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鰈
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かれい
ふりがな文庫
“
鰈
(
かれい
)” の例文
どれも小さなほど愛らしく、
器
(
うつわ
)
もいずれ
可愛
(
かわい
)
いのほど
風情
(
ふぜい
)
があって、その
鯛
(
たい
)
、
鰈
(
かれい
)
の並んだ
処
(
ところ
)
は、雛壇の奥さながら、竜宮を
視
(
み
)
るおもい。
雛がたり
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ちょっと
鰈
(
かれい
)
を——縦におこして泳がせたような
恰好
(
かっこう
)
だ。それに、その胴体と殆ど同じ位の大きさの三角帆のような
鰭
(
ひれ
)
が
如何
(
いか
)
にも見事だ。
虎狩
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「わるいことをいうな。けだし国音
家令
(
かれい
)
は
鰈
(
かれい
)
に通ずればなりか。
瓶子
(
へいし
)
は
平氏
(
へいし
)
に通じ、
醋甕
(
すがめ
)
は
眇
(
すがめ
)
に通ず。おもしろい。ハッハハハハ」
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「そうです、魚売りのおばさんの呼び声を思いだしましたわ。こうなんです——いなや
鰈
(
かれい
)
や
竹輪
(
ちくわ
)
はおいんなはらーンで、という」
三人の双生児
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「一、魚の序文。二、魚は食べたし金はなし。三、魚は愛するものに
非
(
あら
)
ず食するものなり。四、めじまぐろ、
鯖
(
さば
)
、
鰈
(
かれい
)
、いしもち、
小鯛
(
こだい
)
。」
魚の序文
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
▼ もっと見る
せいぜい千円か二千円と予想していた蟹江は、すっかり動転して、箸ではさんだ
鰈
(
かれい
)
の煮付けを、とたんに土間におっことしてしまいました。
Sの背中
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
本屋の横には呉服屋が並んでいる。そこの暗い海底のようなメリンスの山の隅では痩せた姙婦が青ざめた
鰈
(
かれい
)
のように眼を光らせて沈んでいた。
街の底
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
「今朝のお汁の鳥はものかは」「
何処
(
いずこ
)
にも飽かぬは
鰈
(
かれい
)
の
膾
(
なます
)
にて」「これなる皿は
誉
(
ほ
)
める人なし」とは面白く作ったものだ。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
青々とした
笹
(
ささ
)
の葉の上には、まだ生きているような
鰈
(
かれい
)
が
幾尾
(
いくひき
)
かあった。それを見せに来た。婆さんは大きな皿を手に持ったまま、大塚さんの顔を
眺
(
なが
)
めて
刺繍
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
定「何もございませんが、いつもの魚屋が
佳
(
よ
)
い
鰈
(
かれい
)
を持ってまいりました、珍らしい事で、鰈を取って置きました」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
飯粒や生玉子と一緒に呑込めば済むと思う人がありますけれども、鯛の骨や
鰈
(
かれい
)
の骨や
鰌
(
どじょう
)
の骨なぞは腹の中で色々な害をして悪くすると盲腸炎を引起します。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
捕れるのは
鰈
(
かれい
)
が多く、あいなめとか、夏になるとわたり
蟹
(
がに
)
なども捕れるが、蟹の場合はべつに心得があった。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「ところがお侍様、お祭中はいきの好い魚が仕入れてございます。
鰈
(
かれい
)
の煮付、
鯒
(
こち
)
ならば洗いにでも出来まする。そのほか
海鰻
(
あなご
)
の蒲焼に
黒鯛
(
かいず
)
の塩焼、
鰕
(
えび
)
の
鬼殻焼
(
おにがらやき
)
」
怪異暗闇祭
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
秋の
沙魚
(
はぜ
)
釣に、沙魚船を呼ぶはまだしも、
突船
(
つきぶね
)
けた船の、
鰈
(
かれい
)
、
鯒
(
こち
)
、
蟹
(
かに
)
も択ぶ処なく、鯉釣に出でゝ
鰻
(
うなぎ
)
を買ひ、
小鱸
(
せいご
)
釣に
手長蝦
(
てながえび
)
を買ひて帰るをも、敢てしたりし。
釣好隠居の懺悔
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
あり得べきところにあるものとはいえ、しんと静かな内部に
鰈
(
かれい
)
のように白く泳ぎ澄んでいるような彼女の顔は、変態なかれの情痴をぶちこわして了ったのである。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
発動機船や
鰈
(
かれい
)
のような平らべったい
艀
(
はしけ
)
が、水門の橋梁の下をくゞって、運河を出たり入ったりする。——「H・S工場」はその一角に超弩級艦のような灰色の図体を据えていた。
工場細胞
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
八月には、僕は
房総
(
ぼうそう
)
のほうの海岸で
凡
(
およ
)
そ二月をすごした。九月のおわりまでいたのである。帰ってすぐその日のひるすぎ、僕は
土産
(
みやげ
)
の
鰈
(
かれい
)
の
干物
(
ひもの
)
を少しばかり持って青扇を訪れた。
彼は昔の彼ならず
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
砂を食った
鰈
(
かれい
)
でも捕めえると、なんのこたあねえ、鯨でも
生獲
(
いけど
)
ったような気なんだから適わねえ、意地の汚ねえ野郎が揃ってるんだから、どうせ浜で焼いて食おうって寸法だろうが
釘抜藤吉捕物覚書:07 怪談抜地獄
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
鰈
(
かれい
)
の類は沖遠くにて釣ることなれば、名立を離るること八里も十里も出で、皆々釣り居たるに、ふと
地方
(
じかた
)
の空を顧みれば、名立の方角と見えて、一面に赤くなり、夥しき火事と見ゆ。
地震なまず
(新字新仮名)
/
武者金吉
(著)
鯛、鱸、
鰈
(
かれい
)
、黒鯛など、婦人が行っても釣ることができる。
安房
(
あわ
)
の南端
布良
(
めら
)
の釣遊は豪壮であった。外房勝浦方面の釣り案内舟は、いま一段の改善が欲しいと考えてみたこともあった。
水の遍路
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
「と云って、おどかしただけで、実はさんざんの
体
(
てい
)
で引き揚げて来たんですよ。
浅蜊
(
あさり
)
ッ貝を小一升と、
木葉
(
こっぱ
)
のような
鰈
(
かれい
)
を三枚、それでずぶ濡れになっちゃあ
魚屋
(
さかなや
)
も商売になりませんや。ははははは」
半七捕物帳:32 海坊主
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
同じ仲間の秋刀魚や鯛や
鰈
(
かれい
)
や
鰊
(
にしん
)
や
蛸
(
たこ
)
や、其他海でついぞ見かけたことのないやうな、珍らしい魚たちまで賑やかにならべられてゐましたので、この秋刀魚は少しも寂しいことはなかつたのでしたが
小熊秀雄全集-14:童話集
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
鰻
(
うなぎ
)
、
鯰
(
なまず
)
、
鰌
(
どじょう
)
、ハゼ、イナ、などが釣れ、海では、鯛、
鱸
(
すずき
)
、
鯒
(
こち
)
、
鰈
(
かれい
)
、
鰺
(
あじ
)
、
鱚
(
きす
)
、
烏賊
(
いか
)
、
蛸
(
たこ
)
、カサゴ、アイナメ、ソイ、平目、小松魚、サバ、ボラ、メナダ、
太刀魚
(
たちうお
)
、ベラ、イシモチ、その他所によつて
日本の釣技
(新字旧仮名)
/
佐藤惣之助
(著)
小盤台を二つ位しか重ねていないが、ちいさな
鰈
(
かれい
)
や、
鯒
(
こち
)
がピチピチ跳ねていたり、生きた
蟹
(
かに
)
や芝
海老
(
えび
)
や、
手長
(
てなが
)
や、海の匂いをそのままの紫
海苔
(
のり
)
と、水のように
透
(
す
)
いて見える
抄
(
すく
)
いたての白魚の間から
旧聞日本橋:23 鉄くそぶとり(続旧聞日本橋・その二)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
今日の仕込みの
鰈
(
かれい
)
は生きが悪かったとかコック頭とコックと喧嘩して
青豆
(
プチポア
)
を
茹
(
ゆ
)
で過ぎたとか、とかく店の為にならない話だ。そこでマネージャアは給仕と食通客と程度以上に親しくするのを監視する。
食魔に贈る
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
肴
(
さかな
)
は
鰈
(
かれい
)
を焼いて
煮
(
に
)
たるやうなる者
鰭
(
ひれ
)
と頭と尾とは取りのけあり。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
日本女の前にレモンをそえたドーヴァ
鰈
(
かれい
)
のフライが置かれた。
ロンドン一九二九年
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
四、
鰈
(
かれい
)
に附ける薬あれば、猫にも財布の必要あり。
ノンシャラン道中記:02 合乗り乳母車 ――仏蘭西縦断の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
冒頭に置いての責道具ハテわけもない
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
椀の
白魚
(
しらお
)
もむしって食うそれがし
鰈
(
かれい
)
たりとも
骨湯
(
こつゆ
)
は頂かぬと往時権現様得意の逃支度冗談ではござりませぬとその夜冬吉が
金輪奈落
(
こんりんならく
)
の底尽きぬ腹立ちただいまと小露が座敷戻りの
挨拶
(
あいさつ
)
も
長坂橋
(
ちょうはんきょう
)
の
張飛
(
ちょうひ
)
睨んだばかりの勢いに小露は顫え上りそれから明けても三国割拠お互いに気まずく笑い声は
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
蟹江が
鰈
(
かれい
)
の煮付けだけで我慢しているのに、刺身だの酢の物だのをどしどし注文したり、まあ大体そんなことです。
Sの背中
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
磯端
(
いそばた
)
で、日くれ方、ちょっと釣をすると、はちめ(甘鯛の子)、
阿羅魚
(
あらうお
)
、
鰈
(
かれい
)
が見る見るうちに、……などは
羨
(
うらやま
)
しい。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
捕れるのは
鰈
(
かれい
)
が多く、あいなめとか、夏になるとわたり
蟹
(
がに
)
なども捕れるが、蟹の場合はべつに心得があった。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
東野は
鰈
(
かれい
)
と鳥とを註文すると、さア、いよいよ美味くなくなるぞ、と云うようにメニューを投げ出して
旅愁
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
今の鯛汁も西洋料理から出たといったが西洋料理でお魚のスープというとよく病人に食べさせる。お魚は鯛でも
鱸
(
すずき
)
でも
鰈
(
かれい
)
でも
比目
(
ひらめ
)
でも何でも白い身の物ならばいい。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
京橋の寿司屋に生きたコチとか
鰈
(
かれい
)
とかを料理する店があったが、相子はそこでさしみを仕入れ、煮附にするまぐろを仕入れ、その包みをひろげているのを寝台の上から眺め
われはうたえども やぶれかぶれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
花魁に聞かし
度
(
た
)
いねえ、若旦那の飯の
喰
(
くい
)
ッ
振
(
ぷり
)
が気に入っちまった、
鰈
(
かれい
)
のお肴か何かの時は其の許嫁のお嬢さんが綺麗に骨を取って
肉
(
み
)
をむしって、若旦那私がむしって上げますと云って
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「いいえ、
鰈
(
かれい
)
の三歳はおとなです。これくらいあります」
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
夕暮れより船を催して
鱈
(
たら
)
、
鰈
(
かれい
)
の類を釣りに出たり。
地震なまず
(新字新仮名)
/
武者金吉
(著)
何んだ、手前の眼カスベか
鰈
(
かれい
)
か?
工場細胞
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
凸凹
(
でこぼこ
)
凸凹凸凹と、
累
(
かさな
)
って敷く
礁
(
いわ
)
を削り廻しに、漁師が、天然の
生簀
(
いけす
)
、
生船
(
いけぶね
)
がまえにして、
魚
(
さかな
)
を貯えて置くでしゅが、
鯛
(
たい
)
も
鰈
(
かれい
)
も、梅雨じけで見えんでしゅ。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
胸に
一物
(
いちもつ
)
あるので、蟹江はいつもよりコップの数を控え目にしました。
肴
(
さかな
)
はもちろん
鰈
(
かれい
)
の煮付けです。この頃では、黙っていても、久美子はこれを運んでくるのでした。
Sの背中
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
鰈
(
かれい
)
や
烏賊
(
いか
)
、えい、ほっけを入れた笊籠はどこの家の板の間にも転がり、白菜の見事な葉脈の高く積っているあたりから、刈上げ餅を搗く杵音がぼたん、ぼたん、と聞える。
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
○
比良目
(
ひらめ
)
は蛋白質壱割九分、脂肪四厘七毛あり、比良目と
鰈
(
かれい
)
は魚類中最も消化の良きものなり。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「
鰈
(
かれい
)
? なるほど。ハッハハハハ」
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
銀杏の葉ばかりの
鰈
(
かれい
)
が、黒い尾でぴちぴちと跳ねる。
車蝦
(
くるまえび
)
の小蝦は、
飴色
(
あめいろ
)
に
重
(
かさな
)
って
萌葱
(
もえぎ
)
の脚をぴんと跳ねる。
小春の狐
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そういう魚は肉の中に脂肪分を持っているから滋養は多いけれども消化が悪い。白い肉の魚とは
鰈
(
かれい
)
とか
比目
(
ひらめ
)
とか
鱈
(
たら
)
とかいうもので脂肪分は
肝臓
(
かんぞう
)
にあるから肉の方は消化が
易
(
やす
)
い。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
海老や鶏や
鰈
(
かれい
)
が出ても四人は一口も饒舌らなかった。
旅愁
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
はげて、くすんだ、泥絵具で
一刷毛
(
ひとはけ
)
なすりつけた、波の線が太いから、海を
被
(
かつ
)
いだには違いない。……鮹かと思うと脚が見えぬ、
鰈
(
かれい
)
、
比目魚
(
ひらめ
)
には、どんよりと色が赤い。
赤鱏
(
あかえい
)
だ。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お魚のグレーと申して
鯛
(
たい
)
とか
鱸
(
すずき
)
とか
鯖
(
さば
)
とか
鰡
(
ぼら
)
とか
鰈
(
かれい
)
とか
比良目
(
ひらめ
)
とか
川魚
(
かわうお
)
ならば
鯉
(
こい
)
とか
鱒
(
ます
)
とか
鯇
(
やまめ
)
とか
鮭
(
さけ
)
とかいうようなもので肉に
膠分
(
にかわぶん
)
の多い種類を択びまして
海魚
(
うみうお
)
ならば背から開いて骨を抜いて塩胡椒を
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
にこにこ笑いながら、
縮緬雑魚
(
ちりめんざこ
)
と、
鰈
(
かれい
)
の
干物
(
ひもの
)
と、とろろ
昆布
(
こんぶ
)
の
味噌汁
(
みそしる
)
とで
膳
(
ぜん
)
を出した、物の
言振
(
いいぶり
)
取成
(
とりなし
)
なんど、いかにも、
上人
(
しょうにん
)
とは
別懇
(
べっこん
)
の間と見えて、
連
(
つれ
)
の私の
居心
(
いごころ
)
のいいといったらない。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“鰈(カレイ)”の解説
カレイ(鰈)は、カレイ目カレイ科に分類される魚類の総称である。
(出典:Wikipedia)
鰈
漢検1級
部首:⿂
20画
“鰈”を含む語句
干鰈
柳鰈
小鰈
石鰈
篠鰈
若狭鰈
若狹鰈
鰈魚