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訛
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なま
ふりがな文庫
“
訛
(
なま
)” の例文
そう云う言葉さえ聞き取りにくい田舎
訛
(
なま
)
りで、こちらが物を尋ねてもはかばかしい答えもせずに、ただ
律義
(
りちぎ
)
らしく
時儀
(
じぎ
)
をして見せる。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
言葉には少しも地方の
訛
(
なま
)
りがないが、其顔立と全身の皮膚の綺麗なことは、東京もしくは東京近在の女でない事を証明しているので
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
舌っ足らずに
訛
(
なま
)
ったのだろう、のちには直ったけれども、初めのうちはわからなくて出三郎はどう呼んでいいか当惑したものであった。
艶書
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
髯の跡青く、受け口にて、前齒二本
缺
(
か
)
け落ちたり。右
耳朶
(
みゝたぶ
)
に小豆粒ほどの黒子あり。言葉は中國
訛
(
なま
)
り。聲小にして、至つて穩かなり——
銭形平次捕物控:101 お秀の父
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
『
奢
(
おご
)
りませんよ。』と言ふ富江の聲は
訛
(
なま
)
つてゐる。『ホヽヽ、いくら髭を生やしたつて
其麽
(
そんな
)
年老
(
としと
)
つた口は利くもんぢやありませんよ。』
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
▼ もっと見る
お国
訛
(
なま
)
りのこととて、
能
(
よ
)
くは聞き取れませんが、おいどんが、どうとか、西郷従道侯の物語りに、御成街道から進撃した由を承りました。
幕末維新懐古談:19 上野戦争当時のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
Kは以前の家主と同じ秋田人で
訛
(
なま
)
りはさらにひどく、奥さんというのがウクスンと聞こえる。ときどき茂緒に妙なことをいった。
風
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
立派に
祝言
(
ほぎごと
)
の報酬として食を乞うものを、「ほかいびと」すなわち乞食と云いました。それが
訛
(
なま
)
って「ほいと」と云うことになりました。
特殊部落の成立沿革を略叙してその解放に及ぶ
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
そのアバラケを今日カワラケと
訛
(
なま
)
ったので、おまはんも二月号に旧伝に絶えてなきを饅頭と名づく、これかえって
太
(
ひど
)
く凶ならず
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「このいやな
訛
(
なま
)
りを持ち出して作者は一体我々に何をしようというのか? 隠語とは全くやりきれない。身震いが出るようだ。」
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
マイヤーの講義はザクセン
訛
(
なま
)
りがひどく「小さい」をグライン「戦争」をグリークという調子で、どうも分りにくくて困った。
ベルリン大学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
女は僅かの間しか奉公して居なかつたが、それと入れ替りに色の黒い、言葉に
訛
(
なま
)
りのある、私の一番嫌ひであつた下婢が来た。
犬
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
淀君は今日三河の山奥の人々が
訛
(
なま
)
るような口調で静かに物語られた。そのしとやかな美しい言葉と態度には賀川市長も少からず動かされた。
空中征服
(新字新仮名)
/
賀川豊彦
(著)
諸方の地方人もまた地方
訛
(
なま
)
りをもって歌を作ったとすれば、——さらに一歩を譲ってこれらの歌の作者がすべて貴族階級に属するとしても
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
訛
(
なま
)
りのある田舎弁で、あたりかまわぬ立ち話だった。——それが、辻々、随所で見かけられた。全都の話題をさらっていた。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
正面を切って
台詞
(
せりふ
)
の言えない者や、男か女かわからない者や、国
訛
(
なま
)
りを丸出しの者や、種々さまざまの欠点が見出だされないではなかったが
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
九州
訛
(
なま
)
りで言ったその男は、事変勃発のとき日本へ避難させた妻子のところへ行って、自分だけまた戻るのだと俺に言った。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
自選オックスフォウド
訛
(
なま
)
りの青年紳士やが、それぞれ「大きな
把捉
(
キャッチ
)
」を望んで、このSETに混じって活躍していることは言うまでもあるまい。
踊る地平線:11 白い謝肉祭
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
おりおり
詩歌
(
しか
)
など
吟
(
ぎん
)
ずるを聞くに皆
訛
(
なま
)
れり。おもうにヰルヘルム、ハウフが文に見えたる物学びし
猿
(
さる
)
はかくこそありけめ。
みちの記
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
どこかに関西の
訛
(
なま
)
りがありました。そうして、その一言が、奇妙に自分の、震えおののいている心をしずめてくれました。
人間失格
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
富山の近傍でチゴノマイ、または
訛
(
なま
)
ってチグルマイなどというのも、かつてそういう舞を、面白く見た者の聯想であろう。
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「言葉にも少し甲州
訛
(
なま
)
りがありますのと、それからあいつの手に入墨があるのでございます、そいつが甲州入墨と、ちゃんと
睨
(
にら
)
んでおきましたよ」
大菩薩峠:08 白根山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ジャネットは此の
人混
(
ひとご
)
みにあおられるとすっかり田舎女の野性をむき出しにしてロアール地方の
訛
(
なま
)
りで臆面もなく、すれ違う男達の冗談に酬いた。
巴里祭
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
だが、彼女は
瞑想
(
めいさう
)
する多くの時間を許されはしなかつた。級長の、大きいがさつな
娘
(
こ
)
が、強いカムバァーランド
訛
(
なま
)
りで
怒鳴
(
どな
)
りながらやつて來た——
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
鮏入らんとすれば口
広
(
ひろ
)
がるやうにいかにも
巧
(
たくみ
)
に作りたるもの也。これをつゞといふは
筒
(
つゝ
)
といふべきを
濁
(
にご
)
り
訛
(
なま
)
れるならん。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
いつか、「
婆
(
ばあ
)
はん」が
訛
(
なま
)
って、「ババン」と呼ばれ、お人よしではあるけれども、親切で、情愛ぶかいヨネは、子供たちに、心底からなつかれた。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
「猫又よ、やよ猫又よと申しければ……」と、先生はその中の一句を、
田舍
(
ゐなか
)
訛
(
なま
)
りの可笑しな抑揚で高らかに讀み上げた。みんながどつと笑ひ崩れた。
猫又先生
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
上総
周淮
(
すえ
)
郡、上丁
物部竜
(
もののべのたつ
)
の作。下の句は、「
我
(
わ
)
に取り着きて言ひし子ろはも」というのだが、それが
訛
(
なま
)
ったのである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
女は早口に、
訛
(
なま
)
りの強い言葉で
喋
(
しやべ
)
り、ギター弾きを追ひかへした。そのアクセントが、何となくゆき子に似てゐる。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
けれども彼等は、『フラテ』といふ名を『クラテ』と
訛
(
なま
)
つて覚えて居る筈だ。たとひ、名を呼ばれても、俺の犬は俺以外の人間の方へ行く筈はないのだ。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
うっとり誘いこまれて、彼の前には陽気なものだけが跳ねていた。
訛
(
なま
)
りの多い咽喉で土地の唄をうたっているものに合いの手を入れて、席に戻って来た。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
私の記憶が誤りでなくば、女は、たしか、男へ向つて、
訛
(
なま
)
りの多い英語で斯う呟いて見せさへしたのである——
アリア人の孤独
(新字旧仮名)
/
松永延造
(著)
彼は余りのうれしさに、生れ故郷の
訛
(
なま
)
りを、スッカリ丸出しにしながら、
身体
(
からだ
)
に似合わない優しい声を出した。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
という客の、すこし
訛
(
なま
)
りをおびた
嗄声
(
かれごえ
)
で、なんだか聞きおぼえのあるような気がして、かすかにさげていた頭をあげ室内を見た。ちんまりと
洒落
(
しゃれ
)
た小座敷。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
これは英語の navel、お
臍
(
へそ
)
って字から
訛
(
なま
)
ってきたのよ。ほら、ここんとこが、お臍のようでしょう。英語の先生がそう言ったわよ、とシイカが笑った。
橋
(新字新仮名)
/
池谷信三郎
(著)
音
(
おん
)
が似ているじゃないか。彼はもう一度、二つの言葉を発音してみた。たしかに舌の廻り具合が似ている。ゼンソクタバコの方が、原音から
訛
(
なま
)
ったのだろう。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
東北の
訛
(
なま
)
りを感じ、
質朴
(
しつぼく
)
なその人柄に深く心を打たれたが、その山本正雄が岡田良造であったことを太田はずっと後になって何かの機会に知ったのであった。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
八十人あまりのおもに薩摩の
士
(
さむらい
)
が二階と階下とに別れて
勢揃
(
せいぞろ
)
いしているところへ
駈
(
か
)
けつけてきたのは同じ薩摩
訛
(
なま
)
りの八人で、
鎮撫
(
ちんぶ
)
に来たらしかったが、きかず
蛍
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
蟹
(
かに
)
のことならガネマサが本当だ。カニの
訛
(
なま
)
りだもの、ガネさ。ガネマサどんの横這い這いさ。我輩に綽名を
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
但
(
たゞ
)
しは業平村に居りましたゆえ業平文治と付けたのか、又は浪島を業平と
訛
(
なま
)
って呼びましたのか、安永年間の事でございますから
私
(
わたくし
)
にもとんと調べが付きませんが
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
と何処の国の
訛
(
なま
)
りか、変に抑揚のついた尻上りの口調で言つて、私の背から荷物を取り下してくれた。
乳の匂ひ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
ところが彼は、そんなことが問題になっているとは思いもかけず、びっくりしてクックッと笑いながら、例のカナダ
訛
(
なま
)
りで、「なんの、これで結構だよ」と答えた。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
「
謝罪
(
あやま
)
った、謝罪った。たって手前の方から願いましたものを。
千世
(
ちい
)
ちゃん、御免なさい、と云って、お前さんもおややまり。」と言憎いから先繰りに
訛
(
なま
)
って置く。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ケイズと申しますと、私が江戸
訛
(
なま
)
りを言うものとお思いになる方もありましょうが、今は皆様カイズカイズとおっしゃいますが、カイズは訛りで、ケイズが本当です。
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ブラウン氏は心中に
雀躍
(
こおど
)
りした。この時から、「長い黒の外套」が秘かに捜査の焦点となったのだが、この「
外套
(
がいとう
)
」は、ライオンスによれば米国
訛
(
なま
)
りの口を
利
(
き
)
くという。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
四国
訛
(
なま
)
りじゃったら舟の中に、一
梱
(
こり
)
や二
梱
(
こり
)
の
爆薬
(
ハッパ
)
は請合います。
松魚
(
かつお
)
の荷に作ってあるかも知れませんが、あの乾物屋さんに宛てた送り状なら税関でも大ビラでしょう。
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
貫名海屋
(
ぬきなかいおく
)
の「
赤壁賦
(
せきへきのふ
)
」を
訛
(
なま
)
ったというのですが、それを読んでまた遠い昔のことを思出しました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
このほかシッキムにはチベットからとブータンから移住して来た種族も沢山あって、それらは純粋のチベット語ではないけれどもまずチベットの
訛
(
なま
)
り言葉を使って居る。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
再び松の木にぼんやり
靠
(
もた
)
れかかりながら、私の背後の灌木の茂みの向うで、この村特有の
訛
(
なま
)
りのある若者らしい声でこんなことを言っているのを、聞くともなく聞いていた。
三つの挿話
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
それは
土地
(
とち
)
では
訛
(
なま
)
つてゑごと
喚
(
よ
)
ばれて
居
(
ゐ
)
る。そこらの
田
(
た
)
にはゑぐが
多
(
おほ
)
いので
秋
(
あき
)
の
頃
(
ころ
)
に
成
(
な
)
ると
茂
(
しげ
)
つた
稻
(
いね
)
の
陰
(
かげ
)
に
小
(
ちひ
)
さな
白
(
しろ
)
い
花
(
はな
)
が
咲
(
さ
)
く。
與吉
(
よきち
)
も
他
(
た
)
の
子供
(
こども
)
のするやうに
小笊
(
こざる
)
を
持
(
もつ
)
て
出
(
で
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
訛
漢検1級
部首:⾔
11画
“訛”を含む語句
訛言
田舎訛
訛伝
地方訛
転訛
上方訛
国訛
相模訛
京訛
訛音
訛謬
田舍訛
國訛
肥後訛
訛声
越後訛
俗訛
訛言葉
訛成転形語
訛沢山
...