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無残
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むざん
ふりがな文庫
“
無残
(
むざん
)” の例文
旧字:
無殘
つく/″\と
見
(
み
)
れば
無残
(
むざん
)
や、
形
(
かたち
)
のない
声
(
こゑ
)
が
言交
(
いひか
)
はした
如
(
ごと
)
く、
頭
(
かしら
)
が
畳
(
たゝみ
)
の
上
(
うへ
)
へ
離
(
はな
)
れ、
裙
(
すそ
)
が
梁
(
うつばり
)
にも
留
(
と
)
まらずに
上
(
うへ
)
から
倒
(
さかさま
)
に
釣
(
つる
)
して
有
(
あ
)
る……
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
そこで
執事
(
しつじ
)
ウィックスティード氏は、鉄棒の化けものの
猛反撃
(
もうはんげき
)
をくった。ただ、
残酷
(
ざんこく
)
としか言いようのない、
無残
(
むざん
)
な
殺
(
ころ
)
されようであった。
透明人間
(新字新仮名)
/
ハーバート・ジョージ・ウェルズ
(著)
若
(
も
)
し入学すれば校則として
当初
(
はじめ
)
の一年間は
是非
(
ぜひ
)
とも
狂暴
(
きやうぼう
)
無残
(
むざん
)
な
寄宿舎
(
きしゆくしや
)
生活をしなければならない事を
聴知
(
きゝし
)
つてゐたからである。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
せっかく丹精して塗り立てた彼女の手も、この神聖な
一杓
(
ひとしゃく
)
の水で、
無残
(
むざん
)
に元のごとく赤黒くされてしまったのである。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
まして
無残
(
むざん
)
の
獄吏等
(
ごくりら
)
は、それすら与へずうちはたく、この世からなる
餓鬼地獄
(
がきぢごく
)
、絶えも入りたく思ふらん、
獄屋
(
ひとや
)
の友を忍ぶにぞ絶えも入りたく思はるゝ
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
▼ もっと見る
強
(
つよ
)
い
風
(
かぜ
)
は、
無残
(
むざん
)
にちょうを
海
(
うみ
)
の
上
(
うえ
)
に
吹
(
ふ
)
きつけました。そして、たちまち
怒涛
(
どとう
)
は、ちょうをのんでしまったのです。
ちょうと怒濤
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
あまりにもかわりはてた
無残
(
むざん
)
な銀座。じつは、昨夜この銀座は
焼夷弾
(
しょういだん
)
の雨をうけて、たちまち
紅蓮
(
ぐれん
)
の
焔
(
ほのお
)
でひとなめになめられてしまって、この有様であった。
一坪館
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
この声もろともに、パッと血煙が立つと見れば、なんという
無残
(
むざん
)
なことでしょう、あっという間もなく、
胴体
(
どうたい
)
全く二つになって青草の上にのめってしまいました。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
特
(
こと
)
に
舅姑
(
きゅうこ
)
の福田に対する挙動の、
如何
(
いか
)
に
冷
(
ひや
)
やかにかつ
無残
(
むざん
)
なるかを見聞くにつけて、自ら浅ましくも牛馬同様の取り扱いを受くるを
覚
(
さと
)
りては、針の
筵
(
むしろ
)
のそれよりも心苦しく
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
いつ
何時
(
なんどき
)
どんなところで
無残
(
むざん
)
ななくなりようをすることやらと、つねづねそればかりを
苦
(
く
)
に
病
(
や
)
んでたのだから、まことにいい終わりようでありましたと
告
(
つ
)
げられて
非常
(
ひじょう
)
によろこんだ。
告げ人
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
私
(
わたくし
)
の
若
(
わか
)
き
日
(
ひ
)
の
楽
(
たの
)
しい
夢
(
ゆめ
)
は
無残
(
むざん
)
にも一
朝
(
ちょう
)
にして
吹
(
ふ
)
き
散
(
ち
)
らされて
了
(
しま
)
いました……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
また私は
蟻
(
あり
)
一ぴきでも虫などでも、それを
無残
(
むざん
)
に殺すことをようしなくなった。この
慈悲的
(
じひてき
)
の心、すなわちその思いやりの心を私はなんで
養
(
やしな
)
い得たか、私はわが愛する草木でこれを
培
(
つちこ
)
うた。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
恁
(
か
)
ういふ
無残
(
むざん
)
な
扱
(
あつかひ
)
はどうしても
他人
(
たにん
)
の
手
(
て
)
に
任
(
まか
)
せられねばならなかつた。
板
(
いた
)
の
儘
(
まゝ
)
ばら/\に
成
(
な
)
つて
居
(
ゐ
)
る
棺臺
(
くわんだい
)
は
買
(
か
)
つて
來
(
き
)
てから
近所
(
きんじよ
)
の
手
(
て
)
で
釘付
(
くぎづけ
)
にされた。
其處
(
そこ
)
には
淺
(
あさ
)
い
箱
(
はこ
)
の
倒
(
さかさ
)
にしたものが
出來
(
でき
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
その甘美な夢が、今、
無残
(
むざん
)
にもタタキ破られてしまったのであった。
笑う唖女
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
一瞬間で、私はこんなに
無残
(
むざん
)
に落ちてしまった。夢のようだ。ああ、夢であってくれたら。いやいや、夢ではない。ゆきさんは、たしかにあのとき、はっと言葉を呑んでしまった。ぎょっとしたのだ。
八十八夜
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「左様、
無残
(
むざん
)
にも、頭から、ばっさり浴びせかけたと見えまする」
大岡越前の独立
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
「
無残
(
むざん
)
、無残。ころしては可哀そうだ。……」
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
みどりは驚いてしまって、その手を振り払おうとする間に、かえってこんなのを面白がる連中は、寄ってたかって
無残
(
むざん
)
にもみどりの帯を解いて、あちらに投げ出す。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
呑気
(
のんき
)
な
白襖
(
しろぶすま
)
に舞楽の面ほどな草体を、
大雅堂
(
たいがどう
)
流の筆勢で、
無残
(
むざん
)
に書き散らして、座敷との
仕切
(
しきり
)
とする。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼女が、心配したとおり、通りがかった例の上品な中年の婦人は、黒い
紋附
(
もんつき
)
を、左の肩から
裾
(
すそ
)
へかけて、見るも
無残
(
むざん
)
に、泥水を一ぱいひっかけられているではないか。
爆薬の花籠
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
無残
(
むざん
)
や、
其
(
そ
)
の
中
(
なか
)
にも
命
(
いのち
)
を
懸
(
か
)
けて、
漸
(
やつ
)
と
五躰
(
ごたい
)
を
調
(
とゝの
)
へたのが、
指
(
ゆび
)
が
折
(
を
)
れる、
乳首
(
ちくび
)
が
欠
(
か
)
ける、
耳
(
みゝ
)
が
挘
(
も
)
げる、——これは
我
(
わ
)
が
手
(
て
)
に
打砕
(
うちくだ
)
いた、
其
(
そ
)
の
斧
(
をの
)
を
揮
(
ふる
)
つた
時
(
とき
)
、さく/\さゝらに
成
(
な
)
り
行
(
ゆ
)
く
像
(
ざう
)
は
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
花圃
(
はなばたけ
)
にいってみると、
無残
(
むざん
)
にも
花
(
はな
)
は
頭
(
かしら
)
を
地
(
ち
)
につけて
見
(
み
)
る
影
(
かげ
)
もなかったけれど、まだ
小
(
ちい
)
さなこちょうは
抱
(
だ
)
かれていました。こちょうと
花
(
はな
)
は
最後
(
さいご
)
まで
助
(
たす
)
け
合
(
あ
)
って、
運命
(
うんめい
)
に
身
(
み
)
をまかせていたのです。
二つの運命
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
漸
(
やつ
)
とのことで
現今
(
いま
)
の
寮
(
れう
)
が
以前
(
いぜん
)
の
幾分
(
いくぶん
)
の一の
大
(
おほ
)
きさに
再建
(
さいこん
)
されるまでには
其
(
そ
)
の
棚
(
たな
)
も
無残
(
むざん
)
な
鋸
(
のこぎり
)
の
齒
(
は
)
に
掛
(
かゝ
)
つて
居
(
ゐ
)
たのである。それでも、
老人等
(
としよりら
)
は
念佛
(
ねんぶつ
)
の
復活
(
ふくくわつ
)
したことに十
分
(
ぶん
)
の
感謝
(
かんしや
)
と
滿足
(
まんぞく
)
とを
有
(
も
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
右を見ても左を見ても人は我を
擯斥
(
ひんせき
)
しているように見える。たった一人の友達さえ
肝心
(
かんじん
)
のところで
無残
(
むざん
)
の手をぱちぱち
敲
(
たた
)
く。たよる所がなければ親の所へ逃げ帰れと云う話もある。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
赤羽主任は、
無残
(
むざん
)
につぶされた女の銀杏返しの髪に視線を送った。——丸々と
肥
(
こ
)
えた
頸筋
(
くびすじ
)
に、血に
塗
(
まみ
)
れた乱れ髪が数本
蛇
(
へび
)
のように
匍
(
は
)
っている、見るからに
惨酷
(
ざんこく
)
な犯行を思わせずにはおかなかった。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「やれやれ年寄の巡礼が、
無残
(
むざん
)
なことじゃ」
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その結果、一箇の
無残
(
むざん
)
な焼死体が発見せられた。背骨からしてすぐ判定がついて、
犠牲者
(
ぎせいしゃ
)
は気の毒な研究生小山すみれであることが分った。しかし美貌の男も美女も、現場に骨を残していなかった。
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「娘も惜しいがこの茶碗は
無残
(
むざん
)
な事をした。罪は君にある」
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“無残”の意味
《名詞》
無残(むざん)
残酷なこと。いたましいこと。あわれなこと。また、そのさま。「見るも無残な光景」
(出典:Wiktionary)
無
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
残
常用漢字
小4
部首:⽍
10画
“無残”で始まる語句
無残々々
無残絵
無残無残