おら)” の例文
「八さア、頼むからそうして下せえ。おら、この辺で待ってるだ。おら、一人であの家へ行くのは、おっかなくて、とても出来ねえだよ」
青服の男 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
おらんとこは無人で敢り次ぎが居んさかい、この圓窓が取り次ぎや。……この窓けてわめいて呉れ、うちにゐたら俺が出て來るぞ。」
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「うむ。ほんでな、おらは市平に、貴様が、せっかく出世しかけだどこだげっとも、一つうちへ戻ってもらうべかと思ってな。ほんで……」
土竜 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
お榧しばらく考えたが、「ちょうどおらも道人様の居場所を、知りてえと思っていたところ、ようがす、聞いてお知らせしましょう」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
好矣よしおらが一番先に信者になつて、村の衆の鼻毛を抜いてやらうと、初めて松太郎の話を聴いた晩に寝床の中で度胸を決めて了つたのだ。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
おらがとこちつともこらはなんねえんだよやうねえやうだよ本當ほんたうに」おつぎはもう段々だん/\あまつて與吉よきちひざにしていつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
聞いてくろ! おら、どげえな思いしてこの托児所こせえた? 一年かかって、てんでが家から、枕あ、敷布だしあって、やっとこせえたんだ。
ピムキン、でかした! (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
村人七 おらも、可哀相で見ておられなんだぞ。勘五郎どん、お前どうしただ。お前が一揆の大将を、甚兵衛どんの家へ案内したいうじゃないか。
義民甚兵衛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「立てて云うけにおらあ立って聞きおったら、気の遠うなってグラグラして来た。一時間も立っとったならおらあ仁三郎より先に天国へ登っとる」
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「あゝ、おつ魂消たまげた。」農夫ひやくしやうは眼をこすり/\言つた。「おらはあ、何にも知んねえだよ。おめえ様のやうな女子あまつこみたいな男初めて見ただからの。」
家の者はおらの家出を知つてゐるのに、知らん顔しよるんではないかしらん。さう思ふと、彼は家族の誰からも黙殺され見捨てられた自分を感じた。
青年 (新字旧仮名) / 北条民雄(著)
何故って、ここはお前……お前が何時かこむらを返してしずみ懸った時に、おらがその柔かい真白な体を引抱ひんだいてたすけ揚げたとこだ。
片男波 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
「ええ、おらが事か。兄さん、とけつかったな。聞馴ききなれねえ口を利きやあがる。幾干いくらで泊める。こう、旅籠は幾干だ。」
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おらあ馬鹿だつただ。とんだことをしてしまつただ。だから今から、その坊さんのところへいつて謝罪あやまつて来る。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
おらく知らないが、の宝物というのは実に立派なものだ。真闇まっくらな処でもぴかぴか光って……。何だかう……。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
おらきこの附近あたりに住まふものぢや。われら家にて持つて来るものがおぢやるわ。少時しばしがほどここに待たれよ。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
意地を張っているおら方の母親も分らず屋だが、犬っころみたいにお前を連れ帰ったお父さんも少し短気すぎる。
凍雲 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
おらもお前様に力をつけて辛抱しんぼうするように言ってみたあけれど、どっちにしてもこのお邸は為めになんねえお邸だ、いっそのこと、逃げ出した方がいいだ」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「そんなことがあるもんか。おら、ちゃんと知ってるんだ。黒公の奴はちょいちょい葉ちゃんに撲られてんだぜ」
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
「うんにゃ。も少し待で。又すぐ晴れる。おらも弁当食ふべ。あゝ心配した。おらとらこ山の下まで行って見で来た。はあ、まんつがった。雨も晴れる。」
種山ヶ原 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
らがも困るだ。れが困ると俺らが困るとは困りようが土台ちがわい。口が干上ひあがるんだあぞおらがのは」
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「今に、その悪い血の道が、めるだろうと、おらあ、壁隣りから、おめえの顔も見ずに、こらえているんじゃないか。よそうよ、なあ、夫婦喧嘩は、犬も喰わねえ」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おらも娘さなくした人を知ってるだがな、その人ァ巴里さ行って、その娘を探しあてただとよ」
親ごころ (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
おらにもわからない。しかし、俺ア、あのお経を聞いて手を合はせずには居られなくなつた。実際、俺ア、何も知らずに来た。わるいこともわるいと思はずにこれまでやつて来た。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
勘爺さんがうなずいた。「然だ/\、手代てがわりでやるだな。野良番が四人よったりに、此家の作代に、おらが家の作代に、それから石山さんの作代に、それから、七ちゃんでもいてもらうべい」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
何しろお前、あのさきはしの暗礁へ乗り上げたので、——それで村中の漁夫りょうしがその大暴風おおしけの中に船をおろして助けに行ったのだが、あんな恐ろしいことはおらァ覚えてからなかった。
少年と海 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
「本当かい。おらあ又、もっとほかの仲間が、その辺の藪の中に隠れているんだと思った」
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「湯島の家でおらがから鎧櫃を受け取った女郎みてえなお侍さんがねじ込んで来てるだ」
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
サン いやさ、おらコーラーさはるが最後さいご、すぐにもッこいてくれようといふンぢゃ。
処でおらの旦那がお世辞半分に新聞記者の天職をさかんなりと褒めて娘も新聞記者につもりだと戯謔面からかひづら煽動おだてたから、先生グツト乗気になつて早やむこ君に成済なりすましたやうな気で毎日入浸いりびたつてゐる。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
罪も、咎も無い、あの別嬪が、巻きぞえ食うなんて——おらあ、あの女に手を折られたのじゃねえ、だから怨みもねえのに、畜生っ——何うしてあんな別嬪の、可愛らしいのがいやがったんだろう。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
盗人ぬすっとの女をれて家へ帰れるものか、舟はおらが漕ぐ」
参宮がえり (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
丘や畑は万作じや、おや、おらちの陸穂おかぼもやつとれた。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「うむ……旦那がおらがことを聞いたか。」
特殊部落の犯罪 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
おらのこのふえいていているだろの?
管笛 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おらがとこは十八貫あれば好いだ。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「うんにゃ、おらァだめだよ」
あまり者 (新字新仮名) / 徳永直(著)
おらがに用事かね」
おら泣いた
雨情民謡百篇 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
何だべえせえ、自分のとこでなかつたら具合ぐあえが悪かんべえが? だらハア、おらア酒え飲むのさ邪魔さねえば、何方どつちでもいどら。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
おらも、あんつあんと行ぐは。」と一人で土をいじくって遊んでいたよしが、土煙の中から飛び出してヨーギの方へ駈けて行った。
土竜 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
……渾名あだなで分かりますくらいおそろしく権柄けんべいな、家の系図を鼻に掛けて、おらが家はむかし代官だぞよ、と二言めには、たつみ上がりになりますので。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そんだらさつせえそれ、十五もんめだんべ、おらがな他人たにんのがよりやけえんだかんな」商人あきんど目笊めざるけてせて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「昼間は家ン中や庭さ歩き廻って、何するでなしにソワ/\してたっけが、夕方になって、おら頼まれた通り夕飯さこしらえて持って行くと、どこにもいねえだ」
青服の男 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
おい、おちやん、旦那はえゝがな。……そらお前、旦那は燒いて喰はうと炊いて喰はうと、お前の勝手やがな。坊んちに手を付けると、おらア承知せんで。
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「ウム。おらあ途方もない幽霊に附纏われた御蔭で、この通りスッテンテンに落ぶれて来た。何とかしてくれい」
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「うんにゃ。も少しで。またすぐ晴れる。おらも弁当べんとう食うべ。ああ心配した。おらとらこ山の下まで行って見で来た。はあ、まんつがった。雨も晴れる。」
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「ううん、おら、死んだ方がよかったなあ、その方がサッパリすらあ……極東が解散しちゃ飯の喰上げで……」
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
いったいお前道人様は、どこに住んでいるんだね? そいつをおれに聞かしておくれ、おらが行って取ってくる
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「どうしてもいやか。おらんなに云ってもいてれないのか。」と、重太郎は泣かぬばかりに口説いた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)