無慈悲むじひ)” の例文
乳母 てん如何どうあらうと、ロミオは無慈悲むじひぢゃ。おゝ、ロミオどのが、ロミオどのが! ……れがおもひがけうぞい? ロミオどのが!
彼れの英語の発音を試験したり、彼れの英文について無慈悲むじひな批評を下したりしたがるそぶりを見せて驚かす者がなくなるのだ。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
いや阿關おせきこうふとちゝ無慈悲むじひ汲取くみとつてれぬのとおもふからぬがけつして御前おまへかるではない、身分みぶん釣合つりあはねばおもこと自然しぜんちがふて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何という無慈悲むじひな疑いであろう。私は値切れるだけ値切ったのである。相手がじれったがるほどきまりのわるい思いをして値切ったのである。
この上はしばりからげても引つ立てゝかなければならぬが、それもあまりに無慈悲むじひで、当人は勿論、親たちにも気の毒だ。
梟娘の話 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
そしてこんな有様ありさまはそれから毎日まいにちつづいたばかりでなく、しそれがひどくなるのでした。兄弟きょうだいまでこのあわれな子家鴨こあひる無慈悲むじひつらあたって
へいそなにごともドノバンにゆずっている富士男も、ドノバンの幼年者に対する無慈悲むじひ挙動きょどうを見ると、心の底から憤怒ふんぬのほのおがもえあがった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
困苦をともにした友に危難のせまった場合、無慈悲むじひに見捨て去るとは、実に見下げた人だ。八幡はちまんのたたりを恐れられい。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
しろは、人間にんげん無慈悲むじひにとうとうくるって、ようすのわったひとると、かみつくようになり、ごとに子供こどもおもしては、かなしいこえさけびました。
野菊の花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
自分の娘にだって、君の馬鹿を証明するような策略さくりゃくを、始めから吹聴ふいちょうするほど無慈悲むじひな男じゃない。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
が、——しかし、杢之進もくのしん、その時、その若人たちの前途に、明るき春あれさちあれと、祈る心は湧いても、無慈悲むじひ飛縄ひじょうを飛ばそうとは、つゆほども思わなかったのである。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
無慈悲むじひ役人やくにんなんぞにきずられて、どこだかれないしまてられるよりも、これはいっそ、自分じぶんでおかあさんをててほう安心あんしんだ。」とおもうようになりました。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
種々さま/″\詫言わびごとなし漸々にして追々に償ふ事をゆるされしかば直樣すぐさま引取の一さつ指出さしいだし久八を連歸りけるは無慈悲むじひなりける有樣なり久八は子供こどもの時より主人を大切と我が身の苦患くげん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
貴女は私をこんなにも打ち負かしておいて、此の上苦しめようとなさるのでせうか。今の私の淋しさや心細さに一点の同情も寄せて下さらないほど、無慈悲むじひなお方なのでせうか。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
警戒兵は、番小屋の中で、どこから聞えてくるともない、無慈悲むじひな寒冷の音を聞いた。
国境 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
無慈悲むじひな家主はこわい顔をして、荒々あらあらしくおこって家賃の催促さいそくをしました。二人の子供はおどろきと悲しみのあまりものを言うことも出来ませんでした。首をすくめ、目をしばたたいているばかりでした。
神様の布団 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ああ、なんという、無慈悲むじひな笑い顔だったでしょう。
超人ニコラ (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
なよたけ 無慈悲むじひなこと!……蝗麻呂! お前は?
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
わしは幾百度いくひゃくたび裏切られたろう。しかも今度は、今度はと思って希望をかけないではいられない。きょうもまた無慈悲むじひ方角ほうがくを変えてしまうのかもしれない。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
人間にんげんげてそだててくれたら、きっと無慈悲むじひてることもあるまいとおもわれる。……
赤いろうそくと人魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「じゃ道也先生に違ない。——世の中は随分無慈悲むじひなものだなあ。——君番地を知ってるだろう」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
貴女は私をこんなにも打ち負かしておいて、此の上苦しめようとなさるのでせうか。今の私の淋しさや心細さに一点の同情も寄せて下さらないほど、無慈悲むじひなおかたなのでせうか。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
恨まれな無慈悲むじひなことと思へども頼まれてする荒手業あらしごと呉々くれ/″\わしが爲るではなし長庵殿のはからひなりと云にお安はこゑふるはし扨は兄さん長庵殿がお前を頼んで殺すのか聞えぬぞへ長庵殿私を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
泣きながら城内じょうないへついてきたむすめも、その百姓も、ちょうど酒宴しゅえんをしていた長安ながやすのよいさけ興味きょうみになって無慈悲むじひ手討てうちにあって殺されたが、その死骸しがいを投げすてられたと聞くこのほり
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
せめて無慈悲むじひ役人やくにんにかけるよりはとおもったからです。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ヂュリ え、それほどにてん無慈悲むじひか!
オヽおまへ留守るす差配さはいどのがえられてといひさしてしばたゝくまぶたつゆ白岡鬼平しらをかきへいといふ有名いうめい無慈悲むじひもの惡鬼あくき羅刹らせつよと蔭口かげぐちするは澁團扇しぶうちはえんはなれぬ店子共たなこども得手勝手えてがつて家賃やちん奇麗きれいはらひて盆暮ぼんくれ砂糖袋さたうぶくろあましるさへはしかばぐる目尻めじり諸共もろとも眉毛まゆげによぶ地藏顏ぢざうがほにもゆべけれど
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
俊寛 清盛はなぜ特別にわしをにくむのだ。わしから二人の伴侶はんりょ無慈悲むじひうばい去ろうとするのだ。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
無慈悲むじひ領主りょうしゅに殺されたおときは、すこし気がヘンになって、戸狩村からどこともなくさまよいだしていたが、あぶないいのちをすくわれて、かのじょはまた、気もくるわしく泣くのであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これ、なにを無慈悲むじひなことをなさる」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)