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嘲
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あざけ
ふりがな文庫
“
嘲
(
あざけ
)” の例文
と
平生
(
へいぜい
)
から
嘲
(
あざけ
)
るものは
嘲
(
あざけ
)
るが、
心優
(
こゝろやさ
)
しい
衣絵
(
きぬゑ
)
さんは、それでも
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
がつて、
存分
(
ぞんぶん
)
に
沸
(
わ
)
かして
飲
(
の
)
むやうにと
言
(
い
)
つた
厚情
(
こゝろざし
)
なのであつた。
銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
霧の中から
唄声
(
うたごえ
)
が近づいて来た。馬を
曳
(
ひ
)
いた五郎吉である。彼はちらと侍たちのほうへ
嘲
(
あざけ
)
りの微笑をくれ、つんと鼻を突上げながら
峠の手毬唄
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「そんな馬鹿なことが出来るもんですかね」とお種は
嘲
(
あざけ
)
るように言って、「お前さんは
何事
(
なんに
)
も知らないからそんなことを言うけれど」
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
見れば疑いもなく、僕のほうにも、僕の商売でこの男がしくじったのですからね、
嘲
(
あざけ
)
るような呆れたような視線が向けられています。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
歌の文句はそういう風に読めるのであったが、それが父の死を
嘲
(
あざけ
)
ったいたずら者の落書であることは、その時の娘には分らなかった。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
逍遙子は豈
莊周
(
さうしう
)
と共に齊物論を作りて、
儒墨
(
じゆぼく
)
の是非を
嘲
(
あざけ
)
り、その非とするところを是とし、その是とするところを非とせむとするか。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
そして議員中ある者どもはイエスに
唾
(
つばき
)
し、またその顔をおおい、拳にてうちなどし始めて、「誰がうったか預言せよ」と
嘲
(
あざけ
)
りました。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
二人は初め
嘲
(
あざけ
)
り気味の眼つきで見合った。二人はたがいにあまり似寄っていなかった。一方は水銀であり、一方は眠ってる水だった。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
嘲
(
あざけ
)
るように云ったのはシムソンでした。さすがに間謀を勤めるだけあって、アクセントは少し変ですが、日本語はうまいものです。
計略二重戦:少年密偵
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
未来の世まで反語を伝えて
泡沫
(
ほうまつ
)
の身を
嘲
(
あざけ
)
る人のなす事と思う。余は死ぬ時に辞世も作るまい。死んだ
後
(
あと
)
は
墓碑
(
ぼひ
)
も建ててもらうまい。
倫敦塔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
これが果して賢秀の上を
嘲
(
あざけ
)
ったとならば、賢秀は仕方の無い人だが、又其子に忠三郎氏郷が出たものとすれば、氏郷は
愈々
(
いよいよ
)
偉いものだ。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「ではせめてヴォルデマール氏に、ことの次第を説明して上げてもいいでしょう」と、
嘲
(
あざけ
)
るような声でルーシンが言い出した。——
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
董卓は、
嘲
(
あざけ
)
りながら、濶歩して一室へかくれ、やがて盛装をこらして車に打乗り、数千の精兵に前後を護られて
郿塢山
(
びうさん
)
を降って行った。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「なんていふお
馬鹿
(
ばか
)
さんなの! 心の……十二単衣……」彼女は、水色ガラスのシュミーズを着ながら、
嘲
(
あざけ
)
るやうに繰り返した。
わが心の女
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
暮れかかる森のこずえを仰ぎながら、半七はしばらく思案に耽っていると、その知恵の無いのを
嘲
(
あざけ
)
るように、ゆう鴉が一羽啼いて通った。
半七捕物帳:66 地蔵は踊る
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
やがて村田は自身の内気を
嘲
(
あざけ
)
りながら帰って行った。路次の入口で
放尿
(
ほうにょう
)
した。その音を聞きながら、豹一はごろりと横になった。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
「それでも
薪
(
まき
)
は
持
(
も
)
つて
來
(
く
)
る
譯
(
わけ
)
にも
行
(
い
)
かねえから
置
(
お
)
いて
來
(
き
)
つちやつた」
勘次
(
かんじ
)
は
自
(
みづか
)
ら
嘲
(
あざけ
)
るやうに
目
(
め
)
から
口
(
くち
)
へ
掛
(
か
)
けて
冷
(
つめ
)
たい
笑
(
わらひ
)
が
動
(
うご
)
いた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
と
嘲
(
あざけ
)
って
呆
(
あき
)
れるのであるが、なおその
想
(
おも
)
いは果実の切口から滲み出す
漿液
(
しょうえき
)
のように、激しくなくとも、
直
(
す
)
ぐには止まらないものであった。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
実
(
げ
)
に顔の色は
躬
(
みづから
)
も
凄
(
すご
)
しと見るまでに変れるを、庭の内をば
幾周
(
いくめぐり
)
して我はこの色を隠さんと
為
(
す
)
らんと、彼は
心陰
(
こころひそか
)
に
己
(
おのれ
)
を
嘲
(
あざけ
)
るなりき。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
その人は
嘲
(
あざけ
)
り笑つて立ち去りました。すると又一人の女が見せてくれと言ひますから、出してみせますと、かう申しました——
竜宮の犬
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
「また
倅
(
せがれ
)
の道楽には親の意見あり、親の道楽には意見もならず、両人も困るなるべし」といひて
嘲
(
あざけ
)
りしなど、いづれも可笑し。
両座の「山門」評
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
素戔嗚は
弓杖
(
ゆんづゑ
)
をついたなり、ぢつとこの舟へ眼を注いだ。舟は彼を
嘲
(
あざけ
)
るやうに、小さい
筵帆
(
むしろぼ
)
を光らせながら、軽々と浪を乗り越えて行つた。
老いたる素戔嗚尊
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして入口の棚にのっていた
燧石
(
ひうちいし
)
をカチカチやって
傍
(
かたわら
)
の
雪洞
(
ぼんぼり
)
に火を移し、戸口に立った露月を顧み、
嘲
(
あざけ
)
るごとく言うのでした。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
近所の者の
嘲
(
あざけ
)
り、屈辱、踏みにじられる威厳、選り好みのできない仕事、
嫌悪
(
けんお
)
、辛苦、落胆、などあらゆるものを含んでいる。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
朝鮮人たちが「天下第一」の言葉を
嘲
(
あざけ
)
り笑ったのも無理はない。あり得べからざる現象がこの世に起りつつあったからである。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
「緋色の研究」の中にヂュパンを批評して inferior fellow と
嘲
(
あざけ
)
っているけれども、彼自身はやっぱり
ヂュパンとカリング
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
五十五六まで
小店
(
こだな
)
に勤めて、まだ独身らしい老番頭が、いつの間にやら世を呪い自分を
嘲
(
あざけ
)
って、悪魔的な捨鉢な気持になって行くのでしょう。
銭形平次捕物控:059 酒屋火事
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「えゝ。己は人非人だ。これで聖者にならうなぞと思つてゐるのは何事だ。」セルギウスはかう云つて自分を
嘲
(
あざけ
)
つた。そして祈祷をし始めた。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
そうして、それ
等
(
ら
)
のすべてが彼を無言のうちに
嘲
(
あざけ
)
り、
脅
(
おび
)
やかしているかのような圧迫感に打たれつつ、又もガックリとうなだれて歩き出した。
木魂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「そんなことがあるもんか、坊主はいいかげんなことを云いよるよ」と、その顔の大きな男は
嘲
(
あざけ
)
りの色を口元に浮めて、壮い男に囁きかえした。
岩魚の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
だしぬけに云つたりしてどうする金か、と幾がむつとして訊くと、どうだつていゝ、と軍治は痩せたとも見える頬に
刺々
(
とげとげ
)
しい
嘲
(
あざけ
)
りの色を見せた。
鳥羽家の子供
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
暫くして、
眠
(
ね
)
つかれないままに、燭台へ灯をともすと、その時ひらひらと飛んで来て、
嘲
(
あざけ
)
るやうに灯をかすめたものがある。それも蛾であつた!
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
譬
(
たと
)
えば道徳の説法はありがたきものなれども、宴楽の最中に突然とこれを唱うればいたずらに人の
嘲
(
あざけ
)
りを取るに足るのみ。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
嘲
(
あざけ
)
るような薄笑いがまたもや彼の唇をゆがませた。「いや、火事のことじゃありません」と、意味ありげにまばたきしながら、彼はくり返した。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
俄
(
にわか
)
に気づいてうんと自分を
嘲
(
あざけ
)
り叱って見ても、不安は依然として不安で、今の苦悶の中から、心を不安境外へ抜け出ることはどうしても出来ない。
大雨の前日
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
中世堡楼の屋根までも剥いで
黒死病
(
ペスト
)
死者を詰め込みしと伝えらるる、プロヴィンシア
繞壁
(
ぎょうへき
)
模倣を種に、黒死館と
嘲
(
あざけ
)
りしこそ
可笑
(
おか
)
しと云うべし——。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
然れども彼は神を恨まず、己れを捨てず、友は来りて
嘲
(
あざけ
)
れども意に介せず、敵は来りて悩ませども自ら驚かず、心を
照
(
あき
)
らかにして神意を味はへり。
各人心宮内の秘宮
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
しかし同時に
嘲
(
あざけ
)
るような表情で、夫君の言葉を聴いていたが、ニコニコしながら、
良人
(
おっと
)
には答えず、子供の方に向いて
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
どうだ、流石の名探偵もこればっかりは分るまいと、心の中で
嘲
(
あざけ
)
りながら、三郎はこんなことまで云って見るのでした。
屋根裏の散歩者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
竜之助の
面
(
かお
)
の表情は、笠でまるきり知れないけれども、その声は、キリキリと厚い氷を
錐
(
きり
)
で
揉
(
も
)
み込むような鋭い
嘲
(
あざけ
)
りをも含んでいるのであります。
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
これ世に悪人の
跋扈
(
ばっこ
)
するを神の
業
(
わざ
)
なりと認めて、神を
嘲
(
あざけ
)
りし語である。しかし真の神を嘲ったのではない、友人の称する所の神を嘲ったのである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
生きがいのない
病躯
(
びょうく
)
を
嘲
(
あざけ
)
っていたが、先生の唯一の幸福であった口腹の欲も、そのころから、少しずつ裏切られて来た。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
何故
(
なぜ
)
意久地がないとて叔母がああ
嘲
(
あざけ
)
り
辱
(
はずかし
)
めたか、
其処
(
そこ
)
まで思い廻らす暇がない、唯もう
腸
(
はらわた
)
が
断
(
ちぎ
)
れるばかりに悔しく口惜しく、恨めしく腹立たしい。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
多少書き送った内に、この譚の類話として鶏と猫の五徳を書き送ったが、従僕の七徳として実はその七徳を
嘲
(
あざけ
)
った譚は読んだ事なしというて来た。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
私は、人を怒るよりも自分を
嘲
(
あざけ
)
ってやりたいような気がした。そして私は、その紙幣と半紙とをぐちゃぐちゃにひッつかんで
袂
(
たもと
)
の中にねじ込んだ。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
私が七つのときに、私の村の草競馬で優勝した得意満面の馬の顔を見た。私は、あれあれと指さして
嘲
(
あざけ
)
った。それ以来、私の不仕合せがはじまった。
めくら草紙
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
どんなに人からうらまれ、憎まれ、世間から、さげすまれ、
嘲
(
あざけ
)
られようとも、妾はあの人の魂をしっかりとつかんではなしたくないと思ったのです。
華やかな罪過
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
自分はわが説が
嘲
(
あざけ
)
りの中に退けられたように不快を感ずる。もしかなたの帆も同じくこちらへ帰るのだとすると、実際の藤さんの船はどれであろう。
千鳥
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
それから唇を
噛
(
か
)
んで、両手を
拳
(
こぶし
)
に握った。この時その唇から、
嘲
(
あざけ
)
るような調子で、「忍耐、忍耐」という声が
洩
(
も
)
れた。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
さうして他の營々として刻苦してゐる村人を趣味を解せぬ者と
嘲
(
あざけ
)
つて僅に喜んでゐるらしい事などに依つて解つた。
歌のいろ/\
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
嘲
常用漢字
中学
部首:⼝
15画
“嘲”を含む語句
嘲笑
嘲弄
冷嘲
嘲罵
自嘲
嘲侮
嘲謔
御嘲笑
嘲哢
嘲蔑
自嘲的
嘲殺
嘲笑的
嘲弄者
嘲嗤
嘲弄的
解嘲
嘲声
自嘲癖
自嘲心
...