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禍
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わざわい
ふりがな文庫
“
禍
(
わざわい
)” の例文
私たちばかりでなく、総ての罹災者は皆どこかでこの失費と面倒とを繰返しているのであろう。どう考えても、怖るべき
禍
(
わざわい
)
であった。
十番雑記
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ハッと唇の色を変えて、錦子は
顫
(
ふる
)
えあがったが、いたずらものが忍び込んだ形跡もないので家の者たちは
神業
(
かみわざ
)
だと、
禍
(
わざわい
)
のせいにした。
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「人が、わしのあらをさがしている時じゃないか。これでは家庭がおさまらないということで中傷せられる。わしの
禍
(
わざわい
)
も遠くはない。」
小翠
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
道に反く者、心の弱き者、定見なき者又単なる好奇心で動く者は、
禍
(
わざわい
)
なる
哉
(
かな
)
である。真理を求むる者のみが、
大盤石
(
だいばんじゃく
)
の上に立って居る。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
兵乱のために人を殺し財を散ずるの
禍
(
わざわい
)
をば軽くしたりといえども、立国の要素たる
瘠我慢
(
やせがまん
)
の士風を
傷
(
そこな
)
うたるの
責
(
せめ
)
は
免
(
まぬ
)
かるべからず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
▼ もっと見る
斯
(
こ
)
う言うわけだ、お鳥殿、その美しさに、ポルトガル国の船乗りの血を引いて居る為、いろいろの
禍
(
わざわい
)
が後からあとと起ったのであろう。
裸身の女仙
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ここはわれらが一命を投げだして正面から酒井侯と対決し、確実に
禍
(
わざわい
)
の根を断ち切るときだ、船岡にもその覚悟でいてもらいたいと思う
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
尊王攘夷の大趣意において
豈
(
あ
)
に
間然
(
かんぜん
)
する所あらんや。その表面よりすれば言正しく
名
(
な
)
順
(
したが
)
い、その裏面よりすれば、
禍
(
わざわい
)
未測に陥らんとす。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
昔、ある新進作家が先輩大家を罵倒した論文を書いたために、ついに彼自身没落したという話もきいている。口は
禍
(
わざわい
)
の基である。
可能性の文学
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
われいまだ
他
(
かれ
)
を見しことなければ、もし
過失
(
あやま
)
ちて
他
(
た
)
の犬を
傷
(
きずつ
)
け、後の
禍
(
わざわい
)
をまねかんも
本意
(
ほい
)
なしと、案じわづらひてゐけるほどに。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
何か、彼が
禍
(
わざわい
)
を背負って、
折角
(
せっかく
)
新築した家へケチを付けにでも来たように思っていた。それを聞くにつけても、三吉は早く去りたかった。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
『何よりは、お家の
禍
(
わざわい
)
を領民の禍にまでしとうないと存じて、たった今、藩札引換えの急策を立てたばかりのところでござる』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その私の弱い心が、あなたにまで深い
禍
(
わざわい
)
を及ぼすに至ったかと思うと、まことに穴があったら、はいりたい心地が致します。
秘密の相似
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
つまり、すべての
禍
(
わざわい
)
の根元は、藤原家のこの財産にあるのだということは、何人よりも、深く伊太夫は観念しているのです。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
芭蕉の秋風の句は世間にて往々過賞を
蒙
(
こうむ
)
れども、こは口は
禍
(
わざわい
)
の門といへる極めて陳腐なる理窟を十七字に並べたるに過ぎず。
俳句の初歩
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
その他の文明事業において意義ある自己の生を営み、人類のために貢献しよう、
禍
(
わざわい
)
を転じて福としようという努力心を振い起すに至りました。
女子の独立自営
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
神職 (魔を切るが如く、
太刀
(
たち
)
を
振
(
ふり
)
ひらめかしつつ
後退
(
あとずさ
)
る)したたかな邪気じゃ、古今の
悪気
(
あくき
)
じゃ、
激
(
はげし
)
い汚濁じゃ、
禍
(
わざわい
)
じゃ。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
之を明治の社会に応用致し候わば
所謂
(
いわば
)
禍
(
わざわい
)
を
未萌
(
みほう
)
に防ぐの
功徳
(
くどく
)
にも相成り平素
逸楽
(
いつらく
)
を
擅
(
ほしいまま
)
に致し
候
(
そろ
)
御恩返も相立ち
可申
(
もうすべく
)
と
存候
(
ぞんじそろ
)
……
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それが解けないというのは、
謂
(
い
)
わば呪文にかかっているんですね。思考力の盲点といった様なものに
禍
(
わざわい
)
されているんですね。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
いずれか一方の勢力がまされば
禍
(
わざわい
)
である。同じような事は、違った人生観や社会観を持った人々の群れの間に行なわれる。
神田を散歩して
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「それよりも、僕はあの怪物がきっとこれから
禍
(
わざわい
)
をなすと思うね。この鉱山に働いている者は気をつけなければならない」
宇宙戦隊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
するとその感じの中に、いっさいの
禍
(
わざわい
)
、悩みと迷妄、意欲と労苦への思い出は、だるくなごやかに消えてしまうのである。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
自分のふとした罵倒が、瑠璃子
父娘
(
おやこ
)
に、どんなに
禍
(
わざわい
)
しているかと云うことを聴けば、熱情な恋人は、どんな必死なことをやり出すかも分らない。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
未知
(
みち
)
の
世界
(
せかい
)
に
憧
(
あこが
)
れる
心
(
こころ
)
は、「
幸福
(
こうふく
)
の
島
(
しま
)
」でも、また、「
禍
(
わざわい
)
の
島
(
しま
)
」でも、
極度
(
きょくど
)
に
達
(
たっ
)
したときは
変
(
か
)
わりがなかったからです。
明るき世界へ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
そこでその
禍
(
わざわい
)
を解く法だが、余計は要らないからお礼としてたった三十元お出しなさい、早く出さなけりゃ遅れると大変だぞと言って
威
(
おど
)
しつけた。
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
親
(
しん
)
を
洽
(
あまね
)
くし衆を和するも、
恒
(
つね
)
に
斯
(
ここ
)
に
於
(
おい
)
てし、
禍
(
わざわい
)
を造り
敗
(
はい
)
をおこすも、
恒
(
つね
)
に
斯
(
ここ
)
に於てす、其
悪
(
あく
)
に懲り、以て善に
趨
(
はし
)
り、其儀を
慎
(
つつし
)
むを
尚
(
たっと
)
ぶ、といえり。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「それでは、神は人のことを特別におはからいになるのに、なぜ
禍
(
わざわい
)
をお除きになりませんの?」と子供が聞いている。
この子を残して
(新字新仮名)
/
永井隆
(著)
彼女は、それらのものに悩まされて、この一引きがとうとうわけのわからぬ
禍
(
わざわい
)
を引き起したことをすこぶる後悔した。
不周山
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
それはレカミエ夫人がその端麗無比な容姿を裏切つて、性的に一種の不具だつた事実である。この知識が彼に
禍
(
わざわい
)
した。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
お用いになる気がないのなら、たとえ殺してでも、国外へ出してはなりません。もし他国へ行かせますと、きっとのちのちこの国の
禍
(
わざわい
)
となるでしょう
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
子孫にまで
禍
(
わざわい
)
を
遺
(
のこ
)
すかも知れないなどとも思って見る。先ず翌日になって感じた心理上の変動は、こんなものであって、思ったよりは微弱であった。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
源之助はその芸格から見れば、いくらでも出世する場合に立ち、彼でなければ出来ぬ役柄も多かったけれども、出発点に
禍
(
わざわい
)
される所があったと思われる。
役者の一生
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
自分一人では
勿論
(
もちろん
)
何事も出来ずまたその勇気もない実に情ない事であるがいよいよ外国人が手を出して
跋扈
(
ばっこ
)
乱暴というときには自分は何とかしてその
禍
(
わざわい
)
を
福沢諭吉
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
しかして三節より五節までにおいて彼はまずヨブを責めていうのである、汝かつては人を
誨
(
おし
)
え人を慰めたるもの今
禍
(
わざわい
)
に会すれば
悶
(
もだ
)
え苦しむは何の
態
(
さま
)
ぞと。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
今考えて見るとナカ/\
巧者
(
こうしゃ
)
だったが、その頃の我輩は徹頭徹尾迷惑した。しかし物は考えようさ。
禍
(
わざわい
)
を転じて
福
(
さいわい
)
にするように心掛けなければいけない。
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
それが故人は
厭
(
いや
)
だったからだそうであるが、故人のそう云う
狷介
(
けんかい
)
な性質が、処世的には大いに
禍
(
わざわい
)
したのであろう。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
禍
(
わざわい
)
したりする例も沢山あるとの事でしたし、目に見えない霊の力の恐しさというようなことも承わったので、急にあなたにお縋りしたくなりましたんです。
むかでの跫音
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
「百薬の長も度を過ごしては
禍
(
わざわい
)
の
因
(
もと
)
じゃて——町人、これは
其許
(
そこもと
)
の持物じゃろう。しかと
検
(
あらた
)
めて納められい。」
釘抜藤吉捕物覚書:07 怪談抜地獄
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
マヌエラ、この一日延ばしたことがたいへんな
禍
(
わざわい
)
となった。といって、いま私が死のうとしているのではない。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
民衆はいかに
強
(
し
)
いられても、おのれの欲する以上に早く足を運ぶものではない。民衆にそれを強いんとする者こそ
禍
(
わざわい
)
である。民衆は他の自由にはならない。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
四、口は
禍
(
わざわい
)
の門、千古の金言。コルシカ人尊敬の
幟
(
のぼり
)
を押し立て、行きあうコルシカ人に、いちいちもれなく
ノンシャラン道中記:05 タラノ音頭 ――コルシカ島の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
種彦はわが身の上は
勿論
(
もちろん
)
もしやそのために罪もない絵師や版元にまで
禍
(
わざわい
)
を及ぼしてはと
一方
(
ひとかた
)
ならず心配して
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
誠に口は
禍
(
わざわい
)
の
本
(
もと
)
嗜
(
たしな
)
んで見ても情なや、もの言わねば腹
膨
(
ふく
)
るるなど理窟を付けて
喋
(
しゃべ
)
りたきは四海同風と見えて、古ギリシアにもフリギア王ミダスの譚を伝えた。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
欧羅巴
(
ヨーロッパ
)
方面の海上で暴風か何かのために
禍
(
わざわい
)
されて、何日も何十日もかかってこの圏内まで吹き流されてきた。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
こうした私の幸福な生活に、最初の
禍
(
わざわい
)
を持って来たのは、すなわちウードレーの赤髭顔でございました。
自転車嬢の危難
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
「ええ、これは
禍
(
わざわい
)
を転じて
福
(
さいわい
)
とする代りに、福を転じて禍とする、
縁起
(
えんぎ
)
の悪い聖母だと云う事ですよ。」
黒衣聖母
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「私はもう下がってまいろうと思います。いつもの
物怪
(
もののけ
)
は久しく
禍
(
わざわい
)
をいたしませんでしたのに恐ろしいことでございます。
叡山
(
えいざん
)
の
座主
(
ざす
)
をすぐ呼びにやりましょう」
源氏物語:53 浮舟
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
此処
(
ここ
)
も、支那の奥地の例にもれず、住民達は
禍
(
わざわい
)
を恐れて宵から戸締りも厳重にひっそりしてしまうのだ。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
一朝
禍
(
わざわい
)
を蹈むの場合にあたって、係累の多い者ほど、惨害はその惨の甚しいものがあるからであろう。
水害雑録
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
その時分に大獅子尊者はもはや自分に
禍
(
わざわい
)
の及ぶことを自覚して居られたけれども、ただ自覚して居られただけでその罪から身を免れるということもせられなかった。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
“禍”の解説
禍(か)
(出典:Wikipedia)
禍
常用漢字
中学
部首:⽰
13画
“禍”を含む語句
災禍
禍害
禍殃
禍根
奇禍
禍乱
禍機
禍津日
禍福
禍事
八十禍津日
大禍津日
惨禍
禍因
黄禍論
戦禍
吉凶禍福
筆禍
筆禍史
言八十禍津日
...