はた)” の例文
『どうしてまあ兄弟喧嘩きやうだいげんくわを為るんだねえ。』と細君は怒つて、『左様さうお前達にはたで騒がれると、母さんは最早もう気がちがひさうに成る。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「僕はこれから家へ帰ってマザーに悉皆すっかり謝罪する。明日から生れ更った積りで働く。君は一つはたから大いに気を利かしてくれ給え」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
鈴江と肝胆相照かんたんあいてらしている様子は、はたから見ていて此のような社会の出来ごととしても余り気持のよいことじゃなかったのである。
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おつぎのまだみじか身體からだむぎ出揃でそろつたしろからわづかかぶつた手拭てぬぐひかたとがあらはれてる。與吉よきちみちはたこもうへ大人おとなしくしてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
サアこうなって見ると、我ながらあきれたもので、その醜体と来たらば、自分でも想像されるが、はたの見る目には如何におかしいであろう。
病牀苦語 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
既往こしかたおもいめぐらしてふさぎはじめましたから、兼松がはたから種々いろ/\と言い慰めて気を散じさせ、翌日共に泉村の寺を尋ねました。
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私なぞの理想はいつも人に迷惑を懸ける許りで、一向自分のたしになった事がないが、はたから見たらさぞ苦々しい事であったろう。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
そこが今お話しした門閥のつらさで、はたの目が多いし、世間の口もうるさいというわけで、入ってからがなかなか辛抱できるものじゃございません。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
外には絶板になっているのと雑誌に出た一幕物ひとまくものと二つあるばかりです。どれもはたから失敗の作だと云ったので、作者も跡を作らないのでしょう。
そういう婦人らは、口惜くやしさを隠しおおせるほど巧みではなくて、はたの人々の笑い事となりはしたけれど、はなはだしい悲嘆に沈みはしなかった。
セントアントニウスはあの通りの道心堅固な生涯を送りながら、なほはたの人の目に見える迄性慾の煩悶に陥つてゐた。
はたからは元気らしく見えますけれど、実は面白くない容態にさしかかっているので、人に会うことも出来るだけ避けたがよいと、そう申渡されていますのよ。
好意 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ゐどはたより出でゝ、境内カヤツリ草の離々りゝたる辺にたたずみ、ポッケットより新約聖書取り出でゝ吾愛する約翰よはね伝第四章を且読み且眺む。頭上には「此山」ゲリジムの山聳ふ。
最も臆病に、最も内心に恐れておった自分も、はたから騒がれると、妙に反撥心が起る。殊更に落ちついてるふうをして、何ほど増して来たところで溜り水だから高が知れてる。
水害雑録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
曹操のあまりな豪語に、衛弘がすこし乗り過ぎているのじゃないかと、かえってはたで心配したほどだが、それから後、曹操のやることを見ていると、いよいよ不敵をきわめていた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その男は炉のはたに自分のためにとてって置かれてあった御馳走の前に腰を下ろした。
さらにいっそう薄気味悪いことには、まがうかたなくそれが、黒死館で邪霊と云われるテレーズ・シニヨレだったのである。法水ははたの驚駭にはかまわず、その妖しい幻の生因を闡明せんめいした。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
本篇ほんぺん集成しゅうせいしたるものはわたくしでありますが、私自身わたくしじしんをその著者ちょしゃというのはあたらない。わたくしはただ入神中にゅうしんちゅうのTじょくちからはっせらるる言葉ことばはた筆録ひつろくし、そしてあと整理せいりしたというにぎません。
やり甘い辛いがだんだん分ればおのずから灰汁あくもぬけ恋ははた次第と目端が
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
一体その顔は不可いけないよ。笑ふならはらわたまで見える様に口をあかなくちや不可いかん。怒るなら男らしく真赤になツて怒るさ。そんな顔付ははたで見てるさへ気の毒だ。そら、そら、段々苦くなツてくる。
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それがはたで見ていても、余り歯痒はがゆい気がするので、時には私も横合いから
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
其のうちに娘はなまめかしいきぬてながら、しづかに私のはたを通ツて行ツた。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
と自分の耳のはたで怒鳴りつけた奴が有つて、ガーンとなつた。
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「そう再々怪我勝ちされてはちとどうもはたが迷惑します」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「有難い。実は僕も随分努力したんだが、人間の意志ってものははたから動かせない。豊子には豊子の都合があったんだから」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
むやみに縁語を入れたがる歌よみはむやみに地口じぐち駄洒落だじゃれを並べたがる半可通はんかつうと同じく御当人は大得意なれどもはたより見れば品の悪きことおびただしく候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
その上に、例の溌剌たるお嬢さんがたを全部、招待して、まるで、移動する花園の中におもいありと、はたから見る者をしてたんぜしめたのであった。
暗号音盤事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「然し何事でも、当事者になるとはたから想像するほど苦しむものじゃない。人生は寧ろ一種の喜劇だからね。真剣のつもりでも案外冗談のことが多いものなんだ。」
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
だいたい夫婦めおとあらそいにあまり感心かんしんしたものはすくのうございまして、なかにははたているほうかえって心苦こころぐるしく、おぼえずかおそむけたくなる場合ばあいもございます。これなども幾分いくぶんかそのたぐいでございまして……。
はたでどうすることも出来ないようなものですけれど……ああいうことを
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
お銀は口のはたなどを拭いてやりながら、心から嬉しそうに言った。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
と自分の耳のはた怒鳴どなりつけた奴があって、ガーンとなった。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
むやみに縁語を入れたがる歌よみは、むやみに地口じぐち駄洒落だじゃれを並べたがる半可通はんかつうと同じく、御当人は大得意なれどもはたより見れば品の悪き事おびただしく候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「いゝえ、あなたが『安子や、鉄瓶屋のお上さんになるかい?』なんて仰有るからですわ。はたで力を入れなくて、何うして行く気になるものですか」
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「僕が生れ更れば、ガヷナーも直るよ。そこへ君がはたから気を利かしてくれゝば、四方八方まるく治まる」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
家内が何うしたの子供が斯うしたのと、事故ばかりあって、はたで聞いているのもうるさい。向上心なぞはちっともない。ひまがあると、碁を打つ。将棋を差す。謡曲を唸る。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「お母さんがはたで加勢をして下すったからやり宜かった。お父さんも決して分らない人じゃない」
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
操さんもはたから加勢する。既に昼間荒ごなしがしてあったから、一々能く耳に入ったらしく
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と雑記帳の表紙に自嘲をなぐり書いている通り、本人も辛かろうが、はたも気が気でない。元来受験生は健全な存在でないから、長くなると、慢性病者のような暗影を家庭へ投げる。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ほかのことと違って、こればかりは縁だからね。お互同志は兎に角、はたが承知しない」
村一番早慶戦 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
秋山さんがはたから慰めてくれた。そんな関係だから、僕は普段の僕と悉皆違っていた
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
はたで見ていると、岡目八目でよく分る。見す/\いけないものを頑張っている。曲るという言葉があるが、本当に頭が曲ってしまうのだ。しかし一週間後に精も根も尽きて投げ出した。
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「痛いのははたで見ているのもつらいものですな。何か方法はありますまいか?」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「君と僕が気をつければ、親同志も分って来る。はたのものがおベンチャラを言うから悪いんだ。僕は小作や出入りのものゝ競争じゃないかと思う。その証拠に、親父は君のところを褒めることがある」
村一番早慶戦 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と芳野君がはたから手っ取り早く片付けた。
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と奥さんがはたから余計な口を出す。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
豪くなるとはたからはく
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)