産婆さんば)” の例文
本郷の南から神田にかけての一帯が焼けたとき、Hさんはまだ産婆さんば学校へ通つてゐたので、やはり湯島の本宅で罹災りさいしたのださうです。
死児変相 (新字旧仮名) / 神西清(著)
北八きたはち大丈夫だいぢやうぶだ、と立直たちなほつて悠然いうぜんとなる。此邊このあたりぢんまりとしたる商賣あきなひやのきならび、しもたやとるは、産婆さんば人相見にんさうみ、お手紙てがみしたゝめどころなり。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
産婆さんばほそ硝子がらすくだやうなものをつて、さいくちなかつよ呼息いきをしきりにんだが、効目きゝめまるでなかつた。うまれたものは肉丈にくだけであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
河童もお産をする時には我々人間と同じことです。やはり医者や産婆さんばなどの助けを借りてお産をするのです。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
高等科をおえると産婆さんば学校にゆくのが目的なのも、おませな彼女につわりの興味をもたせたのかもしれない。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
今から推察すれば父の胸算きょうさんに、福澤の家は総領に相続させるつもりでよろしい、所が子供の五人目に私が生れた、その生れた時は大きなせた骨太ほねぶとな子で、産婆さんばの申すに
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その妻君が妊娠で帯の祝いに産婆さんばを呼んだ時妻君は産婆に二円の祝儀をろうというと良人おっとが不賛成で二円なんぞとはとんでもない、一円でも高い位だといいました。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
友人もその時は、もう私の村の教師をして、じぶんの村でやっていた。その友人には産婆さんばをやっていた細君があって、三つ位の男の子と、出来たばかりの女の子があった。
妖影 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
より江たちのお母さんは村でたった一人の産婆さんばさんでした。より江はつまらなそうに、店先へ出て、店に並べてあるざるなべや、馬穴ばけつなぞを、ひいふうみいよおと数えてみました。
(新字新仮名) / 林芙美子(著)
はじめにアンドレイ、エヒミチは熱心ねつしん其職そのしよくはげみ、毎日まいにちあさからばんまで、診察しんさつをしたり、手術しゆじゆつをしたり、ときには産婆さんばをもたのである、婦人等ふじんらみなかれ非常ひじやうめて名醫めいゝである、こと小兒科せうにくわ
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
街の産婆さんばたちは、みんな生れるのは女の子にちがいないといっていた。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
まるるときは産婆さんばに手数料を払い、死すときは葬儀屋そうぎや桶代おけだいを払い、死後遺産いさんゆずれば租税そぜいを払う、何ものか払わでまさるべきものかある。ただ自然の美のみはあたいなしに得らるる恩恵おんけいである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
足下きみ昨夜ゆうべはマブひめ(夢妖精)とおやったな! 彼奴あいつ妄想もうざうまする産婆さんばぢゃ、町年寄まちどしより指輪ゆびわひか瑪瑙玉めなうだまよりもちひさい姿すがたで、芥子粒けしつぶの一ぐんくるまひかせて、ねぶってゐる人間にんげん鼻柱はなばしら横切よこぎりをる。
そのあひだ彼女かのぢよ産婆さんば免状めんじやうつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
宗助そうすけたのんだ産婆さんば可成かなりとしつてゐるだけに、このくらゐのことは心得こゝろえてゐた。しか胎兒たいじくびからんでゐた臍帶さいたいは、ときたまあるごと一重ひとへではなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのかわりおまえ、産婆さんばさんとこへ、ひとっぱしりいってきてくれや。大急ぎできてつかあされ、いうてな。行きしなに、よろずやのばあやんにも、ちょっときてもろてくれ。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
千穂子の子供をもらってもいいと云ってくれる人であったが、産婆さんばの話によると、もう少し、器量のいいあかぼうを貰いたいと云う事で、話が沙汰さたやみのようになっているのであった。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
羽織はおりをたゝんでふところへんで、からずねの尻端折しりはしよりが、一層いつそう薩張さつぱりでよからうとおもつたが、女房にようぼう産氣さんけづいて産婆さんばのとこへかけすのではない。今日けふ日日新聞社にち/\しんぶんしや社用しやようた。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はじめにアンドレイ、エヒミチは熱心ねっしんにそのしょくはげみ、毎日まいにちあさからばんまで、診察しんさつをしたり、手術しゅじゅつをしたり、ときには産婆さんばをもしたのである、婦人等ふじんらみなかれ非常ひじょうめて名医めいいである、こと小児科しょうにか
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
産婆さんば出産しゆつさんのあつたつい一週間しうかんまへて、丁寧ていねい胎兒たいじ心臟しんざうまで聽診ちやうしんして、至極しごく御健全ごけんぜんだと保證ほしようしてつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
優秀な成績で師範しはんを出た早苗は、母校にのこる栄誉えいよを得てそのひとみはますますかがやき、大阪の産婆さんば学校を、これも優等で卒業した小ツルとは、大石先生をまん中にして仲よしになっていた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
餘所よそで……經驗けいけんのある、近所きんじよ産婆さんばさんが注意ちういをされた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やがて産婆さんばさんがみえると
柿の木のある家 (新字新仮名) / 壺井栄(著)