異見いけん)” の例文
大學者だいがくしやさまがつむりうへから大聲おほごゑ異見いけんをしてくださるとはちがふて、しんからそこからすほどのなみだがこぼれて、いかに強情がうじやうまんのわたしでも
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かさね右のおもぶきまで願書にしたゝめ居たるに加賀屋長兵衞入り來り我等何分なにぶんにも取扱ひ候間いますこし御待ち下さるべし白子屋方へ能々よく/\異見いけん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「そうなればいいですとも。あなたも仕合しあわせだし、わたしも安心だ。——しかし異見いけんでおいそれと、云う通りになる男じゃありませんよ」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
七蔵本性をあらわして不足なき身に長半をあらそえば段々悪徒の食物くいものとなりてせる身代の行末ゆくすえ気遣きづかい、女房うるさく異見いけんすれば、何の女の知らぬ事
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いゝ器量で大柄で人柄のいおでげすね、お前さんが時々異見いけんを云って下さるから、うか止してえと思うが、資本もとでは無し借金は有るし何うする事も出来ねえ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
復活祭前イースターまへ新調胴衣したておろしたとうて、ある裁縫師したてやつかひ、あたらしいくつふるひもけをったとうて、誰某たれやらとも爭論いがうた。それでゐておれ鬪爭けんくわをすまいぞと異見いけんめいたことを被言おしゃるのか?
番頭久八は大いに驚き主人五兵衞へ段々だん/\詫言わびごとに及び千太郎には厚く異見いけんを加へ彼方あち此方こち執成とりなしければ五兵衞も漸々やう/\いかりを治め此後を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そればかりでも身躰からだ疲勞ひらうはなはだしからうとおもはれるので種々いろ/\異見いけんふが、うもやまひせゐであらうか兎角とかくれのこともちひぬにこまりはてる
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「あなたから、とくと異見いけんでもしていただいて、また教師にでも奉職したら、どんなものでございましょう」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
誠に面白い奴だと思っていた、ことわしに向って時々異見いけんがましい口答えをする事もあり、正直者だと思って目を掛けていたが、他人の三層倍さんぞうばいも働き、力も五人力とか
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なげかれてつひに心も打解うちとけつゝ再びまよふ千太郎忠義一※の久八が異見いけんくぎゆるめし事嗚呼是非もなき次第なり。
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
はじめは小言こごとおつしやつたり、異見いけんあそばしたり、さとしたり、なぐさめたりあそばしたのなれど、いかにもわたし強情がうじやうふかく、かくしだてをあそばすといふをたてつて
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何時いつかみつちり異見いけんでもしなければなるまいくらゐかんがへてはゐたが、面白おもしろくもない二人ふたりかほ御米およねせるのが、どくなので今日けふまでわざと遠慮ゑんりよしてゐたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
散々さん/″\のおたみ異見いけんすこそめ揚句あげく、そのひとにわかにわかれといふ、おさなきこヽろには失禮ひつれいわがまヽをくみて夫故それゆゑ遠國ゑんごくへでもかれるやうにかなしく
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まつはるこほり朝日あさひかげおのづからけわたるをりならでは何事なにごと甲斐かひありともおぼえずれも/\異見いけんふなこゝろはなしをなぐさめて面白おもしろをおもしろしとおもはするのが肝要かんえうぞとわれ先立さきだちて機嫌きげん
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
りてまへではなんでありしやら兄弟きようだいにもなき親切しんせつこののちともたのむぞやこれよりはべつしてのことなにごともそなた異見いけんしたがはん最早もういまのやうなことふまじければゆるしてよとわびらるゝも勿体もつたいなくてば甘露かんろと申ますぞやとるげにへど義理ぎりおもそで
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)