何時なんじ)” の例文
「もう何時なんじ」とひながら、枕元まくらもと宗助そうすけ見上みあげた。よひとはちがつてほゝから退いて、洋燈らんぷらされたところが、ことに蒼白あをじろうつつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
冷吉はそんな時に、何時なんじとも分らない夜ふけの中に、いろんな事をまんじりと考へて、仕まひに淋しくなると寢入つてゐる母を呼んだ。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
葉子は何時なんじの鐘だと考えてみる事もしないで、そこに現われた男の顔を見分けようとしたが、木村に似た容貌ようぼうがおぼろに浮かんで来るだけで
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
小田原をだはらまちまでながその入口いりぐちまでると細雨こさめりだしたが、それもりみらずみたいしたこともなく人車鐵道じんしやてつだう發車點はつしやてんいたのが午後ごゝ何時なんじ
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「もう何時なんじごろだろう、これはしまったことをしてしまった。いくらねむくても、我慢がまんをしてねむるのではなかったが。」
眠い町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ふたゝ幾日いくにち何時なんじごろに、第一震だいいつしん以上いじやうゆりかへしがる、そのとき大海嘯おほつなみがともなふと、何處どこかの豫言者よげんしやはなしたとか。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たとへば、それがあさの九であつたと假定かていして、丁度ちやうど其時そのとき稽古けいこはじめる、時々とき/″\何時なんじになつたかとおもつてる、時計とけいはりめぐつてく!一時半じはん晝食ちうじき
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
その時は流石にアストン博士も「君は何時なんじに我々を解放してくれるのかね」とストラットン博士にきいていたが
何時なんじですか、と時間をたずねて立ち上り、お釣を、と私が言いますと、いや、いい、と言い、それは困ります、と私が強く言いましたら、にやっと笑って
ヴィヨンの妻 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「みんな起きてるのかい。正夫もいるんだね。……もう何時なんじです。酒をのむなら、自分一人でおのみなさいよ。みんなを起しとくという法は、ないでしょう。」
家のひとたちのあてがうものをこころよくみして、なんのこともなく昨夜さくやまでごしてきたところ、けさは何時なんじになっても起きないから、はじめて不審ふしんをおこし
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
すなはその二十分時ぶんじとは長針ちやうしんの十二ところいたまで二十分時ぶんじあるとふことにて、いづれも長針ちやうしんは十二もとにし盤面ばんめんにある六十のてんかぞへて何時なんじ何分時なんぶんじふことをるべし。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
「君は何時なんじまで居られるんだい。なんなら泊って行っても可いじゃないか」と三吉が言った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
志願兵殿しぐわんへいどの何時なんじでありますか‥‥」と、背後うしろから兵士へいし一人ひとりたづねた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「今何時なんじだ? 二時半か。それは七時だったな。」
「高司君、いま、何時なんじと思うとりますか」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
何時なんじに彼は乗船しましたか?」
何時なんじから? 靜子さん。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
何時なんじに起きるの?」
「もう何時なんじだろう。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何時なんじ?」
死後 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この連中と道伴みちづれになって登り一里、くだり二里を足の続く限り雲に吹かれて来たら、雨になった。時計がないんで何時なんじだか分らない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「おじょうさん、もう何時なんじごろですか。」と、盲目めくらのおばあさんは、あそんでいるおんなたちにたずねました。
夕雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「そうねえ何時なんじまで門限は?……え、六時? それじゃもういくらもありませんわね。じゃお湯はよしていただいてお話のほうをたんとしましょうねえ。いかが軍隊生活は、お気に入って?」
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
何時なんじ頃だったか私は覚えていない。あたりはしいんと静まり返っていた。
理想の女 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「お民、もう何時なんじだろう。お前にはまだ話さなかったが、さっきお寺から帰って来る時のおれの心持ちはなかった。後方うしろから何かに襲われるような気がして、実に気持ちが悪かった。さっさとおれは逃げて帰った。」
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
何時なんじだろうね、ジョー?」
何時なんじからですか?」
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
何時なんじだねえ。」
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何時なんじごろ」
もう何時なんじだろうとへやの中を見廻すと四隣はしんとしてただ聞えるものは柱時計と細君のいびきと遠方で下女の歯軋はぎしりをする音のみである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「もう何時なんじだか、時間じかんがわからなくなって、こまるじゃないの。」と、おかあさんはいって、そとて、近所きんじょいえで、時間じかんいてきました。そして、時計とけいはりなおしました。
時計とよっちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
何時なんじになるでしょうね。」と祖母は尋ねかけた。
同胞 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「もう起きたんか。何時なんじだな」
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「もう何時なんじだろう。」
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「それで盗難にかかったのは何時なんじ頃ですか」と巡査は無理な事を聞く。時間が分るくらいならにも盗まれる必要はないのである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そう、何時なんじごろかしらん、もう三ぎたのでない。」
夕雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「もう何時なんじでしょう。」とお清は呟いた。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
時間は何時なんじだか、はとうていまだ明けそうにしない。腕組をして立って考えていると、足の甲がまたむずむずする。自分はこらえ切れずに
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いま何時なんじだろうな。」と、敏夫としおさんが、いいました。
お母さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
「只今何時なんじですか。」
未来の天才 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
右へ右へと爪先上つまさきあがりに庚申山こうしんやまへ差しかかってくると、東嶺寺とうれいじの鐘がボーンと毛布けっとを通して、耳を通して、頭の中へ響き渡った。何時なんじだと思う、君
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「もう、何時なんじごろでしょうか。」
子供と馬の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それから何時なんじだか分らない朝の光で眼をました。雨戸の隙間すきまから差し込んで来るその光は、明らかにいつもより寝過ごした事を彼女に物語っていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
朝来た時も腹や頭の具合が変であったが、帰りは日盛ひざかりになったせいかなお苦しかった。あいにく二人共時計を忘れたので何時なんじだかちょっと分り兼ねた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「大変おそうがしたな。明日あした何時なんじの汽車で御ちですか」と玄関へあがるやいなとひけた。代助は、微笑しながら
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今度はKの答えがありません。その代り五、六分経ったと思う頃に、押入おしいれをがらりと開けて、とこを延べる音が手に取るように聞こえました。私はもう何時なんじかとまた尋ねました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
勝さんは何時なんじの下りだの、上りだのという言葉をつかって、津田に正確な答えをさせた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
始めは「誰と?」と聞こうとしたが、聞かぬ前にいや「何時なんじ頃?」の方が便宜べんぎではあるまいかと思う。いっそ「僕も行った」と打って出ようか知ら、そうしたら先方の答次第で万事が明暸めいりょうになる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼らの席を立ったのは、男達のくゆらし始めた食後の葉巻に、白い灰が一寸近くもたまった頃であった。その時誰かの口から出た「もう何時なんじだろう」というきっかけが、偶然お延の位地に変化を与えた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)