)” の例文
午後二時ごろ、お昼飯ひるはんをたべに、麻布あざぶ竜土軒りゅうどけんへ行き、清子は井目せいもくをおいて、泡鳴と碁を二回かこんだが、二度とも清子がけた。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
いまさら、けツこはないでせう……。こゝまで来て敗けたりしちやア眼もあてられない。私は、敗けるなンざア考へてもみない。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
まず、訴訟にけたくないからです。これはむろんのことです、そのためには、利用できるものはなんでも見逃すわけにはゆきません。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
これなどはいかにも、けた武士というものが、どんな悲惨な生活に落ちてゆくかが分って、当時の社会相が目に見えるようだ。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふと眼が会ったら、その男が半分は一人言ひとりごとのように、半分は私に話しかけるような調子で「戦争にけりゃあこんなもんだ。仕方がないや」
硝子を破る者 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
私はけ、またもとのモクアミになってしまう、そう思ったからこそ、さきにテープをとどけさせておいたの。やはり、私は正しかったわ。
愛の終り (新字新仮名) / 山川方夫(著)
国と国との間には干戈かんかを交える真の戦争のほかに、つねに平和の戦争なるものがあって、これにければやはり国は衰える。
教育と迷信 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
全然これは生徒のけである。どうもこれは、いつもの新任しんにん先生とはだいぶようすがちがう。少々のいたずらでは、泣きそうもないと思った。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
ピジョン講師の説明にると、その羅馬人ローマじんが英国へ侵入して来た時に、その一部が戦闘たたかいけての地方へ逃げ込んで来た。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
もともとこの人土俵の外に投げ出されたとてけたとはいわぬという日下開山、これが名越の自邸に築窯したのである。
現代茶人批判 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
こういう馬鹿げた精神が美徳だなどと疑られもしなかった日本は、どうしてもけ破れ破滅する必要があったのである。
デカダン文学論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
おもわぬことにほこさきをくじいたおつ軍勢ぐんぜいけて退却たいきゃくいたしますと、今度こんどこう軍勢ぐんぜいきゅういきおいをかえして、げるおつ軍勢ぐんぜいってゆきました。
酒倉 (新字新仮名) / 小川未明(著)
どえらい戦争をはじめたら、きっと日本は、しまいにはけるにきまってる。どえらい敗け方をするにちがいない。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
いとしい人の美しい幻影に打ちかされ、永劫えいごうの迷いを抱きつゝ死んで行ったのであろうと、考えるより外はない。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
張合つて綺麗にけて、今でも兩國の水茶屋に通つて、女だてらに大酒を飮んで、男から男へと渡つて歩くやうなだらしのない生活を續けて居るのでした。
はじめ二目にもく三目さんもくより、本因坊ほんいんばう膏汗あぶらあせながし、ひたひ湯煙ゆけむりてながら、たる祕法ひはふこゝろむるに、僅少わづかに十餘子じふよしばんくや、たちまけたり。すなはひざまづいてをしへふ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのあとからサアが刀を抜いて、攻めて来る敵を片っぱしから刀もよろい一打ひとうちに切って切って切りまくりましたので、敵は大けにけて逃げてしまいました。
奇妙な遠眼鏡 (新字新仮名) / 夢野久作香倶土三鳥(著)
いくさの神と言うほうが適当だろう」と中倉先生はまた、自分が言わんと欲して言うあたわざる事を言う。
号外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
しかし、どうしてこんな場合に、不意に悪人のことを自分は考えたのだろうか。たしかに、事は戦争の勝ちけのことだけでは済みそうにないと梶は思った。
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
いくさけて講和を求める時にそれを掲げて来るなら、その時は砲撃を中止するであろうとの言葉を残した。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
源八郎、けぬ気を出したわけではない。ほかの木の根を探すよりも、早く休みたいからであったのだ。
怪異暗闇祭 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
まことにこの森林の子、ゲルマン族のらさは、けて敗けず、むしろ焦土から倍旧の美しい、化学や芸術の花を咲かせて、敵国に復讐し、己れ甦生する所にある。
独逸の範とすべき点 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
けた、敗けた。どうも、今日は調子が悪い。じん公から、二枚落しで、四番も立ち投げを食うた」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
男と競争してもけはしないぞといったような男子に対する一種の復讐ふくしゅう的な気持ちも加わっていて、自分にもはっきり意識しない虚栄心きょえいしんもそれに手伝っていたのである。
それでも結局はアデイアは五ポンドくらいはけになったろうか、——しかし彼は元来相当の財産を持っていたので、こんな敗けくらいは彼にとっては何でもないことであった。
だからといって自軍がけたことの弁解にはならないから、もちろん、因杅いんう将軍の罪は許されなかったが、これを聞いた武帝が、李陵に対し激怒したことは言うまでもない。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
身を縮めて、一生懸命に抱きしめていても、いつか自分の力の方がけてゆくような——目がめた時、彼は自分がおびただしい悪寒おかんに襲われてがたがたふるえているのを知った。
六月 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
それを聞くと、僕は「何糞なにくそ」とけない気が出て、いきなりその帽子に飛びつこうとしましたら、帽子も僕も一緒になって学校の正門の鉄の扉をなんの苦もなくつき抜けていました。
僕の帽子のお話 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
何處の學校でも、校長は鯰髭の高麗人で、議論をすると屹度きつとけるものと見える。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
もとより女ながら一死をして、暴虐ぼうぎゃくなる政府に抗せんと志したるわらわ、勝てば官軍くればぞくと昔より相場のきまれるを、虐待の、無情のと、今更の如く愚痴ぐちをこぼせしことの恥かしさよと
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
理屈においてけたならば、一本まいったと綺麗きれいければ男らしくもあり、かえって自分の主張にどろをつけないものとなるに、おのれの議論が弱いときには、その弁護に感情をふくまして
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「とうとう降参しましたかな。降参したなら、降参したでよろしい。けたものを追窮ついきゅうはしないから。——そこへ行くと男にはまた弱いものをあわれむという美点があるんだからな、こう見えても」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
加之それに自分の分としては財産ざいさんも幾分別になツて、生活の安全も保證ほしようされてあるから、夫人に取ツては、何方がツてもけてもカラ平氣だ。そこでらざるおせツかいをせぬ事としてまし返ツてゐた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
こりゃあイギリスの方がけるんじゃあないか、と思いました。
お蝶夫人 (新字新仮名) / 三浦環(著)
「ところが、見す見すけるという方に附く者は今の世——何時の世にも少いでござりましょう。されば損得に引廻されないような大将の方に旗の数が多くなろう理は先ず以て無いことでござれば、そこで世の中は面倒なのでござる。」
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
祝家荘しゅくかそうの祝朝奉をあいてに大戦おおいくさの最中なんでして……。しかもこっちはけ色です。楊林と鄧飛とうひも、じつは敵のとりこになっている始末。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は、きっとあなたにけてしまうだろう。でも強引に、むしゃぶりつくみたいにして、あなたの死を私の死にしてやるのだ。心中をしてやるのだ。
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
張合って綺麗にけて、今でも両国の水茶屋に通って、女だてらに大酒を飲んで、男から男へと渡って歩くようなだらしのない生活を続けているのでした。
ものはいえなくても千咲はけるのがいやだと、ひろみに聞いていたが、目のあたりみるのはおもしろかった。
日めくり (新字新仮名) / 壺井栄(著)
なにもかも、話してやった——ふウン、これが、おッ母さんの恋敵か? この女から、おッ母さんがけたのか?……そう思うと、あたしは、一層、決心が堅まったよ
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
それらは、訴訟の新段階には持ちこむことが許されぬという理由で、差戻されたのであり、値打ちのない反古ほごなのだ。それでも訴訟はまだけときまったわけではない。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
しかし、勝っている間は、こんなに勝ちつづけて良いものだろうかという愁いがあった。それがけ色がつづいて襲って来てみると、愁いどころの騒ぎでは納まらなかった。
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
それ熟々つらつら、史をあんずるに、城なり、陣所、戦場なり、いくさおんなの出る方が大概ける。この日、道学先生に対する語学者は勝利でなく、礼之進の靴は名誉の負傷で、揚々と引挙げた。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ゆき子は自分がみじめにけてしまつた気で、学校時代のサージの制服を仕立てなほした洋袴ズボンに、爪先きのふくらんだ、汚れた黒靴をはいてゐる事に、いまいましいものを感じてゐる。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
けてお遣りよ。昌作さんが可哀想だから。』と見物してゐたお柳がくちばしを容れた。不快な顏をして昌作は手を引いた。靜子は氣の毒になつて、無言で昌作の札を一枚自分の方へ取つた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
よし皮肉ひにくをもって一時勝利を得るにしても、その実は敵にけたものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「でも、どんなものでしょうなあ、いくさけて帰って来るというやつは。」
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
みんなで石っころをほうりこんで逃出すんだ、そりゃね、時には、おもてでいじめたこともあるさ。だけれど、その時けて泣いた奴の方があんなに偉くなって、わしゃチンコッきりだ。わしゃかなしい。
その小さな目にはすぐれた才気と、けぎらいらしい気象とがほとばしってはいたけれども、じじむさいあごひげと、伸びるままに伸ばした髪の毛とで、葉子でなければその特長は見えないらしかった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
お母様にけないように清浄な一生を送りましょう
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)