交際つきあい)” の例文
茂兵衛 (声)こちらはお蔦さんと仰有います方のおうちじゃございませんか、わたくしは川向うの人と交際つきあいを持たねえ者でござんす。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
それには、是非ともお交際つきあいを願って、いろ/\な立ち入った御相談にも、あずからせていただきたいと、それで実はあんな突然なお申込を……
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そんなお交際つきあいの仲なのですが、この遠い所まで私の病気を見舞いに来てくださいましたそうですから、恐縮して私は聞いておりましたよ
源氏物語:39 夕霧一 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「あああのお屋敷でございますか、あれは世間普通のお方とは、交際つきあいもしなければ交際つきあってもくれない、特別の人のお屋敷なのですよ」
犬神娘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
風流の道というものは長崎のはての先生でも、奥州の人とも手紙の遣り取りをして交際つきあいをするものだがね、久馬様はおなくなりになって
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
れがその交際つきあい朋友ほういう互に交って遊ぶ小供遊こどもあそびあいだにも、ちゃんと門閥と云うものをもっ横風おうふう至極しごくだから、小供心に腹がたって堪らぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
もう少しざっくばらんにいってくださいよきのうきょうのお交際つきあいじゃなし。倉地さんとまずくなったくらいは御承知じゃありませんか。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
人と人との交際つきあいに趣味のあるのとないのとは、金銭や物件ぶっけん差引勘定さしひきかんじょうの出来ないところにある。いわゆる商売以外のところにある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
彼女等は誰かここで昼飯交際つきあいの旦那が見つかれば好し、もし見つからなければ仲好三人で今日一日遊んでしまおうという話がまとまった。
巴里のキャフェ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
くみやすし——とも観ていないであろうが、時折、飄逸ひょういつをあらわしたり、馬鹿を見せたりするので、交際つきあいいい男としているのは事実である。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
博士はかせ旅行たびをしたあとに、交際つきあいぎらひで、籠勝こもりがちな、の夫人が留守した家は、まだよいも、実際つたの中に所在ありかるゝ山家やまがの如き、窓明まどあかり
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
山下松次は石炭荷役の請負師であるが、手遊びが好きで、土地は勿論、九州一円の顔役とは、その方面のひろい交際つきあいがあった。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「貴様は、物りらしいつらをしておるからきくのだ。江戸において交際つきあいのひろい人物がひとり、至急に入要である。名をいえ」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
屹度あなたは、そろそろあたしに厭気がさしてきたんでしょう、屹度もう、あたしなんかとはお交際つきあいもして下さらないおつもりなんでしょう。
「井上、——貴公の言うのは、一応尤もだが、この稲富喜三郎、それ程卑怯者でないことは、長年の交際つきあいで、大方は知って居る筈ではないか」
江戸の火術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「君の様に金回りが好くないから、そう豪遊も出来ないが、交際つきあいだから仕方がないよ」と云って、平岡は器用な手付をして猪口ちょくを口へ着けた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
身投げをしようという一期のおりに、手前のような交際つきあいのひろい男に出っくわすなんてえのも、これもみな美徳のむくい。
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
客が来ても、ろくすっぽう挨拶することも知んねえけれア、近所隣の交際つきあい一つ出来やしねえんだからね。俺アとんだ貧乏籤びんぼうくじを引いちゃったのさ。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「ええ、有りがとう御在ます。しかし何ぼ何でもまだついこのごろのお交際つきあいなのに、そんな御迷惑をかけちゃ済みません。」
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ほんとうのフトした事から交際つきあいしはじめてもう六年ほどにもなる今日、昔よりも尚親しい感情がお互の心に通って居る。
M子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
余は何時いつとも無く不審を起し目科とはも何者にやと疑いたり、もとより室と室、隣同士の事とて或は燐寸まっちを貸し或は小刀ないふを借るぐらいの交際つきあいは有り
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
柿丘秋郎と白石博士との両家庭が、非常に親しい交際つきあいをするようになったのは、実にこうした事情にたんを発していた。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
仕事屋のお京は今年の春よりこの裏へと越して来し者なれど物事に気才の利きて長屋中への交際つきあいもよく、大屋なれば傘屋の者へは殊更ことさらに愛想を見せ
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
永い間の交際つきあいでその道の恐るべき嬌態コケットリーもすっかり上手になっていて、悪行ではねえさんたちと肩を並べようという激しい野心に燃えているのなど、また
群集の人 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
一日、二日とする内に——彼等は全く二人きりの寂しい親娘おやこであって、生計くらしは豊かでなく近所の交際つきあいもよくない事。
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
君が僕と共にしたのは、夜昼とない無意味の対話、同じ人との交際つきあい、一人の女を相手にしての偽りの恋に過ぎぬ。
やむをえないお交際つきあいから入ったとしても私のくちびるは、見る見るうちに紫色と変色して、ふるえが止まらないのである。
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
この頃はあまり世間と交際つきあいをしないらしい半七老人のうちにも、さすがは春だけに来客があると思っていると、わたしの案内を聞いておなじみの老婢ばあやがすぐに出て来た。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
仲間の交際つきあいで京見物に上り、眉の薄い、色の白いところから思い付いた役者に化けて松本楼に上り、満月花魁の姿を見てからというもの役者の化けの皮はどこへやら
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
世間並のお世辞上手な利口者なら町内の交際つきあいぐらいは格別つらくも思わないはずだが、毎年の元旦に町名主まちなぬしの玄関で叩頭おじぎをして御慶ぎょけいべるのを何よりも辛がっていた
いひなづけするまでの交際つきあい久しく、かたみに心の底まで知りあふ甲斐かいいなともともいはるる中にこそあらめ、貴族仲間にては早くより目上の人にきめられたる夫婦
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「あの方とは長いお交際つきあいでしたから相当親しくしていましたのよ。殊に最近はある事で——」
鉄の処女 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
世の中の変るにつれ今までの武家の格式もて、町人百姓とも交際つきあいをせねばならなくなったので、私の師匠は従前よりも一層親しく三枝家の相談を受けておったことでしたが
母と妹は、親戚の者と一夕の交際つきあいのために、外出して居なかった。女中の陳述に因れば、女中は彼が、彼の日常の居室になっている、表二階の室に入る気配を聞いたのであった。
お目に掛って見りゃ、あっし達でもお交際つきあいが出来ねえでもねえニコニコした御隠居さん。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「これで何だぞい、俺は旅舎生活やどやぐらしを始めてから、唯の二度しか引手茶屋へも遊びに行ったことが無い。それも交際つきあいむを得ない時ばかり。一度はMさんの出て来た時、一度は——」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
今ではどっちにでもひょっとしたことのあれば骨を拾ってやろうかもらおうかというぐらいの交際つきあいになったも皆親方のおかげ、それに引き変え茶袋なんぞはむやみに叱言こごとを云うばかりで
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
交際つきあいの宴会に出たり、取引先を廻ったりするだけで、隙でぶらぶらしていて、学生時代から好きだった「芸術」をなまかじりしたり、文学者や画家たちのお伴をして飲み廻ったり、尤も
肉体 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
明の詩画家許友は、ぶくぶくに肥った背低せひくで、身体中に毛といっては一本も生えていなかった男だが、人が訪ねて来ても、それに答礼するでもなく、そんな交際つきあいには一向無頓着であった。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
大槻は年ごろ五十歳あまり、もと陸軍の医者で、職をめてからは目黒の三田村にうつり住んで、静かに晩年を送ろうという人、足立駅長とは謡曲の相手で四五年以来このかた交際つきあいであるそうだ。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
「やあ、これはお珍らしい、いところでお目にかかりました。世の中は全く変なものですね、いいかげんな交際つきあいはうるさいほどあるのに、最も親しい友達には決して会えないものです」
おおきなお世話せわかはぞんじませぬが、わたくしかげながら皆様みなさまめにこころいためてるのでございます。くれぐれも天狗てんぐとお交際つきあいになるなら、できるだけつよい、ただしい、立派りっぱ天狗てんぐをおえらびなさいませ。
また父が達者でいる間にせがれの太郎が成人して、世間の交際つきあいを初めるようになると、仕方がないから家柄の家でも、区別するために太郎太郎ともいえぬから小太郎、新太郎などといっております。
名字の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
私にはこれという友人がなく、つきあいらしい交際つきあいもしたことがない。
友人 (新字新仮名) / 上村松園(著)
家では青木が炬燵こたつに寝そべっていた、青木は、嫂が今日兄貴の上役と交際つきあいで芝居を観に行ったと話した。清三は冷えた躯を派手な炬燵蒲団の中に埋めて、やけにがんがんする頭をぐったり垂れた。
須磨寺附近 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
人間の皮をかぶったけだものじゃとばかりおっしゃって、交際つきあいも、口きくこともせなんだじゃないか、それを何と思って、こんなに肝煎きもいりぶりをなさるのは、たいがい様子が知れたものじゃ、お前はこの
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その文面だけでは、姉の喜美子とその大学生がどんな交際つきあいをしていたのか、道子には判らなかったが、しかし、読み終って姉の机の抽出の中を探すと果して鴎外の「即興詩人」の文庫本が出て来た。
旅への誘い (新字新仮名) / 織田作之助(著)
さて裸体はだかのままでは文明の婦人とはいわれない、それは禽獣きんじゅうと雑居していた蒙昧もうまいな太古にかえるものですから、お互にどうしてもその裸体はだかを修飾して文明人の間に交際つきあいの出来るだけの用意が必要です。
女子の独立自営 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
『あらためて一つ差し上げましょう、この後ながくお交際つきあいのできますように、』と自分はさかずきをさした。かれは黙して杯を受けて、ぐいと飲み干したが、愁然として頭をれた。そして杯を下に置いた。
まぼろし (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「こうお交際つきあいを願ったからには、聞かしてもらいたいね」