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しび
ふりがな文庫
“
痺
(
しび
)” の例文
かつら (やがて砧の手をやめる)
一晌
(
いっとき
)
あまりも擣ちつづけたので、肩も腕も
痺
(
しび
)
るるような。もうよいほどにして
止
(
や
)
みょうでないか。
修禅寺物語
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
……こっちは酔い
痺
(
しび
)
れてうらがなしくなって、だからこそつけ元気でやけくそな歌をうたったり
傲慢
(
ごうまん
)
なことを喚いたりしているんだ。
陽気な客
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
けれど、これに味付けをしてしまったのでは、汁が濃粘に過ぎて舌への刺激が強く、味覚が
痺
(
しび
)
れてほんとうの風趣を判別し得なくなる。
すっぽん
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
お品は矢のように起上ると防火扉の閂にかかった監督の腕に
獅噛
(
しが
)
みついた。激しい平手打が、お品の頬を灼けつくように
痺
(
しび
)
らした。
坑鬼
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
確かに手応えはあったが、ガーンという音と共に、太刀持つ拙者の手がピーンと
痺
(
しび
)
れて厶る。黒装束の下に、南蛮鉄の一枚
肋
(
あばら
)
の
鎧
(
よろい
)
を
くろがね天狗
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
厳しい克己は、春雷の轟きのように、快く、情慾の末を
痺
(
しび
)
らせる。冷静な抑圧は秋水の光のように愉しく本能の
黝
(
くろず
)
みを射散らした。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
岩から沁み出る清水の冷たさも加わって、
踵
(
かかと
)
がいちばんさきに
痺
(
しび
)
れるのが常であった。そこへは、川師仲間でも誰も潜ってゆかなかった。
蛾
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
泥舟はいきなり横顔を持って行かれたような
痺
(
しび
)
れを覚えた。あっと、叫んだ時は勢いよく仰向けにもんどり打っていたのである。
剣の四君子:04 高橋泥舟
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
藍丸王が何気なく、クリクリ坊主から振り子の無い木の鈴を受け取ると、こは
如何
(
いか
)
に、急に唇や舌が
痺
(
しび
)
れて仕舞って声さえ出なくなった。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
額安
(
かくやす
)
に、手取早く味覚の満足を
購
(
か
)
ふといつた風になり勝なので、感覚の
敏
(
さと
)
さが
段々
(
だん/″\
)
と
弛
(
ゆる
)
んで、
終
(
しま
)
ひには
痺
(
しび
)
れかゝつて来るのではあるまいか。
茸の香
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
雑沓
(
ざっとう
)
の中で、私は押しつけられる彼女のやわらかな胸と腿をかんじた。私は重く
痺
(
しび
)
れるような慾望が、私の中に顔をもたげるのがわかった。
軍国歌謡集
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
だから彼は、和船の
廻漕
(
かいそう
)
問屋を恨み、函館廻送に托した食糧その他にわがことのような責任を感じたのだ。
痺
(
しび
)
れをきらして調査に出かけた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
そうして居る中に自分の身体もだんだん凍えて
痺
(
しび
)
れて来る様子ですから眼を塞いだまま無闇に身体に
丁子油
(
ちょうじゆ
)
を塗り付けたです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
おい、御出役、お
前
(
めえ
)
のくるのを今迄
痺
(
しび
)
れを切らして待っていたんだ。顔の揃ったところで、早速、改めにかかろうじゃねえか
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
男は飛び上り、
痺
(
しび
)
れる程の力で女の手頸をぎゆつと掴んで引き寄せると、その白い濃厚な薫りのする胸に噛む如く接吻した。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
朝、胃痛ひどく、
阿片
(
あへん
)
丁幾
(
チンキ
)
服用。ために、
咽喉
(
のど
)
が
涸
(
かわ
)
き、手足の
痺
(
しび
)
れるような感じが
頻
(
しき
)
りにする。部分的錯乱と、全体的痴呆。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
こうしてあくまで眠りを
貪
(
むさ
)
ぼらないと、頭が
痺
(
しび
)
れたようになって、その日一日何事をしても
判然
(
はっきり
)
しないというのが、常に彼女の弁解であった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その超人的論理に魅了されて、検事も熊城も、
痺
(
しび
)
れたような顔になり、容易に言葉さえ出ないのだった。勿論そこには、一つの
懸念
(
けねん
)
があった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
真暗闇の中に目をあけたが頭のうしろが
痺
(
しび
)
れたようで、仰向きに寝た枕ごと体が急にグルリと一廻転したような気がした。
乳房
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
身体中が
痺
(
しび
)
れた様になって、完全に直立することが出来ず、しまいには、料理場や化粧室への往復を、躄の様に、這って行った程でございます。
人間椅子
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
見たところなんでもないようで、やはりまだ舞台に立つと、——ながく立っていると、痛んでくるとか
痺
(
しび
)
れてくるとか。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
くらくらと
脳髄
(
のうずい
)
が
痺
(
しび
)
れたような感覚があったかと思うと、ぱったりその場に昏倒してしまった。それは、ものの二秒ともたたぬ間の出来事であった。
犠牲者
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
じっと大人しく腰掛けて居ながら、気違いじみた酩酊が立派に魂を腐らせて行き、官能を
痺
(
しび
)
れさせて行くのが、自分でもよく判るように感ぜられた。
恐怖
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
静子、己は白状するが、その主人が死んだことを学校から帰って来て主婦さんに聞いたその刹那ある忌わしい関係の妄想が己の全身を
痺
(
しび
)
らしたのだ。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
痺
(
しび
)
れるようなあやしさが、再び彼のすべてをさらった。官能は燃え、からだは狂気の焔であった。彼は走った。夢のうちに、森をくぐり、谷を越えた。
紫大納言
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
私はなぜか恥をかきに来たような気がして、手足が
痺
(
しび
)
れて来るおもいだった。あまりに縁遠い世界だ。私は早く引きあげたい気持ちでいっぱいになる。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
と
言
(
い
)
ふ。
其処
(
そこ
)
で
渋
(
しぶ
)
りながら
備中守
(
びつちうのかみ
)
の
差出
(
さしだ
)
す
腕
(
うで
)
を、
片手
(
かたて
)
で
握添
(
にぎりそ
)
へて、
大根
(
だいこん
)
おろしにズイと
扱
(
しご
)
く。とえゝ、
擽
(
くすぐ
)
つたい
処
(
どころ
)
の
騒
(
さは
)
ぎか。
最
(
も
)
う
其
(
それ
)
だけで
痺
(
しび
)
れるばかり。
怪力
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
死に對する、それとも何かその他のものに對する恐怖が殆んど彼を
痺
(
しび
)
らせてゐる樣子だつた。ロチスター氏はもう血に染みてしまつた海綿を私に渡した。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
俺あ何です、
痺
(
しび
)
れを切らして待ってやしたがね、まま何せかにせ、どえれえ騒ぎ——ようこそお早く——へえ。
釘抜藤吉捕物覚書:08 無明の夜
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
頭がくうんと
痺
(
しび
)
れて来て、怖ろしい顔をしながらそこに立っている博士や若い医者達の喚き声を、夢
現
(
うつつ
)
の中の出来事のように、遠くの遠くの方に聞きながら
三稜鏡:(笠松博士の奇怪な外科手術)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
夜の
稼業
(
かぎょう
)
に疲れて少時間の眠りを取ろうとする女たちを困らせていたのはもちろん、起きているものの神経をも
苛立
(
いらだ
)
たせ、
頭脳
(
あたま
)
を
痺
(
しび
)
らせてしまうのであった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「何ね。そんなに
痺
(
しび
)
れをきらさないで、もう少し我慢して聞いているのだね。しかし今度は本物の方だよ。」
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
「あなたがお崩しにならないものですから、兄さんや二郎はお
相伴
(
しょうばん
)
でいつも
痺
(
しび
)
れが切れると言っていますわ」
嫁取婿取
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
次第に疲れが増して来た。こういう恐怖の中でさえ、私の心は
痺
(
しび
)
れたようになり、折々は無感覚になった。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
咽喉を透る
痺
(
しび
)
れるような気持をたしなむように眼をつぶり、右手で胸を押え、しばらくじっとしていた。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
樹に近く来るとその人全身
痺
(
しび
)
れるほど怖ろしくなり銃を放ち能わず一生にかつてこんな
恐
(
こわ
)
い目に遭った事なしと(一八九四年十二月『フォークロール』二九六頁)
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
と投げるように言って、すぐ
厠
(
かわや
)
に立って行った。足は
痺
(
しび
)
れを切らしたらしく、少しよろよろとなって歩いて行く父の後姿を見ると、彼はふっと深い淋しさを覚えた。
親子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
偽りは偽りながら、霧隠れ雲隠れの秘薬、その他には眠り薬、
痺
(
しび
)
れ薬、毒薬、解毒薬、長命不死の薬、笑い薬、泣き薬、未だ色々の秘薬の製法は、一通り心得おる。
怪異黒姫おろし
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
寒さと疲れとで顔の皮は板のように
硬
(
こわ
)
ばり、脚は棒のように堅くなり、かつ
痺
(
しび
)
れる。つねって痛ささえ感じないくらいになる。お腹は空いて
眩暈
(
めまい
)
さえしそうになる。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
痺
(
しび
)
れる病人に使うのでしょう。皆ざっとした物でしょうけれど、幼い私には目新しくて驚かれました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
それから、河豚の毒なら身體が
痺
(
しび
)
れる筈だが、そんな事がなくて、腹の中が燒け
爛
(
たゞ
)
れるやうで、血を吐いたのは
南蠻渡
(
なんばんわた
)
りの毒藥に違ひない。玄道さんもさう言つて居る
銭形平次捕物控:083 鉄砲汁
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
服
(
ドレス
)
も
萎
(
しお
)
れ
面
(
おもて
)
も萎れて登ってきたあなたの
可憐
(
かれん
)
な姿が目のあたりにちらつきながら、手も足も出ず心も
痺
(
しび
)
れ、なるままになれと思うのが、やっと精
一杯
(
いっぱい
)
のかたちでした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
痺
(
しび
)
れに似た感じです。次の瞬間にわたくしの心は「魂の森のなかにいる」といったような、妙な静けさを感じます。最初の時にはわたくしは何かの錯覚かと思いました。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
すると、右の腕が
痺
(
しび
)
れて(蟻が
這
(
は
)
っているように)むずむずする。鉄砲を構えることができない。腕が、ぐったり垂れる。鷓鴣は猟師の痺れがなおるのを待っていない。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
懷
(
ふところ
)
で
眠
(
ねむ
)
つた
與吉
(
よきち
)
を
騷
(
さわ
)
がすまいとしては
足
(
あし
)
の
痺
(
しび
)
れるので
幾度
(
いくど
)
か
身體
(
からだ
)
をもぢ/\
動
(
うご
)
かした。
漸
(
やうや
)
く
風呂
(
ふろ
)
の
明
(
あ
)
いた
時
(
とき
)
はお
品
(
しな
)
は
待遠
(
まちどほ
)
であつたので
前後
(
ぜんご
)
の
考
(
かんがへ
)
もなく
急
(
いそ
)
いで
衣物
(
きもの
)
をとつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
と
突然
(
だしぬけ
)
に
彼
(
か
)
の侍の
後
(
うしろ
)
から組附いた時には、
身体
(
しんたい
)
も
痺
(
しび
)
れ息も
止
(
とま
)
るようですから、侍は驚きまして
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
まだすこし頭の
痺
(
しび
)
れてゐる彼には、あたかも葡萄の房のやうにゆらゆらと搖れながら見えた。
恢復期
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
強い焼酎に
痺
(
しび
)
れた頭をかかへたものたちは、ひそかに白い吐息をして、耳を傾けたのである。
釜ヶ崎
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
この植物の汁液が唇などに附くと
刺戟
(
しげき
)
するので、この語を
痺
(
しび
)
れの意味に解したのであろう。
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
掴まれた腕が、
痺
(
しび
)
れたか、つきはなされて助次郎、あわてて、よろよろと身を退いた。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
痺
漢検1級
部首:⽧
13画
“痺”を含む語句
麻痺
痲痺
麻痺薬
心臓麻痺
麻痺剤
心臓痲痺
痳痺
麻痺状態
痺薬
麻痺藥
嘛痺
麻痺的症状
麻痺症状
麻痺状
麻痺力
馬痺風
耳痺
眼筋痲痺
痿痺出
痺癬
...