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箪笥
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たんす
ふりがな文庫
“
箪笥
(
たんす
)” の例文
母は涙で顔いっぱい濡らしながら、納戸にある
箪笥
(
たんす
)
の引出しをあけ、唐草模様の風呂敷に、自分の着物をごしごしとつめ込んでいた。
狂い凧
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
学校へ行く時、母上が
襟巻
(
えりまき
)
をなさいとて、
箪笥
(
たんす
)
の
曳出
(
ひきだ
)
しを引開けた。冷えた広い座敷の空気に、
樟脳
(
しょうのう
)
の
匂
(
におい
)
が身に浸渡るように匂った。
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
偉大な人々の家宅探索をし、その
戸棚
(
とだな
)
を検査し、引き出しの底を探り、
箪笥
(
たんす
)
をぶちまけた後、批評界はその寝所をまでのぞき込んだ。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
それからその荷物を運んで
遣
(
や
)
ろうと云うので、
夜具包
(
やぐづつみ
)
か何の包か、風呂敷包を
担
(
かつ
)
いだり
箪笥
(
たんす
)
を担いだり中々働いて、段々
進
(
すすん
)
で行くと
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
白樺
(
しらかば
)
の皮を
壁
(
かべ
)
にした殖民地式の小屋だが、内は可なり
濶
(
ひろ
)
くて、
畳
(
たたみ
)
を敷き、奥に
箪笥
(
たんす
)
柳行李
(
やなぎごうり
)
など
列
(
なら
)
べてある。
妻君
(
かみさん
)
も
善
(
よ
)
い顔をして居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
今度は、指輪と時計とを拒絶して、玄関の次の間にあつた
箪笥
(
たんす
)
と、シンガア・ミシンの機械とを差押へた。私は、その時留守であつた。
差押へられる話
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
離れには黒塗の
箪笥
(
たんす
)
が来たり、紅白の綿が飾られたりした。しかし母屋ではその間に、当主の妻が煩ひ出した。病名は夫と同じだつた。
庭
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして、
鉄瓶
(
てつびん
)
を買ってきたり、
箪笥
(
たんす
)
を買ってきたりしたが、それを値踏みするのは、いつも、近所の、岡本という古着屋の人であった。
死までを語る
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
床も天井も
引
(
ひ
)
き
剥
(
は
)
がしたまま、壁は落され、
炉
(
ろ
)
の灰は掻き廻され、戸棚も
箪笥
(
たんす
)
も引っくり返して、千両箱の行方を捜した様子です。
銭形平次捕物控:110 十万両の行方
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
髪が
結
(
ゆ
)
えたのか、しばらくすると
箪笥
(
たんす
)
の引出しがガタガタと鳴った。そして襖の向うからシュウシュウと、帯の
摺
(
す
)
れる音が聞えてきた。
棺桶の花嫁
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
さわは
納戸
(
なんど
)
や
箪笥
(
たんす
)
をあけ、さし当り必要だと思われる着替えや帯を二三と、金になりそうな道具を集めて包にし、財布の中をしらべた。
榎物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
小初は電球を
捻
(
ひね
)
って外出の支度をした。
箪笥
(
たんす
)
から着物を出して、
荒削
(
あらけず
)
りの
槙柱
(
まきばしら
)
に
縄
(
なわ
)
で
括
(
くく
)
りつけたロココ式の半姿見へ小初は向った。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それを
糊
(
のり
)
のついた白地の
単衣
(
ひとえ
)
に着替えて、茶の間の
火鉢
(
ひばち
)
の前に坐ると、細君はふと思い附いたように、
箪笥
(
たんす
)
の上の一封の手紙を取出し
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
すでに
結納
(
ゆいのう
)
の品を取りかわし、
箪笥
(
たんす
)
、長持から、針箱の
類
(
たぐい
)
まで取りそろえてお粂を待っていてくれるという先方の厚意に対しても
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
運
(
めぐ
)
らしけるに平左衞門が金子を
所持
(
しよぢ
)
なす事を
豫
(
かね
)
て知りければ或夜安間が宅へ忍入
箪笥
(
たんす
)
の錠をこぢあけ二百兩の金を
盜
(
ぬす
)
み取其儘屋敷を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「ね、何処に行きませう?」といつも機嫌のいゝ時に見せるあどけない顔をして、
箪笥
(
たんす
)
の上から鏡台を下して電燈の下に据ゑた。
散歩
(新字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
其処には
箪笥
(
たんす
)
やら蠅入らずやら、さま/″\の家具類が物置のやうに置いてあつて、人の坐るところは畳一枚ほどしかなかつた。
鱧の皮
(新字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
ぢいは、あの小さな家の中へ、
箪笥
(
たんす
)
も着物も時計もみな残して、たゞあみだ様の画像だけを持つてどこかへ行つてしまひました。
海坊主の話
(新字旧仮名)
/
土田耕平
(著)
そこには老婆の寝台と
箪笥
(
たんす
)
が置いてあったが、彼はまだ一度もその中をのぞいたことがなかった。以上二つの部屋が住まいの全部だった。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
細君の部屋には、
為切
(
しきり
)
の
唐紙
(
からかみ
)
四枚の内二枚が
塞
(
ふさ
)
がるやうに、
箪笥
(
たんす
)
が据ゑてあつて、その箪笥の方に寄せて青貝の机が置いてある。
魔睡
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
しかし一日二日たつと、そんな感傷もいつか消し飛んでしまって、葉子はその金でせめて
箪笥
(
たんす
)
でも買いに行こうと庸三を促した。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
お浜は
箪笥
(
たんす
)
の
抽斗
(
ひきだし
)
をあけて、あれよこれよと探しはじめましたが、そのうちにふと抽斗の底から
矢飛白
(
やがすり
)
の
袷
(
あわせ
)
を引張り出しました。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
毎日
欝陶
(
うっとう
)
しい思いをして、
縫針
(
ぬいはり
)
にばかり気をとられていた細君は、
縁鼻
(
えんばな
)
へ出てこの
蒼
(
あお
)
い空を見上げた。それから急に
箪笥
(
たんす
)
の
抽斗
(
ひきだし
)
を開けた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
今も、ぽつねんと、彼は
箪笥
(
たんす
)
の
鐶
(
かん
)
に倚りかかっていた。
置
(
お
)
き
炬燵
(
ごたつ
)
をした膝の上には、五ツくらいな女の子が、無邪気な顔して眠っている。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
じゃあ
箪笥
(
たんす
)
へでもしまう積りかな、箪笥といっても、幾つもあるから後になっては分らない。兎も角、お花の跡をつけて見るに
如
(
し
)
くはない。
接吻
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
店の棚には講談本や
村井玄斎
(
むらいげんさい
)
の小説などが並べてあったが、奥の
箪笥
(
たんす
)
のある部屋には帝国文庫の
西鶴
(
さいかく
)
ものや黄表紙などが沢山あったらしく
暴風雨に終わった一日
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
と兄は嫂にいい付けて、
箪笥
(
たんす
)
の
抽斗
(
ひきだし
)
を、あけて見せました。小紋とか大島とか母の生前の羽織や着物の何枚かが、そこに畳んであるのです。
仁王門
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
母は
茅野
(
ちの
)
氏で、
玉
(
たま
)
といい、これも神田の古い大きな
箪笥
(
たんす
)
屋の娘であった。玉は十六の年から本郷の加賀さまの奥へ仕えていた。
花を持てる女
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
寐床の側の畳に麻もて
箪笥
(
たんす
)
の
環
(
かん
)
の如き者を二つ三つ処々にこしらへしむ。畳堅うして畳針
透
(
とお
)
らずとて女ども苦情たらだらなり。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
バックに緑色の布のかかった
箪笥
(
たんす
)
があって、その上に書物や新聞の雑然と置いてあるのがいかにもうるさくて絵全体を俗悪にしてしまうから
自画像
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
床
(
とこ
)
わきの
袋戸棚
(
ふくろとだな
)
に、すぐに
箪笥
(
たんす
)
を
取着
(
とりつ
)
けて、
衣桁
(
いかう
)
が
立
(
た
)
つて、——さしむかひに
成
(
な
)
るやうに、
長火鉢
(
ながひばち
)
が
横
(
よこ
)
に、
谿河
(
たにがは
)
の
景色
(
けしき
)
を
見通
(
みとほ
)
しに
据
(
す
)
ゑてある。
飯坂ゆき
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
箪笥
(
たんす
)
の上に
興録
(
こうろく
)
から受け取ったまま投げ捨てて置いた古藤の手紙を取り上げて、白い西洋封筒の一端を美しい指の
爪
(
つめ
)
で
丹念
(
たんねん
)
に細く破り取って
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
それでも自分は手探り足探りに奥まで進み入った。浮いてる物は胸にあたる、顔にさわる。畳が浮いてる、
箪笥
(
たんす
)
が浮いてる、夜具類も浮いてる。
水害雑録
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
しかし確に
箪笥
(
たんす
)
を開ける音がした、障子をするすると開ける音を聞いた、夢か
現
(
うつつ
)
かともかくと八畳の間に忍足で入って見たが、別に
異変
(
かわり
)
はない。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
この道筋が一歩間違って
箪笥
(
たんす
)
の後へでも逃げ込もうものなら、私はもうその部屋では眠ることは出来ないという厄介なことになってしまうのだ。
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
珍しい硯を百面以上も集めて、百
硯
(
けん
)
箪笥
(
たんす
)
といつて凝つた箪笥に
蔵
(
しま
)
ひ込んで女房や鼠などは滅多に
其処
(
そこ
)
へ寄せ付けなかつた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
そしてバスクが医者を迎えに行き、ニコレットが
箪笥
(
たんす
)
を開いてる間に、ジャン・ヴァルジャンはジャヴェルから肩をとらえられてるのを感じた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
箪笥
(
たんす
)
の上に、子供が雑誌をのせておく(のせておくほうの子供はもちろんわるいから、それはまたそれで教えるけれど)
女中訓
(新字新仮名)
/
羽仁もと子
(著)
吉里は次の間の長火鉢の傍に坐ッて、
箪笥
(
たんす
)
にもたれて考え始めた。善吉は窓の障子を閉めて、吉里と火鉢を挾んで坐り、寒そうに懐手をしている。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
箪笥
(
たんす
)
の引出しは、たくさんの衣類がなかに残ってはいるが、かすめ取られていたとのことだね。この断定はおかしい。
モルグ街の殺人事件
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
祖母の
箪笥
(
たんす
)
の引出しには、そっくり手のつかない、男ものの衣服が、したおびまで揃えてしまってあるのを、誰も気がつかないふりをするのだった。
旧聞日本橋:20 西川小りん
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
娘さんの
箪笥
(
たんす
)
が幾つも並んで焼けた所には、
友染
(
いうぜん
)
の着物が、模様をそつくり濃淡で見せた灰になつて居たのが、幾重ねもあつたとか人は云ひました。
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
で、その日家に帰るとすぐ、私はほかの用にかこつけて、押入れや
箪笥
(
たんす
)
の
抽斗
(
ひきだし
)
をそっと探してみた。だがどこにもそれを見出すことができなかった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
やっと眼をすこしばかり開いて、布団の
裾
(
すそ
)
の方の
箪笥
(
たんす
)
の上の小箪笥を腫れぼったい指で指すので、その中を探してみると手紙が一パイ詰まっている。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それが、
箪笥
(
たんす
)
二棹に、ぎっしり一杯詰まっている。これを分類したら、よほど面白いものができあがるに違いない。
増上寺物語
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
物も言わずに突き膝で
箪笥
(
たんす
)
の方へにじり寄り、それをしまいこむその腰のあたりを見ると、安二郎はなぜかおかしいほど
狼狽
(
ろうばい
)
して、しぶしぶ承知した。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
二階は昇口の処に三畳敷位の空間をおいて
箪笥
(
たんす
)
や
長櫃
(
ながもち
)
を置いてあった。平吉は窓の傍に渋紙包を持って立っていた。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
二階い上って大急ぎで
箪笥
(
たんす
)
の中から
揃
(
そろ
)
いの着物や何やかんやと、夫が
余所行
(
よそゆ
)
きの時着る絹セルの
単衣
(
ひとえ
)
と羽織と
絞
(
しぼ
)
りの三尺とを出して、風呂敷に包んで
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
立って
箪笥
(
たんす
)
の
大抽匣
(
おおひきだし
)
、明けて
麝香
(
じゃこう
)
の
気
(
か
)
とともに投げ出し取り出すたしなみの、帯はそもそも
此家
(
ここ
)
へ来し嬉し恥かし恐ろしのその時締めし、ええそれよ。
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
などと、必死のごまかしの質問を発し、二重まわしを脱いで、部屋に一歩踏み込むと、
箪笥
(
たんす
)
の上からラジオの声。
家庭の幸福
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
“箪笥”の意味
《名詞》
箪笥(たんす、たんし)
衣服、小道具などを収納する箱形の家具。抽斗や戸があり、木製で大きく、一人で持ち運べないものが多い。
《助数詞》
棹、台、点、組
(出典:Wiktionary)
“箪笥”の解説
箪笥(たんす、簞笥)とは、衣類や道具を収納するための、引き出しや扉を備えた家具で通常は木製。一人では持ち運べない大型のものが多い。
(出典:Wikipedia)
箪
漢検準1級
部首:⽵
15画
笥
漢検準1級
部首:⽵
11画
“箪笥”で始まる語句
箪笥町
箪笥屋
箪笥作
箪笥台