谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
				
			
		其所から銃器室の窓を瞰下して爾して二階へ登り去って見えなく成った、余は益々お浦の所行を怪しみ、銃器室の戸を推して見ると全く怪美人は此の中へ閉じ籠められたに違いない
			
		汽車は既によほどの高処を走つて居るらしくその白い瀬は草木の茂つた山腹を越えて遥かに下に瞰下されるのである。私の其処を通つた時斜めに白い脚をひいて驟雨がその峡にかゝつてゐた。
			
		
				
					寒中滞岳記:(十月一日より十二月廿一日に至る八十二日間) (新字新仮名) / 野中至(著)
				
			
		ワゼミヤガワ(上宮川)谷も瞰下される、蝶ヶ岳も眼下に低くなって、霞沢岳は、雲で截ち切られてしまっている、この蝶ヶ岳、霞沢岳、焼岳の直下を
			
				
					谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
				
			
		かれらは息をのんで瞰下していると、捕手の同心が打ち水にすべって危うく倒れかかったので、お駒は思わず自分の草履を取って、一方の相手の顔に叩きつけた。
			
				
					半七捕物帳:31 張子の虎 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
				
			
		遠くから眺めていると、自分の脱けだしてきた家に火事が起って、みるみる燃え上がるのを、暗い山の上から瞰下すような心持があった。今思ってもその心持が忘られない。
			
		起きて廊下から瞰下すと、その大風に吹き掃かれる深夜の空には月が皎々と照り、星が燦めいている。丁度、月の光りに浸された原野の真上のところに、二流れ黒雲があった。
			
		山岳を仰ぐ時、溪谷を瞰下す時に同じくそれを覺えないではないけれども。
			
				
					樹木とその葉:36 自然の息自然の声 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
				
			
		絶壁の縁から谷間を瞰下された殿下は、山の皮肉がずり落ちて骨を露出した凄まじい裂傷のような赭色の岩崖と
			
				
					朝香宮殿下に侍して南アルプスの旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
				
			
		
				
					谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
				
			
		山の茶屋の二階からずうっと見晴すと、遠い山襞が珍しくはっきり見え、千曲川の上流に架っているコンクリートの橋が白く光っている上を自動車が走っているのまで、小さく瞰下せる。
			
		福島屋の其部屋から、遙に港内が瞰下せた。塗り更えに碇泊して居るらしい大きい二隻の汽船の赤い腹の周囲を、小蒸汽が小波立てて往来する。夕飯前の一散歩に、地図携帯で私共は宿を出た。