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こうらん
ふりがな文庫
“
勾欄
(
こうらん
)” の例文
そこは十
帖
(
じょう
)
ほどの平座敷で、上段はなく、三方に
丹塗
(
にぬり
)
の
勾欄
(
こうらん
)
のある廊をまわし、坐ったままひろい展望をたのしむことができた。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そう云う時平は、これも正体なく酔っていて、車が
勾欄
(
こうらん
)
の
際
(
きわ
)
へぴったりと引き寄せられても、そこまで歩いて行くことさえ困難に見えた。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
勾欄
(
こうらん
)
、廻廊、すべて異國的で、戸一枚、柱一本にも、並々ならぬ仕掛がありさうですが、平次の眼も其處までは及びません。
銭形平次捕物控:283 からくり屋敷
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
すでに壊れている
勾欄
(
こうらん
)
の一部をもぎ取り、また内陣から、経机だの、木彫仏の頭だのを抱えて来て、手当り次第に、焚火の群へ、投げやった。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
社の大いさ三間二面、廻廊があって
勾欄
(
こうらん
)
が付き、床が高く上っている我等が祖先大和民族の、最古の様式の社なのである。
南蛮秘話森右近丸
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
まず廊下であるが、板の張り方は日本風でありながら、外側にペンキ塗りの
勾欄
(
こうらん
)
がついていて、すぐ庭へ下りることができないようになっていた。
漱石の人物
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
穹窿
(
アーチ
)
形の天井から下っている純白
紗
(
しゃ
)
のように薄い垂れ幕……ふうわりと眼も醒めんばかりの
羽根蒲団
(
クッション
)
が掛けられて、
瑪瑙
(
めのう
)
の
勾欄
(
こうらん
)
……
煌
(
きら
)
びやかな寝台の飾り!
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
私はその時、月下美人と云ふ尺八寸位の大きさの絹本に、
勾欄
(
こうらん
)
のところに美人がゐる絵を描いて出しました。
旧い記憶を辿つて
(新字旧仮名)
/
上村松園
(著)
朱塗りの
雪洞
(
ぼんぼり
)
が、いくつも点いて、
勾欄
(
こうらん
)
つきの縁側まで見えているが、その広い座敷に誰一人もおりません。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
勾欄
(
こうらん
)
の下を
繞
(
めぐ
)
って流れる水に浮いている
鯉
(
こい
)
を眺めながら、彼の舌にも
適
(
かな
)
うような酒を
呑
(
の
)
んだりした。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
すると兵衛佐は
勾欄
(
こうらん
)
にもたれて手水などされてから、こちらへおはいりになって入らしった。
かげろうの日記
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
宗助
(
そうすけ
)
は
立
(
た
)
つ
前
(
まへ
)
に、
宜道
(
ぎだう
)
と
連
(
つ
)
れだつて、
老師
(
らうし
)
の
許
(
もと
)
へ
一寸
(
ちよつと
)
暇乞
(
いとまごひ
)
に
行
(
い
)
つた。
老師
(
らうし
)
は
二人
(
ふたり
)
を
蓮池
(
れんち
)
の
上
(
うへ
)
の、
縁
(
えん
)
に
勾欄
(
こうらん
)
の
着
(
つ
)
いた
座敷
(
ざしき
)
に
通
(
とほ
)
した。
宜道
(
ぎだう
)
は
自
(
みづか
)
ら
次
(
つぎ
)
の
間
(
ま
)
に
立
(
た
)
つて、
茶
(
ちや
)
を
入
(
い
)
れて
出
(
で
)
た。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
東から北へと
勾欄
(
こうらん
)
へついて眼を移すと、柔かな物悲しい赤と
乾酪
(
チーズ
)
色の丘陵のうねりが
閑
(
のど
)
かな日光の反射にうき出している隣に、二つの
円
(
まる
)
い緑の丘陵が大和絵さながらの色調で並んで
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
激しい往来のため、車輪の
塵
(
ちり
)
を容赦もなくあびせるままにしてありますが、琉球の彫刻を想う者には、涙を誘う無情な措置なのです。その
勾欄
(
こうらん
)
の浮彫は当然国宝に列すべき一雄作です。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
たちまち境内のお寺は残らず
空
(
から
)
ッぽとなり、
金属
(
かねけ
)
のものは
勾欄
(
こうらん
)
の金具や、
擬宝珠
(
ぎぼうし
)
の頭などを奪って行くという騒ぎで、実に散々な
体
(
てい
)
たらく……暫くこの騒ぎのまま、日は暮れ、夜に入り
幕末維新懐古談:19 上野戦争当時のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
両人ともに言葉なくただ
平伏
(
ひれふ
)
して
拝謝
(
おが
)
みけるが、それより宝塔
長
(
とこしな
)
えに天に
聳
(
そび
)
えて、西より
瞻
(
み
)
れば
飛檐
(
ひえん
)
ある時素月を吐き、東より望めば
勾欄
(
こうらん
)
夕べに紅日を呑んで、百有余年の今になるまで
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
また
六樹園
(
ろくじゅえん
)
が狂文『
吾嬬
(
あずま
)
なまり』に鶯谷のさくら会と題する一文ありて、
勾欄
(
こうらん
)
の前なる桜の咲きみだれたるが今日の風にやや散りそむといへど、今はそれかとおぼしき桜の古木もさぐるによしなし。
礫川徜徉記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
いかさまこれならば
伏見
(
ふしみ
)
から船でお
下
(
くだ
)
りになってそのまま釣殿の
勾欄
(
こうらん
)
の下へ
纜
(
ともづな
)
をおつなぎになることも出来、都との往復も自由であるから
蘆刈
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そこは、母屋から渡り廊下を架けた、別棟の建物で、床が高く、広縁には
勾欄
(
こうらん
)
がまわしてあり、妻戸や
蔀
(
しとみ
)
などもみえるし、
廂
(
ひさし
)
には青銅の
燈籠
(
とうろう
)
が吊ってあった。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
大宮の庭の名残りの黄菊紫蘭とも見え、月の光に暗い
勾欄
(
こうらん
)
の奥からは
緋
(
ひ
)
の袴をした
待宵
(
まつよい
)
の
小侍従
(
こじじゅう
)
が現われ、
木連格子
(
きつれごうし
)
の下から、ものかわの
蔵人
(
くらんど
)
も出て来そうです。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
洗い髪に大絞りの
浴衣
(
ゆかた
)
を着て、
西施
(
せいし
)
を
粋
(
いき
)
にしたような年増の
阿娜女
(
あだもの
)
が、姿とはやや不調和な、
塗
(
ぬ
)
りの
勾欄
(
こうらん
)
に身をもたせて、不思議そうに美しい眼をみはっていた。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
各層の
勾欄
(
こうらん
)
や
斗拱
(
ときょう
)
もおのおの五通りに違う。その軒や勾欄や斗拱がまた相互間に距離を異にしている。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
宗助は立つ前に、宜道と連れだって、老師の
許
(
もと
)
へちょっと
暇乞
(
いとまごい
)
に行った。老師は二人を
蓮池
(
れんち
)
の上の、縁に
勾欄
(
こうらん
)
の着いた座敷に通した。宜道は
自
(
みずか
)
ら次の間に立って、茶を入れて出た。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
天守閣の最上層の
勾欄
(
こうらん
)
へ出たところで、私たちはまず両方の大平野を
瞰望
(
かんぼう
)
した。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
しかし
甚
(
はなは
)
だ笑止なことに、平中は去年以来此の忍び歩きを繰り返して、或る時はこゝぞと思う
遣戸
(
やりど
)
の外で息を
凝
(
こ
)
らしてみたり、
勾欄
(
こうらん
)
のほとりに
彳
(
たゝず
)
んでみたり
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
屋根の
垂木
(
たるき
)
、廊の
勾欄
(
こうらん
)
までが、雪とうつり合って面白い。浴室の
鎧窓
(
よろいまど
)
から、湯煙の立ちのぼるのも面白い。湯滝の音が、とうとうと鳴るのも歌になると思いました。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
三
層
(
そう
)
づくりのいただき、四
方
(
ほう
)
屋根
(
やね
)
、千
本
(
ぼん
)
廂
(
びさし
)
、
垂木
(
たるき
)
、
勾欄
(
こうらん
)
の
外型
(
そとがたち
)
、または内部八
畳
(
じょう
)
の
書院
(
しょいん
)
、
天井
(
てんじょう
)
、
窓
(
まど
)
などのありさま、すべて、
藤原式
(
ふじわらしき
)
の源氏づくりにできているばかりでなく
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
各層とも
勾欄
(
こうらん
)
の付いた
広縁
(
ひろえん
)
が廻してあり、そこへ出ると、ちょうど
断崖
(
だんがい
)
の端に立った感じで、眼の下から地勢が急にさがってゆき、
遙
(
はる
)
かに青い海のかなたまで、気の遠くなるほど広く
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
とある
渡殿
(
わたどの
)
の
勾欄
(
こうらん
)
のもとにうずくまって、所在なさそうに
前栽
(
せんざい
)
のけしきを眺めている自分の童姿であった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ここへ
止
(
と
)
めおいてもこまるし、どうしたものか、と
咲耶子
(
さくやこ
)
がふと
考
(
かんが
)
えまどっていると、——キイッ、キイッ、キイ、と、また
三太郎猿
(
さんたろうざる
)
が
勾欄
(
こうらん
)
の上をいったりきたりしながら
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あたりは、ぼうっと
紅
(
べに
)
のように明るい。それに、この座敷の襖が、すっかり通して取払われ、大きな踊りの間になっている。踊りの間は
勾欄
(
こうらん
)
つきで、提灯や
雪洞
(
ぼんぼり
)
が華やかに
点
(
つ
)
いている——
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その宏大な建物を中心に、楼台高閣をめぐらして、一座の閣を玉龍と名づけ、一座の楼を
金鳳
(
きんほう
)
ととなえ、それらの
勾欄
(
こうらん
)
から勾欄へ架するに虹のように七つの
反橋
(
そりばし
)
をもってした。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
四面四方に
築墻
(
ついぢ
)
をつき、三方に門を立て、東西南北に池を掘り、島を築き、松杉を植ゑ、島より陸地へ
反橋
(
そりはし
)
をかけ、
勾欄
(
こうらん
)
に
擬宝珠
(
ぎぼし
)
を磨き、誠に結構世に越えたり、十二間の
遠侍
(
とほざむらひ
)
、九間の渡廊、釣殿
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
紫金殿の
勾欄
(
こうらん
)
、
瑠璃楼
(
るりろう
)
の
瓦
(
かわら
)
、八十八門の
金碧
(
きんぺき
)
、
鴛鴦池
(
えんおうち
)
の
珠
(
たま
)
の橋、そのほか後宮の院舎、親王寮、
議政廟
(
ぎせいびょう
)
の宏大な建築物など、あらゆる伝統の形見は、炎々たる熱風のうちに見捨てられた。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
青銅瓦
(
せいどうがわら
)
のご
殿
(
てん
)
の
屋根
(
やね
)
、
樹林
(
じゅりん
)
からすいてみえる
高楼
(
たかどの
)
づくりの
朱
(
しゅ
)
の
勾欄
(
こうらん
)
、
芝
(
しば
)
の
土手
(
どて
)
にのびのびと枝ぶりを
舞
(
ま
)
わせている松のすがたなど城というよりは、まことに、
館
(
たち
)
とよぶほうがふさわしい。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
答えにつまって、そして
羞恥
(
はじ
)
らってでもいるような気配が
朧
(
おぼろ
)
な
勾欄
(
こうらん
)
のあたりでしていた。その間には、細殿の
簾
(
す
)
が垂れている。義貞はもどかしくなり、われから立って、簾を押しはらった。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
『ははあ。糸を染めておいでなさるのだ。
染桶
(
そめおけ
)
があるし、
勾欄
(
こうらん
)
から
紅葉
(
もみじ
)
の木へ、
濯
(
すす
)
ぎあげた五色の糸を、懸けつらねて、干してもある。……はて、何と
訪
(
おと
)
なおう。おどろかしてもよくないし』
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
勾欄
(
こうらん
)
を
繞
(
めぐ
)
らした高舞台そのものが土俵である。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
はやくも
床下柱
(
ゆかしたばしら
)
から
勾欄
(
こうらん
)
をよじ登って来て
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして高舞台の
勾欄
(
こうらん
)
の端から下を臨んで
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“勾欄”の意味
《名詞》
宮殿や社寺の外廊下にある上段が反り返った欄干。高欄。
劇場。舞台。
(出典:Wiktionary)
勾
常用漢字
中学
部首:⼓
4画
欄
常用漢字
中学
部首:⽊
20画
“勾”で始まる語句
勾配
勾引
勾玉
勾当
勾
勾践
勾坂
勾璁
勾当内侍
勾珠