正吉しょうきち)” の例文
高橋たかはしは、はや父親ちちおやわかれたけれど、母親ははおやがあるのでした。正吉しょうきちだけは、両親りょうしんがそろっていて、いちばん幸福こうふくうえであったのです。
世の中へ出る子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
下手な雑俳をたしなつゆ正吉しょうきちという中老人、これは野幇間のだいこのような男ですが、筆蹟が良いので瓢々斎に調法がられ、方々の献句けんくの代筆などをして、毎日のように入りびたっておりました。
きみは、りゅうのひげのりにきたのかい。ぼくは、ボールをなくしたので、さがしているのだ。」と、正吉しょうきちくんは、いいました。
少年と秋の日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
正吉しょうきちは、とぼとぼとまちほうをさしてあるいてゆきました。このあたりはもうれると、まったく人通ひとどおりはえてしまったのです。
幸福のはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「なんだ、ここにあるじゃないか。」と、さっき正吉しょうきちくんが、いくら、さがしてもつからなかったところから、ひろしました。
少年と秋の日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「だって、そんないやなさかななんか、わたし、かうのはきらいだわ。」と、ときねえさんは、正吉しょうきちくんのいうことに賛成さんせいしませんでした。
たけちゃん、きみは、まち文房具屋ぶんぼうぐやにあるおもちゃをた?」と、正吉しょうきちは、そのときぼんやりとして、ならんでいた武夫たけおきました。
空にわく金色の雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「わたし、マンドリンひけてよ。こんどいらっしゃったら、きかしてあげるわ。」と、少女しょうじょは、正吉しょうきちくんのかおて、わらいました。
少年と秋の日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
正吉しょうきちくんは、はじめて小田おだくんのうちへあそびにいって、ちょうせんぶなをせてもらったので、たいそうめずらしくおもいました。
来年らいねんは、ぼく、おじさんのいえへいくのだ。そうしたら、おかあさんは、一人ひとりになって、さびしいだろうね。」と、正吉しょうきちはいうのでした。
空にわく金色の雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こんなはなしをきくと、正吉しょうきちくんは、なんだか自分じぶんにもいやなさかなのようにおもえたけれど、またそれだけかってみたいというもおこりました。
学校がっこうで、正吉しょうきちは、とりわけ青木あおき小田おだとはなかよしでした。三にんは、ひるやす時間じかんに、運動場うんどうじょうて、かげのところではなしをしていました。
眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうするうちに、いよいよ選挙日せんきょびとなりました。おりしも、はるのいい季節きせつであって、正吉しょうきちらの投票場とうひょうじょうは、ちかくの小学校しょうがっこうにきめられました。
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
正吉しょうきちのいる、四畳半じょうはんで、二人ふたり勉強べんきょうするにはすこしくらすぎるから、あたらしくまどをつけてやりたい。」と、はははなしているのをきました。
時計と窓の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
正吉しょうきちさきって、くさむらのなかはいりました。にからんだ、からすうりのまっている、うすあからえました。
眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
正吉しょうきちは、ただ、ちかわかれるのがかなしかったのでした。こちらに、おもわしい就職口しゅうしょくぐちがないので、高橋たかはしが、地方ちほうへいくのをっているからです。
世の中へ出る子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
「よく、女手おんなでひとつで、むすこさんを、これまでになさった。」と、いって、うしろについてくる正吉しょうきちながら、正吉しょうきちははをほめるのでした。
空にわく金色の雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それからのちというもの、正吉しょうきちは、青服あおふくおとこが、子供こどもちぬかないか、また、ガラスまどやぶってひときずつけはしないかと、心配しんぱいしたのでした。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
正吉しょうきちはあとで、この事件じけんいたのであるが、これがため、青服あおふく家主やぬしじゅうかえされなくなったので、弁償べんしょうすることに、はなしがついたといいました。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
その平和へいわをかきみだしはしないかと、正吉しょうきちにかかったのは、このごろ、このまちしてきた青服あおふくおとこのことでした。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
正吉しょうきちは、選挙せんきょに一ぴょうとうじてから、社会人しゃかいじんになれたという、つよ自覚じかくをもつと同時どうじに、自然しぜん観察かんさつから、また仕事しごとのうえにもだいなる自信じしんました。
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かあさんが、じっと正吉しょうきちつめられるときは、いつも、そのくろなかに、なみだがたたえられていたのを、正吉しょうきちわすれることができませんでした。
幸福のはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「なあ、正吉しょうきちつよいものな。いいだからいってきてくれよ。」と、父親ちちおやは、うし姿すがた見送みおくりながら、いいました。
幸福のはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)
正吉しょうきちは、くさむらのなかくぐって、かけずりました。そして、義雄よしおが、まだ一ぴきもつけないうちに、正吉しょうきちは、三びきもつけて、義雄よしおあたえました。
眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
正吉しょうきちが、ものものはこんできた、ほしのようにきよらかな、しろいエプロンをかけた少女しょうじょ姿すがたおもかべました。かれいそいでまちへひきかえしました。
世の中へ出る子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
正坊しょうぼうや、いってくるぞ。かえりには、たくさん土産みやげってきてやるから、おとなしくしてっているのだぞ。」と、おじいさんは、正吉しょうきちあたまをなでました。
銅像と老人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おじいさん、ぼくもつれていっておくれよ。」と、そばで、このはなしいていた、まご正吉しょうきちがいいました。
銅像と老人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「もう、田舎いなかはるだろうな。」と、正吉しょうきちは、紫色むらさきいろびて、かすみたつそらあおぎました。かんがえるともなく、子供こども時分じぶんが、あたまなかへよみがえったのであります。
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いま、正吉しょうきちさんは、中学ちゅうがくの二年生ねんせいで、吉雄よしおさんは、今年ことし中学ちゅうがくえてうえ学校がっこうはいったのであります。
幼き日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれど、ればるほど、かわいい正吉しょうきちに、としごろから、あたまかっこうまでよくていたのでした。
銅像と老人 (新字新仮名) / 小川未明(著)