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彼奴
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きゃつ
ふりがな文庫
“
彼奴
(
きゃつ
)” の例文
どう考えても怪しい気がしてなりませんので取敢えず閣下に
彼奴
(
きゃつ
)
の
写真
(
スナップ
)
をお送りしておいて、ここまでアトを
跟
(
つ
)
けて来た訳ですが……
人間レコード
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「おうっ、おうっ。——あれに見える者こそまさしく敵の総帥
董卓
(
とうたく
)
だ。
彼奴
(
きゃつ
)
の姿を目前に見て、空しくおられようか。続けや者ども」
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あの一段高い米の
叺
(
かます
)
の積み荷の上に突っ立っているのが
彼奴
(
きゃつ
)
だ。苦しくってとても歩けんから、
鞍山站
(
あんざんたん
)
まで乗せていってくれと頼んだ。
一兵卒
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
「おや、わしの好きな燻製が朝から出て来るぞ。これは
頼
(
たの
)
もしい。
彼奴
(
きゃつ
)
らの目の覚めないうちに、腹一杯喰っておくことにしよう」
大使館の始末機関:――金博士シリーズ・7――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ですから無論イサクの方でも私が
彼奴
(
きゃつ
)
を憎む位に私を憎んで居ったことは、彼奴の態度や、他人の噂で私には解かって居りました。
死の復讐
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
その事なれば及ばずながら、某一肢の力を添へん。われ彼の
金眸
(
きんぼう
)
に
意恨
(
うらみ
)
はなけれど、
彼奴
(
きゃつ
)
猛威を
逞
(
たくまし
)
うして、余の
獣類
(
けもの
)
を
濫
(
みだ
)
りに
虐
(
しいた
)
げ。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
或
(
ある
)
ひは
娘共
(
むすめども
)
が
仰向
(
あふむけ
)
に
臥
(
ね
)
てゐる
時分
(
じぶん
)
に、
上
(
うへ
)
から
無上
(
むしゃう
)
に
壓迫
(
おさへつ
)
けて、つい
忍耐
(
がまん
)
する
癖
(
くせ
)
を
附
(
つ
)
け、
難
(
なん
)
なく
強者
(
つはもの
)
にしてのくるも
彼奴
(
きゃつ
)
の
業
(
わざ
)
。
乃至
(
ないし
)
は……
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
道理で、
彼奴
(
きゃつ
)
、人込みばかり
選
(
よ
)
って歩くと思った。見世物に気をとられている様な風をして、その実隣近所の人の財布を狙っていたのだ。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「
彼奴
(
きゃつ
)
はその金でさかんに女房の名で
故郷
(
くに
)
に土地を買っているそうだ」などと、まことしやかな話が出て来るに決まっています。
安重根:――十四の場面――
(新字新仮名)
/
谷譲次
、
林不忘
(著)
考えても——
上
(
あが
)
り
端
(
ばな
)
には萌黄と赤と上草履をずらりと揃えて、廊下の奥の大広間には
洋琴
(
ピアノ
)
を備えつけた館と思え——
彼奴
(
きゃつ
)
が風体。
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
彼奴
(
きゃつ
)
は、あくまでも阻止せねばならぬ。が、その婿引出に持ってまいるこけ猿の茶壺には、当方において大いに用があるのだ」
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「中西の宿はずいぶんしみったれているが、
彼奴
(
きゃつ
)
よく辛抱して取り換えないね。」と大森は封筒へあて名を書きながら言った。
疲労
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
云わない。あいつも相当喰えない奴だよ。思う所があって
態
(
わざ
)
と帰宅を許したのだがね。
彼奴
(
きゃつ
)
の行動については渡辺刑事が気をつけている筈だよ
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
彼奴
(
きゃつ
)
め
長久保
(
ながくぼ
)
のあやしき女の
許
(
もと
)
に
居続
(
いつづけ
)
して妻の
最期
(
さいご
)
を
余所
(
よそ
)
に見る事憎しとてお辰をあわれみ助け
葬式
(
ともらい
)
済
(
すま
)
したるが、七蔵
此後
(
こののち
)
愈
(
いよいよ
)
身持
(
みもち
)
放埒
(
ほうらつ
)
となり
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
それから『清悦物語』の方では常陸坊と二人、どうしても死ねなかったと手軽に書いてあるのを、『残齢記』の方では
彼奴
(
きゃつ
)
はけしからぬ男だ。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
読者中病身の
細君
(
さいくん
)
を親切に
看護
(
かんご
)
する者あれば、これを
褒
(
ほ
)
める者があると同時に、
彼奴
(
きゃつ
)
め
嚊
(
かかあ
)
に
惚
(
のろ
)
いと批評された経験もあろう。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
斯
(
こ
)
う早く罪に服そうとは思わなんだが是で
最
(
も
)
う充分だ今に目科が遣て来て
彼奴
(
きゃつ
)
の言立を聞き失望するだろうと何か此様な事を呟いて居ましたから
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
そして夜になると
彼奴
(
きゃつ
)
等の
猛
(
たけ
)
しい唸り声を聞いて、
遠近
(
あちこち
)
のさかりのついた野良犬や、狂犬どもが盛んに吠え立てるのだ。
犬舎
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
『おやッ!
彼奴
(
きゃつ
)
がわしを見たッて、あの悪党が。
彼奴
(
きゃつ
)
はわしが、そらここにこの糸を拾ったの見ただ、あなた。』
糸くず
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
『
何
(
なん
)
だと
畜生
(
ちくしょう
)
!』と、この
時
(
とき
)
イワン、デミトリチは
急
(
きゅう
)
にむッくりと
起上
(
おきあが
)
る。『
何
(
なん
)
で
彼奴
(
きゃつ
)
が
出
(
だ
)
さんと
云
(
い
)
う
法
(
ほう
)
がある、
我々
(
われわれ
)
をここに
閉込
(
とじこ
)
めて
置
(
お
)
く
訳
(
わけ
)
は
無
(
な
)
い。 ...
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
彼奴
(
きゃつ
)
、どうするかと息を
潜
(
ひそ
)
めて
窺
(
うかが
)
つてゐると、
彼
(
かれ
)
は長き尾を地に
曳
(
ひ
)
き二本の
後脚
(
あとあし
)
を
以
(
もっ
)
て
矗然
(
すっく
)
と立つたまゝ、
宛
(
さなが
)
ら人のやうに歩んで行く、
足下
(
あしもと
)
は
中々
(
なかなか
)
確
(
たしか
)
だ。
雨夜の怪談
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼奴
(
きゃつ
)
は、ちゃんと心得ていて聞いたのだが、聞かれると、返答せん訳には参らぬ。
拙者
(
せっしゃ
)
が答えると、じっと、拙者の顔を、ちらっと、天一坊殿の顔を——
大岡越前の独立
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
ところが、殿中でわしに斬りつけるという乱暴なことをやったために、よくよくのことだということになって、たちまち
彼奴
(
きゃつ
)
が同情されることになるのだ。
吉良上野の立場
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
鈎は確かに
彼奴
(
きゃつ
)
の顎に刺さツて仕舞ひ、竿頭の弾力は、始終上の方に反撥しようとしてるので、一厘の隙も出来ず、一旦懸ツたものは、
外
(
はず
)
れツこ無しです。
元日の釣
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
彼奴
(
きゃつ
)
のために、また滅茶苦茶にされてしまう! 藤沢はテーブルの横から取り上げた猟銃をすぐ動悸の激しい胸に構えた。そして銃口を窓から突き出した。
熊の出る開墾地
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
いくら無知な
彼奴
(
きゃつ
)
らとても主人たる私のところへ持ち込んで来るはずもなかろうし、幾分かはほんとうのことかな? という疑念も萠してくるのであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
隆達くずしでもあるまいぜ、あの小屋の中に、鍋焼きを
啜
(
すす
)
っていた人数は、七、八人。
彼奴
(
きゃつ
)
らが、十手を振って向って来れば、一度あずかった貴様の
身体
(
からだ
)
だ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
「や、こりゃお岩が死んでおる」刀を見つけて、「こりゃ小平めの
赤鰯
(
あかいわし
)
じゃ、そんなら
彼奴
(
きゃつ
)
が殺したか」
南北の東海道四谷怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
彼奴
(
きゃつ
)
をかばうほどに、お前等は
盲
(
めし
)
い果てているのだ。だが俺は、どんなことがあろうと、きっと彼奴をやっつけて見せる。今日が駄目なら明日こそ力
競
(
くら
)
べをしてやろう。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
「フン、
彼奴
(
きゃつ
)
めあんなに笑いやがるとは」とフランボーは、身慄いしながら云った。「でも師父、全体そんなに大それた智慧は悪魔からでも借りて来たものでしょうか」
サレーダイン公爵の罪業
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
今度こそ再び
彼奴
(
きゃつ
)
をわが手で捕えてみせよう、とただ一騎馬に鞭をくれて瀬尾を追っていった。
現代語訳 平家物語:08 第八巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
変にしたものがあったとしたら、それはピナー自身だ。何が
彼奴
(
きゃつ
)
をこわがらせたんだろうね?
株式仲買店々員
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
そして私が、自分の方を見ながら熱心に靴磨きに
囁
(
ささや
)
いているのを見ると、突然
彼奴
(
きゃつ
)
は鉄砲玉のように駈け出して、ちょうどそこへ疾走して来た電車へ飛び乗ってしまいました。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
己
(
おい
)
らア、仕事を仕舞うと直ぐこれで三晩おがみに来るが、
彼奴
(
きゃつ
)
流行妓
(
はやりッこ
)
だからなア、まだお目にぶら下らねえのさ、今夜ア
助見世
(
すけみせ
)
に出アがるとこでもと
先刻
(
さっき
)
から
五度
(
ごたび
)
まわったが
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「ドクトル! ヴェラクルスへ着く前にあなたは
彼奴
(
きゃつ
)
と会うことが出来そうですよ。」
薔薇の女
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
たったいま
耳食
(
じしょく
)
の昔話が織り込まれているのであり、何物でも一度
彼奴
(
きゃつ
)
の耳に入ったら助かりません——あの踊りだってそうです、無雑作のうちに、どこか節律があるんでしてね。
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「なるほど、
彼奴
(
きゃつ
)
にはかられた。まだ遠く逃げ延びもしまい、追いかけよう」
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
斯うなればあとは簡単さ、みどりさんを縛ったままにして置けば、
彼奴
(
きゃつ
)
はまだ自分の罪の暴露した事に気付かず、堂々とロビイで連絡を取るに違いない、——そう思った事が図星に当った。
亡霊ホテル
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
俺とか君とか鈴木とか、
表
(
おもて
)
に出てしまった人間なんて、チットも恐ろしくない。これからは顔の知られない奴だって。
彼奴
(
きゃつ
)
等だって、ちァんと俺たちの運動の方向をつかんだ云い方をするよ。
工場細胞
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
「
彼奴
(
きゃつ
)
、椅子にゆわえつけられていました。この白いのが……」と、医務服の裾をつまんでみせ、「
彼奴
(
きゃつ
)
の式服です。わたくしがこれを着ていると、やはり侍従長ぐらいには見えるでしょう。 ...
ノンシャラン道中記:04 南風吹かば ――モンテ・カルロの巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「引き上げの朝、
彼奴
(
きゃつ
)
に
遇
(
あ
)
った時には、唾を吐きかけても飽き足らぬと思いました。何しろのめのめと我々の前へ
面
(
つら
)
をさらした上に、御
本望
(
ほんもう
)
を遂げられ、大慶の至りなどと云うのですからな。」
或日の大石内蔵助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ほんとうにあれが
寄越
(
よこ
)
したんだ。わしは
彼奴
(
きゃつ
)
の筆跡はよく知っとる。
探偵戯曲 仮面の男
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
彼奴
(
きゃつ
)
は六ヶ月前にスパルミエント大佐と称し、英国を旅行している中あの綴れ錦の壁布の発見されたことを聞いてそれを買い込むと、その中一等良いのを盗まれたと言ってルパンに世人の注意を向け
探偵小説アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
その幻妙不可思議な手法は無論ルキーンだけの秘密だけども、発見を一刻でも早めることが
彼奴
(
きゃつ
)
にとってこの上もない利益なのだからね。鳴らさねばならない理由はこれで立派に判ってたことになる。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
当時トウブチにいたオロシャの
駐屯
(
ちゅうとん
)
部隊に、権判官はこちらから出向いて行った、当人は対等の儀礼をもって修好を申しこんだつもりではあったろうが、これが
彼奴
(
きゃつ
)
らめをつけあがらした第一の原因
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
彼奴
(
きゃつ
)
等の弾圧位びんびん弾き返すのである
手
(新字新仮名)
/
今村恒夫
(著)
私は顔中を眼にして、
彼奴
(
きゃつ
)
を
睨
(
にら
)
んだ。
牢獄の半日
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
「この上にも、一戦をも辞せぬなどとは、八ツ裂きにしても飽きたらぬ人非人。
彼奴
(
きゃつ
)
の首を見ぬうちは、この
革胴
(
かわどう
)
を解いては寝ぬぞ」
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
俺は彼に利用される振りをして、彼の
金
(
かね
)
を数万円使い棄てて見せたら、
彼奴
(
きゃつ
)
め、驚いたと見えて、フッツリ来なくなってしまった。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
おお陣十郎! おお
彼奴
(
きゃつ
)
か! ……弟子ながらも稀代の使い手、しかも悪剣『逆ノ車』の、創始者にして恐ろしい奴。……彼奴の悪剣を
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼
常用漢字
中学
部首:⼻
8画
奴
常用漢字
中学
部首:⼥
5画
“彼奴”で始まる語句
彼奴等
彼奴共
彼奴呼
彼奴迄