“山羊:やぎ” の例文
“山羊:やぎ”を含む作品の著者(上位)作品数
野村胡堂5
夏目漱石4
ロマン・ロラン3
アントン・チェーホフ3
鈴木三重吉3
“山羊:やぎ”を含む作品のジャンル比率
文学 > その他の諸文学 > ギリシア文学60.0%
文学 > 文学 > 叢書 全集 選集14.3%
文学 > フランス文学 > 小説 物語13.5%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
それから一足をそりに、一足を山羊やぎの背に載せて走らせ、満月の昏時くれどき、明とも暗とも付かぬうちに王宮に到った。
白い山羊やぎの背に、二箇の酒瓶さかがめを乗せて、それをひいてきた旅の老人が、桑の下に立って、独りで何やら感嘆していた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「鴨田さん」帆村は背後を振返ふりかえった。「ニシキヘビには山羊やぎを喰べさせるそうですが、何日位で消化しますか」
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
時と荒廃とに任せていた彼の住居は崩れかけて来たので、飢えたる山羊やぎどもは彷徨さまよい出て、近所の牧場へ行ってしまった。
山羊やぎみたいな面影があり、脂気あぶらけの多い金色の皮膚をしていた——それが急に宮廷音楽員をちやほやしだしたので
「アコン、旦那に言って山羊やぎというもんを飼って貰いなさらんか。山羊の乳は仰山ぎょうさんに滋養があるそうですど」
南方郵信 (新字新仮名) / 中村地平(著)
何と云う名前か知らん、ただ顔の長い上に、山羊やぎのようなひげやしている四十前後の男と云えばよかろう。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
シイタケ飯屋の会へ来ても、半白の山羊やぎヒゲを右手でしごきながら、正宗の三オンスびんを前において、仙人のような風格だった。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
むかしエヂプトに於ては、テベスでは羊を食はず、メンデスでは山羊やぎを食はず、オムポズでは鰐魚わにを嫌つた。
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
わが背後うしろよりさし覗きし時、畫工はわれを顧みて、あの大なるほらの中なる山羊やぎの群のおもしろきを見給へと指ざし示せり。
その青年記者のロイド眼鏡めがねの底に光る鋭い眼と、山羊やぎ髭を付けた可愛らしい口元は、顔の表情に一種不思議な矛盾を感じさせます。
女記者の役割 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
みがき上げた山羊やぎの皮にかむほこりさえ目につかぬほどの奇麗きれいな靴を、刻み足に運ばして甲野家の門に近づいて来る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
汝はドメニカに育てられ、「ジエスヰタ」派の學校に人となりて、その血中には山羊やぎ乳汁ちしる雜れり。
石橋粗く嶮しくして山羊やぎさへたやすく過ぐべきならねば、しづかにこゝにその荷をおろせり 一三〇—一三二
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
流れのふちで桑の葉などを食べていた山羊やぎも、私たちの姿を見ると人なつこそうに近よってきた。
楡の家 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
私の父は歓迎の意志表示でせうか、口汚く山羊やぎや豚を追ひ立てて、そのかはりうまやから自慢の仔馬こうまを引き出して先生に見せました。
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)
曲がりくねって上ってる小径の角のところに行くと、彼女は山羊やぎのように一直線に丘をよじ登り始めた。
出そろって、山羊やぎ小屋の窓をかくしている大麦の穂の上に、やわらかに夕日の光が流れておりました。
和太郎さんと牛 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
名探偵花房一郎、こう言ったまま振り向きもせず、ダブダブ服の山羊やぎ髭のまま、出口で待って居た部下に、左京路之助を引立てさして行こうとします。
古銭の謎 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
あゝ萬の罪人にまさりて幸なく生れし民、語るもつらき處に止まる者等よ、汝等は世にて羊または山羊やぎなりしならば猶善かりしなるべし 一三—一五
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
飛びはねる面白さのために石ころの間を登ったりすべったりする、まったくの子山羊やぎであった。
向うの土手のところに山羊やぎの一群が居り、少女ひとりが鵞鳥がてうの一群を遊ばせてゐたりする。
イーサル川 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
胡麻塩になった山羊やぎ髭を喰い反らした人の好さそうな顔を、女給の鼻の先へヌッと突出します。
古銭の謎 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
が、なおも辛抱強くその実験をつづけていると、髑髏を描いてある場所の斜め反対の隅っこに、最初は山羊やぎだろうと思われる絵が見えるようになってきた。
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
緑いろのところに赤い網目がついているのは、大鹿おおじか山羊やぎんでいた場所です。
「さうかなあ。ふらふらと出てみる気になつたんだ。山羊やぎ先生、大分、よぼよぼになつたね」
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
あの時は山羊やぎのごとくしかり山野泉流ただ自然の導くままに逍遙しょうようしたり。
小春 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
顔が人間と猿の間で、手足の先が山羊やぎのようで、小さな尻尾しっぽがあって、まっ黒な胴着をつけてるのが、悪魔あくまの姿として絵に書いてあったのです。
天下一の馬 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
それは人間の顔と蝙蝠かうもりの翼と山羊やぎの脚とを備へた、奇怪な小さい動物である。
悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
山羊やぎがおつこつたから、それを助けようとして、驢馬もおつこつたのかも知れません。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
すると遠いざわめきのなかに、ひと声、子山羊やぎの鳴き声がまじったのを聞きとめた。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
きちりと合う山羊やぎの革製ので、華奢きゃしゃな指をつつましやかに包んでいた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
女らの露店には鈴をつけた山羊やぎも時々寄って来、白い牛、斑牛まだらうし、黒牛なども寄って来るが、女らはそういう獣にはかまわずに、店を片付けて帰るのであった。
リギ山上の一夜 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
もぢやもぢやした髪の毛の中には、山羊やぎのやうなつのが二本、はえてゐる。
煙草と悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
幼いとき、小学校の「山羊やぎ」という綽名あだなのある校長さんから、面白いお伽噺とぎばなしをして貰ったが、その中で、最もよく覚えているのは、こんな噺であった。
人造物語 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「おくみさん、あき子さんをつれて出て来ませんか。山羊やぎの乳を飲ませるよ。」
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
歩めるは娘娘廟にやんにやんべうのうしろなる野に飼はれたる山羊やぎら小馬ら
すると何処かで、「メー」と山羊やぎが風をよろこぶように鳴いた。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
下りてみると章坊が淋しそうに山羊やぎおりを覗いて立っている。
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
そこへブロッケンの山から駆けて帰る、年の寄った山羊やぎおす
或る日、曹操の陣所へ、土民の老人ばかりが、何十人もかたまって訪ねてきた。髪の真白な者、山羊やぎのようなひげを垂れた者、杖をついた者、童顔の翁など、ぞろぞろつながって、
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
壇上の桜井作楽は山羊やぎ髥をしごきながら、こう語り始めました。
それはまあいいとして、この有尾人からは、山羊やぎくさいといわれる黒人のにおいの、おそらく数倍かと思われるようなたまらない体臭が、むんむん湿熱にむれて発散されてくる。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
汝らがくらうべき獣蓄けものこれなりすなわち牛、羊、山羊やぎ牡鹿おじか羚羊かもしか、小鹿、やまひつじくじかおおじかおおくじか、など。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
その夜はそこに宿り翌日も非常に疲れて居るから一日休息してその翌朝すなわち九月二十六日、山羊やぎは一疋でも行くといいますからそこで荷物を背負わす山羊を一疋買い調えて出掛けました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
やはらかき山羊やぎの乳ののいまも身に失せもあへねば。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
わたしも極丈夫な山羊やぎおすが一匹欲しくなりました。
山羊やぎの乳と山椒のしめりまじりたるそよ風吹いて夏は来りぬ
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
食堂の黄なる硝子をさしのぞく山羊やぎの眼のごと秋はなつかし
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
山羊やぎの乳売の笛で岸本は自分の部屋に眼をました。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
高柳君は何とも返事をしないで、相手を真正面から見ている。中野君は少々恐縮の微笑をらして、右の手に握ったままの、山羊やぎの手袋で外套がいとうの胸をぴしゃぴしゃたたき始めた。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やわらかいぞやわらかいぞ、お大名だいみょう寝床ねどこだって、こんなに上等じょうとうじゃああるまいなあ、などとまきをとかれた山羊やぎみたいに、ワザとごろごろころがってみた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
己は鶏三羽と山羊やぎ一疋遣ったに己の児を捉えくさった
或は山羊やぎと小羊のくんずるにほひ納受して
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
山羊やぎふ者、展望の高き場より海のうへ、
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
御中道大行大願成就、大先達某勧之などとしたため、朱印をベタ押しにしたのを着込んで、その上に白たすきをあや取り、白の手甲に、渋塗しぶぬりの素足をあらわにだした山羊やぎひげのおきななど
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
小柴の顔は、ロイド眼鏡めがねをかけて山羊やぎ髭をつけると、高城君そっくりになります。違って居るのは、小柴の眼が、少し三白眼になって居るだけで、これは写真で見ても、注意すると区別がつきます。
女記者の役割 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「ええ、ありがとう、ですからマグノリアの木は寂静じゃくじょうです。あの花びらは天の山羊やぎちちよりしめやかです。あのかおりは覚者かくしゃたちのとうとを人におくります。」
マグノリアの木 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
つぎの朝久助君は、山羊やぎにえさをやるため、小屋の前へいって、ぬれた草を手でつかんだとき、きのうの川のできごとを思い出した。と同時に、兵太郎君はどうなったろうという心配が、重く心にのしかかってきた。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
ひげの似たるより山羊やぎと名づけて
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
山羊やぎが啼いて 一日一日 過ぎてゐた
優しき歌 Ⅰ・Ⅱ (新字旧仮名) / 立原道造(著)
山羊やぎは しづかに 草を 食べてゐる
優しき歌 Ⅰ・Ⅱ (新字旧仮名) / 立原道造(著)
——耳も山羊やぎあしも山羊——
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
この薄寒い真夜中に、白いメリヤスらしいシャツ一枚、山羊やぎ髭の生えたミイラのような黒い顔と、こればかりは底の知れない、深い眼を此方こっちへ向けて、催眠術使のように、ジッと千種十次郎の顔を見るのです。
音波の殺人 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
なんためわたしだの、そらここにいるこの不幸ふこう人達ひとたちばかりがあだか献祭けんさい山羊やぎごとくに、しゅうためにここにれられていねばならんのか。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
低地の物音、水門に水の奔騰する音、丘の上に草をんでる二匹の山羊やぎの鈴の音、彼が寝ころがってるすぐそばの細い小さな木立を過ぎる風の音、そういうものが、海綿のようにあらい柔軟な彼の考えを浸していた。
おおかぶさってるまゆ山羊やぎのようで、あかはな仏頂面ぶっちょうづらたかくはないがせて節塊立ふしくれだって、どこにかこう一くせありそうなおとこ
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
羊を、山羊やぎを集むるか、
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
羊を集め、山羊やぎを集め、
夕づつの清光を歌ひて (旧字旧仮名) / サッフォ(著)
山羊やぎLe Bouc
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
山羊やぎの乳をつぐ
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
その男は、片眼で、見えない方の眼は、白くびくびくうごき、上着のやうな半纏はんてんのやうなへんなものを着て、だいいち足が、ひどくまがつて山羊やぎのやう、ことにそのあしさきときたら、ごはんをもるへらのかたちだつたのです。
どんぐりと山猫 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
その男は、片眼で、見えない方の眼は、白くびくびくうごき、上着のような半纒はんてんのようなへんなものを着て、だいいち足が、ひどくまがって山羊やぎのよう、ことにそのあしさきときたら、ごはんをもるへらのかたちだったのです。
どんぐりと山猫 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
なんためわたしだの、そら此處こゝにゐる不幸ふかう人達計ひとたちばかりがあだか獻祭けんさい山羊やぎごとくに、しゆうためこゝれられてゐねばならんのか。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
おほかぶさつてるまゆ山羊やぎのやうで、あかはな佛頂面ぶつちやうづらたかくはないがせて節塊立ふしくれだつて、何處どこにかう一くせありさうなをとこ
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
うとうととしたふくれ顔の金髪を乱した娘が、神経質な素気そっけない山羊やぎのような小足でそばを通りかかると、クリストフは彼女をもう一、二時間も多く眠らせるためには、自分の一か月分の生活費を与えても惜しくはない気がした。
山羊やぎさん
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
山羊やぎの角
未刊童謡 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
山羊やぎ
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
云えば、雌山羊やぎの乳をしぼれば、他の者がふるいをその下に差し出していると云う、そんなはかない生活くらしなので、躯工合でも悪くなると、あれこれと考えるのだが、まあ、米の飯とお天道てんとう様はついてまわるだろうと思っている。
生活 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
そこには、あの架空塔の倒壊事件以来、羊や山羊やぎかに獅子しし昆虫こんちゅうのたぐいに仮体かたいして、山河に飛散していたもろもろの星が、すっかりめいめいの意味をもって、ちゃあんとそれぞれ天空の位置にはめ込まれていた。
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
まあそんな贔負ひいきがあるから独仙もあれで立ち行くんだね。第一八木と云う名からして、よく出来てるよ。あのひげが君全く山羊やぎだからね。そうしてあれも寄宿舎時代からあの通りの恰好かっこうで生えていたんだ。名前の独仙などもふるったものさ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この子供等を側に置いて岸本は自分の遍歴して来た港々の奇異な土人の風俗や、熱帯の植物や、わに駝鳥だちょう山羊やぎ鹿しか斑馬しまうま、象、獅子しし、その他どれ程の種類のあるかも知れないような毒蛇や毒虫の実際に棲息せいそくする地方のことを話し聞かせた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
次にはからすを挙げ、三十九章に入りては山羊やぎ牝鹿めしか野驢馬のろばのうし(野牛すなわち野生の牛)、駝鳥だちょうたかわしを挙げておのおの特徴を述べ、神の与えし智慧ちえによる各動物の活動を記して、人智のこれに関与し得ぬ弱さを示しておる。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
いや、ごめんなさい、帆村さん、あの蟒という動物はですな、生きているものなら躍りかかって、たとい自分の口が裂けようとみこみますが、死んでいるものはどんなうまそうなものでも見向みむきもしないという美食家びしょくかです。ここでは主に生きた鶏や山羊やぎを食わせています。
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それほど今の若者らはばかだ。皆そうだ。ひとりとしていいやつはいない。街路まちに流れてる空気を吸えば、それでもう気が狂ってしまう。十九世紀は毒だ。どのいたずらっ児も、少しばかり山羊やぎのようなひげがはえ出すと、ひとかど物がわかった気になって、古い身内の者を捨ててしまう。
夜はかこいの中へ入れて、両端りょうはしの小屋へ番人が一人ずつています。羊はちょっとしたことにもおどろく臆病おくびょうな動物ですが、中へ五、六頭の山羊やぎを入れておくと、羊はこの山羊をたよりに思って、夜などもなにかさわぎがおこると、みな山羊やぎのそばへより集まるのです。
その、とてもずるい三人の泥坊どろばうが、ある日、一人の百姓に出あつたんだよ。百姓は立派な服をきて、立派な驢馬ろばにのつて、首に鈴をつけた立派な山羊やぎをひいて、町に出かけるところだつた。その立派な服と立派な驢馬と立派な山羊とを見て、三人の泥坊は、それをみんな盗んでしまはうと思つた。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
「なるほどよくあたった。それではこの娘をあげるからお家へつれておかえりなさい。私は、娘が一と息で数えるだけの、羊と牛と山羊やぎと馬と豚を、お祝いにやりましょう。しかしお前さんが、これからさきこの娘を、何のつみもないのに、三べんおぶちだと、すぐにこちらへとりもどしてしまいますよ。」と言いました。
湖水の女 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
君だって、先王がおいでの頃は、この山羊やぎのおじさんに、なついていました。わしの顔が山羊に似ているのを、一ばんさきに見つけたのは、わしの可愛い甥でした。叔父さんも、よろこんで山羊のおじさんになっていました。あの頃が、なつかしいね。いまでは、わしと君は、親子です。そうして心は、千里も万里も離れました。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
征服、侵略、簒奪さんだつ、武力による各国民の競争、諸国王の結婚結合よりくる文化の障害、世襲的暴政を続ける王子の出生、会議による民衆の分割、王朝の崩壊による国家の分裂、二頭の暗黒なる山羊やぎのごとく無限の橋上において額をつき合わする二つの宗教の争い、それらももはや今日のように恐るるに及ばないだろう。
初めびっくりした甚兵衛は、話しかけられたのでなおびっくりして、立ち止まってよく見ますと、人間ともさるともつかない顔付かおつきをし、体のわりには妙にひょろ長い手足の先に、山羊やぎのようなひずめが生えていて、まっ黒な一重ひとえの短い胴着どうぎすそから、小さな尻尾しっぽがのぞいていました。
天下一の馬 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ばかに、はっきり否定するね。山羊やぎの叔父さんは、あれでなかなかロマンチストだからな。僕と親子になったら、かえって心は千里万里も離れて、愛情は憎悪ぞうおに変ったなんて、ひとりでひがんで悲壮がっているような人なんだから、こんどはまた、ぐっと趣向を変えて、先王が死に、嗣子のハムレットはその悲しみに堪え得ず気鬱きうつ、発狂。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)