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主治医としてN博士とその助手が二人ほどに来たばかりで、百万長者の生命を治療するのには、たいへん貧弱すぎたと考えられる。
仲々死なぬ彼奴 (新字新仮名) / 海野十三(著)
注射がくならさせて見たらと云ったことがあり、幸子も誰か専門の人にせて見ましょうと、いつもそう云ってはいたのであった。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
医者にてもらって深呼吸をする時などには最も適切に当てはまるし、その他の場合でもあまりたいした無理なしに適用しそうである。
笑い (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「政や、この先生はね、大学で新らしい学問をしていらっした方だからね。この先生にて貰っておれば、きっと治して下さるんだよ」
勝ずば (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
しかし、そこはデリケートなところで、もう一つ、こんな例があります。私がてゐた女の患者ですが、もう六十五といふ年です。
医術の進歩 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
そうたずねた次郎の心には、もし竜一の父だと、その留守中、母の病気は誰がてくれるだろうか、というかすかな心配があった。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
彼も風変りなこのマダムのファンの一人で、庸三もある機会にちょっとてもらったこともあって、それ以来ここでも一度顔が合った。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
賀古かこさんの病院へ通って、代診の内藤さんというのが優しいよい人だったので、それほどでない時にも、よくてもらったものでした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
ウム、それ検熱器けんねつきふものだ、これ聴診器ちやうしんきこれ打診器だしんきふものだ。伊「へえー。殿「一つてやらうか。登「いえわたくし別段べつだん何処どこも。 ...
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「それが間違がありません。神樂坂の本田奎斎けいさい先生、——外科では江戸一番と言はれる方だ。その方がて言ふんだから、これは確かで」
耳許へ口を押付けて叫んだが、老人は奇怪な言葉を最後に、絶命してしまった。——祐吉は老人の脈をたり、瞳孔をしらべたりしていたが
天狗岩の殺人魔 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あのとき愚老ぐらう不審ふしんおもひました。岸和田藩きしわだはんのお武士さむらひ夜分やぶん内々ない/\えまして、主人しゆじん美濃守みののかみ急病きふびやうなやんでゐるによつててくれとのおはなし
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「でも、青山君、世の中は広いようで狭い。君の友だちのからだをわたしがてあげたなんて、まったく回り回っているもんですわい。」
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「どなた? ……」医家の尊厳を保つために、机の前へ帰って、片肘かたひじを乗せ、「ご病気でござるか、て進ぜよう、さあお上がりなされ」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
断ればなお付け込んでいるものですからてやりましたが、もうその辺ではセラのお医者ということは非常な名声になって居りまして
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「マアお待ちなさい。只先生に会ってお話をきくだけならいいじゃありませんか。そのあとでてもらうかどうだかきめたらいいでしょう」
豚吉とヒョロ子 (新字新仮名) / 夢野久作三鳥山人(著)
ひどい疝痛に幾度も悩まされてそのためまた元へ完全に逆戻りをした。先月までそんな状態だったが、先月僕はフェーリングにてもらった。
私も体を調べてみると、極くわずかだが、斑点があった。念のため、とにかく一度て貰うため病院を訪れると、庭さきまで患者があふれていた。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
この間じゅうからていただこうかしらと幾度か思ったんですけれども、あんまり大げさらしいんで我慢していたんですが
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
醫者いしやもらふと、發育はついく充分じゆうぶんでないから、室内しつない温度をんど一定いつていたかさにして、晝夜ちうやともかはらないくらゐ人工的じんこうてきあたゝめなければ不可いけないとつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
まる一時間ばかりも可哀そうな親子の者をてくださいましたが、『どうにもわからん』とおっしゃるんでございますよ。
私がたときは昏睡状態だったので、私はどうにも施すすべがないので、ただカンフルの注射をしてあげただけでした。
私はかうして死んだ! (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
肉親の誰一人にもててもらうでもなく、辛い難産であった。太郎や光吉の時も、このような苦しみようはしなかったと思うほどな辛さであった。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「その事は一時的で癒ったって、こんなに弱っているのはいけないわ、第一食慾のないなんか。どうしてちゃんとした人にてお貰いんならないの」
白い蚊帳 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
午後ひるからになつてから、やつぱり氣がゝりだから、どうでも——町へ行つて、念のために、一應專門の眼科醫にて貰ふ事にしようと言つて伴れて出た。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
「さっぱりわかりませぬ。愚老もこれまで種々の病気をましたが、このような病気は、ついぞ診たこともおざらぬ」
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
医者にせてごらんとしきりに勧めた。然し彼女はそれに従わなかった。診て貰っても無駄だと頑張った。二度目に食物を吐いた時、順造は叱りつけた。
幻の彼方 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
貴女あなたに話すのを忘れていた。此間中頭が重いので、一昨日おととい、近藤にもらうと、神経衰弱の気味らしいと云うのだ。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「早よ、S病院、チュイ。あなたのお父ツぁん、負傷あります。日本太夫リベンタイフて、出血あります。クヮイクヮイデ。」
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
ところが、それでもってお医者様が眼をさまして、二人を見てね、病人ならここへ出せ、十八文でてやるなんて、おかしなことを言ったんだそうだよ。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「船長が、どうしてもせることを許さないんです。それで、僕らは、自費で連れて来たんです」藤原は答えた。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
ハア、頭ですか? イヤ今日はどうも失體しました。あれから向うの共立病院へ來て一寸て貰ひましたがねす。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
そういうようなことをおよそ半時もつづけ、それから眼をたり、口を開けさせてみたり、——身体じゅうをくまなく調べた上で三人の医者は帰って行った。
(新字新仮名) / 島木健作(著)
お婆さんは首をかしげて、「そうねえ。それはてもらっておくに越したことはないでしょう。」と云った。
犬の生活 (新字新仮名) / 小山清(著)
房一はあれから相沢の息子をに五六度行つた。殆どその度ごとに会つてゐるので、相沢知吉といふ人物については一通りのことは知つてゐるつもりだつた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
その上今日こんにちは今までとは違い、他の医者にてもらい候うところ、肋膜ろくまくはうまくなおった、盲腸もうちょうもなんともない、ただ肺尖はいせんが少し悪い、養生しろと申され候う。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ある暖かい日曜に、関さんとつれだって、羽生の原という医師いしゃのもとにてもらいに出かけた。町の横町に、黒い冠木かぶきの門があって、庭の松がこい緑を見せた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
ちょうど火傷やけどのようだったが、彼は何とかその原因を説明した。そして傷のために熱が出て、一カ月余り家に閉じこもっていた。医者にせようともしなかった。
「なんでもないんですの。すぐによくなることはわかっているんですけれど、この人が、軽いうちにお医者にてもらったほうがいいといってかないんですよ。」
浴槽の花嫁 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
島の内の華陽堂かようどう病院が泌尿科ひにょうか専門なので、そこでてもらうと、尿道に管を入れて覗いたあげく、「膀胱ぼうこうが悪い」十日ばかり通ったが、はかばかしくならなかった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
醫者いしやうちからは注射器ちうしやきわたしてくれた。ほか病家びやうか醫者いしや夕刻ゆふこくた。醫者いしやはおしな大腿部だいたいぶしめしたガーゼでぬぐつてぎつとにくつまげてはりをぷつりとした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「なに、ここの家のむすめの病気をてくれと頼まれて、T君が例の美人療治をやったのですよ。」
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
内科に勤務して居る友人を呼んでて貰いますと、とりあえず止血剤を注射し、絶対安静せよと忠告をしてくれましたから、私は仰向きになってじっとしてりました。
人工心臓 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
龜藏が宵から急にじゆつながつて仕樣がありませんから、お醫者さんを呼びに來たら、村長の仕打ちが氣に入らんからに行つてやらんと仰有おつしやる。……旦那樣に早う行つて譯を
避病院 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
「それでもてもろうておく方がええやないの。」と、今度は姉から彼に医者をすすめ出した。
御身 (新字新仮名) / 横光利一(著)
これをたのが、導引並どういんなみの若い医者だが、あまり虎列剌と症状が同じなのに驚いた、という噂話が、中間部屋で寝っころがっているうちに、なんとなく手前の耳にはいった
顎十郎捕物帳:05 ねずみ (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
医者の診察室には、病人も来れば健康たつしやな人も来る。医者は一々それをて、病人には病気でないやうな気安めを、健康たつしやな人には病気がある様な言葉をかけなければならぬ。
「いいえ、私もその意見をしていた処でござんすよ。お医者様にもろくにて貰わないで、薬も嫌いで飲まないんですもの、貴女からもそう云ってやって下さいましな。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
てもらふのも変だし……けれどもね、阿母おつかさん、私はとうから言はう言はうと思つてゐたのですけれど、実は気に懸る事があつてね、それで始終何だか心持がくないの。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
二月ふたつき三月みつきに一度、彼女はS市から出て来るのだったが、良人には大学の婦人科の先生にてもらいに行くのだと言いつくろっていた。もっとも良人は半信半疑のていだった。