目指めざ)” の例文
けれども鼻唄はなうたまじりに頂上てうじやう目指めざしてるラランも、ひとりぼつちになると、やつとつかれがてきた。鼻唄はなうたもくしゃみになつてしまつた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
我等われら兩人りようにん目指めざすコロンボにも、また櫻木海軍大佐等さくらぎかいぐんたいさら再會さいくわいすべきはづ橄欖島かんらんたうにも左迄さまではとほくない印度洋インドやうちうであつたことと。
渋江氏の一行では中条が他郷のものとして目指めざされた。中条は常陸ひたち生だといって申しいたが、役人は生国しょうこく不明と認めて、それに立退たちのきさとした。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
たとひわたし明日あしたぬとしても!一しやうをかけて目指めざしてわたし仕事しごとすこしもまだがつけられなかつたとて、たとひ手紙てがみきかけてあつたとて
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
本当に彼女の目指めざすところは、むしろ真実相であった。夫に勝つよりも、自分の疑を晴らすのが主眼であった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして、三びきありは、あかうつくしい目指めざしてのぼっていきました。三十ぷんともたたないうちです。
三匹のあり (新字新仮名) / 小川未明(著)
私を目指めざして、このおそるべき風評がしばしば明らさまの声と化して私の耳を打つに至っていた。
鬼涙村 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
すで目指めざ美女びぢよとらへて、おもふがまゝに勝矜かちほこつた対手あひてむかふて、らぬつくなひの詮議せんぎめろ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私の名前はじきに文壇の人々から認められるようになり、新進作家のうちでも将来有望な一人として目指めざされました。それが当時の私に取ってはどんなに嬉しかったでしょうか。
金色の死 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
近江おうみ安土あづちか、長浜の城か、あるいは京都にご滞在たいざいか、まずこの三つを目指めざしていけ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
赤羽主任は、あちこちにころがっている桶類をまたいで女湯の脱衣場だついじょうへ行くなり、乱雑に散らばっていた、衣類籠いるいかごをひとつひとつ探してみた。が、目指めざす女の着衣も誰の着衣きものも、一向に見当らない。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
窪地くぼち目指めざして登る方が、よかったということを、後から聞かされた。
火と氷のシャスタ山 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
どうやら彼自身のこんがらがった幼時の思い出をほごすのにあんまり夢中になり過ぎていたT君は、いつの間にやら、私たちの目指めざしている外人墓地への方角を間違えてしまっているらしかった。
旅の絵 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
橘屋たちばなや若旦那わかだんな徳太郎とくたろうも、このれいれず、に一は、はんしたように帳場格子ちょうばごうしなかからえて、目指めざすは谷中やなか笠森様かさもりさまあか鳥居とりいのそれならで、あかえりからすっきりのぞいたおせんがゆきはだ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ラランはかうこたへるやいなや、もう、はねをひろげた。ほかのからすたちはペンペを馬鹿ばかなやつだとおもひながらもヱヴェレストの頂上てうじやう目指めざしてびだす元気げんきたれた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
「わたし、カーネーションがきよ。」と、かたすみにあった淡紅色たんこうしょくはな目指めざしていいました。
花と人の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひと談話はなしではいま往昔むかしほど海賊船かいぞくせん横行わうかうははげしくはいが、其代そのかは往昔むかし海賊船かいぞくせん一撃いちげきもと目指めざ貨物船くわぶつせん撃沈げきちんするやうなことはなく、かならそのふねをもつて此方こなた乘掛のりかきた
第三すなわち彼の目指めざすところは、馬鹿にならないで自分の満足の行くような解決を得る事。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
くつわをならべて、同時にあてた三むち! 一声ひとこえ高くいななき渡って、霧のあなたへ、こまも勇士もたちまち影をぼっしさったが、まだ目指めざすところまでは、いくたの嶮路けんろいくすじの川
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まゝよ、一分いつぷんでも乘後のりおくれたら停車場ステエシヨンから引返ひきかへさう、それがい、と目指めざ大阪おほさかかたきつて、うもうはじめから豫定よてい退却たいきやく畫策くわくさくするとふのは、あんずるに懷中くわいちうのためではない。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
事実、則重の驚いたのは自分の命がねらわれたと思ったからであるけれども、河内介には、それがどうもそうでないらしく感じられた。狙撃者は明かに大将の鼻を目指めざして打ったのである。
お延はしかねた。すでに自分の夫を見損なったものとして、あんに叔父から目指めざされているらしい彼女に、その自覚を差しおいて、おいそれと彼の要求に応ずる勇気はなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
日出雄少年ひでをせうねんなによりさき甲板かんぱん目指めざしてはしつてくので、夫人ふじんわたくしそのあとつゞいた。