)” の例文
しかしそのうち、父親の身辺も非常に急がしくなって、老躯ろうくをひっさげながら壮人とするわけで、勢い子供から手を抜くの外はない。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
民衆の上にある英雄と、民衆のなかにしてゆく英雄と、いにしえの英雄たちにも、星座のように、各〻の性格と軌道があった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
併し此等の歌を以て、万葉最上級の歌とせしめるのはいかがとも思うが、万葉鑑賞にはこういう歌をもまた通過せねばならぬのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
かといって、又、己は俗物の間にすることもいさぎよしとしなかった。共に、我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心との所為せいである。
山月記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
しかしあのめかしこんだ老人が、いつわって青年たちにしていた結果、どんな様子になってしまったか、それはじつに不愉快なながめだった。
私が訊いたのは何も背丈せたけのことばかりではない。西洋人にして角逐かくちく出来る体力や気魄きはくついて探りを入れたのである。
巴里のむす子へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そしてすぐに野の片すみの田舎者は僧侶そうりょするに至る。田舎者の仕事着を少し広くすれば、そのまま道服である。
見られよ、私たちのために形を整え、姿を飾り、模様に身を彩るではないか。私たちの間にして悩む時もすさむ時も、生活をわかとうとて交わるのである。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
最後の拍手とともに人びとが外套がいとうと帽子を持って席を立ちはじめる会の終わりを、私は病気のような寂寥感せきりょうかんで人びとの肩にして出口の方へ動いて行った。
器楽的幻覚 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
従って彼は世間にして、目まぐるしい生活の渦の中へ、思い切って飛びこむ事が出来なかった。袖手しゅうしゅをして傍観す——それ以上に出る事が出来なかった。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
妓輩の主人生時は貴人とを成すが、一旦命しゅうすれば最卑民中にすらとどまるを許されず、口に藁作りのたづなませ、死んだ時のままの衣服で町中引きずり
今は、昇殿も許され、殿上人にして舞う身ながら、元はといえば、お前なんか、伊勢の田舎いなかものじゃないか、ひっこめ、ひっこめ、というわけなのである。
そして、この濛々もうもうたる蒸気と臭気とにして、ドーッと音がすれば、それは、汚物が流れ出した証拠である。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
それ以外にもアチラコチラの新聞雑誌社から寄書を依頼されるという日の出の勢いであったから、紅葉はく他の硯友社同人とするには余りに地位が懸隔し
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
霽月らの諸君にして子規居士の傘下さんかに集まった一人として別に意に介する所もなかったのであろう。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
今こうして市井しせいの巷を庶民にしてもまれもまれて徒歩ひろっているのを誰ひとり知るものもないという、おさない、けれども満ちたりたよろこびなどはすこしもなかった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それだけに生れついて居るものは生れついているだけの情懐が有る。韓信が絳灌樊噲こうかんはんかいの輩とを為すをじたのは韓信に取っては何様することも出来ないことなのだ。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「昨日も、今日も、ただ水の上に、陽がれて行った」と日記に書く、気の弱いぼくが、それも一人だけの、新人フレッシュマンとして、たくましい先輩達にし、きたえられていたのですから
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
倫敦ロンドンに住み暮らしたる二年は尤も不愉快の二年なり。余は英国紳士の間にあつて狼群ろうぐんする一匹のむく犬の如く、あはれなる生活を営みたり。倫敦の人口は五百万と聞く。
『文学論』序 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はたして向こうへ追って行くわ! ……飛天夜叉の一団が調ととのえ、松明の光に道を照らし
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
周囲を見回すごとに、他の本陣問屋にして行くことすら彼には心苦しく思われて来た。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
勿論もちろんこの人の趣味でもなく、特別の理解でもなかったであろうが、この時代までは折々彼の見たようなすね者、もしくは風狂人などと呼ばれた中年者が、風雅の人の間にして
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
戦前、日本の科学は世界の第一線にしたということがよく言われた。それはうそであるが、世界の科学の進歩にほぼきびすを接して追従して行けるくらいのところまでは進歩していた。
簪を挿した蛇 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
気違いじみたしわざとお笑いになるかもしれないが、自分にはどう考えてみてもそれよりほかに道はない。葉子に離れて路傍の人の間にしたらそれこそ狂気になるばかりだろう。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
しかし今の場合はちがっていた。異いつつあった。成熟した大人たちとして、肉体の力で相並ぶことが一つの条件になりかけていた。彼らの必要としているのは格式や典礼ではない。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
枳園きえんは俳優にして登場した罪によって、阿部家の禄を失って、ながいとまになった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ぼくは今もそう者にしていさぎよくたゝか關根せきね名人の磊落性らいらくせいむし愛敬あいけいし、一方自しつつ出でざるさか田三吉八だんに或る憐憫れんみんさへかんじてゐる者だが、將棋せうきだけはわかい者にはてないものらしい。
今日でこそ有閑ゆうかん婦人の贅沢はさまで珍しくないようなものの昔は男子でもそうは行かぬ裕福ゆうふくな家でも堅儀かたぎな旧家ほど衣食住のおごりをつつし僭上せんしょうそしりを受けないようにし成り上り者にするのを
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
妻の手前ながら定めて断腸だんちょうの思いなりしならんに、日頃耐忍たいにん強き人なりければ、この上はもはや詮方せんかたなし、自分は死せる心算しんさんにて郷里に帰り、田夫野人でんぷやじんして一生を終うるの覚悟をなさん。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
客に、丁寧に会釈えしゃくをしてから、父に向って名刺を差し出しながら、しとやかそうにった。傲岸ごうがんな父の娘として、白痴の兄の妹として、彼女はおおかみした羊のように、美しく、しとやかだった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
いやしくも潔清けっせい無垢むくくらいり、この腐敗したる醜世界をのぞみ見て、自ら自身を区別するの心を生ぜざるものあらんや。わずかに資産の厚薄、才学の深浅を以てなおかつ他とをなすをいさぎよしとせず。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
男子の間にして社会主義建設のために積極的に活動している。
十月革命と婦人の解放 (新字新仮名) / 野呂栄太郎(著)
「私の姓は、で、名は秋月しゅうげつといいます」
蘇生 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
兵士を組む。
饑餓陣営:一幕 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
けれどこんな御生活の許へも、一朝いっちょう、吉野の軍令が来れば、宮は征夷府大将軍として馬上兵甲のあいだにし、即刻、庵を立たねばならなかった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は快活で朦朧もうろうたる心持の、のんきな連中にしているのが耐えられなかった上、また彼の額にある極印が、その連中には邪魔になったからである。
おおきよき貞女よ! 汝は既に久しき以前よりこの世の者ではなかった。汝は光明のうちに汝の姉妹の童貞たちや汝の兄弟の天使たちとしていたのである。
京都あたりの今日の個人作家にしてゆこうという苦心が見える。しかし惜しいかな、技巧と美とを同一だと誤認しているきらいがある。腕はよいが方向は悪い。
雲石紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
倭寇わこうは我我日本人も優に列強にするに足る能力のあることを示したものである。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
我が稲門健児とうもんけんじは不幸にも、北側の第一レインを割り当てられ、逆風と逆浪げきろうの最もはげしい難路を辿たどらねばならず、つ、長身にして、短躯たんくのクルウを連ね、天候さえ冷え勝ちで、天の利、地の利
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
また一例を云うと、ここに一人の男がある。この人は学校へ出る。その時には教師の仲間へ入れて見なければなりません。筆をる。その時には著作家のむれするものと認めるのが至当であります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
歴々の人々の間にしている彼を見るのは始めてゞあった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
と、あれから間もなく、院へも、出仕しゅっしし始めている。そして、父子ともに、近ごろはまったく別人のように、からっと明るくなって、人びとにしていた。
人も揃い、わざも揃い、材料も整っているのである。そうして何より職人気質かたぎが残っているのである。あとは正しい形と模様とを植えつければ、昔の秀衡椀にす品を作ることは決して難事ではない。
陸中雑記 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
迷惑の人とせんとするものはこの門をくぐれ。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
道はけわしいし、夜はまだ明けないし、味方には違いないが、誰の手勢やら組やら分らない中にして、ここの将士はただえいえいと山上へ急いだのだった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かかる間にして個人作家は立ったのである。彼らは来るべき工藝に対していかなる位置にあるか、いかなる任務を彼らが負うているか。そのことへの自覚は現代において最も重要な問題と云えよう。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
武門にして、日頃は人並の言を吐いている又兵衛も、いざとなっては、わずか数丈の切岸きりぎしひるんで、馬を
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
計らずも、先に行った旧友や新参の明智などとして、彼も、伊勢に戦うこととはなったのである。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)