵埃
(
じんあい
)
すて
場
(
ば
)
であります。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
道はよく乾き、風のために
塵埃
(
じんあい
)
が立っていた。家並の遠くの空に、
紙凧
(
たこ
)
が二つ三つ上っていた。そしてそれは風に揺れていた。それを見ながら彼は駅の方にあるいた。
黄色い日日
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
阿難 ——すべて、盛りと
廃
(
すた
)
りのあるこころは俗情であるのだ。お前の今の心には、潮が満ちて居る。だから
渚
(
なぎさ
)
が判らない。潮が干る時、渚の
塵埃
(
じんあい
)
が目につくであろう。
阿難と呪術師の娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「身は是れ
菩提樹
(
ぼだいじゅ
)
、心は
明鏡台
(
めいけいだい
)
の如し。時々に勤めて
払拭
(
ほっしき
)
せよ。
塵埃
(
じんあい
)
を
惹
(
ひ
)
かしむること
勿
(
なか
)
れ」
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
島の西端にはモールトリー
要塞
(
ようさい
)
(4)
があり、また夏のあいだチャールストンの
塵埃
(
じんあい
)
と暑熱とをのがれて来る人々の住むみすぼらしい木造の家が何軒かあって、その近くには
黄金虫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
それらはいわば機智と冷刺との雰囲気の中で、動く
塵埃
(
じんあい
)
でその塵埃が虹のような光彩を
漲
(
みなぎ
)
らしているのである。幼年の作家は老熟した足どりで、いつもその中心を歩いている。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
そこで山水清閑の地に活気の充ちた天地の
灝気
(
こうき
)
を吸うべく東京の
塵埃
(
じんあい
)
を
背後
(
うしろ
)
にした。
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
大部分
(
だいぶぶん
)
の
人
(
ひと
)
が
生活
(
せいかつ
)
してゐる
都會
(
とかい
)
は、
狹
(
せま
)
い
土地
(
とち
)
に
大勢
(
おほぜい
)
の
人
(
ひと
)
が
住
(
す
)
み、
石炭
(
せきたん
)
の
煤煙
(
ばいえん
)
や、その
他
(
ほか
)
の
塵埃
(
じんあい
)
でもって
空氣
(
くうき
)
がおそろしく
濁
(
にご
)
つてをり、また
各種
(
かくしゆ
)
の
交通機關
(
こうつうきかん
)
が
發達
(
はつたつ
)
して
晝夜
(
ちゆうや
)
の
分
(
わか
)
ちなく
森林と樹木と動物
(旧字旧仮名)
/
本多静六
(著)
彼は芸術を夢みていた。その芸術の前ではただ一粒の
塵埃
(
じんあい
)
でしかないような二百円の給料がどうして骨身にからみつき、生存の根底をゆさぶるような大きな苦悶になるのであろうか。
白痴
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「やつぱり空気がいゝのですね。東京の空と違つて、
塵埃
(
じんあい
)
や煤煙がないのですね。」
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
階段は上になるほど狭くなり、そして
粗末
(
そまつ
)
になった。もうジュウタンなんか見られなかった。板ばりに
塵埃
(
じんあい
)
や木の葉がたまり放しであった。だがそこにも落とし穴が二つも仕掛けてあった。
時計屋敷の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
幸い桂子の身体に異状はない、ただ泥棒に見舞われたという話なので私は安心する。私はこと財産に関しては、昔から本来無一物、何レノ処ニカ
塵埃
(
じんあい
)
ヲ
惹
(
ひ
)
カン、といった
暢気
(
のんき
)
な気持なのだ。
野狐
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
潮引き波去るの後に
迨
(
およ
)
んで之を
覧
(
み
)
る
塵埃
(
じんあい
)
瓦礫
(
がれき
)
紛として八方に散乱するのみ。また
些
(
いささか
)
の益する所なきが如しといへどもこれによりてその学が世上の注意を
惹
(
ひ
)
くに至るあるは疑ふべからざるなり。
史論の流行
(新字旧仮名)
/
津田左右吉
(著)
ソースその他いろいろのものの
焦
(
こ
)
げて気体化したもの、煙草のけむり、雑多な肺から吐き出された炭酸ガス、一団の人々があらゆる身体の部分から落せるだけ落して行ったおびただしい
塵埃
(
じんあい
)
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
水蒸気が微水滴に凝縮する場合、イオンを核として凝縮するといわれているが、それは空気中に
塵埃
(
じんあい
)
が全くない場合で、少しでも塵埃があれば、イオンよりも塵の方を核として凝縮するのである。
雪
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
この大河の水は岩礁を
割
(
さ
)
いた水道のコンクリートの
堰
(
せき
)
と赤さびた鉄の扉の上を
僅
(
わずか
)
に越えて、流れ注いで、外には濁った白い
水沫
(
すいまつ
)
と
塵埃
(
じんあい
)
とを平らかに溜めているばかりだ。何の
奇
(
き
)
もなく
閑
(
のど
)
けさである。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
「この国の季候は湿気が強い、畳はその湿気と
塵埃
(
じんあい
)
の溜り場だ」と去定は続けていった、「ためしにどこの家でもいい、そしていま
煤掃
(
すすは
)
きを済ませたばかりの畳を叩いてみろ、必ず塵埃が立つだろう、 ...
赤ひげ診療譚:05 徒労に賭ける
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして山と云う山、谷と云う谷、眼のとどく限りのすべては氷と雪に埋れて、ただ
塵埃
(
じんあい
)
のように点ぜられたのは、急なアレトの風淀に、取りのこされた形にただずんだ、二人のガイドばかりであった。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
昔ギリシアの哲学者ルクレチウスは窓からさしこむ日光の中に踊る
塵埃
(
じんあい
)
を見て、分子説の元祖になったと伝えられている。
塵埃と光
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
世の中の
槓桿
(
てこ
)
とも言うべき種族の本能以外には、その宇宙的な力以外には、ただ
塵埃
(
じんあい
)
のごとき情緒が存するばかりである。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
塵埃
(
じんあい
)
に
塗
(
まみ
)
れた、草や、木が、風雨を恋うるように、生活に疲れた人々は、清新な生命の泉に
渇
(
かっ
)
するのであります。
『小さな草と太陽』序
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
これほど地球の進展から隔離された
塵埃
(
じんあい
)
棄て場が現存し得ようとは、たしかに
何人
(
なんぴと
)
も想像しない一驚異であろう! その雑然たる
廃頽
(
はいたい
)
詩と、その貧窮への無神経と
踊る地平線:08 しっぷ・あほうい!
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
それから衣服の
塵埃
(
じんあい
)
や耳垢まで顕微鏡的に検査されたのですけれど、やはり無駄に終ったそうです。
三つの痣
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
しかし、ただの変屈か、いまの世にあきたらない
慨世
(
がいせい
)
の人か、それとも生来、清隠を好んで世俗の
塵埃
(
じんあい
)
をいとうだけの者か、その辺の心事は、当人のほかは誰も知らない。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
または日ざし麗らかに天
清
(
す
)
める秋の朝なんど、あるいは黒〻と聳え、あるいは白妙に晴れたるを望む景色いと
神〻
(
こうごう
)
しくして、さすがに
少時
(
しばし
)
は
塵埃
(
じんあい
)
の舞ふ都の中にあるをすら忘れしむ。
水の東京
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
歩廊にはかなり強い風が吹いて、ところどころで
塵埃
(
じんあい
)
の小さなつむじ風をつくった。
狂い凧
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
「やっぱり空気がいゝのですね。東京の空と違って、
塵埃
(
じんあい
)
や
煤煙
(
ばいえん
)
がないのですね。」
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
雨の日には
泥濘
(
でいねい
)
の深い
田畝道
(
たんぼみち
)
に古い
長靴
(
ながぐつ
)
を引きずっていくし、風の吹く朝には帽子を
阿弥陀
(
あみだ
)
にかぶって
塵埃
(
じんあい
)
を避けるようにして通るし、沿道の家々の人は、遠くからその姿を見知って
少女病
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
“塵埃”の意味
《名詞》
ちりやほこり。ごみ。
よごれ、わずらわしいこと。俗世間。俗事。
(出典:Wiktionary)
塵
漢検準1級
部首:⼟
14画
埃
漢検1級
部首:⼟
10画
“塵埃”で始まる語句
塵埃箱
塵埃塗
塵埃塚
塵埃屋
塵埃屑
塵埃溜
塵埃除
塵埃棄場
塵埃溜場
塵埃焼却場