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先
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せん
ふりがな文庫
“
先
(
せん
)” の例文
先
(
せん
)
の時だつてさうだつたものね。しかし私達にして見りや、こんな時に稼いどかなけりや、冥利が悪いと言ふもんだよ。それで——。
疵だらけのお秋
(新字旧仮名)
/
三好十郎
(著)
澤は、自分と同じような恵まれない境遇に
在
(
あ
)
る養子に対して、素直な同情は
先
(
せん
)
から持っていたが、恋らしい心持は最近までなかった。
九月一日
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
先
(
せん
)
よりも、もっと立派なプリンセスになるのよ。十五万倍も立派になるのよ。——明日のお
午
(
ひる
)
から、私セエラさんに会いに行くのよ。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
内々
清心庵
(
あまでら
)
にいらっしゃることを突留めて、知ったものがあって、
先
(
せん
)
にもう旦那様に申しあげて、あら立ててはお家の
瑕瑾
(
かきん
)
というので
清心庵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お君、お前はよっぽど流しに縁があるんだ。新内と縁が切れたら今度は
太棹
(
ふとざお
)
ときたぜ。しかし心配するな。その
中
(
うち
)
先
(
せん
)
の師匠に泣きを
あぢさゐ
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
そこは
危険
(
きけん
)
な場所とは思われなかった。それに
先
(
せん
)
からわたしは、この中がいったいどんな様子になっているのだろうと思っていた。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
「構やしないわ。すぐにおかしな関係があるように取るのが、あの人のいつもの癖なんだから。
先
(
せん
)
にも同じようなことがあったのよ。」
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
みね「云ったっていゝよ、四間間口の表店を張っている荒物屋の旦那だから、妾狂いが当前だなんぞと云って、
先
(
せん
)
のことを忘れたかい」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
するとちょうど満五年半ばかり御同棲なすった訳ですね。
先
(
せん
)
の奥様がチブスでお亡くなりになったのは、大正八年の四月だった
筈
(
はず
)
ですから
途上
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「まあお前はなぜそんな遠慮深くしているの、
先
(
せん
)
にはまるで兄弟のようにしていたじゃないか。やっぱり昔のように迅ちゃんとお言いよ」
故郷
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
まだ一緒にいる時分よく
先
(
せん
)
のうち、お前が前の亭主と別れて帰った時の話しをして、四年前一緒になる時にも仲に立った人間が
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
が、その一面においては、どういうものか、
先
(
せん
)
を越されたというような気もした。自分ではまだ
遁亡
(
とんぼう
)
しようとも何とも思っていなかった。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
先
(
せん
)
を越されました上に泣かないので一向入りもなく連中這う/\の体で戻って参り、石を此処へ引っぽかした儘姿を
匿
(
かく
)
してしまいました。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
もっとも、
先
(
せん
)
はこの男じゃなくて、別なのだったよ。僕はその男と話していたんだ。あれはどなたでしたかね、あなたの前にみえたのは?
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
「
先
(
せん
)
には女の御児さんばかりでしたが、今度は又、男の御児さんばかし……でも、叔母さんはこんなにお出来なさるから
宜
(
よ
)
う御座んすわ」
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
御承知の通り一ヶ月ほど前に
先
(
せん
)
の住所から二三町離れたばかりの今の家へ移つたのだが、高遠な冥想に全霊を傾けてゐるから気がつかない。
西東
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
「将棋は、
先
(
せん
)
を争ふものである」と云ふことを悟つて
上手
(
じやうず
)
になつた人がゐるが、先手先手と指すことは常に大切なことである。
将棋
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
「むむ、鋳掛屋の一件か。おれもその話は聞いたが、なんと云っても伊豆屋の縄張り内だから、
先
(
せん
)
を越されるのは当りめえだ」
半七捕物帳:45 三つの声
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
犬の寝場所は、もとのところは、家でもたちつまっておいたてられたと見えて、
先
(
せん
)
とはちがった
場末
(
ばすえ
)
の、きたない
空地
(
あきち
)
にうつっていました。
やどなし犬
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
爪の
垢
(
あか
)
ほど
先
(
せん
)
を制せられても、取り返しをつけようと意思を働かせない人は、教育の力では
翻
(
ひるが
)
えす事の出来ぬ宿命論者である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「有ていにいったら、みんな首だ。だから
先
(
せん
)
を越して、夜明け次第に、まずこの地方の役署へ訴えを出しておく。よろしいか」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
先
(
せん
)
の旦那様が亡くなった時、支配人の孫六さんが
潮来
(
いたこ
)
からお呼寄せになって、御親類方にもちゃんと御挨拶をして家督に直りました。ヘエ」
銭形平次捕物控:128 月の隈
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
わずか六錢に
掛合
(
かけあひ
)
此の拔掛は企てしなり
昨日
(
きのふ
)
碓氷の働きと云ひ今ま此の素早さに三人の旅通
先
(
せん
)
を取られて後生畏るべしと舌を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
或はまた
堅気
(
かたぎ
)
の娘さんなのか、井関さんの
先
(
せん
)
だっての口振りでは、まさか
芸妓
(
げいしゃ
)
などではありますまいが、何しろ、全く見当がつかないのです。
覆面の舞踏者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
権中納言などの独身時代にその話を持ち出せばよかったなどと思うのです。太政大臣に
先
(
せん
)
を越されてうらやましく思われます
源氏物語:34 若菜(上)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「あまり働きものでもないらしいよ母ちゃん、昨日だって、
一昨日
(
おととい
)
だって、
先
(
せん
)
だって、いつでもぶらぶら遊んでいるのを私見て知ってるわよ」
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
先
(
せん
)
向島に来て居た女中で房州のものを呼ぶ。種々期待して居たのに一向話してくれない。利口な、ぬけめのない女らしい。
日記:04 一九一七年(大正六年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
主人は以前の
婢僕
(
ひぼく
)
を
誉
(
ほ
)
め、婢僕は
先
(
せん
)
の旦那を慕う。ただに主僕の間のみならず、後妻をめとりて先妻を想うの例もあり。
学者安心論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
「どうしてお前えは、
先
(
せん
)
のストライキの時によ、それだけの意地を出さなかったんだい。
裏切
××
者になってまで
首
(
×
)
をつなぎたかあねえんだとな」
今度こそ
(新字新仮名)
/
片岡鉄兵
(著)
先
(
せん
)
のお母さんが生きておいでなさる時分には、わたしはこれほど馬鹿ではなかったのでございます、わたしもこれほど馬鹿ではなかったし、それに
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「お蔭さんで、わてもこれで幾らか助かつた。」とお信さんがまたにつこりして、「
先
(
せん
)
から乳が張つて往生してたんや。これお見やす、こんなや。」
乳の匂ひ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
お登和さんはモー君の家の人になった気で
先
(
せん
)
の人の荷物が出てしまったら直ぐに自分が掃除に行きますといっている。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
そしたらね、よし子さんが、
帯留
(
おびどめ
)
ね、
先
(
せん
)
から言ってたでしょう、あれを買いに行くから付き合って
呉
(
く
)
れって言うの。
みごとな女
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
冬至
(
とうじ
)
といふと
俄商人
(
にはかあきうど
)
がぞく/\と
出來
(
でき
)
るので
急
(
いそ
)
いで一
遍
(
ぺん
)
歩
(
ある
)
かないと、
其
(
その
)
俄商人
(
にはかあきうど
)
に
先
(
せん
)
を
越
(
こ
)
されて
畢
(
しま
)
ふのでお
品
(
しな
)
はどうしても
凝然
(
ぢつ
)
としては
居
(
ゐ
)
られなかつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「なんで、
先
(
せん
)
だって
僕
(
ぼく
)
が
遊
(
あそ
)
ぼうといって
呼
(
よ
)
んだときにこなかったのだい。
君
(
きみ
)
は
僕
(
ぼく
)
の
家来
(
けらい
)
になるといったんだろう。」
雪の国と太郎
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
といって
慕
(
した
)
いますと、こんどのおかあさんも、
先
(
せん
)
のおかあさんのように、
娘
(
むすめ
)
をよくかわいがりました。おとうさんはそれを
見
(
み
)
て、よろこんでいました。
松山鏡
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
先
(
せん
)
から會計をして入らつしやるお母樣が、なる程あれなら任せられると仰やるやうにすれば
好
(
い
)
いではないか。謂はゞ素直に讓つて貰ふやうにすべきだ。
半日
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
「静岡へ送金することは、私の為事の一つでしたわねえ。貴方の
先
(
せん
)
の奥様の小夜子さんへ
手当
(
てあて
)
を差上げるのが。」
計画
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
くわすんだもの、あのひとすっかりいけなくなったわ、まるっきり
先
(
せん
)
のようじゃなくなったわ、もう少しであたし
秋の駕籠
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
財産はみんな、十五年も
彼家
(
あすこ
)
の家政婦をやっているとかいう、あの女に捲きあげられるでしょうよ。あの女は
先
(
せん
)
からそんなことを吹聴していますからね。
無駄骨
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
「こうなりゃハッキリ云ったげるわよ。——あんた
先
(
せん
)
に丘田さんのところで、盗んでいったものがあるでしょう」
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
先
(
せん
)
の
団十郎
(
だんじゅうろう
)
、
菊五郎
(
きくごろう
)
、
秀調
(
しゅうちょう
)
なぞも覚えています。私がはじめて芝居を見たのは、団十郎が
斎藤内蔵之助
(
さいとうくらのすけ
)
をやった時だそうですが、これはよく覚えていません。
文学好きの家庭から
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
これまでは、ズット北の山の中に、徳蔵おじと一処にいたんですが、そのまえは、
先
(
せん
)
の殿様ね、今では東京にお住いの
従四位様
(
じゅよいさま
)
のお
城趾
(
しろあと
)
を番していたんです。
忘れ形見
(新字新仮名)
/
若松賤子
(著)
「大丈夫居ますよ、
若
(
も
)
し変つて居たら
先
(
せん
)
に居た小屋の者に聞けば
可
(
よ
)
うがす、遠くに移るわけは有りません。」
空知川の岸辺
(新字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
おれは
先
(
せん
)
から知っていたねえ、このひと、ただの書生さんじゃないと見込んで、去年の夏、おれの畑のとうもろこし、七本ばっか
呉
(
く
)
れてやったことがあります。
創生記
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
碁を打つても勝ち越しになるので、氷峰をとう/\
先
(
せん
)
にしてしまつた。後者は躍起になつて來るが、前者は然しさう熱心でない。ただ時間つぶしにやつてゐた。
泡鳴五部作:03 放浪
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
其方儀
(
そのはうぎ
)
先
(
せん
)
平助
(
へいすけ
)
養子
(
やうし
)
に相成候節約束を
背
(
そむ
)
き藤五郎藤三郎の兩人を
廢
(
はい
)
し我子
佐
(
すけ
)
五郎に
家督
(
かとく
)
を繼せん
爲
(
ため
)
種々
(
しゆ/″\
)
惡事等
(
あくじとう
)
企
(
くはだ
)
て候段
不屆
(
ふとゞき
)
に
思召
(
おぼしめし
)
改易
(
かいえき
)
の上八丈ヶ島へ
遠島
(
ゑんたう
)
仰付
(
おほせつけ
)
らる
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
先
(
せん
)
にも言ったように、心のよくない人間でしたから、
折角
(
せっかく
)
御馳走をくれようとまで言ってくれた親切などは忘れてしまって、いきなり御馳走をさし出してくれた
蕗の下の神様
(新字新仮名)
/
宇野浩二
(著)
すなわち
百露
(
ペルー
)
古王の
先
(
せん
)
もまた
大
(
ママ
)
陽より来るというがごときこれなり。これ必ずわが上世の皇子
流竄
(
るざん
)
せらるる者、
彼地
(
かのち
)
に漂着して、ついにここに王たりしなるべし。
教門論疑問
(新字新仮名)
/
柏原孝章
(著)
今晩遅くに来てくれという手紙を
貰
(
もら
)
ったのですって、それで夜出かけたけれども、
先
(
せん
)
に一度銀行の通帳の事で一杯喰わされた事があるので、何となく気が進まず
ニッケルの文鎮
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
先
常用漢字
小1
部首:⼉
6画
“先”を含む語句
先生
先方
先刻
先達
先日
最先
先頭
先駆
水先案内
真先
先祖
先立
先々
一先
爪先
先登
行先
先月
先驅
切先
...