白菊しらぎく
茅野停車場の十時五十分発上りに間に合うようにと、巌の温泉を出たのは朝の七時であった。海抜約四千尺以上の山中はほとんど初冬の光景である。岩角に隠れた河岸の紅葉も残り少なく、千樫と予とふたりは霜深き岨路を急いだ。顧みると温泉の外湯の煙は濛々と軒 …
題名が同じ作品
白菊 (新字新仮名)夢野久作 (著)