さわぎ)” の例文
旧字:
「あああきれた。あそこを見なよ。このさわぎのなかに呑気のんきな顔をして将棋をさしている奴がいるぜ。ホラ、あそこんとこを見てみろ……」
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その後お嫂様ねえさまにお目にかかった時、「去年御病気の終りの頃、こんなさわぎがあったなら、どんなにお気の毒な思いをしたでしょう」
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
先刻、あのさわぎの時は、帳場に坐っておりましたが、驚破すわというと、ただかっといたして、もうそれが、の底だか、天上だか分りません。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もう夕刊に出る時分だが今日はそんなさわぎで会社は休みも同然になったのでもっけのさいわいと師匠を呼んで二、三段さらったわけさ。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
私は小鹿野をかのの奥の権作ごんさくと申しますもので、長左衛門様には何程どれほど御厚情をかうむりましたとも知れませぬ、——さわぎで旦那様はあゝした御最後——が
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「ベルリンへ! ベルリンへ!」といふさけびはます/\盛んになつて、パリーの町々はわきかへるさわぎであつた。仏軍はぞく/\国境さして出発する。
風変りな決闘 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
余は一方は山、一方は崖の爪先上りの道を進みて小高き広場に出たかと思ふと、突然耳に入つたものは絃歌のさわぎである。
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
うまけるのに手間てまれるとかとりきんで、上句あげくには、いつだまれとか、れこれうな、とかと真赤まっかになってさわぎかえす。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
この地尻に、長左衛門という寄席がありましたっけ。有名な羽衣はごろもせんべいも、加賀屋横町にあったので、この辺はゴッタ返しのてんやわんやのさわぎでした。
江戸か東京か (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
「だって、ツイ先刻さっき田圃たんぼで彰義隊の落武者が捕まって、斬ったとか斬られたとか、大変なさわぎをしたようだから、此方こっちに何んか変りが無きゃ宜いと思って——」
芳年写生帖 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
さっきまで鳴りをしずめて、ひそんでいた洞窟の秘密工場は、にわかに戦場のようなさわぎになったのである。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
そうかいどころのさわぎじゃねえんだね。全体なら出て来なくってもいいところをさ。——銀行がつぶれて贅沢ぜいたくが出来ねえって、出ちまったんだから、義理がるいやね。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「じゃア、今のさわぎはお前さんだね。だが、角川の若旦那を何故殺そうとしたの。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
山では大へんなさわぎになりました。何しろ花火などというものは、鹿しかにしてもししにしてもうさぎにしても、かめにしても、いたちにしても、たぬきにしても、きつねにしても、まだ一度も見たことがありません。
赤い蝋燭 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
で、子供達のさわぎが、お母さまの静かな眠りをさますことを恐れたのでした。
女王 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
いはんや是は南閣浮提なんえんぶだいの中には、唯一無双の御仏、長く朽損きうそんあるべしとも覚えざりしに、今毒縁の塵にまじはりて、久く悲を残し給へり。梵釈ぼんじやく四王、竜神八部、冥官みやうくわん冥衆みやうしゆも、驚きさわぎ給ふらんとぞ見えし。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
そうおさわぎになるには及びません。なんの御用ですか。
そりやもう大変たいへんさわぎ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いざ出動というときになって、怪塔ロケットの司令機が故障になったというさわぎですから、怪塔王はかんかんになって黒人をどなりつけました。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「それでなくッてさえ、先達こないだのようなさわぎがはじまるものを、そんなことをしようもんなら、それこそだ。僕アまた駈出かけだしてかにゃあならない。」
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それですから震災後改造社が一円全集本に私の「あめりか物語」を入れて出すとたちまち版権侵害の苦情を云立て裁判沙汰にすると云うさわぎになったのです。
出版屋惣まくり (新字新仮名) / 永井荷風(著)
人生じんせい解悟かいごむかっておる自由じゆうなるふか思想しそうと、このおろかなるさわぎたいする全然ぜんぜん軽蔑けいべつ、これすなわ人間にんげんのこれ以上いじょうのものをいまだかつてらぬ最大幸福さいだいこうふくです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
向島小梅に新築した、後藤三右衛門の別荘落成祝いは、町奉行鳥居甲斐守を正客に、腹心の者を集めて、町芸者数十人をはべらせ、天下御免のドンチャンさわぎでした。
礫心中 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
議席はさわぎだてり、我々は真実を以て交はる者なれば、他の議会に見る如き忌避きひ或は秘密等のいとふべき慣例を用ひざるべしとの議論さかんなりしが、篠田はやがて起ち上がりつ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
何かと書附けた手帳なども見喪みうしなったようなさわぎですから、分らぬ物も多いのです。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
まあ、此頃の乱世のさわぎはどうでござりましょう。
ラジオも電話も不通では、このさわぎはさらに大きく広がってゆくだろう。だが、旗男は、見なれない背広男の言を、どうしても信ずることが出来なかった。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一体、母様おっかさんに懸合うはずなんだけれど、御病人だからお前さんだ、見なすったろう、嘉吉さんとこのなんざ、あのさわぎ
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私のと目で死ぬのいきるのと言うさわぎをして居ります——が、その私でさえ、猿若町の舞台の上から、毎日、毎日粧を凝らして江戸中の女を見尽して居る私でさえ
百唇の譜 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
おいの長吉が釣台つりだいで、今しも本所の避病院ひびょういんに送られようというさわぎ最中さいちゅうである。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
左様さやう、其れを又た聴きたいてんで、此のさわぎなんですからナ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
己は気違染みた魔法さわぎは気に食わぬ。
飛行島戦隊は、このさわぎをよそに、風雨荒れ狂う暗闇の南シナ海をついて、ぐんぐん北上してゆくのであった。
浮かぶ飛行島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「待て待て、そんな無法は許さぬぞ、万一町人共を斬ってさわぎを大きくすれば、殿御一身の御迷惑——」
礫心中 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
親方というのはなまずの伝——どうですさわぎの卵じゃありませんか、尋常事ただごとじゃアありますまい。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
をひ長吉ちやうきち釣台つりだいで、今しも本所ほんじよ避病院ひびやうゐんに送られやうとさわぎ最中さいちゆうである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
そこからは、まるで仕掛花火がはじまっているような海上のさわぎが見えた。幾十条の探照灯が、網の目のように入まじって、海上を照らし、爆雷の太い水柱がむくむくあがっている。
浮かぶ飛行島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もしそんな事になったら、——綾麿は四方あたりが真っ暗になったように思いました。が、家の中の酒が一段落になったらしいさわぎを聴くと、ハッとした心持で、最後の俵を解き始めました。
菊枝がかねて橘之助贔屓びいきで、番附に記した名ばかり見ても顔色を変えるさわぎを知ってたので、昨夜、不動様の参詣さんけいの帰りがけ、年紀とし下ながら仲よしの、姉さんお内かい、と寄った折も
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
目がくらんだ足の処へ、箱だか、鉄瓶だか重いものが斜違はすっかいに来て乗っかるというさわぎ
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ああ、西瓜! そうだ、あのさわぎで忘れていた。オイ西瓜を持ってこォい」
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その大久保石見守は、武州八王子で、三万石を食んで亡くなったが、死んだ後で大変なさわぎ持上もちあがった。——それは、遺書に七万両の大金を、七人のめかけに形見としてわけてやると書いてあったからだ。
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
湯宿々々に埋伏まいふくして、妖鬼ようきごとを圧したが、日金颪に気候の激変、時こそ来たれと万弩まんど一発、驚破すわ! 鎌倉の声とともに、十方から呼吸を合はせ、七転八倒のさわぎに紛れて、妻子珍宝つかみ次第。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さわぎにも顔を出さぬ、お静のことをフト思い浮べたのでしょう。
江戸の火術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
戦争の最中に支那ちゃん小児こどもを殺したってあんなさわぎをしやあしまい。たちまち五六人血眼になって武者振つくと、仏敵だ、殺せと言って、固めている消防夫しごとしどもまで鳶口とびぐちを振ってけ着けやがった。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
四五間しかないそうですが、泥水をって川へ一時に推出して来た、見る間にくいを浸して、早や橋板の上へちょろちょろと瀬が着くさわぎ。大変だという内に、水足が来て足をめたっていうんです。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「不可いどころのさわぎじゃない、姉様を殺した奴だもの。」
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)